<第169回国会 2008年02月15日 予算委員会9号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょう、私は、大企業の製造現場における下請労働者に対する安全対策の問題についてお尋ねしたいと思っております。
 今お手元に資料を配付させていただいておりますけれども、これは平成十九年版の厚生労働白書ですけれども、ここには「労働災害発生状況の推移」ということで、一九七三年以降の数字が出ております。
 死亡者数、下の方のグラフですが、については、傾向として減少傾向にありますけれども、一方、一度に三人以上の方が死傷するという重大災害の発生件数というのは、一九八五年以降増加傾向にあって、二〇〇六年の数字では三百十八件、一九八五年と比較をすると二倍以上の重大災害の発生件数となっております。
 厚生労働省は、この重大災害の発生件数について、毎年四月、五月ぐらいに、死亡事故などについて労災を発表しておりますけれども、その際、〇四年以降、重大災害事故というのはピックアップをして取り上げるようになりましたし、二〇〇五年の厚生労働白書以降、この重大災害について明記をしております。
 そこで、舛添大臣にお尋ねしますが、重大災害発生件数を厚生労働白書で取り上げ始めたその理由、きっかけは何なのか、その点が一点と、もう一つ、この重大災害が増加傾向にある理由は何なのか、その点についてお尋ねをいたします。

○舛添国務大臣 まず、委員お尋ねの第一の点でございますけれども、実は、平成十五年、二〇〇三年に、大規模製造業において爆発火災事故が続発した、こういうことを背景といたしまして、平成十六年、つまり二〇〇四年版の厚生労働白書において、重大な労働災害につきましてまず記述を始めました。そして、その翌年の十七年以降、二〇〇五年以降の白書において、一時に三人以上の労働者が被災した重大事故の件数を記載するということで、継続的にそれ以降書いております。
 それから、今お尋ねの、過去二十数年間、重大災害というのは実は増加傾向にありまして、例えば昭和六十年には百四十一件であったものが平成十八年には三百十八件と倍増ということでありまして、ただ、この内訳を見てみますと、先ほど私は、重大な爆発事故が契機だということなのでこれが多いかなと思って調べてみますと、実は交通事故というのが一番多うございまして七十七件、中毒や薬の傷、これは集団中毒で、ノロウイルスとか、こういうのが四十九件、それから、施設内で病原体に感染するなどその他が四十六件増で、この増加傾向をもたらしている一番大きな要因というのは、実は交通事故の発生件数がふえた、こういうことでございます。

○塩川委員 その点でも、例えば交通事故の重大災害の発生件数がふえているのはなぜなのか、そういう分析というのが必要ではないか。また、火災や高熱物における重大災害の件数というのも全体としてはふえる傾向にありますし、確かに爆発事故については年度で大きな差がありますけれども、しかし、トータルでは減ってはいないわけですから、やはりそういった踏み込んだ分析そのものが必要ではないか、その点を率直に思うわけです。
 やはり、重大災害がふえ続けているということをわざわざ特記しているわけですから、それについて踏み込んだ分析を今後きちっと行うべきだ、その点について一言いただけますか。

○舛添国務大臣 例えば、コンビナートなんかで大爆発が起きますと大きなニュースになります。だけれども、一つ一つの交通事故について一々ニュースになりませんね。ですけれども、今委員おっしゃったように、できるだけ個々のケースについて分析をする。例えば、平成十八年度で全体で三百十八件ですから、多いといえば多いんですけれども、いろいろなデータをもとにして、もう少し踏み込んだ分析をやってみたいと思います。

○塩川委員 そこで、この間、重大災害がふえている問題についてもう一つ踏み込んだ分析が必要ではないかと思うのが、大企業の製造現場が大きくこの十数年間で変化をしているのではないか、その問題であります。
 そこで、総務省にお尋ねしますが、製造業における派遣、請負労働者数の推移ですけれども、製造業の事業所の中に外部の人材が入る、派遣や請負という形態で入る、その人数について統計でとっていると思いますので、一九九六年を起点に直近の数字まで、その人数についてお示しいただけますか。

○川崎政府参考人 お答え申し上げます。
 総務省統計局が行っております事業所・企業統計調査の結果によりますと、製造業の派遣、下請の従業者数は、平成八年、一九九六年が九十八万九千人、それから、平成十三年が六十三万三千人、平成十六年が八十一万一千人、直近の平成十八年が百二万八千人となっております。

○塩川委員 九六年は四十八万九千二百三十四人だと思いますが、その点、確認していいですか。

○川崎政府参考人 はい、そのとおりでございます。

○塩川委員 この十年間で、製造業の現場における派遣、請負の数が二倍以上、二・一倍にも膨らんでいるというのが実態であります。
 そういう中で、災害発生率の現状がどうかということについて厚生労働省が調査をした中に、元方、いわゆる元請の業者と下請の事業者を比較した場合に災害発生率がどういう違いがあるのか、そういうデータがあると思いますが、その数字についてお示しいただけますか。

○舛添国務大臣 平成十五年に実施しました大規模製造業における安全管理体制及び活動等に係る自主点検、こういうデータがございます。その中に、年千人率というのは、これは労働者千人当たり一年間に発生した死傷者の数、年千人率と申します。これを元方で見ますと五・〇九。ところが、関係請負人の年千人率は一一・三二ということで、倍よりちょっと上、そういうことでございます。

○塩川委員 元請に対して下請の災害発生率が二倍以上になっているということであります。そういう点でも、大企業の製造現場において派遣、請負がふえていく、そういう中で、特に派遣、請負の労働者に災害が大きく発生をするという実態になっているわけです。
 二〇〇三年に相次いだ大規模工場での労働災害、その事故を踏まえて、厚生労働省で検討会を開いてまとめられた報告書が〇四年の八月に出されておりますが、そこでも、「アウトソーシング化等により業務の合理化・効率化が図られているが、これに対応した安全対策の見直しが十分図られているとは言い難い」と。つまり、アウトソーシング、外部人材を活用するというのは急速に進んでいるけれども、それに見合った対策が十分図られていないという点です。そういう点で、この点でも踏み込んだ対応が求められていると思っております。
 そこで、ここで大企業の製造現場で下請労働者が被害を受けた事例を具体的に示して質問したいんですけれども、昨年の十二月の二十一日、三菱化学の鹿島事業所のエチレンプラント火災事故で、下請の労働者の方四人が亡くなられるという大災害がありました。この三菱化学は、エチレン製造では国内トップシェアの企業であります。
 そこで、甘利大臣にお尋ねしますけれども、経済産業省の原子力安全・保安院に三菱化学から事故報告書が提出をされております。そこにおいて、火災の引き金となったクエンチングオイル、急冷油、冷却用の油ですね、これが漏れ出す。それが発火の要因となるわけですけれども、このクエンチングオイルが漏れ出すという直接の原因及び間接の原因というのはどういうものだったのか、どういう指摘がされているのか、お答えください。

○甘利国務大臣 御指摘の火災事故の発生を受けまして、原子力安全・保安院は、この三菱化学に対しまして事故原因の報告を指示しまして、十二月二十七日及び本年一月九日、同社から報告を受けました。
 この報告では、御指摘のとおり、冷却用の油、クエンチオイルの配管の工事中にこれが発生しておりまして、その直接原因は、仕切り板の入れかえ工事中に、バルブの起動スイッチが入って、バルブが開いて油が流出した、これはかなり高温の油でありますから、それが火災原因。
 それから、間接原因は、工事安全指示書等によりまして、バルブ作動防止のための施錠をする、かぎをかけるということになっておるわけですが、その確認をなすべきであったにもかかわらず、これが実施されなかったことであるという報告を受けております。
 このために、三菱化学が高圧ガス保安法に基づいて受けております自主検査に係る認定、この体制面での基準に適合していないと認められると判断をしまして、本日十五日、三菱化学に対しまして当該認定を取り消す処分を行ったというところであります。

○塩川委員 今お話しのように、三菱化学に対し原子力安全・保安院として行政処分を行ったと。今まで、自主保安ということで、一年に一回は保安検査、開放検査を行わなければいけないのを、それなりの実績のある企業についていえば、四年、四十八カ月連続運転が可能だよということを認定する事業者、その認定を取り消すという形であるわけです。もともと、今までの特権をもとに戻すということですから、そういう点で、こういう企業を認定した大臣そのものの責任も問われてくるわけであります。
 そこで、資料の二枚目をごらんいただきたいんですが、この現場において亡くなった方の所属企業名が二転三転をしているということがございます。
 左側が事故の翌日の新聞です。傍線が引いてあるところにありますように、つまり、二十一日、当日、会社側の発表をもとに記事にしたものですけれども、亡くなった方の会社名が加藤商工という会社と、あと、二段目の一番後ろにあります新興プランテックという会社になっております。
 それが、真ん中にあります、二十二日付でホームページ上にも三菱化学鹿島事業所が掲載をした資料の中では、亡くなった方の会社名で、加藤商工というのがなくなって、谷黒板金、岩橋板金工業所となり、新興プランテックという会社名がなくなって、株式会社大和と常鹿工業株式会社と変わっております。
 さらに、原子力安全・保安院に提出をされた三菱化学の事故報告書で亡くなった方の所属会社を見ますと、真ん中のと比較をしていただきたいんですが、一番下、常鹿工業とされていたのが、最終的に保安院に提出をされた事故報告書では将工業と変わっている。
 被害を受けた、亡くなった労働者の方の企業名が次から次へと変わっている。これはどういうことなんでしょうか。この報告書を出された保安院、責任者の甘利大臣、お答えいただけますか。

○甘利国務大臣 今回の火災事故におきまして、四名の方々が亡くなられました。改めて心よりお悔やみを申し上げます。
 御指摘のとおり、亡くなった方々の所属会社の名前が、昨年十二月二十一日、当初の三菱化学の発表と、それから、その後、十二月二十七日の原子力安全・保安院への報告とにおいて異なっているということは事実でございます。
 これは、三菱化学が最初の発表において、火災発生当日の構内の入場者名簿において把握していた協力会社の名前と、それから協力会社から作業を請け負った会社の名前を発表したわけでありますが、亡くなった方が実際に所属していた会社の名前を確認することがおくれたためであるということであります。
 要するに、下請一次、二次を把握しているんですが、実際には三次請負、下請の方が三名と、四次が一名でありました。ということで、そこまで当初、会社側が把握していなかったということであろうと思います。

○塩川委員 資料の三枚目をごらんいただきたいんですが、これは三菱化学鹿島事業所の説明資料をもとに作成をいたしました火災現場の工事体制表で、亡くなられた方の会社に至る工事の体制図であります。
 三菱化学が発注者で、三菱化学エンジニアリングがいわば元請として、その下に新興プランテックがあり、左側に行きますと、仕切り抜き工事を行った常鹿工業、房総工業、将工業と、実際に亡くなられた方が所属をする将工業の名前が出てくるのが五次目ということになってきております。
 ですから、今、大臣がお話しになりましたように、一次、二次のレベルでしか三菱化学は把握をしていない。三次、四次以下、それ以降については、三菱化学そのものが現場の実態を知らないということを示しているわけであります。三菱化学が作業現場の下請労働者の実態を把握していないということを露呈するのが、この資料ということになります。
 この三菱化学を含めた石油化学プラントの特にメンテナンスなどの工程におきましては、重層下請構造になっているということであります。
 以前から、石油化学コンビナートにおけるプラント設備の保全、補修の作業におきましては、重層下請構造のもとで下請労働者が事故の犠牲になってまいりました。十年以上前の九五年に、川崎の東燃における石油精製施設での事故におきましても、亡くなられた方が三名いらっしゃる、重軽傷が四十四名という大事故がございましたが、そのとき亡くなった三名の方も、六次の下請の事業者の労働者の方でありました。
 こういうように、重層下請構造になっている。あるプラントにおきましては十次まで下請がある、こういう構造になっているわけです。ですから、本来、こういった重層下請構造になっているような石油化学関係の製造業においては、それにふさわしい安全対策を講じることが求められているわけです。
 そこで、舛添大臣にお尋ねしますが、この〇三年の一連の事故も踏まえまして、二〇〇五年に労働安全衛生法が改正されました。特に石油化学関係の製造業にかかわって、どのような改正が行われたのかについて簡単にお示しいただきたいんです。

○舛添国務大臣 今御指摘の点は、この平成十七年、二〇〇五年の労働安全衛生法の改正におきまして、製造業の元請、元方事業者に対して、関係請負人との連絡調整をまず義務づけました。
 これは、私も調べてみましたら、こういう例もあるんですね、委員。一人が電気の工事をしている。そうしたら、この関係がちゃんといっていないものですから、それに試運転のスイッチを入れたので、急に電気が流れて感電した。それから、親会社がフォークリフトを運転している。そうすると、子会社がその同じルートを向こう側から台車を持ってきた。それはぶつかっちゃいますね。これは、ちゃんと元請と下請が、こういう電気工事をしますよ、だから通電しないでください、このルートはフォークリフトが通りますから通らないでください、こういうことをやっていれば防げた例なんです。
 これはきちんとやってもらわないと困るということで、製造業につきましてこれを義務づけたところでありますので、今後とも、この労働安全衛生法を含め、法令をきちんと守る。そして、必要ならば必要な改正をして、労働者を守っていく、そういう姿勢を貫きたいと思います。

○塩川委員 〇五年の労働安全衛生法の改正につきましては、今お話ししました三十条の二に係る連絡調整、連絡調整といっても、合図の統一とかそういう話であります。
 もう一点、化学設備のメンテナンスなどを行う作業の注文者は文書の交付をしなければいけない、これは三十一条の二の関係で出されているわけですが、この労働安全衛生法にかかって、この三菱化学の鹿島事業所の事故というのはどうだったのか。その点についてはいかがですか。

○舛添国務大臣 この点につきましては、原子力安全・保安院を含め、経済産業省の方を中心として、事故の全容ということを今解明していると思いますので、そういう観点から、今申し上げたような法令違反があれば、これは厳格に対応していきたいと思います。
 ちょっと、また私のレベルで、本当にどこに原因があったのか、どういう理由であったのか、そして〇五年に改正した労働安全衛生法の法令に違反しているのか、こういうところに照らして、もしそういうことが明確になれば、きちんと処分をしたいと思います。
    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

○塩川委員 今回、作業現場には五人の方がいらっしゃって、三菱化学の社員が立ち会って、将工業の方が三人、それから大和工業の方が一人ということで、クエンチオイルの漏えいの現場ですけれども、そのうち二人の方が亡くなっております。
 そうしますと、三ページ目の工事体制表を見ましても、三菱化学エンジニアリングの人もいなければ、新興プランテックの人もいないわけですよね。本来、三菱化学と一緒に工事安全指示書などをつくるような、そういう元請や一次の下請、こういったメンバーが入っていないというのが現場の実態でした。そういう点でも、私、この〇五年の法改正は極めて不十分だと。そういう点でも、先ほど大臣が、必要であれば法改正もという話がありましたように、まさにそこに踏み込むべきときではないかと思っております。
 ですから、こういう三菱化学のようなプラントにおけるメンテナンスなどの作業というのは、製造業においても重層下請構造ですから、重層下請構造というのであれば、建設業や造船業と同様のような必要な規制措置というのはとるべきだ。現に、法の三十条や三十一条ではそういう措置が行われているわけであります。
 建設業、造船業で、元請の下請労働者に対する安全対策、あるいは注文者としての安全対策にどういうものがあるのか、なぜそうなっているのかについて、あわせてお答えいただけますか。

○舛添国務大臣 今は、この三菱化学の事故は、製造業というくくりの中にあります。しかし、今委員おっしゃったように、建設業それから造船業、これについては、重層下請を含め、規制をもっと厳しくしてございます。
 それは、例えば、先ほど私は、元請と下請の関係調整をちゃんとやらぬといかぬ、合図の統一もクレーンなんかやらぬといかぬということのみなんですけれども、建設業は、元請は請負人との協議組織を設置しないといけない、それから作業間の連絡調整、作業場所の巡視、それから安全衛生教育の指導などの措置、それから統括安全衛生責任者を選任する、こういう四項目ぐらい余分の項目が、建設業そして造船業については付してございます。
 これは、建設現場では下請の事業者が毎日日がわりのように変わっていく、それから作業内容も日々刻々変わっていく、しかも、先ほど下請が十層あったというような話がありましたけれども、何十層にもなっているようなこともあるというようなことで、こういう重い規定を置いているわけでございます。しかし、今委員が御指摘のように、では建設業、造船業以外の製造業は安全衛生について手抜きをしていいのか。私は、決してそうであってはいけないというふうに思います。
 ですから、建設業それから造船業は今言ったような理由から極めて重い規制を課しておりますけれども、今後、いろいろな有識者、それから私もできれば現場も視察した上で、ぜひ、労働者の命を守っていくんだ、働く人の権利を守っていくんだ、そういう観点に立って、製造業においても重層構造があり、同じような問題があるとすれば、労働災害の防止対策を徹底するという意味で、しかるべき法改正も含めて検討したいと思いますので、委員の御提案を貴重な提案として、今後の検討課題とさせていただきます。

○塩川委員 その点で、今大臣がお示しされた建設業、造船業における元請の責務、義務規定については法の三十条の関係がありまして、法の三十一条の方で、注文者、いわば実際に自分の仕事をする、それで下請に指示も出すような、そういった事業者が下請労働者に対しても労働環境の安全を求めるという義務規定、下請労働者の労働災害防止のための措置義務というのもかけられているわけですから、そちらも含めた具体的な措置をとるための実効ある法制度の改正にも踏み込んでいただきたいと思いますが、その点いかがでしょうか。

○舛添国務大臣 衛生法の十五条、そして三十条、三十一条を含めて、法の精神を体現した形で、これは必要ならば改正をする。
 しかし、やはり企業というのは、ただお金もうけをすればいいのではなくて、社会的責任をきちんと果たしてもらわないといけない。そして、そういう重層的な下請であっても、元請の労働者は守るけれども下請は守らない、こういうような意識でもって労働者を扱うような企業は許されないと私は思いますから、きちんと社会的責任を果たしていただきたい。法があろうがなかろうが、そういうきちんとした原則と指針でやることこそが尊敬される経営者の姿であると思っております。

○塩川委員 まさにその点が問われてくるわけで、〇五年の法改正をさらに強化するという措置はぜひお願いしたいと思いますけれども、もともとアウトソーシングを拡大して重層下請構造を進めてきた製造大企業の製造現場において、今やはり大きな問題が起こってきております。私は、この三菱化学の鹿島事業所の火災事故を見たときに、そういう重大災害事故の背景には、率直に言って、利潤とコストを優先して安全軽視をする、そういうレールを政府が敷いてきたことが問われているんじゃないか。
 例えば、労働安全衛生の保安規制の緩和あるいは高圧ガス保安法における保安規制の緩和というのが、この間行われました。企業の現場で連続運転を可能にしたい。ですから、本来は一年に一回、開放検査という形で機械をばらして点検をしなくちゃいけないのを、二年に一回でいいですよ、四年に一回でいいですよと、この十数年間、ずっと改正を行ってきました。それは、ボイラーについての労働安全衛生法もそうだし、また、その他の高圧ガス保安法に基づく高圧ガス設備についても同様な措置が行われてまいりました。
 それに加えて、現場においては特区が行われて、その四年とかについてはもっと延ばしてもいいよということを求めるような申請も現実に行われているわけです。
 そういった中で、もともと事故があったプラントというのは最新鋭のプラントです。連続運転が可能なプラントですから、最新鋭のプラントを効率よく動かしたいという動機のもとに、まさに効率とコストともうけを優先する形で保安規制の緩和を要求してきたというのが実態なんじゃないのか、このことが問われると思います。
 それに加えて、企業におきましても、生産はフル操業の一方で人員削減を行ってまいりました。その点で、政府の対応が問われます。
 産業活力再生法におきまして、この間、二〇〇〇年と二〇〇五年の二回にわたって三菱化学に対する支援措置が行われてまいりました。三菱化学は、この間、エチレン生産量拡大、販売実績も大きく伸ばしてきております。一方で、職場の人減らしも加速をしております。大規模な人減らしで、業務のアウトソーシング化を図ってきたというのが実態であります。その三菱化学に対し支援策を講じてきたのが政府なのではないのか、そこはぜひ問われてくるときだと思います。
 そこで、甘利大臣にお尋ねしますのは、二〇〇〇年と二〇〇五年の二回にわたって事業再構築計画が、産業活力再生法に基づいて申請が行われました。そこで、二〇〇〇年の計画の提出時期の三菱化学の従業員数は何人で、二〇〇五年のときの計画時の従業員数が何人で、大きく減っているわけですけれども、その減っている内訳を示していただけますか。

○細野政府参考人 お答えを申し上げます。
 御指摘のとおり、三菱化学は、二〇〇〇年と二〇〇五年の二回にわたって計画の認定を受けております。二〇〇〇年の段階におけます最初のときの従業員数、これが九千六百五十人でございます。それから、二〇〇五年、五年後でございますけれども、十月時点で、二回目の計画の申請を出したというときには四千八百七十四名でございます。
 この間、約四千七百数十名の職員の減少が起こっているわけでございますけれども、これにつきましては、基本的には、先ほどこの法律に基づいて集中と選択を進めるという中で、三菱グループの関係会社の中に出向をするというような格好で三千五百数十名、それから、定年退職あるいは一部早期退職も含めまして退職をされた方が二千二百名ほど、それから、別途、いろいろグループ会社を再編する中で新規の採用も行っておりますので、減少ばかりではございませんで、約千名の新規採用もしております。都合四千七百五十名ほどの減少になっております。

○塩川委員 つまり、二〇〇〇年と二〇〇五年で、従業員数が九千六百五十人を四千八百七十四人と半減をさせているんですよ。その中には、出向という形で三千五百五十人、退職という形で二千二百人。ですから、二〇〇〇年時点にいた労働者の六割が職場を去っているんです。五年間でですよ。六割がいなくなる。これでは、職場においてまともな安全対策のノウハウの継承が行われるのか、こういうことが危惧されるのは当然のことじゃないでしょうか。
 大臣、その点いかがですか。こういったリストラを進める中で、こんな重大事故を招いたんじゃないのか、それに対して政府が支援をしてきたんじゃないのか、このことは問われると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○甘利国務大臣 国際競争が激化していく中で、日本の企業が雇用を守る、これは倒産してしまったら全部の雇用が失われるわけでありますから、そのためにも選択と集中ということを行っていって生産性を上げていかなきゃならない、これは宿命であります。そういった中で、三つの事業所を二つにして生産の集約を図ったわけであります。
 要は、何らかの理由でバルブがあいて高熱の冷却剤が流れ出したということが原因で、本当はそこにかぎをかけなきゃいけない、これは当然の手だてとして励行されていかなきゃいけない。それが見過ごされてしまったわけでありまして、そこを、工事安全指示書に基づくバルブの施錠確認ということがちゃんとできていなかった。
 これは、生産を集約化して効率を上げる、三つを二つにしたわけですから一つ分の人は要らないわけでありますが、そういう中できちんと、本来、数が多かろうと少なかろうと、安全指示書というのがあるわけでありますから、それをきちんと励行できていなかった。そこに問題があります。
 どうしてそういう事態が生じたのかを含めて、今、県とそれから保安院とで協力して調査をしているところであります。

○塩川委員 六割もの労働者を減らす、そういう職場においてこういう事故が起こった。そういった企業に対して、こういう事業再編、リストラ支援という形で登録免許税の減税を幾ら行ったのか。合わせて二億九千九百万円、三億円もの減税を行っているんですよ。リストラ支援のための、リストラ応援のための減税ということになるんじゃないのか。
 そういう企業のリストラを後押しするような減税措置を行っているのでは、まともな安全対策はとれない。職場の労働者、ベテランが排除をされることによって、使い勝手のいい、安価な請負で肩がわりをさせる、それが安全確保のノウハウを失わせるものになった。労働者の人減らしをして、安全対策を後回しにして、企業の収益向上ばかりを応援する政治そのものの転換が必要だと強く求めて、質問を終わります。