<第168回国会 2007年10月18日 総務委員会 第2号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 人事院勧告について、最初に人事院総裁に伺います。
 今回の人事院勧告は初任給中心に八年ぶりに俸給表が改善をされました。それでも初任給の官民較差は残っている。高校卒、民間が十五万六千四百七十二円に対し、公務の方は3種で十四万百円。民間の大卒十九万五千四十八円に対し、2種が十七万二千二百円、1種が十八万一千二百円。高卒で一万六千円、大卒で二万円前後の較差があるわけで、この改定によっても民間との初任給の較差は依然として解消していないわけですけれども、そういうことで較差が解消していないということを確認したいんですが、いかがですか。

○谷政府特別補佐人 御指摘のとおりでございます。

○塩川委員 民間において初任給が顕著な伸びがある。今回の改定を行ってもまだ大きな差がある。そういったときに、なぜ今回の改定において若年層の俸給水準を大きく引き上げようとしないのか、その理由をお聞かせください。

○谷政府特別補佐人 若年層の俸給を大幅に引き上げますと、俸給表全体で逆転現象を防ぐために相当の年齢層のところまで俸給表の調整を行わなければならなくなるわけでございます。
 一方、現在行っております給与構造改革におきましては、中高年齢層につきましては、全体の俸給水準を平均四・八%引き下げる中で七%程度の引き下げを行いまして、給与カーブのフラット化を進めている最中でございます。もちろん、このところに対しましては現給保障という経過措置を講じておりますので、実質的にはそちらにかなりの原資を食っているわけでございますけれども、そういうことの中でこの給与構造改革全体をできるだけ早く円滑に完了させていきたいということも考えまして、限りある原資の中でそういう判断をしたところでございます。

○塩川委員 いや、官民較差がある、それをどう充てるかというのは内部で調整するわけですけれども、しかし、初任給の差がまだまだ大きくあるということについて改善をすべきときに、やはり公務のカーブというのは公務なりのやり方があるわけですから、そういう点では初任給部分の改善についてもう少し工夫した形でやるということも当然できるんじゃないでしょうか。それなのに、今回のように地域手当に四割強も回すというのはちょっと筋がよくないんじゃないですか。
 本来は、大きな差がある、官民較差のある初任給の引き上げという形で対応すべきところなのに、何で地域手当に四割強も回すのか、その理由が非常に理解できないんですけれども、その点、いかがですか。

○谷政府特別補佐人 初任給中心に二千円のアップを大卒の場合しているわけでございますけれども、結局、そこだけを改定いたしますとその次の号俸との間に逆転を生ずるわけでございまして、そういったことを防ぐということで、今回は二十代のところはほぼ同額を引き上げていかざるを得ない。さらに、それ以上の年齢層についても逆転を防ぐためのいわばなだらかな改定を行わざるを得ないわけでございまして、これ以上に引き上げればさらにそういった調整が拡大することになるわけでございます。
 他方、この給与構造改革におきましては、地域間配分の見直しというのは非常に重要な課題でございまして、本来は、給与の引き下げを四・八%行いましたときに手当についても直ちに実施することが望ましいわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、現給保障がございますので、原資をすべて使い切るわけにはまいりません。したがって、二十二年度までの間に段階的にこの手当の改善を行っていくという選択をしたわけでございまして、今回は、総合的に考えまして、この手当につきましてもやはり円滑に実現を図っていきたいということの兼ね合いの中で総合的な判断をいたしました。

○塩川委員 総合的な判断ということですけれども、較差分は本来俸給の改定に充てられるべきで、過去のをずっと見ましても、その較差分については大半が俸給の改定に充てられてきているわけで、諸手当はごく一部だったわけですから、今回のようなやり方は極めて異例であるわけです。
 その上で、先ほど給与構造改革の話がありましたが、二〇〇五年の人事院の給与勧告報告の中では、「今般の給与構造の改革は、俸給表の水準を平均四・八%引き下げる一方で、その引下げ分を原資として、地域手当等の新設等を行おうとするものである。」つまり、地域手当の原資というのは給与構造見直しによるものに基づくとしているわけなのに、今回、本年四月にさかのぼって実施をされる地域手当の〇・五%引き上げの原資というのは給与改定分の官民較差を原資として実施されるわけで、いわば〇五年報告と違うことが行われているということだと思います。
 人事院は、配分については組合側の意見も十分聞きながら決めていくと述べていたそうですが、この点について、地域手当の扱いについて労使間で十分な協議が行われたんでしょうか。

○出合政府参考人 お答えいたします。
 本年の配分に当たりまして、職員団体とは数度にわたって議論をさせていただいております。その中で、先ほど出ました初任給の問題であるとか扶養手当の問題、さらには地域手当の問題、こういう問題についても議論の上で、最終的に人事院として判断させていただいたものということでございます。

○塩川委員 協議の最終段階で地域手当にも一部使わせてもらうという話があったそうですけれども、較差分の四割強を超えるようなものというのは、これはやはり労使協議の中でもなかったような異例のことだったというのが実態だと思います。そういう点でも、私は率直に言って、人事院の対応として誠実なものとは言えないということは申し上げたいと思います。そういう点でも、若年層の給与の較差の解消のためにこそ充てるべきだということを改めて申し上げるものです。
 その上でもう一点、非常勤職員問題について今回報告が指摘をしました。この人事院の報告が非常勤職員問題に言及したのは初めてのことであります。非常勤職員の深刻な実態とこの是正を求める運動の反映でもあり、前進面と言えると思います。
 そこで伺いますが、報告の中で、「非常勤職員の給与の実態の把握に努めるとともに、それぞれの実態に合った適切な給与が支給されるよう、必要な方策について検討していく」と述べておりますが、これはどういうことなのか、どのようなことをするのか、この点についてお示しください。

○谷政府特別補佐人 非常勤職員の給与につきましては、給与法の第二十二条の規定に基づきまして、各庁の長が、常勤職員との権衡を考慮し、予算の範囲内で支給するということとされておりまして、多様な職務に応じたさまざまな処遇が行われているところでございますけれども、その処遇についてやはりアンバランスがあるのではないかという問題意識を私どもも持っておりまして、本年の五月から六月にかけまして各府省のヒアリングを行いました。
 その結果、同様の職務に従事しながら所属する府省によりまして必ずしも均衡がとれていない事例があるということがわかりました。そのため、今年度の報告におきましてそのことについて触れさせていただいたわけでございます。
 現在、この問題に対処いたしますために、各府省の非常勤職員の実情についてさらに重ねて聴取を進めております。そして、問題点の整理を行っているところでございまして、今後、引き続きまして関係者の御意見も伺いながら、どのような方策をとることができるかということについて検討を進めていきたいと考えておりますが、まだ具体的な内容について御説明できる段階には至っておりません。

○塩川委員 続けて、報告の中で、「非常勤職員の問題については、民間の状況もみつつ、その位置付け等も含めて検討を行う必要がある」と述べておりますけれども、これはどういうことでしょうか。

○谷政府特別補佐人 これは、非常勤職員の問題を検討するに当たりましては、勤務条件の問題にとどまりませず、公務組織の中で非常勤職員はどのような役割を果たし、どのような位置づけをされているのか、どのような役割を期待されているのか、それからまた、いわゆる雇いどめと申しますけれども、任期を設けているわけでございますが、年度末でございますとか、そういった問題、それから定員の問題、こういったことについて非常に多岐にわたる検討をすべき課題があるわけでございます。
 これらの相当部分は人事院の所管外の問題もあるわけでございまして、そういったことについては関係機関とも連携して検討する必要があるわけでございます。
 それから、検討に当たりましては、公務部門内における常勤職員との権衡のみではなくて、民間における非正規雇用従業員の処遇の状況にも留意していく必要があるわけでございまして、そういう意味で、それらも含めまして、関係機関と十分連携をとりながら検討を進めていく必要があるという趣旨でございます。

○塩川委員 そういった検討を行っていく中身として、雇いどめの問題や定員の問題のお話がありましたけれども、この間、例えば朝日新聞などに制度の谷間論みたいな、育児休業の話なんかもありましたが、こういうのも含めて検討していくということでよろしいんでしょうか、その点が一点。
 もう一つ、実際、その公務の現場におきますと、常勤の方だけでなくて、非常勤の方がかなりの数いらっしゃる。それに加えて、派遣ですとか請負という形の間接雇用の形態で多くの方が仕事に従事しておられます。そういった非常勤という場合に、直接雇用でない間接雇用のそういった公務における労働の実態ということについても検討を行うとか実態調査を行うとか、そういう考えはないのか。
 以上二点について聞かせてください。

○出合政府参考人 お答えいたします。
 非常勤の関係につきましては、今おっしゃられた間接的な部分をまだ調査する状況にありません。現在、各省に勤務しておられる非常勤の実態についてヒアリングをさせていただいているという状況ですので、まずはこちらの方の、ことし報告で申し上げました、勤務の状況に応じた給与が適切に支給されるように検討を進めていきたい、こんなふうに考えております。(塩川委員「制度の谷間の話」と呼ぶ)
 その検討をするときに、ただ給与の話だけではなくて、先ほど総裁からも申し上げましたけれども、勤務条件、勤務時間であるとか休暇であるとか、今おっしゃられた育児休業みたいな周辺の問題もあわせて検討していく必要があるという認識を持っております。

○塩川委員 非常勤で民間との比較という場合に、今の民間における非常勤の実態も大変深刻なものだということをリアルに見なくちゃいけないということは改めて強調しておかなければいけないと思っております。
 その上で、最後に大臣に伺います。
 これは、人事院の勧告が出た際に、そのときの安倍総理が、人事院勧告の取り扱いについて、国民の理解が必要だ、その観点から財政状況、経済状況を考慮してよく議論する、結論ありきではないということを述べておられましたけれども、そういう趣旨の指示が例えば第一回の関係閣僚会議において行われたのか、また、新たな福田総理のもとで何らかの指示が出されているのか、その点をお聞かせください。

○増田国務大臣 安倍総理、それから今の福田総理になられてから、特に具体的にそういった指示が来ているということではありませんで、これは、第一回目、そして、けさほど第二回目でございますけれども、関係閣僚会議の場で今検討している、こういうことでございます。

○塩川委員 大臣、人事院の制度を尊重していく、と同時に国民の理解が得られるかどうかということがありましたけれども、労働基本権制約の代替機能という人事院のそういう勧告を受けとめて、この勧告について誠意を持って当たるということが総務大臣としての対応です。
 その点について一言伺って、終わりにします。

○増田国務大臣 我々の立場は先ほど申し上げましたとおりでございまして、そういう我々の立場に立ちまして、基本姿勢に立ちまして、早急に次の閣僚会議をセットして、政府としての結論を得たい、そういうふうに努力していきたいと考えております。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。