<第168回国会 2007年11月6日 総務委員会 第4号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 最初に、大臣にお尋ねをいたします。
 政府は、人事院勧告を受けて公務員給与の取り扱いを閣議決定いたしましたが、改定の一部を見送ることになりました。総務大臣は記者会見の中で、給与関係閣僚会議の場で人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢に立って発言をしていると述べておられましたけれども、今回の法案の内容はその基本姿勢が貫かれた内容だと言えるのか、その点についてまずお尋ねします。

○増田国務大臣 お答え申し上げます。
 今回のこの法案でございますけれども、まず申し上げたいことは、労働基本権制約の代償措置の根幹をなす人事院勧告制度を尊重する、そういう基本姿勢に立って政府として提案をしたもの、したがいまして、勧告の実現のために最大限の努力を尽くしたものということでございます。
 しかし、勧告どおりの内容となっていないということでございます。それはもうまさに御指摘のとおりでございますが、それにつきましては、厳しい財政状況それから現下の社会経済情勢、この中にはさまざまな公務員の不祥事といったようなことも入るわけでございますが、そうしたことを受けて、国民世論の動向も勘案して、幹部職員の中核たる指定職職員、そこに対しましてはやはり何らかの措置が必要であろうということで、そこの部分のみ給与改定を見送ったというものでございまして、基本姿勢は勧告を尊重するという立場に立ちつつ、今申し上げましたような点を加味したということについてはやむを得ないものというふうに考えておりまして、そういう考え方に立って法案を提案しているところでございます。

○塩川委員 勧告は尊重されなければいけない。勧告の実現のために最大限の努力を尽くしたけれども、そのとおりにはなっていないということです。
 今回の法案作成の作業というのは、政府において公務員の労働基本権のあり方についての検討を行っているときに行われたものであります。人事院勧告をいわば値切るようなことがあれば、憲法が保障する労働基本権を全面回復せよという要求が強まるのは明らかであります。この当然の要求を大臣はどう受けとめるのか、お聞きしたいと思います。

○増田国務大臣 お答え申し上げますが、私どもとしては、政府としてはということでありますが、この人事院勧告制度、これを尊重するという基本姿勢にはいささかの変更もございませんし、また今後もそういう立場を私どもとしてもとっていきたい、このように考えております。

○塩川委員 労働基本権を回復せよという要求が出てくる、それについては、大臣、どのようにお考えですか。

○増田国務大臣 労働基本権の問題については、さまざまなこれは議論があり得るわけでございまして、私どもは、人事院勧告制度を尊重するという基本的な姿勢に今は立ちつつ、今後の公務員の労働基本権を含めたいわゆる労使関係のあり方ということについては、いろいろ専門家の皆さん方に御議論をいただかないといけない。それだけ重要な問題だというふうに考えております。したがいまして、政府の行革本部、これは渡辺大臣のところでございますが、そこのところの専門調査会、佐々木毅学習院大学教授、東大の前総長にお願いをして座長についていただいて、そこでの専門調査会で御議論いただいて、先月、報告書が取りまとめられたところでございます。
 中で、いろいろなその報告書の内容というふうになっているわけでございますが、この問題について、特に今お話しの労働基本権の問題につきましては、公務員制度改革、全体を今議論してございますが、その改革の一環として今後判断をしていく必要がある、このように考えております。

○塩川委員 行革の枠組みの中で労働基本権の回復というのはそもそも筋違いだということは申し述べた上で、ILO勧告や国際労働基準を見ても世界の常識となっている公務労働者の労働基本権を早期に回復するよう改めて要求するものであります。
 その上で、前回の人勧についての質疑でお尋ねをした非常勤職員問題について質問をいたします。
 人事院総裁にお尋ねしますけれども、人事院勧告の報告が初めて、非常勤職員の処遇等を検討すると述べております。そこで、検討すると言われるその中身についてなんですけれども、当然ですけれども、各省でばらばらの非常勤職員についての均等の問題と同時に、常勤と非常勤についての、やはり本来、同一労働同一賃金、そういった立場での検討もあってしかるべきだと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。

○谷政府特別補佐人 御指摘のとおりでございまして、この検討に当たりましては、常勤職員との権衡の問題、それから各府省非常勤職員相互間の権衡の問題、それから、以前にも申し上げたかもしれませんけれども、民間における非正規雇用従業員の処遇といった点、これらを念頭に置きつつ総合的に検討を進めていく必要があると考えております。

○塩川委員 この報告をまとめるに当たって事前に各府省にヒアリングを行った、具体的な事例も把握をされておられるということですけれども、私どもも、非常勤職員、その関係者の方からお話も聞いたので幾つか御紹介したいと思うんです。
 まず給与の問題ですけれども、予算の範囲内でそれぞれの任命権者の判断で決めるとなっているために、安易な決め方がされているんじゃないのか。例えば、年度末になって予算がきつくなっているので賃下げをしたい、こういうことを使用者の方から言われる、そういう話も寄せられておりますけれども、給与について、予算の範囲内でという形で、結果として賃下げが要求されるような事態がある。そういう実態などについても人事院として把握をされておられますか。

○出合政府参考人 お答えいたします。
 先般も御説明いたしましたが、五月、六月にかけて各府省にヒアリングを行っております。その場合に、給与がどのように決定されているのか。今先生がおっしゃられた、年度末になって急に賃下げをするという事例は、我々がヒアリングしたところでは入っておりませんけれども、今御指摘もありましたので、さらに突っ込んだヒアリングをしておるところでございますので、その中で各府省の実態についてさらに突っ込んで聞いていきたい、こういうふうに考えております。

○塩川委員 そういう実態があるんです。ぜひつかんでいただきたいんです。
 加えて、何点か御紹介もしますけれども、労働実態も深刻ということで、例えば雇いどめということがあるわけですけれども、その理由をまともに説明されないというような事例ですとか、非常勤の職員の側が契約更新の際の面接のときに雇用保険にぜひ入ってほしいということを申し出たら解雇を通告されるですとか、二年近く働いていても一日も有給休暇がもらえないとか、病休は無給なので、体調が悪くても無理して出勤をするとか、こうした話が寄せられております。
 同時に、事務補助などと言われるけれども、仕事の中身、実態が常勤の職員と同等の仕事をしている事例も多いというのが現状だと思います。正規職員の補助だと聞いたのに、地方自治体や市民からの問い合わせへの受け答えや稟議書の案をつくる仕事までさせられているとか、募集要項では調査の補助となっていたけれども、補助だけでなくて、認可団体に対して行政指導も行っている。つまり、補助ではなくて基幹的な業務の一員として組み込まれて仕事をしているという話であります。こういう点でも、もっとリアルに非常勤職員の実態をつかむ必要があるんじゃないのか。
 そこで、総裁にお聞きしますけれども、給与ですとか勤務時間ですとか休暇などに加えて、勤務条件ですとか位置づけの問題や、任期の問題ですとか、さらには社会保険の加入状況などについて、非常勤職員の全体の状況をきっちり把握する、そういう実態調査を行うべきではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。

○谷政府特別補佐人 私どもが今行っておりますのは、私どもの所掌に属します事項についての調査が主であるわけでございますけれども、御指摘のように、この非常勤の処遇の問題を検討いたします際には、私どもの所掌を超えるものもいろいろあるわけでございまして、そういった問題については、他の関係機関とも連携して検討を進めていく必要があると考えております。
 調査の仕方としてどのようにいたしますかにつきましては、ただいまこの場で即答申し上げる準備がございません。

○塩川委員 例えば社会保険の加入状況などについては厚生労働省と連携をして実態を把握する、そういうふうにお考えですか。

○谷政府特別補佐人 個別の事項についてどうということを申し上げる準備がございませんが、基本的に、非常勤職員の処遇全般について考えていく必要があると考えております。
 したがいまして、人事院の直接所掌いたしますことのみにとどまらず、この問題は、非常勤職員の役割、国家公務員としての位置づけの問題がベースとしてあるわけでございますので、そういう意味では、何らかの形で総合的な検討が行われる必要があるだろうと思っております。

○塩川委員 非常勤職員の処遇全般について、全般的な検討が行われる必要があるということであります。同時に、それは人事院の所掌を超えるものもあるということであります。
 そこで、増田大臣にお聞きしますけれども、いろいろなマスコミの報道などでも、こういった国家公務員における非常勤職員の実態が官製のワーキングプアではないかとか、このワーキングプアを生み出しているのが霞が関だ、こういった非常勤職員の労働条件の劣悪さを指摘する報道なども行われています。人事院だけでは所掌の範囲を超えるものもある、限界があるというお話ですから、ぜひ政府を挙げて、各省に所属をしている非常勤職員の問題ですから、きっちり全体の状況がわかる実態調査を行う必要があると思います。
 そもそも、ことし五月の参議院の総務委員会で附帯決議がつけられておりますけれども、その中にも、非常勤職員について、職務内容、勤務条件等の勤務実態について早急に検討することと挙げられております。そうであるならば、政府を挙げて、非常勤職員の実態を早急に把握すべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○増田国務大臣 非常勤職員の実情、実態につきましては、人事院で今各府省から聴取を行っていると聞いているわけでございまして、今総裁の方からもお話がございましたけれども、これには各省も協力して、総務省も人事院に協力をしていきたいというふうに思っております。私どもは、そうした上で、その実態調査の結果を見ながら今後の必要な対応を検討していきたい、このように考えております。

○塩川委員 ですから、人事院は人事院としてもちろんやるんですけれども、その所掌を超える部分があるわけですから、その点について、政府として挙げてしっかりとした調査を行うということでよろしいですね。

○増田国務大臣 人事院の方で今基本的な調査を行っているわけで、それに各省が協力をして、そして本当のいろいろな実態調査をする、そういうことになっております。ですから、政府として何か人事院と別に調査するということじゃなくて、人事院の調査にいろいろ協力をしながら、結果を明らかにして、それに対しての政府としての必要な対応を考えていきたい、こういうふうに考えているところでございます。

○塩川委員 そうしますと、勤務条件ですとか定員の話ですとか社会保険の加入の問題などについても、人事院が音頭をとる形で全体として把握をしていく、それに各省が連携して協力していく、そういうふうに考えてよろしいですね。

○増田国務大臣 私も調査の詳細なところを承知してございませんけれども、ここで行っておりますものについては、非常勤職員の実態を明らかにする、そういうことでございますので、そうした実態をつかまえるということで今検討がなされているもの、このように考えています。

○塩川委員 使用者の立場ですから、当然のことながら実態を把握するというのは大前提でもありますので、その点、ぜひしっかり行っていただきたいと思います。
 その上で、人事院に何点かお尋ねします。
 一つは日々雇用の問題ですけれども、先ほどの答弁でも二万人余りの方がいらっしゃるというお話でした。日々雇い入れられる非常勤職員については一日につき八時間を超えない範囲で云々と、人事院規則そのものに日々雇用ということが挙げられているわけですね。
 実態は、日々の更新がいわば前提となって、長期の、一定期間の雇用が行われているわけです。そういう点でも、日々雇用の場合には、あした来なくてもいいということがそのまま通ってしまう、泣き寝入りすることになりかねないような事態も現にあるわけですから、この日々雇用という規定について、もう既に時代おくれだという点でもこの規定を見直すことが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。

○谷政府特別補佐人 非常勤の官職に従事する職員、これにつきまして日々雇い入れるという形、これは表現の問題と任用形式の問題と両方あると思いますが、これは、制度ができました昭和二十年代からこういう形で今まで来ているところでございます。しかし、現在もこのような形式が適当であるかどうかということについては、確かに御指摘の点もあるわけでございまして、私どもも検討する必要があると考えております。
 ただ、基本的に、日々雇用される形の非常勤職員につきましては、各府省において生じる臨時、緊急の業務でございまして、かつ雇用期間が不確定な場合に対応いたしますために、従前からこういう形をとってきているわけでございます。
 したがいまして、この形態を見直すべきか、また、見直すといたしました場合にはどのように見直しをしていくかということにつきましては、公務組織の中で非常勤職員はどのような役割を果たしているか、どのような位置づけにあると考えるべきであるか、それから、御指摘がございました定員等の関係、民間における非正規雇用者の活用状況や利益保護の必要性をどう考えるかといった大変広範な問題を含んでいるところでございまして、私どもが今検討しておりますことは、結局は非常勤職員の位置づけ、あり方ということにかかわってまいりますので、当然この問題にもかかわってくるものと考えます。
 どのような形で検討することができるかは今申し上げられませんけれども、いずれにしても、私どもの行います検討の中ではこの問題も対象になってくる可能性が大きいというふうに考えております。

○塩川委員 わかりました。
 もう一点、労働条件の明示書についてですけれども、労働基準法に基づいて、業務内容ですとか雇用期間、勤務時間、休日、休暇、賃金、退職手当、安全衛生など、これらを書面で交付することとされておりますけれども、実際、それぞれの各府省の対応の中では実態としてそういった労働条件が明示をされないのもあると聞いております。そういう点でも、労基法で言っているような、労働条件通知書、書面での交付が必要だと考えますけれども、そういう趣旨を徹底する、このお立場で臨んでいただきたいと思うんですが、人事院としていかがでしょうか。

○谷政府特別補佐人 労働基準法でもそういう規定がございますが、国家公務員でございます非常勤職員につきましての重要な勤務条件でございます給与や勤務時間につきましては、採用に当たって明示されることが必要でございまして、その旨、通知等で定めておるところでございます。
 このように、採用に当たりまして給与や勤務時間を明示することとしているところでございますけれども、各府省におきまして適切な明示が行われていない、そういう事例があるということでございましたならば、適切に明示するように指導していかなければならないと考えております。

○塩川委員 しっかりとした対応をお願いします。
 今、公務の現場は、定員削減の影響もあって、非常勤職員がふえて、さらに派遣とか請負という形態なんかも大きく拡大をしているという状況がある。こういった定員削減が与えている影響などについてもしっかりとした実態調査が必要だと思いますし、公務における常勤、非常勤の均等待遇、派遣、請負の人たちに対する均等待遇を含めてふさわしく対応されることを求めて、質問を終わります。