資料集


【前衛・2014年9月号掲載記事】
[インタビュー]傍若無人な米軍機低空飛行をやめさせ、異常な「米軍特権」の撤廃を
●本土における調査から
塩川鉄也(党衆議院議員、党国会議員団オスプレイ配備反対闘争本部事務局長)

日本中が米軍機の訓練エリアにされている

図表1(クリックで拡大)
 この間、いわば日本中が米軍機の訓練エリアであることが、実態調査や防衛省資料などで明らかになってきました。

 米軍の主な航空基地は、三沢(青森)、横田(東京)、厚木(神奈川)、岩国(山口)、嘉手納・普天間(沖縄)の6ヵ所で、この周辺は米軍機による墜落事故・騒音・振動・落下物などの被害が甚大です。しかしこの間の米軍機飛行に関する苦情、被害は、これら基地周辺にとどまりません。防衛省が作成した資料(「米軍機の飛行に係る苦情等受付状況表」、以下「苦情受付状況表」)によると、同省が全国から受けた米軍機の飛行訓練などに対する住民からの苦情は46都道府県(沖縄県を除く)中、35県で記録されています。米軍航空基地がない場所でも多数の苦情が寄せられているのが特徴です。

 苦情件数(07年から今年6月末まで)を一覧にしていると、合計2181件にのぼります(図表1参照)。多い順から、群馬県1432件、鹿児島県113件、島根県104件、大分県95件などとなっています。群馬県が全体の3分の2を占めており、人口100万人の密集地域での低空飛行訓練が行われていることがわかります。「苦情受付状況表」には、住民の苦情がリアルに記載されるとともに、防衛省自身が米軍機飛行の日時や場所を特定しています。結果として住民の苦情が米軍機の監視行動にもなっていることが重要です。詳細なデータは塩川鉄也HPの「資料集」に掲載していますので、ぜひご覧ください。

【「子どもが泣き出す」「午前2時にも騒音」】

 群馬県の被害内容は深刻です。群馬県では県立高校入試日(12年2月)にまで訓練が行われ、自治体には年間1000件(県集計、2012年度)を超える苦情が寄せされています。防衛省「苦情受付状況表」をみると、「深夜の午前2時にもかかわらずジェット機の騒音があり迷惑だ」「墜落してきそうで怖い」「子どもが怯え、祖父母も昔を思い出してしまうといっている。何とかしてほしい」という声が寄せられています。現地調査では、みなかみ町立藤原小中学校(同町藤原)の教諭が、「授業中に耳をつんざく音で飛ぶことがある」と語り、同校の下田洋一校長は、「学区が広く、子どもの家のほとんどがルート下だ。危険な訓練はやめてほしい」と語りました。みなかみ町立第三保育園の主任は、「ゴロゴロゴロと、かみなりのようなすごい音をさせて保育園の上空を飛んでいきます。『怖い』って感じるときもあります」と話しました。

 鳥取県若桜町では、正月に米軍機が夜間飛行し、1月には機体の腹がはっきり見えるほど超低空で飛び去るのが目撃されています。島根県浜田市の「あさひこども園」からの苦情は、「多くの子供は耳をふさぎ、うずくまって泣いている子どももいた。中には精神的に不安定になっている子どももいる。今日は飛行機が飛ばないといいなと言われた」というものです(「苦情受付状況表」)。

 広島県三次市作木町の現地調査では、作木小学校めがけて米軍機が飛んでくるとお聞きしました。地元市議会議員の方が、米軍機飛行の記録写真を撮っています。過疎化の中で懸命なまちおこしに励む住民をあざ笑うかのように米軍が飛来していることに怒りの声をあげていました。

 米軍機の衝撃波によって土蔵が倒壊した岡山県津山市の農家の方にもお会いしました。「ドン! という爆音の後にドサ! と土蔵が崩れた。いまだに米軍が被害を認めていないのが許せない」と訴えていました。

 高知県・徳島県の調査では、高知県本山町立保育所に勤務する女性は、「ごう音に子どもたちがパニックになり、おとなに抱き着く子や外に飛び出す子もいます。まるで耳元に滑走路がある感じがします。危険なオスプレイの飛行は絶対だめ」と話しました。また、徳島県三好市祖谷地区に住む男性は、「山の上から急降下したり、2機が追いかけるように飛ぶこともある」と証言。祖谷地区で民宿を経営する男性も「裏の山から飛び出てきて、向こうの山に突き当たるようにカーブする」と語りました。

【住民や自治体からの声を過小に集計】

 防衛省「苦情受付状況表」は、住民や自治体から防衛省の出先機関(地方防衛局、地方防衛事務所、自衛隊駐屯地・基地など)に寄せられた米軍機飛行の苦情被害について、防衛省が米軍に問い合わせをしたうえで、米軍機と特定した事例を集計したものです。

 この情報について「私の地元でも米軍機が飛んでいるのに、この表には反映されていない」という意見をいただいたことがありますが、この表は、米軍航空基地周辺の苦情は集計の対象外であることと、沖縄県が除かれています。さらに集計が過少にされていました。

 鳥取県の事例ですが、過去7年間(07年4月〜13年12月)で県は122件の情報を寄せていたのに、防衛省の件数はゼロでした。「ブラウンルート」にあたる同県日南町や若桜町では町役場から防衛省に報告されていましたが、その扱いが「情報提供」とされ、「苦情受付状況表」に記載されていませんでした。

 なぜこんなことになるのかと、私は2月26日の予算委員会第三分科会で取り上げました。

 防衛省によると、米国に対する「苦情」と防衛省に対する「情報提供」に分けたうえで、「苦情」だけをアメリカ側に通知し、米軍機による飛行と回答を得られたものだけを「苦情」として集計している、ということでした。鳥取県若桜町の中尾理明党議員が町議会でこの事実を町長に伝えたところ、「すべてが米軍に伝わっていないことを知り、誠に遺憾に思っております。情報は元々迷惑との住民の声であり、全て苦情です」(小林昌司町長)と答弁しました。小林町長は県町村会副会長として会合で提起し、国への訓練中止要請を行い、県と関係町一体で取り組みたいとのべています。

【増大する空の危険性】

 災害・救急対応ヘリの運用が拡大し、米軍機の低空飛行訓練による空中衝突の危険性が増大しています。

 ドクターヘリは、36道府県で43機(2014年4月1日現在)運用されています。年々運用が拡大し、2001年度は629件、2010年度9652件、2013年度2万750件で、この3年間で2倍になっています。

 防災ヘリの運用も拡大しています。2005年度5355件、2012年度6393件となっています。高知県本山町での防災訓練(2011年11月29日)で、あわやという事態が起きました。本山町立病院で、県の防災ヘリを活用した入院患者の避難訓練を実施したさい、防災ヘリが上がったり下がったりしていました。その直後に、岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機が3機も低空でこの病院の上空を通過したということです。

 中山間地での防災ヘリやドクターヘリは住民の命を守るために不可欠です。低空飛行訓練は危険であり、絶対許されるものではありません。

 スカイスポーツの普及が進み、空中衝突の危険性もあります。日本グライダークラブ(群馬県)との懇談で、「横田と航空局とのルールの一本化をしてほしい。横田アドバイザリーは英語なので、横田と連絡をとらずに飛ぶ人もいる。横田は日本語の管制官もいるようだが、絶対日本語は使わない。米軍には日本の航空法が適用されない。植民地みたいだ」と意見や要望が出されました。

 兵庫県朝来市さのう高原は、パラグライダーのメッカです。低空飛行訓練を目撃した方は、「ドカン! という衝撃波がすごかった。パラグライダーエリアに米軍機が飛ぶのは怖い。人が暮らしているところで飛ぶのはやめてほしい」と話されていました。

 スカイスポーツではありませんが、「新潟県イヌワシ保全協会」から、イヌワシの生育環境に悪影響をもたらす米軍機低空飛行への懸念が寄せられています。

明らかになった低空飛行訓練ルートの特徴

↓図表2(クリックで拡大)
 
↓図表3(クリックで拡大)
 
↓図表4(クリックで拡大)
 日本産党は、全国で起こる米軍機低空飛行訓練による被害を受け、その飛行ルートの存在を追及してきました。

 2012年6月、オスプレイ配備・訓練にあたって、米軍機が「環境レビュー」のなかで、「ナビゲーションルート(航法経路)」として、公式に認めた「低空飛行訓練ルート」があります(ブラウンは未記載)。米海軍と海兵隊の訓練ルートであり、ピンク、グリーン、ブルー、ブラウン、オレンジ、イエロー、パープルの7ルート、全国21件(沖縄県を含む)に及びます。

 さらに地方自治体、住民や市民団体からの問い合わせ、報道機関の取材、米軍機事故調査報告書などによって、この間、米軍機訓練飛行ルート(エリア)と、その特徴が明らかになってきました。(図表2参照)

【自衛隊訓練空域を米軍が恒常的に使用】

 この間、明らかになったことは、全国に広がる自衛隊訓練空域を米軍機が自由勝手に使用している実態です。日本共産党の井上哲士参議院議員の追及によって昨年(13年)、防衛省が資料を提出し、初めて全空域での訓練実態が示されました。(図表3・4参照)

 資料(「自衛隊訓練空域を米軍が使用するにあたっての事前調整実績」)によると、2013年3月から今年2月までの期間で、自衛隊の訓練空域ごとの米軍機の使用日数をみると、北海道から青森・秋田沖に広がる「エリアC」では218日間にものぼります。中国山地上空の「エリアQ」「エリア7」はいずれも245日間、群馬県上空の「エリアH」「エリア3」も92、93日間と90日を超えています。(図表2・4を参照)

 私の質問に対して、佐藤正久防衛大臣政務官は「エリアQと7、エリアHと3では、自衛隊戦闘機は訓練していない」と答弁しました(2013年4月15日、衆院予算委員会分科会)。事実上の米軍戦闘機の専用空域になっています。

 中国山地上空の「エリアQ・7」と群馬県上空の「エリアH・3」は、被害が集中する空域です。なぜこんなことが起こるのか。共通しているのは、空域の「三層構造」です。米軍が航空管制を行う進入管制空域内に、自衛隊の高高度訓練空域(高度約3000〜7000b)と低高度訓練空域(地表面〜3000b)が上下に重なって設定されています。この部分に米軍機飛行が集中しているのです。横田進入管制空域内の「エリアH・3」は、群馬県と長野県佐久地方に当たります。主に厚木基地の米空母艦載機が使用しています。もう一つは、岩国進入管制空域内の「エリアQ・7(米軍略称「エリア567」)。島根県西部と広島県北西部になり、主に岩国基地の米海兵隊機が使用しています。

 空の交通整理の権限である進入管制空域を米軍が握ることによって、民間航空路線の設定を拒むことができます。その中に自衛隊訓練空域を設定することによって有視界飛行(VFR)の航空機の通過制限を自衛隊に行わせることができます。これにより、米軍機が排他的に空域を使用できることになるのです。

【九州に謎の訓練飛行ルートの可能性】

 九州にイエロールートとは異なる、謎の低空飛行ルートの存在が明らかになってきました。

 「苦情受付状況表」をみると、鹿児島県と大分県の苦情件数が多く、鹿児島県薩摩半島および大分県臼杵市・豊後大野市・竹田市にかけて、米軍プロペラ機の目撃事例が多数ありました。

 昨年12月に九州を現地調査しました。鹿児島県薩摩川内市では、「爆発するような音がした」「牛が驚いて落ち着かなくなる」「異常があるのかと思うぐらい低い高度で飛んでいく」といった声が寄せされました。

 鹿児島県日置市では宮路高光市長と懇談し、市長は「夕方、日が落ちて、6時から8時ごろ、南から北方向に飛んでいく。町の中心部を飛行するので、眠れなかったという人もいた」と語っていました。

 大分県豊後大野市の目撃事例の多くは、夏は夜8時、冬は夜6時ごろといった日暮れの時間に、大型プロペラ機が1機で低空を飛んでいくというものです。市民から「墜落するかと思った」「戦争中を思い出して怖かった。体が震えた」といった声が出されました。頻繁に飛行するという清川地区の支所長は、「手を伸ばせば届くようなところを飛んでいる。毎週火曜日か水曜日の夜の決まった時間に、定期便のように飛ぶ。ちょうど昨日も夜6時10分に飛んだ。ほぼ一方通行で、北東から南西方向に向かって飛んでいく」と説明していました。薩摩半島では、米空軍嘉手納基地のMC130特殊作戦機の低空飛行が目撃され、大分県の場合も輸送機が目撃されています。

 ズムワルト米国大使館主席行使(当時)が、鹿児島県内で目撃される米軍機の低空飛行に関して、「沖縄県民の負担軽減のために進められている米軍訓練の本土移転の一つ」「空軍と海兵隊が九州のいろいろな場所で訓練している」(「南日本新聞」2009年12月15日付)と発言しました。「沖縄の負担軽減」を口実にして、沖縄にある米空軍嘉手納基地のMC130特殊作戦機、米海兵隊普天間基地のKC130空中給油機が、鹿児島や大分などの九州上空で、新たな飛行訓練を開始した可能性があります。

【米空軍横田基地C130編隊有視界飛行訓練エリア】

 米軍は、首都圏上空に「C130編隊有視界飛行訓練エリア」設定し、恒常的な訓練飛行をしています。

 米軍横田基地所属のC130戦術輸送機による編隊飛行訓練のエリアが首都圏一帯に広がっています。米軍が民間航空機のパイロットやオーナー、航空関係者などを集めて、首都圏の有視界飛行における安全確保を目的に開催した会議(米軍横田基地主催「関東航空機空中衝突防止会議」〔MACA、通称「横田カンファレンス」〕で、注意を呼びかけたことがきっかけで明らかになったものです。これまで4回会議が開催されています(10年1月、10年3月、11年9月、13年4月)。

 会議資料から、1000フィート(300メートル)以下の低高度飛行訓練、編隊飛行訓練(2〜6機)〔物資投下訓練を含む〕、急降下訓練、横田基地のアサルトランディングゾーン(強襲着陸訓練用着陸帯)などで訓練が行われていることがわかります。

 雑誌「Jウイング」(06年2月号)では、「世界最大の輸送力 米空軍の輸送機」で、「横田基地 C130E同乗レポート ジャンパー効果、物資投下、アサルトランディングを体験する!」という記事が掲載されています。アサルトランディングゾーンへの着陸訓練、物資投下あるいは人員降下が首都圏の上空で行われていることが紹介されています。

 この間訓練エリア内の関東平野(北・西)ルート、富士ルート(南ルート)の存在も明らかになっています。

 4年ほど前から首都の上空で、「ラージ・フォーメーション・トレーニング」(大編隊訓練)といった大規模軍事訓練が行われています。C130輸送機を使ったパラシュート降下訓練や物資投下訓練を含む実践的で大規模なものです。当初は「サムライサージ」(2010年11月から2012年ごろまで)と名付けられ、乗員と地上整備要員の連携、能力強化をはかるものです。物資投下やグリーンベレーなど外来部隊の訓練も実施し、より大規模な訓練になっています。

 北東北・北海道では、三沢基地の米軍機が訓練する「北方ルート」の存在が明らかになっています。2010年6月の秋田県大館市の比内地鶏大量死も、「北方ルート」を飛行したF16戦闘機によるものと推定されています。

オスプレイ訓練の拡大の動き

 米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイは、米海兵隊が他国への侵攻作戦を強化するために開発した輸送機で、海兵隊の「侵略力」を強化するために配備されたものです。「日本防衛」や領土問題とは無縁のものです。

 オスプレイは、墜落事故を繰り返す欠陥機であり、元川崎重工業ヘリコプタ設計部長は、「V−22はオートローテーション降下には入れるが、沈下速度が大きすぎて安全な着陸ができない」(「PIROT 2013APR」)と指摘しています。

 沖縄では、世界で最も危険な普天間基地に、墜落事故を繰り返す危険なオスプレイの配備・訓練が強行されました。人口密集地や学校、病院の上空を飛行するなど日米合意違反が繰り返されています。中部の訓練場、北部訓練場、伊江島などの訓練でも、住民被害が拡大しています。

 その危険なオスプレイによる訓練が、本土においても、実施、拡大されようとしています。米軍「環境レビュー」において、岩国基地とキャンプ富士での米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイの訓練計画が記載されています。岩国基地には2013年2月以降、頻繁に飛来し、オレンジルートをはじめとして訓練飛行を実施しています。7月中下旬には、岩国基地を経由して厚木基地、キャンプ富士、横田基地、そして北海道丘珠駐屯地(札幌市)に飛来しました。東日本での本格的な訓練実施を始めようとしています。

【本土におけるオスプレイ訓練の実施、拡大計画】

 日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同発表(2013年10月3日)で、「オスプレイの沖縄における駐留及び訓練の時間を削減する、日本本土及び地域における様々な運用への参加」が明記されました。「低空飛行訓練」「空中給油訓練」「後方支援訓練」に加えて、「人道支援・災害救援訓練」や「日米共同訓練、多国間共同訓練」で、米海兵隊オスプレイの活用を決定しました。

 安倍首相は、「オスプレイ訓練の約半分を沖縄県外で行えるよう、本土に所在する複数の演習場・飛行場で訓練を行うこととしたい」(昨年12月25日、沖縄県知事との会談)と発言しました。

 日米両政府は、沖縄の「負担軽減」と言いながら、実際には日本全域にオスプレイ訓練の拡大をねらっています。

 国内初となるオスプレイ参加の日米共同訓練(13年10月16日、あいば野演習場、2月の相馬原・関山は中止)が多くの反対の声や自治体の要望を無視して実施され、オスプレイが飛来しました。今年度も日米共同訓練「フォレスト・ライト」(担任部隊は西部方面隊と東北方面隊)でオスプレイ参加が計画されています。

 日米共同統合防災訓練(高知県13年10月25日、今年2月7日、どちらも天候上の理由で中止)が計画され、オスプレイが、南海トラフ地震発生想定で患者や人員、物資の輸送をすることを口実にして、四国を縦断飛行する計画でした。国が主管する日米共同の実働防災訓練としては国内で初めて計画されたものでした。今年10月には、和歌山県の防災訓練にオスプレイが参加する予定です。

 昨年12月には、航空自衛隊の新田原基地航空祭でオスプレイが展示されました。5月に岩国基地親善ショーでも展示され、7月20日北海道丘珠駐屯地でオスプレイが展示されました。

 防衛省「沖縄基地負担軽減推進委員会」は、オスプレイの沖縄県外での訓練等の推進を図るとして、格納庫や給油施設などの「訓練基盤・拠点」を本土の自衛隊の演習場等に整備する予定です。

 群馬県榛東村会議が6月19日、オスプレイの日米共同訓練への参加を受け入れ、自衛隊へのオスプレイ配備に理解を示す「オスプレイ訓練・配備容認決議」を可決しました。日本共産党群馬県委員会と北毛地区委員会は同日、高橋正議長に対し決議に抗議し、撤回を求める要請書を手渡しましたが、村長が防衛大臣に要請。訓練の受け入れ表明は初めてです。このように、日本中がオスプレイの訓練場になりかねない事態になっています。オスプレイの配備、訓練は、いっそうの事故の危険性を高めています。

 7月22日、政府は佐賀県に対して、自衛隊が導入するオスプレイ17機を佐賀空港に配備したいと要請。さらに米海兵隊オスプレイの佐賀空港利用も働きかけました。市民団体や日本共産党は、ただちに計画撤回の抗議行動に取り組んでいます。

 そもそも本土への訓練移転は沖縄の負担軽減にはなりません。「低空飛行訓練」や「空中給油訓練」など、沖縄ではできない訓練を本土で行おうというものです。オスプレイが本土で訓練すれば、その隙間を狙って他の米軍機が沖縄で訓練するだけです。沖縄にも本土にもオスプレイはいりません。

「米軍特権」を許していいのか

 米軍「環境レビュー」で、「戦闘任務に対処可能な体制を確実にするため」に、CH46E、MV22オスプレイの乗員に要求される訓練活動や「訓練活動の概要」がしめされています。それに基づいて恒常的に飛行訓練が繰り返されています。このように米軍基地所属の航空機パイロットが所要の訓練を実施するために、訓練ルート(エリア)を必要としているのです。

【「米軍特権」の異常さ】

 米軍の横暴勝手な飛行訓練の背景には、異常な「米軍特権」が存在しています。

 まず航空法からの適用除外です。日本の航空法は、最低安全高度以下での飛行、編隊飛行、物件の投下などは原則禁止し、国土交通大臣の許可がなければできません。運用上必要のない低空飛行や急降下などの粗暴操縦は禁止しています。自衛隊機ならば、航空法に基づき国交省に許可申請し、事前通知が必要です。

 しかし在日米軍は、日米安保条約と地位協定に基づく航空法特例法により、適用除外となっています。在日米軍はどんな危険な飛行をしても、日本の国内法に基づく規制も受けなければ、届ける義務もないのです。こんな「米軍特権」をいつまで許しておくつもりなのでしょうか。

 また、米軍による航空管制(進入管制)が、今なお続く異常さです。

 民間機を含めて航空機の出入りを米軍が管理する空域が、岩国上空では、西中国地方から瀬戸内海、四国にかけて設定されています。松山空港(愛媛県)の管制は、いまだ米軍が行っています。首都圏上空では、新潟県から伊豆半島まで広範囲に広がっています。米軍横田空域は、首都圏の空の過密化を招き、航空機の安全確保にも支障をきたしています。

 そもそも首都に外国軍事基地があること自体が異常ですし、このような戦後続く「米軍特権」こそ撤廃すべきです。

【米国、欧州では厳しい規制措置】

 米国ではきびしい規制措置が取られています。ルート設定にあたっては、まず軍自身の環境評価を行います。歴史的建造物への影響から野生生物の影響まで調査します。ルートの設定には、軍が連邦航空局に申請、審査を受けます。高度、位置、訓練時間が規制されます。連邦航空局による許可後、国防総省の「空域計画地図」に記載、公表することで使用可能になります。

 欧州では、訓練ルートや空域、高度が米国の一存ではなく、駐留国の政府の権限によってきめられています。

 そもそも、アメリカ本国では人口密集地上空の訓練など行っていません。日本での米軍の訓練はあまりにも異常です。こういう異常をただし、少なくともアメリカ本国並みの基準でやることを求めるべきです。ただちに実現されるべき緊急課題となっています。

地方自治体などの動き、住民運動の大きな広がり
――いっせい地方選での重要な争点に


 危険なオスプレイの配備・訓練、米軍機低空飛行訓練に反対する地方自治体の動き、住民運動が大きく広がっています。

【米軍機訓練飛行反対の自治体ぐるみの運動が前進】

 オスプレイ配備・訓練中止を求める意見書の採択が214議会(2013年10月末時点)に広がっています。

 米軍機飛行の監視行動が広がっています。47都道府県中、23県で住民からの情報収集など米軍機飛行の監視行動を実施しています(2012年4月時点)。

 島根県浜田市は「米軍機騒音マニュアル」を作成し、市職員26人を「飛行騒音状況収集員」に任命し、米軍機が飛来すると、写真、ビデオの記録に努めるようにしています。島根県内の浜田市、益田市、江津市、邑南町、川本町の5首長は「米軍機騒音等対策協議会」を設立し、共同で運動に取り組むことを確認しています。

 また、自治体による騒音測定器の設置が進んでいます。客観的なデータで被害の実態を国と米軍に告発しようという動きです。

図表5(クリックで拡大)
 2011年12月に島根県浜田市が設置して以来、2年半の間に中国・四国地方で27カ所設置(予定も含む)されました(図表5)。群馬県でも2台設置しました。

 中国四国地方の騒音測定器配置図をみてみますと、その広がりがよくわかります。岩国基地周辺では、広島県廿日市市2台(阿品・佐伯町)、江田島市1台です。「中国山地」では、島根県9台(浜田市内2、益田市内2、江津市内2、邑南町内2、川本町内1)、浜田市1台、邑南町2台。広島県北広島町4台、廿日市市1台(吉和)。

 「オレンジルート」では、高知県1台(本山町内1。今年度予算で大川村・土佐町・大豊町・香美市物部支所内の4カ所に設置予定)。徳島県2台(海陽町内1、牟岐町内1)。「群馬県域」では、群馬県2台(前橋市内1、渋川市内1)です。

 住民運動、自治体の要望、国会質問を受けて、防衛省は島根県浜田市と広島県北広島町に騒音測定器を設置しました。岩国基地周辺でも廿日市市2台(阿品台・佐伯町)、江田島市1台を設置。群馬県域については「十分に検討させていただきたい」(5月20日、総務委員会)と前向きの検討を答弁しました。

【自治体を動かした平和運動、住民運動の広がり】

 「キャンプ富士」(静岡県)の地元や、「ブラウンルート」の兵庫県但馬地方、鳥取県若桜町などでオスプレイなど米軍機飛行に反対する「住民の会」が発足しています。米軍機監視のネットワークづくりがすすみ、北関東(埼玉・群馬・栃木)において横田C130監視行動が行われています。たとえば2013年8月19日のC130編隊飛行訓練では、この3県で31回の目撃事例が報告されました。点から線、そして面への監視行動に発展しています。また、フェイスブックなどのSNSを活用した情報や活動の交流が活発に行われています。オスプレイの飛来情報、米軍機低空飛行の情報などが発信され、米軍機監視行動のネットワークが全国的に広がっています。目撃証言や証拠写真をもとに、低空飛行の実態に事実で迫り、危険な低空飛行をやめさせようという草の根の取り組みである「低空飛行解析センター」、横田基地から飛び立つC130などを監視する「低空飛行・首都圏監視隊」、オレンジルート(和歌山―徳島―高知)を監視する「オレンジ監視隊」など、さまざまな草の根ネットワークが発展しています。

【党地方組織、地方議員の連携した取り組み】

 日本共産党の地方組織と地方議員のみなさんの連携した取り組みも成果をあげています。

 この間の取り組みでは、日本共産党の市谷知子鳥取県議の指摘により、鳥取県が防衛省あての通知書類の書式を変更しました(今年2月)。これにより、低空飛行訓練の情報を「苦情」として扱うことになり、防衛省の苦情受付状況表に反映させることができました。

 「オレンジルート」下では、和歌山県から徳島県に米軍機が飛行するときに、和歌山側の山本喜平・日高川町議から徳島川の藤元雅文・牟岐町議に連絡をしています。藤本町議は写真で記録するとともに、隣接する海陽町や那賀町などで監視行動に取り組んでいる住民の方にも連絡をしているそうです。このような取り組みが徳島県の騒音測定器の設置につながりました。藤元町議は「騒音測定器の設置は一歩前進だ。住民の願いである訓練中止を求め、取り組みを強めたい」と話していました。

 広島県北広島町では、党支部長提出の請願採択が騒音測定器の設置につながりました。もっとも苦情が多い群馬県では、党県議団が訓練中止を強く求めるとともに、被害の実態を把握するためにも県が騒音測定器を設置せよと繰り返し要求し、前橋市と渋川市に設置させました。訓練そのものはなくなりませんが、県立高校の入試日の飛行は行われなくなり、飛行高度が高くなるなどの変化も生まれています。

 日本共産党は「普天間基地の無条件撤去、オスプレイ配備の撤回、無法な低空飛行訓練の中止、海兵隊の撤退、空母打撃群の母港返上、日米地位協定の抜本改定など、異常な『米軍基地国家』の現状をただすたたかいに力を注ぐ」(第26回党大会決議)ことをかかげ、日米安保条約を廃棄する国民的多数派を作り上げていくことを強調しています。

 憲法9条改悪を許さず、集団的自衛権行使容認反対のたたかいの先頭に立ち、いっせい地方選挙勝利のために全力を尽くしたいと思います。

(しおかわ・てつや)


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