<第168回国会 2007年12月6日 総務委員会 第8号>


○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、放送法等の一部を改正する法律案に対しての反対討論を行います。
 反対理由の第一は、認定放送持ち株会社制度の導入によってマスメディア集中排除原則を空洞化させるものだからです。
 マスメディア集中排除原則は、憲法で保障された放送による表現の自由ができるだけ多くの者によって享有されるように、放送を一の者に独占させないようにするものですが、認定放送持ち株会社はこの原則の例外とされ、異なる地域であれば複数の放送事業者の子会社化が可能となり、持ち株会社による放送の寡占化、集中化をもたらすことになります。
 現状でも、放送番組がキー局中心で、地域独自の制作が少ないとの指摘がありますが、この傾向がさらに進みかねません。新たな行為規制も、これまでの原則、構造規制を補うものではなく、視聴者・国民の知る権利も狭めることになります。
 反対理由の第二は、NHKの経営委員会の合議制をゆがめ、政府の介入につながる仕組みをつくるからです。
 NHKの経営委員会は、独断を排し、各分野の知識と経験と意見を持ち寄って、民主的に決定が行える合議制機関として位置づけられてきました。常勤化される一部の経営委員が監査委員を兼任し、新たに監督と監査を行い強い権限を有することとなり、非常勤の委員との間に格差を持ち込むことによって、合議制をゆがめるものです。一部常勤化については、経営委員会からも、情報量の面で格差が生じ、合議機関である経営委員会の独立性と多様性を損なう懸念などの見解が三月に出されています。
 また、常勤者で強い権限を持つ経営委員の任命を内閣総理大臣が行うことになっていることは、NHKに対する政府の介入が強まるものであり、重大です。NHKのガバナンスにおいて、営利企業と同じ仕組みを持ち込むことは容認できません。
 反対理由の第三は、国際放送の命令制度の問題です。命令制度について命令を要請と変えても、NHKに努力義務を課すなど、政府の介入を排除できないものだからです。
 そもそも、国際放送の命令は、独立規制機関、電波監理委員会が行っていたものを、電波監理委員会の廃止後政府が直接行うようになったことに、政府の介入を招く大もとの要因があります。小手先でなく、制度のあり方を根本から見直すべきです。
 なお、修正案については、表現の自由、番組編集の自由を侵害する再発防止計画に関する改定規定の削除は当然ですが、他の問題点を修正するものではなく、反対です。
 最後に、放送の今後のあり方の転換を行う重要な審議をわずか六時間で終局したことについて遺憾の意を表し、討論を終わります。