<第168回国会 2007年11月15日 総務委員会 第5号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、自治事務に関する国の関与の問題についてお尋ねをしたいと思っております。
 先日、地方分権改革推進委員会の中間取りまとめも出されたと承知をしております。その中でも、「「地方が主役の国づくり」に向けた取組み」の中で、
 国は、地方自治体の自治事務に対しても、法令にもとづいてさまざまな義務付け・枠付け、関与などを行っており、これが地方自治体の実質的な裁量権と責任ある判断を大きく制約している。地方自治体に与えられた事務や権限について本当の意味で判断の自由度と責任を確保し、権限移譲を実質的に進めていくためには、国が担う役割についての明快な基準を設定し、これにあてはまらない義務付け・枠付け、関与などは原則廃止との方針のもと、徹底的な見直しを行う必要がある。
このような指摘があることも念頭に置いてお尋ねしたいんです。
 大臣、自治事務に係る技術的助言、いわゆる通知ですけれども、総務省から地方自治体に対してどれぐらいの自治事務に係る技術的助言、助言または勧告と言われる通知が出されているのか、およそで結構なんですけれども。

    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕

○増田国務大臣 総務省からどのくらいの数が出ているかというのはちょっと、今手元に数字がございませんので、わかりません。恐縮です。

○塩川委員 我が党は予算委員会での要求資料の中で毎年お尋ねしているんですけれども、暦年での〇六年で百十三本とされているということでした。
 私は、機関委任事務の廃止という地方分権一括法以来の流れの中で、いわゆる通達類について大きく少なくなるだろう、同時に、自治事務に係る技術的助言などについても、これはやはり総務省としても徐々に少なくしていく方針だと承知しておりますけれども、その点、間違いないでしょうか。

○増田国務大臣 やはり、自治事務でありますので、本来、自治体が独自に判断をすべきというものでございますし、できるだけわかりやすいものを省庁としてもきちんと用意すべきでありましょうから、こういった通知を出さないと自治体の方でも判断に困るようなものというのは、数はやはり少なくしていくべしと。
 いずれにしても、この自治事務というものの本来の性格というのを各省にも十分理解していただいて、そして対応していただく必要があるだろうと思います。

○塩川委員 地方分権一括法の議論の際に、当時の野田大臣なども、自治事務について、そういった通知類はやはり一般的、ルール化された形になっていくだろうという形で、事細かに書くようなものじゃないというお話も答弁の中でございました。
 しかしながら、現状がどうか、総務省の自治事務に係る助言がどうなっているのかということなんですが、先ほどの続きで、我が党が要求した予算委員会の要求資料で、自治事務に係る助言、総務省から発出された本数が何本かとお聞きしましたら、二〇〇四年が百本なんですね。二〇〇五年が百十一本で、二〇〇六年が先ほど申し上げたように百十三本という形で、ふえているわけです。
 地方分権一括法の前、九八年当時の自治省の通達は三百二十三本ということでお聞きしていました。このうち、旧自治法二百四十五条第四号のいわゆる技術的助言、今で言う自治事務に係る通知に相当するものと考えられますけれども、この技術的助言として出されたものが百二十三本でした。ですから、九八年、地方分権一括法前に百二十三本だったものが、現在はほぼ同水準の百十三本になっている、ほとんど変わらなくなっている。
 先ほど大臣のお話の中に、通知については数は少なくしていくべきだとお話がありましたけれども、現状はそれに逆行しているんじゃないか、これについてどうするおつもりなのか、お尋ねしたいと思います。

○増田国務大臣 通知それぞれの内容をよく吟味する必要があると思うんですけれども、中に、やはり技術的な基準等で公共団体にお知らせすることが一定の意義を有するものもあると思いますし、それからあと、自治体の方から何かわかりやすい考え方を示してくれというふうに求める場合もなくはないと思います。
 ただ、やはりそういったものを金科玉条と考える傾向もありますから、今お話ございましたとおり、ちょっと私も数を承知してございませんでしたが、以前百二十三本あって、今の段階では十本少ない百十三本ということ、このようないわゆる技術的な基準、自治事務に伴いますこうした通知のようなもの、これについては、やはりその内容といいましょうか、それから通知の持つ意味というのを十分によく考えていかなければならないというふうに思っております。

○塩川委員 百二十三本、後に地方分権一括法が出て、一時抑制的だったものが今戻ってきているんじゃないのかという懸念を覚えるわけです。それは、当該地方行政所管の総務省の通知だからなおさら、その問題というのが問われてくるんだろうなと思っています。
 もちろん、自治体の方からこの点についてどうなんだという問い合わせはあるんだと思うんですけれども、それは個々の案件について問い合わせに答えればいい話であって、それを通知という形で出すのが、先ほど言ったように、かえって金科玉条のようなものになってしまうんじゃないのか、こういうことにもつながってくるんだろうと思っています。
 そこで、もう一点、これは要望でもあります。御意見もお伺いした上で要望としたいんですが、各府省から政府全体の出されている自治事務に係る助言の本数なんですけれども、同様に予算委員会の要求資料に基づいて調べたところ、二〇〇四年が二百五十九本、二〇〇五年が三百二十六本、二〇〇六年が三百七十二本と、やはり増加をしているわけです。
 政府全体としても増加するというのはいかがかと思うんですけれども、地方分権を預かる大臣としての御所見をお伺いしたいと思います。

○増田国務大臣 今お話ございましたとおりの数字であるんだろうと思いますが、やはり、公共団体の自主性ですとか自律性ということが損なわれるようなことがあってはならない。したがいまして、そもそも国の公共団体に対する関与というのは本当に必要最小限なものにとどめなければなりませんし、それからあと、自治体の方でどうしても助言が必要な場合には個別にいろいろお問い合わせするといったようなこともできるわけでありますので、そうした各省から出されているものについても今言ったような内容にならなければいけないというふうに思いますし、やはりいろいろ各省の方で、助言をするという意味を十分に理解して運用していただかなければならない、こういうふうに考えます。

○塩川委員 そこで二点伺いたいんですが、総務省として、この間ふえる傾向にある通知についてもやはり減らす方向で今後努力していくということが必要だと思うんですが、総務省としての通知の発出件数について、これは抑制をしていく、減らしていくという点についての大臣の決意をお聞きしたいというのが一つ。
 あと、政府全体についてなんですけれども、先ほど言ったように、政府全体でもふえております。そういうことについて、各府省に対して必要な申し入れなどをぜひ行ってもらいたいと思うんですね。よく予算の概算要求の際に、これは地方財政法上の規定なんでしょうか、各府省に対して、自治体の立場を配慮したという形でのいろいろな意見とか申し入れをされておられます。こういった通知についても、地方分権、地方自治の趣旨にのっとって必要な対応をお願いしたいという要請なりを総務省としてぜひ行っていただきたいと思うんです。
 以上二点について、お答えをお願いします。

○増田国務大臣 今お話ございました、数をもっと抑制するようにすべきというお話なんですが、総務省で発しているものについても、私の方でも、少し内容もよく見ておきたい、吟味をしたいというふうに思います。それから、各省の方に対しても、どういう対応をとるのか、それぞれの省の中で、先ほど言いましたように、公共団体の自主性、自律性ということが損なわれるようなものは、これはもうやめてもらわなければいけませんし、その趣旨のことを毎年いろいろな場面で各省に対して要請してございますので、そういったことが損なわれているような実態があるのかどうか、よく調べたいというふうに思います。
 といいますのは、今申し上げましたのは、要は、本数というか数字、今言ったようなことを各省に理解させ、それから総務省としてもやはり必要最小限という形にしていけば、おのずから数字は減少していくだろうというふうに思います。その中で、どういった内容の通知なのかといったことを、やはりもう少し見る必要があると思いますので、その点をよく吟味した上で対応を考えたいというふうに思います。

○塩川委員 先ほど、やはり通知を金科玉条のように考える傾向もないとはしないという話がございましたが、そもそも自治事務に係る通知は技術的助言または勧告であって法的拘束力はないものだということだと思うんですが、その点、確認だけさせてください。

○増田国務大臣 その点は、まさに先生おっしゃるとおりでございまして、法的拘束力はないというふうに考えております。

○塩川委員 実際に拘束力はないわけなのに、何回も事細かな通知が来ると、それが拘束力を持つかのような錯覚にもとらわれるというのが実態としてありまして、その点で具体的な事例を紹介したいと思うんです。
 これは、ことしの通常国会で特区法の見直し、延長の法案が出されて質疑が行われました。その際に、東京市政調査会、今度大臣のかわりに分権の委員となられた西尾勝氏が主宰しておられる東京市政調査会が提言を出されているんですけれども、特区制度を活用した形で、本来自治事務で自治体がみずからの判断で処理できることが、あたかも国の規制であるかのようになっているという事例が紹介をされておりました。
 そこで総務省関係が何例かあるんですけれども、例えば住民票、印鑑登録証明書の自動交付機の設置場所の拡大事業というのがあります。この特例措置の内容というのが、特区の認定を受けることにより、個人情報の保護やセキュリティーに配慮すれば都道府県または国の施設以外の場所に端末機を設置することができるというものですけれども、これが提案として出された際に、規制とされているものが、自治事務についての総務省の助言に基づいているわけですね。ですから、法的拘束力を持たない助言を規制の根拠にして特区を実施したという事例になっているわけです。
 このように、そもそも特区の提案とか認定を受けなくても自治体の判断で実施が可能という対応ができなかったのはなぜなのか。総務省の所管する特区であるのにもかかわらず、なぜこんなことになったのかについて、大臣はどのようにお考えでしょうか。

○増田国務大臣 今、先生の方から御指摘ございました点でございますが、これはやはりあくまでも、先ほど申し上げましたとおり、法的拘束力のない技術的助言としてお示しをしておりますので、そのことを規制というふうに考えるのは、やはり私もおかしいと思います。規制ではなくて、本来技術的助言ですから、あくまでも助言として取り扱って、各自治体の方で、別途の考え方で何か違う措置をとるということも当然可能なことであろうと。その通知自身にも、何かそういった旨は示されているようでございます。
 ですから、むしろこういったものを特区ということで取り上げるということが、その経緯もちょっとなかなか、まだ私も十分理解していないんですけれども、それを規制というふうにあたかもとられがちなような形の、特区として取り上げること自体がやはり少し考え方としておかしいのではないかというふうに私は思っているところでございます。

○塩川委員 だから、本来自治体が自主的に判断できるものを国が何らかの形で、規制を緩和するかのような形で特区を使うというスキーム自身が、大臣もおかしいとおっしゃられたことだと思います。かえって国の関与を強めるような形になる、地方分権の趣旨に反するようなことを総務省が行っておられるんじゃないのかということが問われるわけです。
 それと、もう一つの例が消防に関してなんですけれども、農家民宿における簡易な消防用設備等の容認事業ということで、特区の認定を受けた農家民宿について、一定の条件を満たせば、誘導灯とか誘導標識、消防機関へ通知する火災報知設備を設置しなくてもよいというものです。
 これも、そもそも消防法の規定の中で、消防署長が判断できるという適用除外があるわけですよね。しかし、特区をつくるのもその適用除外を使ってできますよというふうに、消防庁がいわば指示を出すという中身になっているという点でも、わざわざ特区の認定を受けることなく、自治体みずからの法令解釈によって適用除外ができたんじゃないのかということになります。
 ですから、そういう点について、先ほどの印鑑登録の証明書、住民票の写しの自動交付機の設置場所拡大事業の問題も含めて、何でこんなことになってしまったのかということについて、ぜひ検証していただきたいと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕

○増田国務大臣 私も実は、東京市政調査会の西尾理事長の、御指摘の論文といいましょうか報告書等も拝見をいたしましたけれども、やはりこういった通知などが自治体にとりましてあたかも規制のような形で受け取られているといったところに何か問題があったのではないか、こういうふうに思っております。したがいまして、あくまでも技術的な助言でありますので、それを十分に参考にしながら、自治事務ということで自治体がいろいろな判断をしてしかるべきであろう、こういうふうにも思います。
 今回、こういった規制改革特区の手法を使って行われているということについて、私の方でもよく経緯などを検証して、そして、あくまでもこうした自治事務について行われる助言または勧告、これは自治体の方の受け取り方の問題もやはりあると思うので、そこは自治体サイドでも意識を変えていく必要があると思うんですけれども、そういった、あくまでも自治事務だ、そして国の関与は必要最小限にとどめるべし、このことについて徹底をさせていきたいというふうに思います。

○塩川委員 お話のように、自治体側の対応の問題も当然あると思います。同時に、通知の中身そのものが、かなり縛るような文言にもなっているという現状があると承知をしています。ですから、助言の範囲を超えるような中身ですとか、あるいは法的拘束力がないといっても拘束力を持つような内容のものもある。
 例えば、総務省の自治行政局公務員部給与能率推進室長名の「人事委員会における公民比較の較差算定等に係る留意点について」、こういうのについて、本通知で示した留意点と異なる取り扱いをしている場合にはその理由を示すことと、点検するかのような中身の問題なんかも出ているわけです。理由を示せと要求するようなのは、これはいかがかと思いますから、こういった実際の通知の中身の問題についても、しっかり改めるということをぜひ求めたい。そのことについて一言いただいて、終わりにしたいと思います。

○増田国務大臣 いろいろな通知もあるようでございますので、そうした内容についてよく点検をしてみたい、このように考えます。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。