○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。 最初に、NHKのガバナンスの強化の問題について質問をいたします。 改正案の中で、第十四条に「経営委員会は、次に掲げる職務を行う。」とありまして、「役員の職務の執行の監督」という規定がございます。それから、二十三条の四に「監査委員会は、役員の職務の執行を監査する。」とありますけれども、この監督と監査の違いについてお示しください。 |
○塩川委員 現行法では、「監事は、会長、副会長及び理事の行う業務を監査する。」とあります。今回の改正は、監査業務を担う監事を廃止して、新たに経営委員会から任命される監査委員会に監査業務を担わせるということでよろしいでしょうか。 |
○塩川委員 監事の機能と体制の強化を図るのではなくて、経営委員会の中に監査委員会を設置することにした、その趣旨について御説明ください。 |
○塩川委員 この監査委員会が現行の監事よりもより強い権限、機能を持つことになり、その監査委員が経営委員の中から選ばれることによって、経営委員としての業務執行で得た知見を生かせるということであります。監査委員という、いわばより強化をされた監事の仕事を兼ねることとなる経営委員が、新たに監督と監査を担うことになり、一部の経営委員が強い権限を持つことになります。 加えてお尋ねしますが、二十三条の四で「監査委員会は、役員の職務の執行を監査する。」とありますけれども、その役員には経営委員も入るということでよろしいでしょうか。 |
○塩川委員 そうしますと、監査委員は経営委員の職務の執行も監査をするということでよろしいですね。うなずいておられたからそういうことであります。現行では、監事は経営委員の業務の監査はできないということになっております。それはよろしいですね。 |
○塩川委員 ですから、監査委員となる経営委員は、経営委員の職務の執行を監査することにもなりますし、他の経営委員に比較をし大変強い権限を持つことになります。それに加えて、常勤の監査委員も生まれることになるということになりますと、現行全員が非常勤で構成されております経営委員会のあり方も大きく変わってくるのではないのか。 そこで大臣に伺いますが、今回のように経営委員の中から監査委員を選ぶ、その中で一部常勤化をする、そういう形を通じて合議機関としての経営委員会としてのあり方がゆがめられるのではないかと考えますけれども、その点についてはいかがでしょうか。 |
○塩川委員 合議制の機関だから機能し得るというお話ですけれども、現行の古森経営委員会の前の体制の経営委員会が、ことしの三月一日に、「放送法の改正に対する経営委員会委員の見解」を出しておられます。 その中で、経営委員会委員の一部常勤化について、常勤委員と非常勤委員との間で情報量の格差が生じ、合議機関である経営委員会の独立性と多様性を損なうとの懸念も否定し切れない、常勤だからといって他の委員に比べて特別な権限が生じないようにすることが必要だという指摘をしておられます。 実際には、常勤で特別な権限を持つ監査委員というのが生まれるということになってしまうわけで、合議機関としての性格が変わってしまうという懸念というのは私は首肯できる見解だと思います。 そこで、加えてお尋ねしますが、法文上「監査委員は、経営委員会の委員の中から、経営委員会が任命し、そのうち少なくとも一人以上は、常勤としなければならない。」とあります。 一方で、政府の説明資料では、委員の常勤化について、三人程度ということが記述をされておられます。法文上は常勤三人程度というのはないわけですけれども、その常勤化三人程度の内訳はどういうものなのか。 その点、先ほどの田嶋委員の質問への答弁もございましたけれども、監査委員が二名でその他事務局の仕事を指揮する人が一名ということでよろしいでしょうか。 |
○塩川委員 経営委員会の判断というお話がございました。 そこで、重ねてお尋ねしますが、内閣総理大臣は国会同意人事の際に、経営委員の任命に当たって、常勤か非常勤かを特定して提案をして任命することになっておりますね。確認です。 |
○塩川委員 国会で人事案件がありますと、その一覧表の中に常勤、非常勤というのは打ってあるわけですね。今まで経営委員会は全員非常勤でしたからはっきりしていたわけですけれども、今度、常勤、非常勤というのが入って提案がされるということになります。ですから、常勤について、経営委員会の判断とはいいながら、実際には政府、内閣総理大臣がその点をも指定をして、常勤はこの人ねと指定して提案をし任命をするということになります。 ですから、監査委員として大変強い権限を持つ経営委員を常勤として政府・与党が任命することができるような仕組みになっている。この枠組みを利用して、政府・与党の意を酌んだ人物を監査委員に送り込めるということになるんじゃないんでしょうか。こういう仕組みは本当に適当なのか。増田大臣、いかがですか。 |
○塩川委員 常勤の監査委員を政府が指定するという仕組みになっているわけですから、この枠組みを利用して、政府・与党の介入の仕組みとならざるを得ないという点について極めて重大だと思います。政治介入を一層強めることになりかねないわけで、経営委員の中から常勤の監査委員を選ぶというのはやめるべきだ。 とるべきなのは、やはり経営委員会の事務局体制の強化であります。実際に経営委員会の事務局は現行七人だそうですけれども、その中に事務局長もいるわけですから、そういう機能というのはさらに強め大きくしていくということが必要だと思いますし、もともと、委員会等設置会社のスキームにのせて監査委員会を経営委員会の中に置くということを最善というのかどうかというのがそもそも問われているわけですから、監事の機能強化という点について大いに力を尽くすということであってこそ必要な体制の強化、ガバナンスの強化につながるということを強調しておくものです。 次に、認定放送持ち株会社制度の導入について質問をいたします。 提案理由説明に、この認定放送持ち株会社制度の導入について、「経営の効率化、資金調達等のメリットを有する持ち株会社によるグループ経営を経営の選択肢とするため、複数の地上放送事業者の子会社化を可能とするマスメディア集中排除原則の適用緩和」を行うものと述べております。 そこで質問いたしますが、この認定持ち株会社制度導入によって適用緩和をされるマスメディア集中排除原則というのは何なのか、持ち株会社の導入によって緩和される部分は具体的にはどういうことなのかという点について、まず確認で質問させてもらいます。 |
○塩川委員 マスメディア集中排除原則の適用緩和ということになるわけですけれども、五十二条の三十三、電波法の特例のところで読みかえ規定がございます。「認定放送持株会社の子会社であることの特性を勘案しつつ、」必要な事項を定めるということで、現行の放送事業者と区別して、持ち株会社の子会社については別な基準を定めましょうねというダブルスタンダードになるということだと思うんです。法文上は、グループ経営を可能とするということに限定していることは何も記述がされていないわけですね。それはそういうことですね。 |
○塩川委員 グループ経営を可能とするということの中身として、放送対象地域の異なる場合についてその出資規制を緩和するという点があるわけですけれども、その点でのグループ経営を可能とするというふうに法文上で書かれているわけですか。 |
○塩川委員 いわば根幹にかかわる制度の枠組みのところについて省令に落としていく。従来も省令だったといえばそうなのかもしれないけれども、今回、マスメディア集中排除原則という規定を法文上明記するわけですから、それについての具体的な枠組みそのものについても法定化をするということが本来求められているというふうに思います。 認定持ち株会社は、異なる地域であれば、幾つもの地上放送局を子会社にすることが可能となる、もちろん、省令で幾つと定めるという話があるでしょうけれども。この認定放送持ち株会社制度導入によって懸念されるのが、キー局中心の集中寡占が進んで、キー局中心の放送内容が拡大することになり、マスメディア集中排除原則で掲げる多元性、多様性、地域性が空洞化するんじゃないのか、こういう心配であります。 そこで、増田大臣にお伺いします。 特に、ローカル局に対するキー局の支配が強まって、地域性が喪失することになりはしないのか、そういう強い懸念を覚えますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。 |
○塩川委員 この地域放送確保の努力義務というのは、何らかの基準なり枠組みというのを示すということになるんでしょうか。 |
○塩川委員 もともと、放送局に対するこういった行為規制については、やはり、表現の自由の直接的な制約にもつながるものですから、放送事業者への規制手法としてはなじまない、慎重であるべきであるわけです。 ですから、本来は構造規制という形で出資規制などを通じて地域性の確保ということを求められてきたわけですから、そちらの構造規制の方を外して、一方で、では行為規制についてはよろしくお願いしますという話ですから、そういうやり方では、本当に地域性の確保ができるのかという懸念というのが出てくると思います。 なぜ持ち株を導入するのかということについて、提案理由説明でも、持ち株会社は「経営の効率化、資金調達等のメリットを有する」というふうに言っておりますし、この法案をつくる上での準備作業を行ってきたデジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会の最終報告では、「持株会社の活用によるメリット」として、持ち株会社を通じてグループ全体の資金調達を行うことによりデジタル化に伴う傘下の放送事業者の資金調達が容易になると指摘をしております。 結局、持ち株会社制度導入の直接の動機というのが、二〇一一年の地上波デジタル放送の全面実施に向けて、過大な負担で経営が大変となっているローカル局に対して、キー局からの資金援助が行えるようなスキームにするということがねらいだということです。 ですから、そうであるならば、放送局を資金不足に追い込んで、業界再編とか持ち株会社化を加速させるようなやり方というのはおかしいわけで、実情に合わない地上波デジタル放送の完全実施の時期そのものを見直すということが必要じゃないでしょうか。日程だけ決めて事業者を追い込むようなやり方というのは本来とるべきじゃない、そういうふうに率直に思いますけれども、大臣、いかがですか。 |
○塩川委員 地方分権、地域再生と言う総務省において、経営基盤の強化が必要というのも、地域経済が疲弊しているというのが大きいわけで、その点での政府の施策がどうだったのかということがそもそも問われておりますし、地上波デジタル放送の完全実施というのも、先にありきというやり方ではなくて、実情に即した形での対策こそ必要だ、持ち株会社による地方局の子会社化で地域性を損なうやり方というのは認められないということを述べて、質問を終わります。 |