「しんぶん赤旗」日曜版2013年5月26日／福島原発現地視察ルポ

「しんぶん赤旗」日曜版2013年5月26日号掲載より

福島原発／現地視察ルポ

重要設備いまだに仮設だらけ／車の荷台に冷却ポンプ／東電コストダウン最優先

　事故後2年2カ月すぎても福島第1原発の重要設備は仮設だらけ――。日本共産党の塩川鉄也衆院議員らの視察（20日）に同行して、同原発の内部に入りました。そこで見た実態は…。＜三浦誠記者＞

1台のトラックの荷台に、原子炉を冷却する常用注水ポンプが三つ設置されています＝2月27日、東電撮影

　全面マスクと白い防護服を身につけ、バスで最初に向かったのは、福島第1原発内の天幕でおおわれた簡素な小屋でした。小屋からは黒いホースが出ています。

　同行した東京電力の職員は説明します。

　「小屋の中に、原子炉を冷却する注水ポンプがあります。トラックの荷台に設置しています」

　「荷台」と聞いて塩川議員も身を乗り出していました。

　原子炉注水ポンプは、炉心溶融（メルトダウン）した核燃料を冷やすために水を送る設備です。注水が止まれば、核燃料は再び温度があがり始めます。いわば事故を収束するための中核施設。それが、いまだにトラックの荷台を利用した仮設設備だというのです。

　東電は事故後、原子炉注水のための常用ポンプ3台と非常用ポンプ3台を臨時に設置。それらはすべてがこの小屋でトラックの荷台に置かれています。

　最初はむき出しの野ざらし状態でした。

　このため注水ポンプは、たびたびトラブルを起こしました。昨年1月には非常用ポンプが凍結して汚染水が漏れました。この事故を受け東電は5カ月前にやっと小屋をつくりましたが、荷台にのせた状態は変わっていません。東電広報部は「本設に切り替える予定はない」といいます。

福島第1原発の免震重要棟で高橋所長（右端）の説明をうける塩川鉄也議員（右から3人目）、吉井英勝前議員（その左）

汚染水保管用として臨時に設置された角型タンクを調査する塩川議員

国基準満たさず

　同原発の高橋毅所長は「注水ポンプは多重化して、手厚く守っている」と説明します。

　しかし――。

　東電の「施設運営計画」によると、設備は仮設のため、強度や耐震性が国の基準を満たしていません。

　一昨年10月の原子力安全・保安院（当時）の会合では、複数の専門家からこんな指摘をされていました。

　「仮設の設備は、本設に比べてどうしても信頼性が落ちる」

　「弱点をきっちり把握して、仮設のものは新しく、より信頼性の高いものに少しずつ変えていくことが重要」

　実際、仮設設備はあちらこちらでトラブルを起こしています。ネズミの侵入による大規模停電事故も仮設の配電盤が原因でした。

汚染水漏れ69回

　塩川議員が東電に提出させた資料によると、放射能汚染水漏れ事故は69回も発生しています。

　視察では、4月に汚染水漏れが問題になったばかりの地下貯水槽も調査しました。この貯水槽も、とりあえず保管するという〝仮設″です。

　漏えいした地下貯水槽のそばに東電は、新たなタンクを設置しました。四角形の角型タンクです。東電は地下貯水槽漏れをうけて緊急に4千トン分の角型タンクを設置する、としています。

　東電職員は「小型なので、トラックで運んですぐに設置できるのが利点」と説明します。

　実はこの角型タンクには、東電が視察団に説明しなかった問題点があります。角型タンクは連結部が多く、漏えいしやすい構造なのです。

　東電は昨年5月の「信頼性向上対策」で、「漏えい対策として、連結部の多い角型タンクを円筒型タンクにかえる」と説明していました。実際、東電は昨年12月末までに角型タンクをすべて円筒型タンクに交換していました。そんな角型タンクを再び設置するほど、汚染水対策は行き当たりばったりです。

　4号機建屋の裏側を通ると、高濃度放射能汚染水に含まれる放射性セシウムを除去するためのセシウム吸着装置（キユリオン）と第2セシウム吸着装置（サリー）が並んでいました。

　保安院（当時）は、これらの装置を「さほど信頼性は高くない」としていました。東電も当初は1年後をめどに本格的な処理装置を導入するとしていましたが、いまだにその計画はありません。

　この付近は東日本大震災による大津波で水浸しました。再び津波がきた場合、セシウム吸着装置が被災し、敷地の汚染が拡大する危険性も指摘されています。

　事故発生から2年以上たちます。本来なら、事故直後に設置された仮設設備を恒久施設に代えるべき時期です。

　塩川議員は「急場しのぎの対応が汚染水漏れなどのトラブルの拡大につながっている。仮設設備のままにしている背景は、東電がコストダウンをしたいからだ」と指摘します。

　「とくに注水ポンプは冷却水循環の要であり、早急に改善することが必要だ。東電まかせにするのではなく、政府が責任をもって事故収束にあたるべきだ」

　視察には吉井英勝前衆院議員、笠井亮衆院議員秘書らも同行しました。