<第168回国会 2007年12月4日 総務委員会 第7号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、参考人の皆さん、それぞれ貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。
 私は、最初に郷原参考人に、今回の法案で出ております一つの大きな改正点でもありますNHKのガバナンス強化に関係してお尋ねしたいと思っております。
 このガバナンスの強化ということで、一部の常勤化ですとか、監査委員会を経営委員会の中に置く、これなどは、会社法の委員会等設置会社、このスキームを参考にということで、監査委員会のところの法文なんかは丸々会社法のを写していますから、まさにそのとおりだと思うんですけれども、監査役設置会社という形態もあり、一方で委員会等設置会社もある、そういう中で、こちらを選んだという形になっております。
 公共放送を担う公法人としてのNHKの経営委員会として、こういうのが、メリット、デメリットといいますか、経営委員会というのは非常勤で構成をされている中で、合議機関としていわば社外取締役的な意味を持って監督をするということで来たんだと思うんですけれども、一部の人が監査委員という形で特別な強い権限を持つようなことが、合議機関としての経営委員会のあり方に対して影響を与えはしないかということを率直に思うわけですけれども、参考人の御意見を賜りたいと思います。

○郷原参考人 私は、株式会社、事業法人の場合と、NHKのような公共放送事業者の場合と、ガバナンスのあり方とかコンプライアンスのあり方がかなり違うのじゃないかと考えております。
 事業法人であれば、まず需要にこたえていくことで利益を上げていくということを目指す一方で、法も守っていかないといけない、きちんと法を守っていかないといけないということの中で、ガバナンスを考えないといけない、いろいろなチェックをしないといけないということになります。
 そういう面で、今、会社法が取り入れている制度が、先ほどおっしゃったような、監査委員会をどのように機能させていくかという問題だと思うんですが、公益的な使命を担った放送事業の場合、そういった自由競争的なものと法令遵守的なもので解決できるかといったら、そうじゃありません。やはり基本的には、その構成員、NHKの役職員それぞれがその使命を十分に自覚して、社会の要請にこたえていくという方向でやっていくことが一番重要であって、それをガバナンスの仕組みによってコントロールしようということは、私は、ちょっとそういうやり方には限界があるのではないかと思っております。
 NHKのコンプライアンスに関して私は講演を頼まれまして、コンプライアンス推進者の方々にこの前、講演をしました。そういうコンプライアンスの考え方を取り入れて、前向きに努力していこうという意欲は、私は非常に感じました。そういった個々の職員の方々のそういう努力をもっともっと生かしていくようなガバナンスのあり方を考えるべきであって、ガバナンスによって悪いことをしないようにしていこうというような考え方だけでは限界があるんじゃないかと考えております。
 以上です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 続けて、古森参考人にお伺いいたします。
 冒頭の御発言の中でも、ガバナンスの強化について、これは評価をされるという話で、その中で、一部常勤化につきましても、機能強化に資するという話がございました。今まで非常勤の中に常勤を置くということについて、機能強化に資するとおっしゃるその具体的な中身といいますか、その理由というのをぜひお聞かせいただきたいんです。

○古森参考人 今、監事という方がいまして、これは独立した機関でございますけれども、監査をしております。今回、監査委員会ということで、経営委員三人がそれに当たります。その中の一人は常勤になるというようなことでございます。
 そうしますと、経営委員会が持っております本来のガバナンスの機能、重要事項を議決してその執行を管理監督する、会長以下が行う執行を管理監督するというこの立場に非常に近づいてというか、一体化するわけであります。そういう意味では、きちんとした管理監督ができるというふうに思いますし、ガバナンスあるいはコンプライアンスの観点からも強化される。それからさらに、経営委員の持っております経営的観点からの監視、監査というのも強化されるという意味で、大変いいことだろうというふうに考えております。
 以上であります。

○塩川委員 ありがとうございます。
 もう一点、古森参考人に伺います。
 九月十一日の経営委員会の中の発言で、古森委員長から、選挙期間中の放送については、歴史物など微妙な政治問題に結びつく可能性もあるため、いつも以上に御注意願いたいという趣旨の発言があったと承知をしております。これについて、後で古森委員長として、一般論だ、あるいは、番組基準を議論する機能がある以上ある程度の意見を言うことは必要だということもおっしゃられているということは承知をしております。
 お尋ねしたいんですが、経営委員会の権限として、番組全般の編集方針を定めた番組基準などを議決する権限はありますが、具体的な番組内容に対する審議は、放送法三条で定められた放送番組審議会にあり、経営委員会の権限と言えないのではないかという指摘がありますけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

○古森参考人 私の当時の発言が誤解を招いておると私は思って、甚だ残念でございます。
 私は、放送法にのっとり、政治的に中立公正であると放送法にございます、第三条の二でございますか、明記されております、その観点から。それからもう一つは、今おっしゃいましたように、経営委員という委員、あるいは経営委員会というのは、番組の基準あるいは番組の基本的な編成方針について決議するという機能を持っております。責任も持っております。そういう観点から、経営委員として、それに照らし合わせて意見を申し述べるということは、これは許されていることであろうというふうに考えます。
 私は、一般論として、特にどの政党がどうだということではなくて、特に選挙期間中は御注意願いたいというふうなことを申し上げたわけでございまして、あくまでも個別の番組を指して言っているわけではない、一般論でございます。一般論につきましては、先生がおっしゃいますように、私どもあるいは私といたしましても、介入する意向はございません。
 以上であります。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、広瀬参考人にお伺いいたします。
 今回の「あるある大事典」の捏造問題を機に新たな行政処分を設ける、それについては、きょう午後、お昼の段階で修正案が出されて、その部分は削除という話となっておりますけれども、もともと根っこにあります、この捏造が生まれるような問題について、どうこれを解消していくのかというのは放送業界としても問われている点だろうと思います。ですから、BPO、倫理検証委員会の方の機能強化、活動の取り組みを強めるという点と同時に、やはり捏造を生み出すような、私ども、下請いじめにつながるような業界としての課題があるのではないか、このことを思っております。
 もともと、関西テレビの第三者委員会の報告の中でも、下請事業者、孫請構造の中で、下請法違反のような実態がまかり通っている、また、独禁法違反に当たるような優越的地位の濫用に当たるようなおそれのある行為なども行われているという具体的な指摘もございました。
 こういった下請いじめの実態について、率直にどのように受けとめておられるのか、その認識について、ぜひまずお聞きしたいと思っております。

○広瀬参考人 一般企業の下請関係を律します法令がだんだん整備されてきて、放送局もその対象になり、公取委などから事情調査なども受けたことがございます。確かに番組制作会社は小さな、時には個人企業と言ってもいいようなケースも随分ございますけれども、私たちは、そうした番組制作会社の本当の意味での成長がなければ番組の向上はないということを切実に感じております。
 各テレビ局でどういう条件で下請にお願いするか、制作会社にお願いするか、番組の点検はどういうふうに我々が入っていくか、そういう細かいことを相談しつつ、かつ契約の形で書いて、お互いに守っていこうということになっております。「あるある」の事件の後、そうしたプロダクションとの関係の透明化だとか、それから、一体となって仕事をしていく、決してでき上がったものにイエス、ノーを言うだけじゃないよ、あるいは予算管理だけ厳しく言うわけじゃないよというような、そういう姿勢に随分変わってきたというふうに認識しております。

○塩川委員 まず、契約の透明化とか丸投げはしない、そういう点での改善の努力は結構なんですけれども、現状の認識ということでぜひお聞かせいただきたかったんです。「あるある」の第三者委員会の報告の中で、下請法違反の支払い代金の支払い遅延のような実態があるという問題ですとか、独禁法の優越的地位の濫用に当たるようなことが行われているという現状について、人ごとではないとお感じなのかどうか。その点、お聞かせいただけますか。

○広瀬参考人 そういう、プロダクションの責任分野が大きいというような指摘があった一方、いやいや、プロダクションに対して、えらく予算を削るとか非常に過酷なことを要求するとか、視聴率のとれないようなものをつくってくれば拒否するとか、そうした発注側の方に問題があったんじゃないかという指摘も同時に出てまいりました。
 私は、あの後、そうしたプロダクションの方々と懇談の機会を持ったり、インタビューを民放関係の機関紙に出させてもらったりということで、下請の責任もさることながら、それはもう発注する側の責任の方がむしろ大きいんじゃないかということは力説してきたつもりでございます。
 今も、決してプロダクションの責任には、この種のことが起きたときに、プロダクションが悪いというようなことは絶対に言えないよという気持ちでおります。

○塩川委員 ありがとうございます。
 最後に、広瀬参考人に、持ち株会社の点で一点お伺いします。
 マスメディア集中排除原則の適用緩和ということで、持ち株会社が可能となる。そういう中で、御指摘にもありましたけれども、ローカル局に対するキー局の支配力を強めることがあってはならないという話がございました。地方局の子会社化が進んで、地域性が後退するんじゃないかなんという懸念も出ているわけです。
 その点で、どういう形で支配力を強めることがあってはならないということを担保するのか。その点で、業界としてお考えのところをお聞かせいただけますか。

○広瀬参考人 早い話が、アメリカの場合には、メジャーと言われる放送局は、直営局を全国に出しているわけです。日本の場合にはそうじゃなくて、ネットワーク協定に基づく、いわば系列局でございます。極端なことを言えば、キー局のもとに全国の系列局、二十ないし二十七、八ございますが、それを全部一つの持ち株会社でくくってしまえば、実質的にはそうした直営局と変わらないことになってしまいます。それは明らかに私は行き過ぎだろうと思いますし、そうすべきだという意見は今のところテレビ局の中にはございません。
 そういう意味で、持ち株会社に対するある会社の、例えばキー局の持ち株比率をどの辺までにしたらいいのか。それが一〇%以上、二分の一というのも一つの案でございますけれども、もうちょっと下でもいいんじゃないか。経営というのは、株で、株式を保有することで支配していく、コントロールしていくんじゃなくて、やはり、そうしたマスメディア集中排除原則というのが一方にあるわけですから、それを尊重しつつ、放送局の場合にはやっていくべきではないか。そのためには何も二分の一までにこだわることはないんじゃないか、もうちょっと低くてもいいのではないかなという気がしております。そういう意味でさっき申し上げました。

○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。