<第169回国会 2008年2月19日 本会議 第6号>


○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、地方財政計画外三法案について、総理並びに総務大臣に質問をいたします。(拍手)
 総理は先日の予算委員会で、地方に元気がない、経済が思わしくないと述べ、地方の疲弊を認めました。問題は、地方にどのような疲弊があり、それはなぜ生み出されたかということであります。
 この間、国の公共事業の乱発政策が地方に過大な借金を押しつけ、その結果、住民サービスを後退させてきました。また、規制緩和政策のもとで、地方の鉄道やバス路線は相次ぎ廃止をされ、大規模小売店舗法の改悪、廃止によって、中心商店街の衰退、町壊しが進みました。郵政民営化によって簡易郵便局の閉鎖も加速をしています。農業も、大規模経営でさえ経営を維持できないという危機的状況に直面をしています。
 総理、こうした地方の疲弊した現実は、弱肉強食、規制緩和万能で、アメリカと財界の要求にこたえる構造改革路線がもたらしたものではありませんか。総理の答弁を求めます。
 もう一つ指摘をしなければならないのは、三位一体改革で地方交付税が大幅削減をされたことであります。
 そもそも地方交付税は、全国どこの自治体でも、福祉や教育、医療など、法令に義務づけられた事務事業や住民サービスのナショナルミニマムが確保できるよう財源の保障をするものであります。これによって、財政力の弱い自治体でも住民に必要なサービスの水準が確保できるのであります。
 ところが、小泉構造改革路線のもと、三年間で五兆一千億円という巨額の交付税削減が行われ、多くの自治体は、医療や福祉など生活に密接にかかわる分野で聖域なき見直しを余儀なくされ、住民サービスの後退を招いているのであります。
 総理、この交付税の大幅削減が地方の疲弊をもたらした重大な原因ではありませんか。答弁を求めます。
 今回提案された法案は、地方再生を言いながら、地方財政に対する国の責任を果たしているものとなっておりません。
 第一に、交付税総額の復元、増額の問題です。
 地方の声に押され、政府は地方再生対策費を創設し、何とか総額を対前年度プラスにしました。しかし、復元、増額の要求にはほど遠いものであります。
 具体的に伺います。人口四千人未満の町村は、今回の措置によって幾らの交付税が回復されるというのですか。
 例えば、この五年間の交付税削減額は、北海道・陸別町七億一千万、岩手・川井村六億四千万、福島・金山町三億四千万、長野・王滝村四億六百万、奈良・東吉野村四億七千万、島根・知夫村三億七千万、山口・上関町四億八千万、徳島・上勝町二億五千万、長崎・小値賀町四億三千万、沖縄・与那国町二億七百万と、削減額は億単位であります。地方再生対策費が配分をされても、この削減額の一割、二割程度にすぎないではありませんか。これで地方の声にこたえたというのですか。答弁を求めます。
 第二は、地方法人特別税です。
 地方法人特別税は、都市と地方との格差拡大を防ぐということで、法人事業税の税収の二分の一、約二・六兆円を国税化するものです。格差の拡大を防ぐといいますが、法人事業税そのものの税収格差は、最近は縮小傾向にあるのではありませんか。都市と地方の格差の拡大は、交付税の大幅削減によって、財政力の弱い自治体、人口の少ないところほど一般歳出の削減額が大きくなったことによるものではありませんか。
 総務大臣はかねてより国から地方への税源移譲を主張してきましたが、法人事業税の国税化は日ごろの主張に反するものではありませんか。答弁を求めます。
 また、地方法人特別税の導入は「税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間」とされていますが、税制の抜本的な改革とは消費税率の引き上げのことではありませんか。答弁を求めます。
 第三は、地方財政の財源不足に対する補てん問題です。
 来年度の地方財政は、五兆二千四百七十六億円の財源不足が見込まれています。しかも、こうした巨額の財源不足は十三年間も続いており、本来、交付税率の引き上げによって対応すべきであります。制度改正をしてもなお巨額の財源不足を生じている場合は交付税率の引き上げをしなければならないというのが地方交付税法の趣旨ではありませんか。なぜ交付税率の引き上げをしないのか、総理の答弁を求めます。
 次に、地方が当面する緊急課題の一つである自治体病院について伺います。
 今日、地域医療の中核を担ってきた自治体病院が、経営難を理由に、その存続さえ危ぶまれる事態が各地で進行しています。政府は、医療費抑制策をとり続ける一方で、九〇年代に、景気対策と称して相次ぎ公共投資を推進し、自治体病院にも過大な増築、改修計画を押しつけました。このことが、今日の自治体病院の経営難の要因の一つになっているのではありませんか。
 今必要なことは、医療費抑制策を撤回し、お医者さんを抜本的にふやし、病院勤務の医師の労働条件を改善し、不足地域へ医師を派遣する公的体制づくりを進め、この間削減してきた自治体病院に対する交付税措置の増額を図ることではありませんか。答弁を求めます。
 総務省が示した公立病院改革ガイドラインは、国の医師不足に対する責任を放置したままで、公立病院の再編や自治体の病院経営からの撤退を進めようとするものです。交付税の算定指標を病床数から病床利用率に変更することは、病院経営を一層困難にし、公立病院つぶしに拍車をかけるもので、断じて許されません。
 最後に、道路特定財源の問題であります。
 総理は、地方の道路整備は必要だと言いますが、十年間で五十九兆円をつぎ込む道路中期計画の中心は高速道路の建設です。幹線ネットワークの構築と称して、バブル期の八七年に策定した一万四千キロ計画、さらには七千キロの地域高規格道路や東京湾口道路など、六本の長大橋道路計画まで進めようとしているのであります。一体どこまで高速道路をつくり続けるのですか。しかも、こうした高速道路中心の道路整備が地方に借金を押しつけ、切実な生活道路の予算を削減してきた事実こそ直視をすべきではありませんか。
 今、地方自治体は、深刻な財政難の中で何を優先するのかを迫られています。赤字で立ち行かなくなった病院の維持、危険校舎の改築、生活道路の整備、地域バスの確保など、切実な要求の何を優先するのか、自治体が自主的に選択できる一般財源化が求められているのであります。道路にしか使えない道路特定財源という仕組みを根本的に改め、道路にも、福祉や医療、教育にも使える一般財源化に踏み出すべきではありませんか。総理の答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕