「女性のひろば」2012年12月号に掲載より

日本の空にオスプレイはいらない!/北関東/爆音の下から安保を問う

対談/山田富美子(群馬県渋川市在住・主婦)/塩川鉄也(日本共産党衆議院議員)

低空飛行の現場を調査する
塩川議員(右)と山田夫妻(渋川市北橘町)
 
やまだふみこ=群馬県平和委員会会員。自宅上空を飛ぶ低空飛行の爆音被害を記録し続けている
 
しおかわてつや=日本共産党衆院比例北関東ブロック選出。党国会議員団オスプレイ配備反対闘争本部事務局長

赤旗カレンダーに爆音記録

【山田】群馬県は90年代から米軍機の低空飛行による騒音を受けていたのですが、私が看護師を退職して自宅にいるようになった08年ごろから、神奈川県横須賀港に寄港している米空母ジョージ・ワシントン(GW)の空母艦載機・FA18が前橋、高崎、渋川の3市の上空を低空旋回するようになりました。「飛行調査をしましょう」という平和委員会の呼びかけがあり、気づいたときにカレンダーに書きこむことにしました。

【塩川】先日、低空飛行訓練ルートの実態調査で山田さんのお宅にうかがいました。防衛省の資料でも、02年から今年5月までの米軍機への苦情は全回で1538件。このうち群馬県は1020件ととびぬけています。群馬県のみなさんとともに毎年防衛省に資料を添えて申し入れをしているのですが、事実を記録した山田さんのカレンダーは最も説得力のある資料となっています。

山田さんが赤旗カレンダーに記録した爆音被害。2分おきに飛ぶ日も多く、余白もまっ黒に

【山田】6月に米軍報告書(『環境レビュー』)で、オスプレイが沖縄はじめ全国の低空飛行訓練ルートで低空飛行訓練を想定していることが明らかになり、衝撃をうけました。私の住む群馬県上空も低空飛行の「ブルールート」にあたっています。そもそもオスプレイはなぜ危険なのでしょうか。

【塩川】オスプレイは構造的な欠陥機です。左右に2つの回転翼があることで、従来のヘリや航空機では考えられない空気の流れが発生するため、操縦がきわめて難しいうえ、飛行中のエンジン停止の際の緊急着陸に必要な安全機能であるオートローテーション(自動回転)機能がありません。

 オスプレイは開発段階から墜落事故があまりに多発することから、「ウィドー(夫を亡くした妻)メーカー」の異名をとってきました。今年に入っても、4月にモロッコで、6月にはフロリダ州で墜落し、これまでに少なくとも36人の死者を出しています。

全国を飛ぶ!?オスプレイ

【山田】いま沖縄の空をオスプレイが低空飛行訓練をしていますね。沖縄のみなさんの苦しみは決して他人事ではありません。屋根に突っ込んでくるのではないかと思うような勢いでジェット機が飛んできます。日本から基地をなくさない限りこの苦しみはなくなりません。その上、墜落を繰り返す危険なオスプレイが飛ぶなんて。私たちの命は鳥の羽よりも軽いのでしょうか。

【塩川】沖縄県議会、沖縄の全41市町村議会がオスプレイ配備反対の決議をあげました。まさしく島ぐるみの反対のなか、沖縄に配備されたのです。しかも日米間の「合意」のルールさえ無視して人口密集地上空を危険なヘリモードや転換モードで飛びまわっており、県民の怒りは頂点に達しています。

 オスプレイ配備・訓練中止を求める意見書を可決した自治体は123(沖縄含む、10月11日現在)、全国知事会も「安全性が確認できていない現状では受け入れられない」と決議をあげました。しかし野田首相は「オスプレイの本土への訓練移転を具体的にすすめる」と発言したのです。

【山田】オスプレイは日本中で危険な訓練飛行を実施するというのですね。

【塩川】『環境レビュー』で重大な問題の一つが、米軍機が以前から使用していた全国の低空飛行訓練6ルートを初めて公表し、オスプレイによる低空飛行訓練を想定していることです。そのルートは東北、北関東、北信越、中国、四国、九州(21県138市町村)に広がっており、全国にオスプレイ配備反対の声が広がるきっかけとなりました(資料1↓)。

 オスプレイが飛行するのは、低空飛行訓練ルートだけではありません。岩国基地(山口県)やキャンプ富士(静岡県)の訓練も計画されています。さらに防衛省の神風英男大臣政務官は私の質問にたいして、三沢(青森県)、横田(東京都)、厚木(神奈川県)など各基地の使用もありうるとの見方を示しました。日本中どこでもオスプレイの飛行が想定されます。

資料1
「狙われる日本配備 オスプレイの真実」(赤旗政治部「安保・外交」班・新日本出版社刊)より

【山田】いったいなぜオスプレイが日本に配備されるのでしょうか? よく日本を守るために必要だという人もいますが?

【塩川】オスプレイ配備は日本の防衛とはまったく関係がありません。高い機動性をもったオスプレイが地球規模の遠征をするため、すなわちオスプレイの「殴りこみ」能力を高めるために、日本中を訓練場にしようとしているのです。アメリカの覇権的な世界戦略のために危険なオスプレイの訓練を我慢せよ、などというのは、許せるものではありません。

【山田】山岳地帯で低空飛行しレーダーに映らない訓練をすると開きました。

 沖縄戦のドキュメンタリー映画「白旗の少女」を見ました。映画で爆音が聞こえるのですが、その「キーン」という音が、私がいつも聞いている音といっしょでした。私は戦争を経験していませんが、「キーン」という音は戦場の音なのだと実感しました。

群馬で突出、爆音被害

資料2
「しんぶん赤旗」2012年9月21日付より

【塩川】おっしゃるように群馬県は爆音被害が突出しています。なぜそうなるのか。群馬県には3種類の米軍低空飛行訓練エリアがあるのです。

 1つは先ほどの「ブルールート」。先日、ブルールート直下のみなかみ町を調査しました。保育園の先生は「低く飛んで、音もすごい」と子どもたちを案じていました。またオスプレイ配備反対の共産党の申し入れのさいに、渋川市の副市長は「八木沢ダムで米軍機が突っ込むように飛んでくるのを見たことがある。戦争映画を見ているようで本当に怖かった」と語っていました。

 2つ目は群馬県の空を覆う自衛隊訓練・試験空域「エリアH」。米空母艦載機の低空飛行訓練空域となっています。

 また、最近私の調査で判明したのが、東京、神奈川、山梨、埼玉、群馬、栃木、茨城にまたがる横田基地の輸送機C130の有視界訓練空域の存在です。つまり群馬県上空は三重に米軍機が横暴勝手に飛びまわっているエリアなのです(資料2→)。

【山田】私の記録からもGW(ショージ・ワシントン)が横須賀に寄港する1〜5月にかけて訓練飛行が集中していることがわかります。県が中止を求めていたにもかかわらず、県立高校の入試日にも爆音を響かせて低空飛行をしたのですよ。


【塩川】群馬県上空では、低空飛行や空対空戦闘訓練(ドッグファイト)、急降下・急上昇といった激しい戦闘訓練が行われています。先日、みなさんがねぼり強く情報公開を求めて、「米軍機の飛行に係る苦情等受付状況表」を入手することができました。住民から寄せられた苦情について、防衛省は米軍に問い合わせをしたうえで記録として保存していたのです。

 この資料を見ると米軍機の飛行日時、飛行地域、苦情の概要などがわかり、被害の実情が浮き彫りになっています。「戦争がおこったよう」「パイロットの顔が見えるくらい低い」「2分おきに音がして急上昇・急降下を繰り返している」という切実な苦情の内容もいっしょに書き込まれています。記録をつける、苦情を訴えるというみなさんの行動が、被害の実態を知るうえで重要な監視行動になっているのです。

米軍専用空域「横田エリア」

【山田】県や市、防衛局などに電話するのですが、今は苦情が殺到してなかなかつながらなくなっています。なぜオスプレイ配備や低空飛行を拒否できないのでしょうか。

【塩川】パネッタ米国防長官は「オスプレイ配備は米国の安保条約上の権利」といっています。占領軍として駐留した米軍がその後も軍事特権を確保する大もとにあるのが安保条約です。米軍特権の一例が米軍専用空域「横田エリア」の存在です。

 横田エリアは新潟県から南は神奈川・静岡県までの空域で、群馬県も含まれるのですが、この空域を日本の飛行機が通過するためには、米軍横田基地の許可が必要です。すなわち横田エリアの中は日本政府の了解がなくても自由に米軍が飛べる空域なのです。首都圏の上空は米軍に振られているといってもよいでしょう。横田エリア内にある横田・厚木基地でのオスプレイ配備・訓練を拒否できないのも当然です。また、広島県と島根県にまたがる「エリア567」でも、岩国基地所属の米軍機が横暴勝手に飛行しています。これが日米安保あるゆえ≠フ実態なんですね。

一点共同を広げよう

【山田】沖縄の燃えるような怒りを私たちも共有しなければ。

【塩川】オスプレイは全国どこでも飛ぶ可能性があります。「オスプレイはいらない!低空飛行訓練反対!」の一点での共同のたたかいをおこしていきましょう。

【山田】そうですね。私の活動を評価して、記録をつける人をもっともっと増やそうといってくれる人が身近にいます。これも大切な監視活動なんですね。

【塩川】そうですよ。日常的な監視活動が世論を広げる力になるのです。低空飛行ルート下では、自治体ぐるみの監視活動がおこなわれています。広島県は県内市町からの報告をもとに米軍機目撃情報を集計していますし、和歌山県は7月から、低空飛行の目撃情報の呼びかけをおこなっています。自治体による騒音測定器の設置もはじまっています。島根県浜田市は昨年12月に独自に設置したほか、島根県は3市2町の9カ所に騒音測定器を設置しました。

 日本共産党もがんばっています。和歌山県の目撃情報の呼びかけは、党県議の質問がきっかけでした。広島県北広島町では、党支部長提出の請願採択が騒音測定器の設置につながりました。群馬でも党県議の追及に対して、知事が「(目撃情報の呼びかけや騒音測定器設置を)検討したい」と答弁しました。議員や党支部が住民といっしょに要求し行政を動かすうえで大きな役割を果たしています。

【山田】参考になる活動がいっぱいありそうですね。先日、塩川さんが私の家に来てくださったときは、草の根と国会がつながった、と実感しました。共産党の国会議員1人は民主党の100人よりもっとすごい(笑)。

安保をなくそう

【山田】日本共産党は創立から90年も少数派でがんばってきたでしよう。総選挙も近いといわれていますが、共産党が多数派にならないとどうしようもない時期になっていると思います。90年がんばっていっぱいつぼみをつくってきたのだから、次の選挙は3分咲きでもいいから花開かせたいですね。

【塩川】そうですね。こんなに沖縄の人たちが反対しているのに、古い政治の枠組みでは政治は変わらないのです。民主、自民、公明、そして第3極≠ニかいう「維新」でも変わりません。オスプレイ配備の問題の背景には「国民の利益より日米安保」というアメリカいいなりの古い政治があります。ここを変える政治がいまこそ必要なのです。

【山田】そうですね。共産党のみなさんが国会で安保の是非を問う質問をするでしょう? はじめは低空飛行をなくしたいと思っていたけど、今は安保そのものを問いたい。軍事目的って原発と同じ違和感、人類にとって破壊的違和感なんです。地球上の暴力の時代を終わりにさせるためにもなんとしても安保をなくさなければ。普天間基地を撤去させた! というニュースも見たい。安保条約をやめます、と国会で決議があがるその日まで、私は記録し続けます。

【塩川】安保条約を解消すれば米軍基地はなくせるのですからね。もちろんオスプレイも拒否できますし、横田エリアが返還されることで群馬上空の低空飛行訓練もなくせます。古い政治を大もとから変える改革を進める日本共産党の躍進で米軍基地の重圧から国民を解放しようじゃありませんか。

【山田】大賛成です!