プール事故に係る安全対策強化に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

平成 18年 12月12日
提出者 塩川 鉄也

衆議院議長 河野 洋平 殿


 2006年7月31日、埼玉県ふじみ野市の市営プールで、小学生の女児が流水プールの吸水口に吸い込まれ死亡するという痛ましい事故が発生した。梅雨明けの夏休みで人出も多かった時期でのプール事故であり、利用者、国民に大きな衝撃を与えるものだった。
 その後の調査で、排水口のステンレス製の格子状のフタがはずれ、これをボルトでなく、針金で応急処置をしていたことや、プールの管理業務を委託業者任せにし、その委託業者が別業者に管理運営の丸投げをしていたという事態も明らかになり、プール施設・設備の構造基準や適正な管理運営基準を求める声が上がっている。地方自治体として、独自の安全対策を具体化することが必要である。同時に、政府としての取り組みの強化が求められている。
 事故が起こるたび、政府、自治体、事業者は責任回避に終始し、責任の所在が明確にならないまま、担当者が書類送検されてうやむやになって終わる場合が多い。今回の事故を機に、特に政府は、自らの責任について、明確にすべきである。
 政府は、「プールにおける事故対策に関する関係省庁連絡会議」をつくり、「プールの安全標準指針(仮称)」の作成作業をすすめ、この12月を目途にとりまとめ、プール設置管理者に通知するとしているが、現時点でもその具体的な内容は明らかになっていない。
 プール事故をなくすための抜本的な安全対策を政府に求める立場から、次の事項について質問する。

一、「プールの安全標準指針(仮称)」の概要について
(1)2006年8月30日の「プールにおける事故対策に関する関係省庁連絡会議」申し合わせに基づく「プールの安全標準指針(仮称)」の基本的性格、適用範囲、主な内容などを明らかにされたい。
(2)「プールの安全標準指針」作成の際には、広く関係者、国民の意見を反映させるため、パブリックコメントを行うべきではないか。

二、プールの構造上の安全性について
(1)ふじみ野市の市営プールの排(環)水口の安全防護柵は二重構造となっていなかった。二重構造となっていれば重大事故に至らなかった可能性が高い。文部科学省と厚生労働省の指針では、堅固な格子鉄ブタや金網の固定化とともに、吸い込み防止金具の設置という二重構造を要求しているが、国土交通省の指針ではフタの固定を求めているだけである。二重構造となるよう基準を統一すべきではないか。
(2)「流水プール」や「造波プール」のように、動力によって水流がつくられるプールの場合、思わぬ事故が起こりやすい。緊急停止ボタンの設置など「流水プール」「造波プール」に対する安全基準が必要ではないか。
(3)政府の実施した実態調査でも、施設関係で一割のプールに不備が見つかった。しかし、関係省庁会議の「申し合わせ」では「プールの安全標準指針」について、設置管理者に対する「技術的助言」にとどめている。
 これらの構造基準について、法制度上の基準を作るべきではないか。
(4)「流水プール」について、建築基準法で遊戯施設(ジェットコースターや回転木馬など)に構造基準が示されているのに準じて、構造基準の策定を義務付けるべきではないか。
(5)ウオータースライダー(高さ4メートル以下の場合も含む)について、安全基準を定めるべきではないか。

三、管理運営上の安全性について
 プール監視員の資格を定めるべきである。日本赤十字社の水上安全法救助員、日本ライフセービング協会のライフセーバー資格、日本体育施設協会の水泳指導管理士、日本水泳連盟水泳指導員など、なんらかの資格をプール監視員に要求すべきではないか。

右、質問する。