「しんぶん赤旗」首都圏版(2009年1月7日付け)に掲載の「新春響き合い対談――比例候補とともに」を転載します。


ムダ遣いストップへ/脱ダムの流れ大きく

 水問題に詳しく科学的データを駆使して八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)建設反対運動に尽力されてきた嶋津暉之さんを招いて、塩川てつや衆院議員(衆院比例北関東ブロック候補)と対談しました。

【塩川】 無駄な大型開発見直せの声は大きな流れになっています。
 昨年、川辺川ダムは熊本県知事が白紙撤回を求め、関西の淀川水系の流域委員会も、淀川水系ダム(大戸川ダムなど)を河川整備計画に位置づけることは適切でないと意見書をまとめました。

【嶋津】 地元関係知事がダムはいらないといった意味は大きい。「脱ダムの流れ」が進むことになります。民意が政治・行政を動かしていることを高く評価すべきだと思います。



流域住民が主人公

【塩川】 昨年10月、日本共産党国会議員団は国交省に申し入れました。柱は二つ。一つは、「ダム建設ありき」を改め、「流域住民が主人公」の河川行政に転換する。二つめは、建設中止をしたさいの現地の生活再建と地域振興です。

【嶋津】 流域住民が最終的に決める、主人公は住民です。河川法改正(1997年)の意図は、流域住民が主人公、情報公開徹底だったはずが、ゆり戻しがあってダム建設推進になりました。申し入れの二点は大変重要です。

【塩川】 私は八ツ場ダム反対運動に10年近く取り組んできました。運動の広がりを感じます。

【嶋津】 下流から八ツ場ダム見直しの声があがってきました。2003年度のダム基本計画の変更で、事業費が2倍以上の4600億円に跳ね上がり、都県の負担も増えるということで反対運動が一気に広がったのです。2004年に6都県は八ツ場ダム計画に参加するなと住民訴訟が始まり、いま裁判の最終段階です。

 やってみるものですね(笑い)。いろんな方が参加してくださり、連鎖反応のように広がっています。

【塩川】 利水、治水面でのムダと同時に、災害を誘発し、環境を破壊する八ツ場ダムそのものの問題点が指摘されてきました。

【嶋津】 首都圏の水道用水は10年以上前から減少の一途をたどり、いまは水余りの時代ですから、利水面での必要性はまったくなくなりました。

 利根川の洪水調節でも、八ツ場ダムが役に立つというのは机上の計算でしかありません。河川改修をきちんとやれば大きな洪水にも対応できます。

 さらに、いろんな災いをもたらすダムだということです。ダムサイトの岩盤が非常に脆弱(ぜいじゃく)で、水漏れを起こし、ダムが崩れる可能性もあります。

 もう一つ、貯水池周辺の地質が非常に弱いことです。ダム湖の水位は上下するので、地すべりを誘発することが予想されます。

 すばらしい吾妻渓谷が台無しになります。上流部はなくなり、残った渓谷も洪水をダムで貯留するようになると、洪水が岩の表面を洗う機会がなくなり、岩肌にコケや草木が生え、見る影もなくなってしまいます。

治水効果期待薄

【塩川】 私も国会で治水問題を追及し、戦後まもないころのカスリン台風のような雨の降り方のときには八ツ場ダムの治水効果は期待できないと国交省自身が認めました。

 群馬県の統計資料に基づき、森林蓄積量の比較を出したことがあります。戦後直後と現在を比較すると、森林蓄積量が五倍以上になり、それだけ森林の保水力が拡大していることが明らかなのに、そういう調査分析もしていないという国交省答弁でした。

【嶋津】 あの資料は有効に使わせていただきました。(笑い)

【塩川】 09年度予算案をみると、八ツ場ダムについては225億円。初めて本体工事費を予算化しました。川辺川、大戸川ダムの本体工事費関連は計上していません。八ツ場ダム固執の姿勢は際立っています。

【嶋津】 反対運動が盛り上がったので既成事実をつくろうとしているのでしょうね。

税の使い方変えよ

【塩川】 八ツ場ダム建設中止を求める運動の全国的意義をどう受け止めておられますか。

【嶋津】 全国的には、工事中や計画中のダムが小さいものを含めて150余あります。八ツ場ダムを止めることができれば、住民不在の河川行政を変える大きな転換点になると思います。

【塩川】 税金の使い方を国民のくらし優先に切り替えていくうえでも、ムダな大型公共事業ストップの運動は非常に積極的な意味が出てきますね。

【嶋津】 そうですね。ゼネコンを潤すような大型ダム建設でなく、地元の建設会社が仕事できるような河川改修もあるわけですから、税金をそちらに振り向けていく。八ツ場ダムを止めることはいまの行政のあり方を変える象徴です。

【塩川】 税金の使い方のゆがみの背景にある政官財癒着を断ち切るためにも、企業献金をもらわない、天下り禁止を一貫して訴えている日本共産党ならではの役割を発揮すべきときだと思います。ご一緒に頑張りましょう。

【嶋津】 政官財のトライアングルの構造を壊していくために、共産党に頑張っていただきたいと思います。



嶋津さんプロフィール

嶋津暉之(しまづ・てるゆき) 1943年10月生まれ。東京都環境科学研究所勤務時代から各地の水問題を解析。現在「水源開発問題全国連絡会」共同代表