「議会と自治体」2012年12月号掲載より

特集/離島振興の課題を考える

対談/安心して住み続けられる離島へ、なにが問われているか/離島振興法改正を踏まえて
赤嶺政賢・党国会議員団離党振興対策委員会責任者(衆院議員)
塩川鉄也・同事務局長(衆院議員)

1)離島の実態─条件不利性、人口減少
【編集部】 先の国会では、10年ぶりに離島振興法の改正がおこなわれました。党国会議員団では、離島振興対策委員会を設置してとりくみをすすめてこられたところですが、その責任者の赤嶺政賢さんと事務局長の塩川鉄也さんに、いま、離島振興になにが問われているのか、法改正のポイントなどについて、話し合っていただきたいと思います。

対談する赤嶺政賢(あかみね・せいけん)衆院議員(左)と塩川鉄也(しおかわ・てつや)衆院議員(右)

【塩川鉄也】 まず、離島の現状について、その概要を確認しておきたいと思いますが、日本列島には、北海道、本州、四国、九州および沖縄本島の本土5島を除いて、離島が6847あります。そのうち、有人離島は400余りで、今回改正された離島振興法の対象となる離島振興対策実施地域に指定されている離島は、4月1日現在で、254島あります。自治体数では、69市、30町、11村で、人口は約39万人です。

 なお、離島関係の法律には、離島振興法の他に、小笠原諸島、奄美諸島、島々を抱える沖縄の振興を目的とした地域ごとの特別法があり、これらの地域は、離島振興法とは別の枠組みで振興が図られています。

 では、そもそも、なぜ離島の振興を図ることが必要なのかということですが、まず、離島は、国土や海域の保全、海洋資源の利用、国民の安全確保、また漁業振興として水産資源の確保と漁業拠点などの意味で、大変重要な役割を担っていることがあげられます。加えて、貴重な自然環境の保全、多様な文化の継承などがおこなわれており、観光地などとして、多くの国民に親しまれています。

 しかしながら、そこには、離島そのものが持つ条件不利性が存在します。それは、周りが海に囲まれているという「環海性」、本土から遠く離れているという「隔絶性」、それからやはり島そのものが狭いという「狭小性」に代表されます。

 これらのために、島独自での定住・振興を図るには、さまざまな困難がともない、本土との格差が生じています。

 ですからこれまでも、離島振興法が1953年に制定され、10年ごとに改正を重ねてきたことをはじめ、一連の支援策、振興策がおこなわれてきました。しかし、それでも結果として、人口減少、人口流出が止まっていません。

 離島振興対策実施地域に該当する離島の人口は、50年前の1965年には96万人でしたが、2010年では39万人と、大きく減少しています。有人から無人となる離島も増加しています。こうした状況を改善するということが、今回の離島振興法の改正に求められていました。

 そうした点で、今回の法改正にあたっては、「住み続けられる離島を」ということを、いちばんの眼目にとりくんできましたし、その大きな目的では各党とも一致し、超党派の議員による議員立法(衆院国土交通委員長提出)として提案され、全会一致での法改正となりました。

【赤嶺政賢】 私の出身の沖縄は、離島で構成されているといってもいいところです。またこの間、各地の離島を回りましたが、そうしたなかで、いま塩川さんからもあった「人が住み続けられる島」かどうかということが、本当に切実な問題として問われていると、肌身で感じています。

 若者の流出や人口減少についていえば、高校のない離島、通学が不可能な離島の子どもたちは、高校に進学するとき、まさに十五の春に島を出なければならないという現実があります。そうすると、親も心配ですから、母親と弟・妹たちもいっしょに引っ越し、父親一人が島に残って仕事をしている、ということが少なくありません。これは、経済的な負担も大変で、本当に石にかじりついて子育てをしている、といった状況があります。

 さらに、高校を出て社会人になっても、島に雇用の場がなければ、島に帰りようがありません。これは、高校のある島でも大学進学のときに同様のことがおこり、島の人口の減少に歯止めがかからない大きな要因になっています。

 また、離島は、どうしても、輸送や移動のための負担が大きく、産業・雇用の面でも、教育や医療の面でも困難があり、そのために、島を離れざるを得ないという人も少なくありません。一方で、進学などで一時的には島を離れても、やはり島に帰って働きたい、と思っている若者も少なくありません。

 ですから、島から人が出ていくといっても、本当は、島に住み続けたいと考えている人、故郷に戻りたいと思っている人は、いっぱいいる。しかし、戻ることを許さない社会的経済的条件がある。そこをきちんと解決し、応援していく必要があると考えています。

2)離島振興の障害をとりのぞく政治が求められている
【赤嶺】 その点で、今回の離島振興法改正では、離島の持つ条件不利性について法律でもより明確に書き込み、定住促進のためにソフト施策の拡充を図るなど、支援策の前進がありました。

 他方で、離島での生活をまるごととらえると、国政の場で、消費税増税やTPP参加、また基地の押しつけなど、離島住民の暮らし、経済を壊すような事態が進行していることは、重大です。

 たとえば、沖縄や鹿児島の離島では、農業といえばサトウキビです。これを絞って黒糖をつくる製糖工場が、島で唯一の雇用の場になっているところもあります。NHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」の舞台にもなった八重山列島の小浜島では、砂糖価格の下落などで島の製糖工場がつぶれ、「このままではサトウキビがつくれなくなる。島に住み続けられなくなる」と、大問題となりました。私たちも支援して、島の人たちが運営する製糖工場としてなんとか再建し、事なきを得たのですが、私はそのとき、本当にTPPが導入されたら島から人がいなくなるということを、痛感しました。

 長崎県壱岐島(壱岐市)でも─市長さんが全国離島振興協議会(全離島)の会長─、島の経済に欠かせない農業・漁業に壊滅的な打撃をもたらすTPPには絶対に反対だと、島ぐるみで集会などがとりくまれています。こうした動きは、全国にひろがっています。

 また、消費税増税は、きびしい離島住民の生活に直接覆いかぶさってくると同時に、景気を冷え込ませ、基幹産業の一つである観光業への打撃となることも懸念されます。

【塩川】 そうですね。大きな視点での政治の責任が問われています。

 離島の経済・社会を疲弊させてきた背景として、「構造改革路線」、「地域主権改革」という自民党、民主党の路線も重大です。その転換こそ必要です。

 たとえば、この間、公務員の削減がすすめられ、民主党政権下では、人件費2割削減という方針のもと、国の出先機関の縮小・廃止の動きがいっそう強められています。離島では、公務員が島の担い手としても大きな役割を果たしていることが多いため、その影響は少なくありません。

 以前、沖縄の与那国島(与那国町)で町長さんと懇談したさいに、「税関も測候所もなくなり、今度は民営化で郵便局までなくなってしまうのではないか。離島をいっそう疲弊させるものでしかない」と、大変に心配されていました。

 地方財政措置についても、交付税削減という方向ではなくて、むしろ条件不利性の程度に応じて地方財政措置を強化していくことが求められます。離島関係市町村からは、離島関係の国、都道県の予算が見えるかたちできちんと関係市町村に交付されるような仕組みづくりについても、要望が出されています。

 いま、「日本維新の会」から、地方交付税を廃止し、消費税を全額地方税化すべきだなどという乱暴な議論も出されていますが、これは、消費税の大増税と、とくに条件不利性が大きく税収の少ない離島などの自治体に大きなマイナスの影響をもたらしかねないものです。

 この間、国がすすめた市町村合併も、離島の人口減少の要因となっています。離島の自治体が本土の自治体と合併すると、島から役場がなくなってしまいます。それ自体、独自の施策の後退にもつながるなど、島の経済にとっても大きなマイナスです。

 さらに、役場職員も多くが離島から本土の役所に移ることとなり、家族もいっしょに島を離れてしまうのです。離島の人口減は、全体ではこの10年間で13%ほどですが、本土と合併した島では33%近く減少しています。こうした事態は、瀬戸内海の離島など、本土と近い「内海離島」といわれるところでおこっています。

【赤嶺】 さらに、離島につくられた基地が自立的な発展を妨げており、その解決が重要な課題となっているところも少なくありません。

 たとえば、沖縄の久米島には、米軍の実弾射爆撃場がありますが、その訓練水域が邪魔して、高値で取引されるソデイカの漁場に入れないでいます。島の住民は、「基地からなにがしかのお金をもらうより、漁業でがんばったほうがよい。訓練水域を返還して欲しい」といっています。

 米軍のオスプレイの配備が強行され、全国に低空飛行訓練をひろげようとしていますが、沖縄から鹿児島にかけてのパープルルートでは、高い山がないために、島々の上を飛び、島の学校を仮想標的(飛行ポイント)にした低空飛行訓練が想定されています。

 さらに、これまでも米軍機が、鹿児島の屋久島空港や長崎の五島・福江島空港で離発着訓練をおこなったことが問題になりましたが、今後も、オスプレイをふくめ、アメリカの戦争訓練に離島が使われる可能性は否定できません。

 こうした事態は、離島住民の安全の問題とともに、産業や観光の振興を妨げ、「住み続けられる島」への重大な障害となるものです。

 真に離島の振興を考えるならば、政治には、これら、離島の暮らし、経済をおおもとから壊すようなやり方を断固認めない、転換することこそ求められています。

3)法改正の内容、議論のポイント
【編集部】 今回の離島振興法改正は、どのようなものになったのでしょうか。

 法改正にあたっての党の立場
【赤嶺】 法改正にあたっては、党国会議員団離島振興対策委員会として、現地調査や首長や住民との懇談・議論をおこないながら、「住み続けられる離島づくり」をいちばんの眼目にし、「ライフラインの確保・充実」と「就労、就業の場の確保・創出」を2本柱として諸施策の創設・拡充を求めるという立場で、法改正協議に臨みました。

 ライフラインの確保・充実
 「ライフラインの確保・充実」では、・社会保障、・教育、・公共交通を「三つのライフライン」とし、その課題を提起しました。

 社会保障では、医療や介護や障害者福祉などの施策についての離島補助制度の創設を求めました。社会保障の機能を維持・充実していくためには、島ならではの困難性をふまえ、本土以上の上乗せ措置が必要です。

 島に医者がいないため、歯医者にもかかれない、出産ができない、病気になったら島を離れなければいけないということで、これは、人口流出の要因にもなっています。

 教育では、島にある学校の充実、とりわけ高校は、生徒数が限られるなかで、必要な教職員を配置することに困難が生じています。高校標準法(公立高等学校の適正配置及び教職員数の標準等に関する法律)の上乗せ特例措置を求めました。

 三つ目の公共交通では、離島航路、離島航空路への助成の拡充です。離島航路などを「海の国道」として位置づけ、整備してほしいというのは、離島のみなさんの共通した声です。一般の国道であれば国の責任で整備されますが、航路の場合は、大きな利用者負担がともないます。さらなる支援策の実施を求めました。

 ■就労、就業の場の確保・創出
 もう一つの柱である「就労、就業の場の確保・創出」では、地域資源を活用した地場産業の振興策を重視するという立場です。島外からの企業誘致やハコモノ整備中心では、持続的な島の振興が図れないことは、この間の経験からもあきらかです。

 具体的には、離島振興の困難さの主要因である輸送コスト問題の解消、つまり、燃油価格や運賃の低減を図るような措置が不可欠です。国交省の調査でも、離島の「光熱・水道費」、「交通費」、「通信費」は、全国にくらべて3割から4割程度高いとされています。

 さらに、・地域資源を活用した起業支援、・島内外の若い世代の交流・定住・起業につながる一貫した支援体制の構築、・所得向上に向けた離島の沿岸漁業者の漁業権の拡大を図る、ことなどを提起しました。

【塩川】 こうした立場は、私たち離島振興対策委員会を軸に、各地で、党の国会議員、地方議員が、離島のみなさんと懇談するなかで確立していったもので、その交流のなかでは、本当に多くのことを学びました。

 たとえば、島根県の隠岐諸島の海士町(中ノ島)では、海草を使った新商品の開発や隠岐牛のブランド化による市場開拓など、若者たちの力も引き出しながら、島にある資源を活用した産業振興、雇用創出がすすめられていて、こうしたとりくみを励ますような離島振興策が必要だと、強く感じました。

 海士町でとくに注目したのは、「人づくり」のとりくみです。1年間、生活費を支給して、若い人を島に呼び、島の資源を活用した新商品開発を依頼するという研修制度などを実施して、7年間で310人ものIターン、175人のUターンを実現していました。

 「就労、就業の場の確保・創出」の支援策の提起は、こうした経験、現場の声に学びながら整理していったものです。

 ■ソフト事業など振興策を抜本充実
【塩川】 改正離島振興法は、6月20日に全会一致で可決・成立しました。その最大の特徴は、これまでのハード整備中心だった離島振興策に、定住促進に資するソフト事業が抜本的に拡充して盛り込まれたことです。

 改正内容と、これをめぐる国会の議論の主なポイントは、6月19日に参院国土交通委員会で井上哲士議員がとりあげましたが、四点あります。

 ■離島活性化交付金等事業
 一つは、離島活性化交付金等事業を積極的に活用できるように、メニュー範囲の拡大を明確にし、さらに、関係者の要望にこたえたソフト事業を盛り込むことがしめされるなど、拡充されたことです(下部のデータファイル資料4参照)

 具体的な事業メニューとしては、輸送コストの低減化を図る離島流通効率化事業や、高校のない離島から島外の高校に通う高校生に助成する離島高校生修学支援事業などが明確化されるとともに、新たに「制度を創設した上で盛り込むべき事業」として、「離島の妊婦の健康診査の受診及び出産に対する支援等新たな国の離島活性化に資するソフト事業」が盛り込まれました。

 この「ソフト事業」については、今後、各地域からの提案によって、妊婦さんの支援をはじめ、多様な施策が実施されることとなります。

 ■輸送コスト支援
 二つ目は、離島の輸送コスト支援について、予算化の根拠規定を明確にしたことです。

 これは、昨年、概算要求に盛り込まれたものの本予算で離島輸送コスト支援事業(ソフト分)が計上されなかったことから、あらためて確認したものです。井上議員の質問にたいし、法案提出者として赤嶺さんが「法第十二条にもとづいて……費用の低廉化に資するための施策が推進されるものと期待する」と答弁されました。

【赤嶺】 そうです。私も、この議員立法の参議院の審議のさいの答弁者の一人として、民主党の打越衆院議員とともに、答弁に立ちました。

 ■社会保障サービス
【塩川】 三つ目は、社会保障サービスにかかる住民負担の軽減について、法第十一条の二項が新設され、必要な規定が書き込まれたことです。

 妊婦の通院・出産支援については、交付金事業メニューでも例示的に規定されたのですが、妊婦以外でも、本土で高度医療を受けなければならない方にしてみれば、家族の付き添いをふくめて多大な負担がかかります。介護や福祉、保育分野でも同様のことが起こりうることです。

 この点は大島(東京・大島町)の川島理史町長(日本共産党員首長─編集部注)と党国会議員団との懇談でも出された問題で、社会保障サービスを受けるための条件の格差是正を図るため、「住民負担の軽減について適切な配慮をする」とした条文の新設は、積極的な意味を持っています。

 ■高校教職員加配
 四つ目は、離島の高校の教職員に必要な加配がおこなわれるよう、法第十五条の二項が新設され、あわせて高校標準法の改正が附則に盛り込まれたことです。文科省は必要な措置を講ずるとしていますから、高校の設置者である都道県にたいして、積極的に加配措置を要望していくことが求められます。

【赤嶺】 いま塩川さんからあったように、今回の離島振興法の改正では、振興策の拡充として、さまざまな点で日本共産党の提案がしっかりと反映されたものとなったことは、大切だと考えています。同時に、今後、これらの施策をしっかりと実行させるとりくみが求められます。

 「離島特区」制度をどうみるか
【塩川】 また、今回の法改正では、「離島特区」制度が盛り込まれました。特区については、積極的な意味を持つと同時に、留意点もあると考えますので、少しふれておきたいと思います。

 私たちは、地域資源を活用した振興策につながるような特区制度の仕組みづくりが必要だと考えています。とくに、条件不利性により生じる問題や格差を解消するための財政、税制、金融などの上乗せの特例措置をおこなうための特区制度の活用は、積極的におこなっていくことが必要だと考えています。

 一方で、これまで、全国でおこなわれてきた特区制度は、教育や社会保障などのナショナルミニマムを後退させるツールとして使われてきた面も否めません。こうしたやり方が持ち込まれるならば、離島の定住促進にも逆行するものとなります。

 こうした点をふまえた対応が求められると思います。

4)国境離島をめぐって
【赤嶺】 離島に関連した留意事項として、国境に接する離島=「国境離島」の問題についても、のべておきたいと思います。

 尖閣諸島や竹島をめぐって、中国や韓国との間の対立と緊張が深刻になるなかで、離島振興法改正の議論のなかでも、一部に、国境離島の問題をもっと重視すべきだといった議論もありました。

 尖閣諸島や竹島をめぐる問題については、日本共産党は、尖閣諸島も竹島も日本の領土ということを明確に主張するとともに、一貫して、その解決にあたっては、歴史的事実と道理に立ち、外交交渉によって平和的に解決すべきだという立場です。

 実際、国境に接する離島の住民が望んでいることは、安全に漁業ができるような海にすることであって、平和の海、友好の海にするための協力の推進にほかなりません。対立と緊張など、だれも望んでいないのです。

 それなのに、この国境離島をめぐる問題を、狭いナショナリズムの枠のなかでとらえ、対立をあおって軍備強化につなげていこうという動きは、絶対に許されません。

 対立と緊張が持ち込まれる不幸

 そもそも、歴史的にも、国境に接する離島は、国交がもたれるずっと以前から、人びとの間で自由に交易・交流がおこなわれ、文化が交わり、国と国を結ぶ豊かな地域として、発展してきたところなのです。

 沖縄は、戦後直後、米軍の直接占領下にあり、外部との交流がまったく認められなかったのですが、その時代から、国境離島である与那国島では、正規ルートではないという意味での「密貿易」が、台湾や中国との間でおこなわれていました。それは、・戦後の沖縄経済の原動力になった・といわれているほどのものだったといいます。

 いま、当たり前のように食べられているパイナップルやマンゴーを石垣島に持ち込んだのは台湾の人ですし、そういう経済的な交流、文化的な交流は、どの国境離島にも残っています。

 国境の島々は、お互いの国を豊かにする場所だったのです。いまその島々が、紛争の地にされているということは、本当に不幸なことです。

 国境の離島に必要なのは、トラブルが大きくならないようにするルールです。それは、問題が起こっても、話し合いで解決することが原則ですし、現在では、憲法九条の精神にのっとった対応です。けっして、軍事的対応、日米同盟最優先といった対応ではありません。

5)今後のとりくみ─市町村から積極的に提案を
【編集部】 改正法を活用するとりくみでは、どのようなことが求められますか。

【塩川】 改正離島振興法をめぐる今後の流れとしては、まず国が離島振興の基本方針を策定し、その後、来年4月までに市町村が住民の意見を反映した離島振興計画案を作成し、都道県がその案をもとに計画をつくって国に提出することになっています。

 先ほどふれた離島活性化交付金等事業は、この計画にそって、申請・決定され、事業化され、来年度予算から実施されることになります。

 そういう点でも、いま、離島振興対策実施地域のある市町村また都道県では、住民の説明会や、住民の声を反映させるとりくみを積極的におこなうことが重要だということを強調したいと思います。

 今回の法改正では、たとえば、新設された十四条の二(就業の促進)項に、離島住民および移住希望者にたいする就業の促進を図るため、「雇用機会の拡充並びに職業能力の開発及び向上のための施策の充実について適切な配慮をするものとする」とあります。同じく、介護サービス確保(十条二項)や、定住の促進のための生活環境整備(十四条の三)、再生可能エネルギー利用促進(十七条の三)、防災対策の推進(十七条の四)のための「適切な配慮」など、さまざまな配慮規定が盛り込まれました(下部のデータファイル資料4参照)。これらは、住民の要望をもとに事業の予算化をはかる根拠として、大いに活用できるものです。

 しかしそれは、とくにソフト事業などでは、単にメニューから選ぶだけというようなものではなく、具体的に要望し、計画をつくって事業化させていくという性格のものです。

 現場から積極的に要望を出すことが、本当に振興につながる計画づくりの出発点、土台となるということで、大いに知恵を出してがんばろうじゃないかと、呼びかけたいと思います。

 そのさいに、たとえば全国離島振興協議会の、来年度にむけた「離島振興に関する要望」などは、参考になると思います。また、国からも、一定のメニューがしめされると思います

【赤嶺】 その点では、離島を抱える自治体の地方議員さんの役割は大きいと思います。また、振興法の活用という点では、行政はもちろん、議会でも党派を超えて一致できますから、幅広いみなさん、若いみなさんの力も結集して、大いに知恵をしぼっていくことが期待されます。

 私の思いとしては、さきほどもふれましたが、離島の子どもたちが島外の高校へ進学したときに、安心して学習できる環境─寮や離島の子どもの支援センター、旅費の支援など─を整えて、親が本当に安心して送り出せるようなしくみがつくれないか、ということなどを感じています。

 離島の伝統文化や祭りは、本当に多様で豊かです。しかし、若者がおらず、どんどん消え去っています。実際、いま伝統文化や祭りをなんとか継承し、支えているのは、中学生や高校生です。その子どもたちが、進学などで島を出ても、戻ってこられるようにするには、やはり働く場が必要です。

 各地で、島の人たちの懸命の努力がおこなわれています。一例ですが、日本の最西端の島である沖縄の与那国島(与那国町)では、海岸沿いにたくさん生えていた野草=長命草が、実は化粧品の材料になるということで、高値で取引されるようになり、その栽培にとりくむ若者が増えてきているなど、注目されるとりくみもあります。

 地域資源である自然エネルギーの活用といった分野でも、離島は、大きな可能性をもっています。

 福祉、教育の分野をふくめ、こうした一つひとつのとりくみを、みなさんと力を合わせて、実現していきたいと思います。

 そして同時に、これまでにものべてきたように、消費税、TPP、基地、領土にかんする紛争の問題など、離島の住民のいのちと暮らし、経済を危うくするような悪政は、絶対に許さない。そうしたたたかいを、大きくひろげていきたいと思います。

【編集部】 ありがとうございました。