<第168回国会 2008年1月15日 総務委員会 第10号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、公立病院改革ガイドラインについて質問させていただきます。
 最初に、公立病院の現状認識について伺いたいんですが、このガイドラインで、多くの公立病院において、経営が悪化するとともに、医師不足に伴い診療体制の縮小を余儀なくされていると述べております。この医師不足が公立病院の経営悪化の要因になっている、このような認識はおありでしょうか。その点を確認させてください。

○増田国務大臣 公立病院の経営悪化の原因というのは、やはりこれも複数あると思っておりますが、その中で医師不足がどういうふうに影響を与えているかといいますと、結局、医師不足に伴って、どうしても診療科を閉鎖したり体制を縮小するということがございます。そうしますと、病院の病床数の中で十分に使われない病床数なども出てくるといったことで、そのことが診療体制の縮小、そしてそれが経営の方の悪化につながってくる、こういうことではないかというふうに思っております。
 したがいまして、この公立病院の経営悪化の原因は幾つかございますが、その中で、こうした医師不足が経営の悪化の方に与えている影響というものもかなりのものがある、こういうふうに考えるものでございます。

○塩川委員 その際に、このガイドラインで医師不足が解消すると言えるんでしょうか。

○増田国務大臣 この医師不足でございますが、これもいろいろな原因がございます。例の訴訟リスクをどのように軽減させるかといったような問題ですとか、あるいは、これは大学教育のあり方にも絡んでまいりますけれども、医局のあり方などにもつながってくるというふうに思います。
 したがって、そういう点を解決していかなければならないので、その点については、昨年の五月に政府・与党で医師不足対策の対応策をまとめましたが、そういったことが有効ではないかと思います。
 この公立病院改革ガイドラインの中では、そうした医師不足対策への政府・与党合意も踏まえて、その対策が行われているということも含めながら、病院の経営改革という観点からまとめたものでございますので、このガイドラインのものと、それから、今申し上げましたような医師不足対策そのものに対しての対応策などを講じていく中で、やはり医師不足というのは、これは大変喫緊の課題でございますので、ぜひ国を挙げて解決していかなければならない、このように考えております。

○塩川委員 この緊急医師確保対策は、医師は基本的に足りているというような認識に立って、全体の医師数を抑制するという政策を変えるものではありません。
 そういう点でも、例えば朝日新聞などでも、医師の確保策などを十分に講じず経営改善だけを急ぐなら、赤字はなくなったが地域医療が崩壊したという結果を招きかねない、こういう指摘も出されているわけです。
 ですから、深刻な現状を踏まえて、医師不足とともに看護師などの医療スタッフの不足も深刻です。公立病院の経営悪化が診療報酬の引き下げあるいは医師不足等に起因すると認めるなら、小手先でなく大もとからの政策転換が必要であります。
 その点でガイドラインの対策がどうかということですが、ガイドラインにあります「公立病院に関する地方財政措置の重点化」のところで、「病床数に応じた普通交付税措置に際して、今後の各病院における病床利用率の状況を反映することを検討する。」とあります。
 例えば例を挙げますと、一般病床が百床で、その病床利用率が六〇%という病院の場合ですと、現状は、その病床数百床掛ける四十九万五千円で四千九百五十万円になりますけれども、もしそれが病床利用率で計算をするとなると二千九百七十万円、千九百八十万円の減額という形になりかねません。
 そこでお尋ねしますが、病床利用率が低ければ交付税措置を減らすということもあり得るのか、その点いかがでしょうか。

○増田国務大臣 お答え申し上げます。
 病床利用率が恒常的に低いという場合には、そうした病院について、医療資源の適正配分という観点から、やはり見直しをしていただかなければならないというふうに思っております。
 これは、現在の交付税算定の場合に、許可病床数ということでこれを指標にしているんですが、実は、随分空きベッドがある状況だということが常態化しているようなものについては、地方団体間でも、やはりそういうところに交付税が行くのはおかしいのではないかという、見直しを求める意見があるのも事実でございます。
 ただ一方で、そういう中でいろいろ調べてみますと、一般に病床利用率は過疎地の小規模な病院においてどうしても低い傾向もある、これも事実でございまして、病床数、特に病床利用率をもとに一律に見直しをしていくということになりますと、こうした特に過疎地域の規模の余り大きくない病院で、しかし地域にいろいろな役割を果たしている病院にしわ寄せが来る、こういったこともございます。
 したがいまして、私どももこの交付税算定の考え方については見直しも含めていろいろ考えていきたいというふうに思っておりますが、しかし、あわせて、私が今申し上げました過疎地の病院ですとか診療所についての交付税措置については、こちらの方は充実するということを前提にして今検討しているところでございます。

○塩川委員 過疎地の充実は一律ではないという話です。それは、答弁にありましたように、病床利用率が低ければ交付税措置を減らすという見直しもあり得るという話でありました。
 しかし、過疎地だろうと都市部だろうと、利用率が低いところについては、やはり医師不足が反映している、医師不足が原因だということも当然あるわけです。診療体制の縮小などとともに、常勤医師が確保できないために入院はできないという形が現に生まれているわけですから、常勤医師が確保できなければ病床利用率も改善できないんじゃないのか。医師不足の解消なしには病床利用率の改善にもつながらない。それを、実情を踏まえないペナルティー的なやり方で交付税措置を見直すということは、これはとってはならないやり方じゃないのかと思うんですが、その点いかがですか。

○増田国務大臣 医師不足の解消はもう優先課題でありますので、当然必要だろうと思います。
 一方で、人口などが随分減っている地域で、確かに施設的に見てもこうした施設が過大になっているような病院もございますし、それから、岩手県での経験もございますが、県立病院とそれから市立病院、地元の所在市で建てている病院と診療科が随分重なっておりまして、医療資源が大分非効率になっているような地域もございました。
 そんなこともございますので、医師不足に対しての対応策というのは当然優先して講じなければいけないというふうに思いますし、それから、過疎地などでの実態も十分踏まえる必要があると思うんですが、一方で、やはり病床利用率が余りにも低くて、医療資源が十分に適正に活用されていないといったようなことについて何らかの措置は必要である、このように考えているものでございます。

○塩川委員 実情を踏まえないペナルティー的なやり方はやめるべきだということを申し上げ、この間の診療報酬のマイナス改定それから医師不足というのに加えて、やはり地方交付税の削減の措置も自治体病院経営悪化要因の一つだと言えます。
 病床当たりの普通交付税については、この間、都道府県で、平成六年度の八十三万円が平成十八年度には四十八万円、市町村では、平成九年度の七十四万円が四十八万円にとなっております。自治体病院運営費等への普通交付税措置の削減等が病院経営を深刻にする要因の一つともなっている。
 自治体病院の赤字事業数がこの六年間、平成十二年の四六%が十八年には七七%と、二分の一から四分の三へと急増する。その間、普通交付税措置額の推移は、平成十二年度の二千七百二十三億円が十九年度では二千五百八十四億円、八%減という点でも、この病院事業に係る交付税措置の拡充こそ全体として図っていくべきじゃないでしょうか。その点、大臣、いかがですか。

○増田国務大臣 お答え申し上げます。
 交付税のここ数年の削減傾向というのはいろいろなところに影響を及ぼしておりますけれども、病院経営、特に公立病院経営の中でのそれぞれの地域の病院に非常に厳しい影響を与える、これは私もそのとおりであるというふうに思っております。
 そこで、先ほどお話し申し上げましたとおり、過疎地域の病院、診療所について特に地方交付税措置を充実するということを今検討しているわけでございます。来年度、交付税全体の増額ということが五年ぶりで行われます。この中で特にねらいといたしますのは、そうした財政状況が非常に厳しい、そしてそれを通じて生活に対していろいろなマイナスの影響が出ているようなところに対して手当てを行いたいということでございましたので、そういった大きな目的をきちんと医療面でも果たしていきたい、このように考えているところでございます。
 なお、診療報酬もずっとこのところ削減傾向でございましたが、来年度は、少しでございますけれども全体としてふえるというようなこともございます。これは厚生労働省の方の関係のことでもございますが、そういったことも含めて、やはり医療の水準、そして内容、質の確保というのは大変重要なことでございますので、私どもも地域の医療実態をよくお聞きした上で適切に対応していきたい、このように考えております。

○塩川委員 次に、公立病院の果たすべき役割についてですけれども、明確化ということで何点か具体的に指摘をしておられます。
 自治体病院は医療機関という役割だけではなくて、行政機関の一つとして、保健、福祉、医療を一体的に推進する役割も果たしております。ガイドラインでこのように公立病院の役割を限定列挙するようなことになれば、自治体病院がそれぞれ固有、歴史的な経緯を踏まえて果たしてきた行政機関としての役割、機能を損なうようなことになりはしないか、このことを思いますが、その点いかがでしょうか。

○増田国務大臣 お答え申し上げます。
 報告書の中で確かに公立病院に期待される機能、役割といったようなことで記述してございますが、これは主な機能を具体的に例示すればということで書いているものでございます。だからといって、これが主な機能ではないということを申し上げるつもりはないんですが、やはり今議員がお話しございましたような一般行政部門と連携して行っているような分野、保健衛生といったような分野が典型だと思いますけれども、こうしたものも公立病院の果たすべき重要な役割というふうに考えてございます。
 こうしたことも含めて、公立病院が今後十分に役割を果たせるようにしていきたい、経営を十分なものにしていくようなガイドラインの趣旨でございますので、そういった一般行政と連携して行っている役割についても十分に機能が発揮できるようなことを考えたい、このように考えておるものでございます。

○塩川委員 ガイドラインの中で数値目標を設定し、国が点検、評価する仕組みをつくったり、都道府県が公立病院の再編・ネットワーク化の計画を作成することなどが行われれば、一公立病院を現状で維持存続しようとその自治体が考えたプランというのが、そういう形で計画を立てること自身が不可能になりはしないかということを率直に懸念しますが、その点はいかがでしょうか。

○増田国務大臣 ガイドラインでございますので、ある程度数値目標を立てて、必要なものについてはその目標に向かって進んでいただかなければならないというふうに思っておりますが、こうした公立病院の問題については、特にこれは市町村というよりは県の役割が大変多いと思うんですけれども、県の中でこうした公立病院の役割ですとか適切な機能分担といったようなことをいろいろと考えていただく必要があるだろう。
 その中で、こうしたガイドラインの考え方というのは私どもも今月から公共団体に御説明を十分にしていくことでございます。今までいろいろ御意見もお聞きしつつまとめたガイドラインでございますが、一方で、その考え方についてさらに十分に御理解いただけるよう御説明してまいりますので、そうした地元の県、さらには市町村とも十分に理解と連携を深めた上で、この機能が十分に果たせるようにしてまいりたいと考えております。

○塩川委員 医師抑制路線そのものを撤回するとともに、財政健全化法や今回の公立病院改革ガイドラインが自治体病院のリストラを推進し、地域医療の崩壊につながりかねない、そういう懸念を持つものだということを指摘して、質問を終わります。