<第169回国会 2008年2月26日 総務委員会 第7号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 地方財政に関連して、公立病院問題について質問をいたします。
 先日の本法案の本会議の質問の際に、私は、「今日、地域医療の中核を担ってきた自治体病院が、経営難を理由に、その存続さえ危ぶまれる事態が各地で進行しています。政府は、医療費抑制策をとり続ける一方で、九〇年代に、景気対策と称して相次ぎ公共投資を推進し、自治体病院にも過大な増築、改修計画を押しつけました。このことが、今日の自治体病院の経営難の要因の一つになっているのではありませんか。」こういう質問に対し、総理の答弁は、「いわゆるバブル経済崩壊後の景気対策として公共投資が大幅に追加される中で、公立病院においても、地方公共団体による自主的な判断ではありますが、積極的な施設建設が行われ、一部では、結果として後年度における減価償却費が増加し、経営悪化の一因となっている事例も見られます。」このように述べておられます。
 そこで、伺いますが、ここで挙げられております経営悪化の一因となっている事例というのは、具体的にはどこの病院のどのような事例なのかをお示しください。

○久保政府参考人 病院施設の増改築などを行いました場合に、後年度におきましては、減価償却費は増大をいたします。したがいまして、これを上回る収入の増加が図れないといった場合には、損益収支は当然悪化する結果となってまいります。
 公立病院の減価償却費は、かねてから民間医療機関との比較において高水準になっているといった指摘もございまして、私ども、昨年設けて検討いたしました公立病院改革懇談会という場がございましたけれども、この場におきましても、公立病院関係者から、病院の過大投資が経営を圧迫している場合があるといった意見が述べられております。最近におきましても、多額の施設整備を行った後に計画どおりに収入が確保できず、結果として経営悪化に至るといった事例も散見されると思います。
 具体例を言えということでございますけれども、例えば北海道の赤平市でございますけれども、赤平市では、平成五年、六年に行いました施設改築費の償還負担が経営悪化の一因であるといった形で分析をして、そういった旨、住民に対して説明をしておられます。

○塩川委員 赤平市の例も紹介をされました。これはNHKの「クローズアップ現代」でも紹介をされて、地域医療の存続にかかわって極めて重大な事態だということが大きく報道もされたところです。赤平市で出しております「広報あかびら」におきましても、病院の経営問題を紹介して、「平成五・六年に行った診療棟・管理棟の改築等による起債償還額が、毎年約二億五千万円あり、償還が平成三十六年度まで続き負担が大きい。」このように取り上げております。
 バブル崩壊後の景気対策として、公立病院においても積極的な公共投資が行われたことが経営悪化の要因となっている。これは一つ赤平の事例ではなくて、全国でもこのような事例が多くあるということが言えると思います。
 そこで、お尋ねしますが、バブル崩壊後の九二年、九三年当時、国の景気対策として、自治省は地方団体に対し、地方単独事業を後押しするためどのような施策を行ったのか、また、その中で公立病院に対してはどのような後押し策を行ったのか、この点についてお答えください。

○久保政府参考人 いわゆるバブル経済崩壊後の景気対策といたしまして、国、地方を通じて公共投資が大幅に増加され、国庫補助事業とともに地方単独事業につきましても積極的に、御指摘のように推進されております。このために、地方公共団体が自主的、主体的に取り組む地域づくりのための施設整備事業などにつきまして、地方債と地方交付税とを組み合わせた財政支援措置を一般的に講じてきております。
 この時期に、公立病院でございますけれども、公立病院に係る施設整備につきましては、これは地方公共団体からの強い要望といったこともございまして、そういった要望を踏まえまして、平成五年度から、病院建物の建築費に係る標準面積、標準単価といった制限がございましたけれども、これを廃止いたしまして、事業費全額を起債の対象とするといったことにいたしております。
 この制度改正は、病院事業に係ります施設整備をより容易にする効果を有したということにつきましては否定はできないと考えておりますが、その趣旨は、地方分権推進の流れも踏まえながら、地方債の発行についても、地方公共団体の自由度を高めるといった考え方に立って行われたものと認識しております。

○塩川委員 今お話がありましたように、公立病院の建設に当たりまして、標準面積、標準単価の廃止という形で、要するに起債をやりやすくする、こういう仕組みになったということは確かで、当時、全体を見てみれば、国としての積極的な公共投資も行われましたけれども、それを上回る規模で地方における単独事業が積み上げられてまいりました。
 当時の報道などを見ても、自治省は、全国財政課長会議、地方課長会議を開き、各自治体の九月補正予算編成に当たっては地方単独事業を大幅に追加計上するよう要請をするとか、臨時三事業、地方道、河川、高校などの全額起債を認めるとか、自治体がなかなか独自財源がないような際に、余裕のない自治体に対しては地方交付税の交付対象とする方向だとか含めて、積極的な支援策を行ってまいりました。その一つとして、公立病院への起債の柔軟化、このことも行われたわけです。
 資料でお配りしましたが、病院事業債の許可額の推移ということで棒グラフが立っておりますけれども、九〇年代の前半で、国が景気対策として地方単独事業の上積みを求めた時期に急速に起債が増加をしております。下に数字を並べてありますけれども、地方単独事業費全体を見ても、九一年、九二年、九三年、九四年と一〇%を超える前年比の伸びということで、大変急速に地方単独事業が積み上げられてまいりました。
 これらを見ても、国は地方公共団体による自主的な判断と言いますが、国の積極的な関与なしにはこのような地方単独事業の積み上げもなかったし、公立病院への積極的な投資も行われなかったことは明らかじゃないでしょうか。大臣、その点、いかがですか。

○増田国務大臣 ちょうどこの時期、一九九一年から単独事業費が二けた伸びてまいりまして、そして地方債の発行額も、公立病院につきまして、平成十年前後をピークとして大きくなっているということは、そのとおり事実でございます。
 そのときに、先ほど局長の方からお話ししましたとおり、ちょうど制度改正、これは事業費の実態をより一層反映する方向で制度改正を行ったわけでございますが、そうした制度改正ということもございましたので、各自治体の方でも病院の施設や設備の充実を図る方向でいろいろお考えになったということでございます。
 ただ、その際に、やはり病院事業経営の健全性を損なってはいかぬということは当然あるわけでありますので、例えば、平成五年に各都道府県知事あてにうちの方の次官から通知も出してございます。当時はまだ通知ということが行われていた時期でございますが、そのときの、平成五年の都道府県知事あての事務次官通知を見ましても、将来にわたる採算性の確保ですとか、それから一般会計の財政負担の見直し等を従来にも増して十分検討の上実施することということで、そうした公共団体の方に特に注意を促しております。
 そういったことを十分注意した上で、こうした病院事業債等も使うのであれば使うようにということでございましたので、やはり各団体の自主的な判断があって施設の建設の実施を決定された、最後はやはりそういうところに帰着をするというふうに思っております。

○塩川委員 地方に対してブレーキを踏んでいるかのようなお話もありましたけれども、アクセルの方が実際には全開だったというのが当時の状況だということです。
 例えば、当時の新聞記事などでも、「地方自治体の大型補正 景気への起爆剤期待」ということで写真が出ています。この写真は、自治体単独事業拡大のため、自治省は単独事業推進相談室を設置したというので、看板を掲げて、これを大きく加速させようと、写真に当時の大臣が写っております。塩川自治大臣で、同じ塩川でも大分違いますけれども。自治省が単独事業推進ということで大いにあおったということがあります。
 また、別な報道では、「地方単独事業の規模 自治体に報告求める」「自治省は地方自治体の補正予算で、各自治体が上積みをした地方単独事業の規模について報告を求め、上積み額が少ない自治体には積極的に上積みしていくよう指導していく方針だ。」自治省は上積み額を報告させることにしているというお話。報道でもありますけれども、このように、単独事業推進相談室を設置するとか、地方単独事業の規模について自治体に報告を求めるとか、当時行っていたと思いますけれども、その点、確認したいと思いますが、いかがですか。

○久保政府参考人 突然の御質問でございまして、資料を準備しておりません。後日御報告させていただきたいと思います。

○塩川委員 国は、地方自治体による自主的な判断と言いますけれども、実態は、ここにありますように、単独事業推進相談室ですとか自治体に報告を求めるというような形で、国が主導的な役割を果たしたことは明らかであります。
 改めて大臣に伺いますが、九〇年代前半の公立病院への過大な投資について、国にも責任の一端があるのではないか、国の責任は免れることはできないのではないか、いかがでしょうか。

○増田国務大臣 当時、私が知事に就任をする少し前の時期、あるいは就任してからもしばらくの間は、景気対策そして公共事業を随分大幅に各公共団体も実施した時期、それから、やはり箱物建設などがかなりやりやすくなった時期でもございましたので、実際に事業量の数字を見ましても、そうしたものを多く実施した、これはもうやはり紛れもない事実だろうと思います。
 そのときに、当然のことながら、起債によって資金手当てをしていますので、今、公共団体の財政運営がきつくなっているということについては、そのことが大きく影響してきている。このことはこれまでも申し上げてきておりましたし、そのことについて、やはり国一体として実施をしてきた当時の状況というものは私も理解をしているわけでございますが、最終的に責任云々ということになりますと、やはり自治体は自治体で、議会を経てどういう事業を実施しようとするのか判断をしたことでございますので、これは私も知事時代から申し上げておりますが、やはりそういったところに安易に乗ってしまった責任というのは自治体にある、そういったことを十分戒めておかなければいけないということを申し上げてまいりました。
 病院事業ということについても、やはり、当時住民の皆さん方からいろいろ施設整備の充実について御要望があって、いろいろ自治体の方で御判断されたんだろうと思います。国の制度改正等もございましたのでやりやすさがあったということで、個々の病院について甘い判断にどうしてもなびいてしまったということもあったのではないかというふうな推測もなされるわけですが、やはり最終的にそのことについて個々の自治体、自治体で決めたことでございますので、それはそれとして、当該自治体でその後の措置はやはりやっていただくのが前提であろう。
 ただし、国としてそれを全く見過ごしているということではなくて、公立病院のガイドラインを今回もつくりましたし、そういった公立病院の抱えております状況、これは、施設の点のみならず、医師不足等の問題も絡んでくるわけでございますが、そういったことを含めて、今置かれている公立病院の状況というのは私どもも十分受けとめておりますので、それについて総務省として的確な対策を今とっているところでございます。

○塩川委員 国の制度改正で起債のやりやすさがあったということですから、まさにそこのところで、推進室も設け報告もとることによって、地方のこういった起債、新たな設備投資をあおる仕組みに対して国がしかるべき役割を果たしたことは明らかですから、そういう経営悪化に対する国の責任を踏まえてこの問題に対処する必要があると思います。財政健全化法で地域に欠かせない公立病院事業を追い込むようなやり方であってはならないわけで、そういう点でも、過去のこのような借金、赤字に対する国の責任を踏まえた上での対応が求められていると思います。
 その上で、さらにこの間の普通交付税の措置額の減額というのは論外であります。
 お尋ねしますが、普通交付税措置額の減額が今の公立病院経営悪化の要因の一つとなっている、こういう認識はお持ちでしょうか。

○久保政府参考人 公立病院に対します一般会計の繰り出し金につきましては、地方公共団体における病院事業の実態などを踏まえながら、所要額を地方財政計画に計上して、地方交付税などによって措置をしております。
 近年、公立病院に係ります普通交付税措置額が減少傾向にございますけれども、これは病院施設の整備に係る地方債の発行額が、御案内のように平成九年度をピークとして減少に転じたことなどから、地方債の元利償還金に係る地方財政計画計上額が減少傾向にあるといったことを反映したものと考えております。
 また、公立病院に関する普通交付税措置は、各団体の病院事業に係る地方債の元利償還金の大小に応じて算定するものや、各病院の許可病床数に応じて算定するものがございます。病床当たりの算入単価が近年低下傾向にある、これは事実でございますけれども、この理由といたしましては、主として地方公共団体からの意見を踏まえて、地方債の元利償還金の状況を直接反映する部分、この部分のウエートを高めた結果によるものと考えております。
 したがいまして、近年の交付税措置額及び病床当たり算入単価の減少は、地方公共団体の財政需要の実態を反映しながら財政措置を講じてきた結果によるものと考えておりまして、これを経営悪化の要因ととらえるのは必ずしも当を得たものとは考えておりません。
 ただ、近年、医師不足等によって特に経営悪化が著しい過疎地域などに係る措置につきましては、公立病院に関する地方財政措置全体を見直し、その重点化を図る中で、その充実を検討してまいりたいと考えております。

○塩川委員 自治体病院の赤字数というのが、平成十三年が四八%、それが平成十八年は七九%ですから、急速に赤字の状況が拡大をしているわけです。そういう点でも、この交付税の減額の措置というのは経営悪化の要因の一つとしっかりと見ていくことが問われていると思いますし、さらに、今回の公立病院改革ガイドラインで交付税の算定指標を病床数から病床利用率に変更したということ、これは、病床利用率の低さは医師不足が大きな要因の一つではないかと思うんですが、その点の大臣の認識を伺います。

○増田国務大臣 今回の病床利用率の低下でございますけれども、医師の総数が確保できない、そういったことで、どうしてもそこの診療科を閉鎖しなければいけないといったようなことでそこがあいてしまう、こんなこともやはりあるんだろう、事例として、空きベッドの数がふえてしまう、そういう事例もあるんだろうというふうに思っております。
 そこで、一時的な医師不足なのか、あるいは、やはり恒常的にあいているということは資源の配分上もよくありませんので、その一時的か恒常的かということを判断して、今回、ガイドラインでは三年連続七〇%未満というような目安を示しましたけれども、やはり恒常的な場合にはそこは見直しをしていただく、一時的な場合には、これは厚労省の方の仕事とも大きく絡みますけれども、やはり何としてでも医師不足解消策を講じて、その上でお医者さんを配置する、こういう対応をとりたい、このように考えます。

○塩川委員 医師の確保ができなくて空きベッドが出てしまう、それが恒常的かどうかという点が問われるんだと言いますけれども、恒常的なのは医師不足であるわけで、医師不足が恒常的である以上、病床利用率が低いのも恒常的にならざるを得ない。そういう点でも、医師不足を招いてきた国の責任が免れないわけです。
 財政危機の要因をつくってきた国の景気対策の問題とあわせて、公立病院に経営責任があるかのように、交付税の算定指標を病床数から病床利用率に変更して、交付税をさらに減額して財政圧迫を与えるようなやり方は許されない、こういうことはやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 皆様には、それぞれ貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。
 私は、最初に、三位一体改革のもとでの地方交付税の急激な削減、その問題についての御意見を潮谷参考人、横山参考人、田中参考人からお伺いいたしました、まずそのお三方にそれぞれお聞きしたいんです。
 潮谷参考人には、交付税で三百億円が一度に削減をされた、大きな打撃だというお話がございました。県の財政にとっても大変重大な事態だったと思いますけれども、県下の財政力の弱い地方団体、町村などにおいて、この大幅な、急激な地方交付税の削減がどういう状況をもたらしたのかということについて、その現状などを、把握されている点で御紹介をいただければと思っております。
 続けて、横山参考人からは、交付税の削減が急激で、五千人規模の自治体できしみが生じている、だれもが手当てすべきときだというお話をされ、交付税法の改正がそういう点で正当化できるのではないかというお話がございました。この点では、特に五・一兆円の削減との関係でいいますと、やはり小規模自治体に大きな影響が与えられた。今回、地方再生対策費として若干の手当てはありますが、私が試算をしたところでも、大幅な削減に対して、地方再生対策費は一割とか二割程度になっております。そういう点でも、これでよしとするのかということが率直にありますので、その点についてのお考えをお聞かせください。
 田中参考人には、自治体運営に決定的な打撃を与えたのがこの五・一兆円の地方交付税の削減だったというお話です。財政力の弱い地方団体にどのような否定的な影響が出ているのか、全国を回っていろいろなお話をお聞きしている中で、そういう現場の声について御紹介をいただければと思います。
 それぞれ、よろしくお願いいたします。

○潮谷参考人 端的に申し上げますと、ちょうど時期的に、私どもは町村合併を実施しているときでございました。町村合併によって財政力をもっと強固に、そういう思いの中で展開してまいりましたけれども、この時期的に重なった状況が、実は、地方交付税三百億、県でも非常にダメージを食いましたと同じように、合併したところであってさえも、本当に、合併しなければよかったというほどのダメージを食ったということ。国においては地方交付税の問題では配慮があったんですけれども、しかし、現実には受け取ることができなかった。
 それから、徹底した人員の見直し、さらには、お一人の方が幾つもの公務を兼ねるというような状況が各町村の中に出てきているということも実質的なところでございますし、さらに、自分たちのところの行財政のあり方、財政健全化についてのあり方、そういったものを見直していかなければならないということ。
 もう一つは、住民サービスに影響を与えないためにどのような形で創意工夫をしていくのか。熊本県で申し上げますと、ゼロ予算という形の中で、パートナーシップ、NPO、そしてボランティア、そういった力を得ながら、創意工夫を余儀なくされて、余儀なくではなくて、一方ではよい形と申し上げていいかもしれませんけれども、そういった実態がございました。
 以上でございます。

○横山参考人 塩川先生、貴重な御質問をどうもありがとうございます。まさに、おっしゃられることは非常に重要な点でございまして、私の個人的な意見では、決して十分ではない。
 地方消費税を充実させたいと思ってございますけれども、やはり国の消費税そのものの見直しの中でしか地方消費税の充実は政治的にできないのではないかというのが、多くの論者の共通認識かと思います。
 ただ、根本的なところで御注意願いたいのは、財政調整ということと、それから課税ベースのそれぞれの地域間の配分の問題がどうも一緒に議論されている嫌いがあるのではないか。
 財政調整というのは、まさに、交付税交付金制度の一つの大きな役割でございまして、財政力の弱いところに財源を手当てしていく。それに対して、消費税を充実させていくといったときに重要になってきますのは、財政調整ではございませんで、課税ベースのそれぞれの地方公共団体間の配分基準をどうするかということでございますので、地方消費税を充実させていく上では、課税ベースの配分基準についても、今までの制度のままでいいのかどうかということも含めまして、今後検討していかなければならないと思っております。
 いずれにいたしましても、今の税源移譲あるいは地方分権の充実ということを考えていきますと、どうしても両方解決しなきゃいけないわけですね。地方分権を充実させていけばいくほど、財政力の強いところに税収が入ってくる。では、そこをどういうふうに調整するのかというようなことも、今後、この地方消費税の充実とあわせて、財政調整機能としての交付税交付金制度のあり方も議論されてくるのではないか、このように理解しております。
 どうもありがとうございました。

○田中参考人 お答え申し上げます。
 一つは、交付税の削減につきまして、九〇年代に景気対策で、一〇〇%交付税措置をするということなどでの政府の施策、いわゆる交付税制度を使ったいろいろな誘導があったわけですけれども、そのことと、それから市町村合併につきましても交付税での誘導が行われてきた。ところが、実際に交付税が削減されるということに直面して、私どもがお会いした首長さんたちの思いとしましては、やはり国、政府が非常に信用できなくなってしまったということを率直に述べられておる首長がたくさんいらっしゃいました。ただ、実際には、交付税をもらうから、特交などの配分を受けなきゃならないので、なかなか自分から物が言えないのだ、労働組合としてもっと頑張ってほしい、そういうお声もいただいているところであります。
 また、職場の中では、財政が厳しくなっておりますので、全国でも今、公務員が人事院勧告以上に、例えば賃金一〇%カットを三年続けるとか、ひどいところでは三〇%カットなども起きております。労働組合として交渉に当たって、では、限られたお金をどう使うのかということについて、労働組合としても、本当に福祉や住民の暮らしや雇用を支えるためにこの一〇%カットした財源を使ってほしいということなどを言いながら運動をしているという実態もあります。
 また、現実には、職員が大変減らされて非正規労働者がふえる中で、正規職員は過労状態、現実に現職死亡の率もふえておりますし、昨年の社会生産性本部などの報告などを読みましても、メンタルヘルスが民間企業以上に自治体職場で蔓延しているということも指摘をされておりまして、こうした実態が大変深刻な事態を生んできているなというふうに思っています。
 先ほど行財政改革のところでも申し上げたかったのですが、どこの自治体の計画を見ましても、総務省の集中改革プランの焼き写しのような計画になっておりまして、現実に、やはりまちづくりについて夢が持てない、希望を持って議論ができないという中身になっております。この点についても、例えば、前の鳥取県の片山知事が、総務省の集中改革プランの計画づくりについて、たしか、私たちは計画を出さないという判断をされたように、その地域の実情に合って、先ほど申し上げましたような、本来、住民と一緒になってまちづくりを考えるような職員でありたいと思っているわけですけれども、それができないということについて、そのことがメンタルにも結びつくような事態が職場の実態として起きているということが現場の状況ではないかというふうに思っています。
 以上です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 五十嵐参考人に、道路特定財源に関連して質問させていただきます。
 お話の中でも、高規格道路と生活道路を分けて考える必要があるというお話がございました。私は思うのですが、国の道路特定財源分によって、高規格道路あるいは地域高規格道路が手当てをされる、それに当然地方がおつき合いをしなければいけない。つまり、国の道路特定財源で高速道路にいわば聖域のような形でお金が充てられることで、そこに地方の負担が固定化をされてしまう、それがかえって生活道路を圧縮することになってしまうのではないか、こういう構図というのが今生まれているんじゃないのかと率直に思うのですが、五十嵐参考人の御意見をお聞かせください。

○五十嵐参考人 道路特定財源は一体どういうものかということを勉強する中で、高規格道路と地域間の連絡道路と、それから、現在地方自治体で道路計画として上がっているものをオーバーラップしてみました、ずっと順序で。そうすると、おっしゃるように、物の見事に中央集権的なヒエラルキー構造になっておりまして、非常に整然たる、ある種の体系性が見えてまいります。
 では、末端、下から上を見てどうなるかといいますと、地方自治体の道路計画、特に今回、地方自治体がなぜ道路が必要かとたくさんパンフレットを出していますので、それを見ていただくとわかりますが、ほとんど地域間道路というのは、道路の渋滞時間を五分短縮とか四分短縮、そういう形で積み上げていって上の方まで積み上げるという構造になっています。この構造は、ある種無限大なんですね。
 つまり、これをするとまたここをいじる、これをするとまたこういうことになる、選択幅が全くなくて、道路のある種の中央集権ヒエラルキー構造のもとで、上から下まで全部ぶら下がっているという構造だと私は認識しております。
 それで、私の意見は、道路特定財源を一回外しまして一般財源にしたときに、本当に有用な道路とそうでない道路を、物理的にもだれかが選択してやらなきゃいけない。必要だと言っているのは霞が関の、もっと言えば、国土交通省の道路局が必要だと言っているだけで、本当に四分なり五分短縮のために何億円、何十億円投入するような道路の工事が必要かどうかについては、地域住民によく見えないし、見えたとしても直せないというのが一番の欠陥だと私は思っているのです。
 逆から言いますと、ボトムアップ型道路の構造をどうしたらいいかということで、情報公開しながら費用対効果を皆さんに見せたときに、五分短縮のために十数億も二十億もかけるようなことが本当にいいのかどうかということに関して、ある種の拒否反応が出てくると思います。それが今の、何となくまだよくわからぬけれども道路特定財源は嫌だという国民の声にあらわれているんだろうというふうに思います。
 ぜひ、道路網のネットワークを、高規格道路から地域間道路、それから一番小さな生活道路まで、ネットワークで見ていただくと、いかに膨大な、何といいますか、ある種の自己麻薬というんですかね、膨大な道路を永遠につくり続けるというような構造になっているかがわかっていただけると思います。

○塩川委員 今の点に関連しまして、やはり道路特定財源の背中側に道路中期計画がある、これは表裏一体であるわけです。そういう点での、道路中期計画という形で上から枠をはめていく、こういうやり方はもうやめるべきだと。先ほどのお話の中にも、その他の公共投資の整備計画については五カ年計画をやめて一本にするという形で、道路だけ残っているのは道路特定財源があるからという関係になっているわけですから、そういった特殊な事情そのものを外すということが必要だろう、その上でボトムアップ型での取り組みが必要だというお話がございました。
 そういう点で、私も、予算委員会の地方公聴会で水戸に行った際に、陳述人の方の中で、例えば、フランスなどでは、地方からボトムアップ型で、上との調整、調整を重ねながら積み上げていく、そういうやり方があるんだという話もお聞きしました。
 五十嵐参考人がお引きになっている中で、地方自治体がそういう形で道路なり公共投資の計画について、下から持ち上げる上で大きな役割を果たしているような事例ですとか、そういうあり方についての工夫の仕方とか、お考えがありましたらお聞かせください。

○五十嵐参考人 特定の自治体名を挙げていいのかどうかわかりませんけれども、私自身は、長野県でそういう実例を見ました。あの有名な知事さんがおりまして、ダムを中止するときに、ダムだけじゃなくて一般的に公共事業全体が、ある種の、十億円で五十億の道路ができる、ダムができる、その他ができるという構造になっているので、これを全体的に変えたいと。変えるためにはどうしたらいいかということについて、もう一度、幾つかの原則を定めて、地域全体の道路を含めた公共事業を見直そうとしたというところを知っております。
 そのときの一番の大きな理念になったのは、今後長野県はどういう社会を目指すかということがありまして、ある種のルネサンスをやらなければいけない。そのルネサンスの一番の中核はコモンズであると。コモンズというのは、人と自然が共存し得る、それから、それぞれの義務と権利をシェアするという形でのコモンズというのを一番中心に置きまして、公共事業、道路を含めた全体について見直しをしようとしたということを聞いております。それから、現実にも見ました。
 その他、私のいわゆる率直な印象を言いますと、地方分権でいろいろな意味で活躍なさった有名知事あるいは市町村長さんたちは、ここ十年間ぐらいは公共事業をどこかで見直さなきゃいけないということを、それなりに体を張ってみんな頑張ってきたと思いますけれども、なぜか道路になると極端にすこーんとひっくり返っちゃったというのは一体何なのかということがよくわからない。
 これは、先ほど潮谷参考人からもありましたけれども、どこかで本当の自由な意見が言えないという構造がやはり支配しているとしか私は思えません。これは新聞報道等で発表されているから何にも隠す必要はないと思いますけれども、一番それを言っているのは鳥取県の片山知事でありまして、やはり自由な発言ができないということをこの間もちゃんと発言しておりました。
 この構造です。この構造を残すかどうかが、まさに地方財政にとっても地方自治にとっても一番の根本問題であると私は思っております。今回は何が何でもこういう構造を破っていただきたいというのが私の切なる願いです。

○塩川委員 ありがとうございます。
 田中参考人に、現場の実情ということで二点お伺いをいたします。
 一つは、自治体ワーキングプアのお話がございました。
 私の聞いた話の中で、例えば沖縄などで合併が行われて、もともと雇用の少ない沖縄で非正規雇用の臨時職員の若者がいた、そういう若者が合併を機に退職させられる、今でさえ仕事がない沖縄で、公務の場で新たな職を失うような事態というのが地域経済、地域社会にとって大きな影響を与えているという話をお聞きしました。
 その点で、この自治体ワーキングプアを生み出すような現状について、全国を回っておられて、地域社会、地域経済にどんな影響がもたらされているのかということについてお聞きしているところをお伺いしたいということが一点。
 公立病院の問題のお話もございました。この点では、公立病院改革ガイドラインの問題点など、私もきょう午前中の質疑でも取り上げましたけれども、病床数を病床利用率に、交付税の算定基準を見直す、それはもう、医師不足が恒常的になっている中では、結果とすれば、交付税が下がらざるを得ないような事態につながるではないか。恒常的な医師不足をつくっている国の責任が問われるわけなんです。
 そういう中で、全国を回って、首長さんなどの公立病院改革ガイドラインについてのいろいろな御意見などをお聞きしているところがあれば、ぜひ御紹介をください。

○田中参考人 お答え申し上げます。
 一つは、今沖縄の話がありましたが、市町村合併に伴って、いわゆる合併は構造改革なんだ、効率化を目指すんだということで行われますので、どうしても職員の削減ということが一つの大きなテーマになってしまいます。その際に、まず手っ取り早く臨時職員の解雇が起きるというのが全国各地で起こっております。その結果、先ほどの沖縄の話のような、せっかく雇用の確保をされていた青年が職を奪われてしまう、そんな事態になりました。
 それから、合併後の集中改革プランの具体的な実行に当たって、例えば公の施設の指定管理者制度の導入などによっても、指定管理者にすることによって、ここは非正規だけではなくて正規の職員の分限免職処分、分限解雇、民間でいえば首切りが全国で起きてきているということも現にありまして、その結果として、やはり労働組合をつくってきちんと自分たちの権利を主張していかない限り、職が守れていかない、そういう問題が各地で続発をしておりまして、そういう人たちの声を私たちは受けとめるために、一人でも加盟できる労働組合もつくりながら、そういう人たちの声を大事にして取り組みを進めています。
 今、地域経済への影響というお話がありましたけれども、先ほど公の施設の受託をしている民間企業の例を参考に御紹介させていただきましたけれども、賃下げスパイラル、それから不安定雇用者の解雇という問題がこれ以上進んでいくことによって企業そのものも成り立たなくなる。それから、雇用が喪失されていきますので、まさに地域経済への影響が非常に大きいということが指摘をされておりまして、ここでも、国における公契約法制をつくってほしいとか、また自治体でも、今さまざまな分野で、契約に当たって賃金の底上げをきちんとしていくような、また正規と非正規の均等待遇が実現するような方向での条例をつくろうではないかという動きなどもありまして、まさに地域を支える雇用政策について抜本的な対策が必要になっているなというふうに思っているところです。
 それから、病院改革ガイドラインにつきまして、この間の懇談の中でも、先ほども御紹介をいたしましたけれども、これは自治体病院をつぶす計画だということを明確に述べられる首長さんが何人かいらっしゃいました。ただ、残念なことに、自分の自治体名を挙げて、どこどこの市長さんがこう言われているというふうに言うと、さじかげんで特交などでの影響を受けると困るので、名前だけは出さないでほしいというお話がありましたりしているわけです。
 公立病院改革ガイドラインについて、まさに医師不足という根本を解決しないで、効率性だけ進めていいんだろうかということにつきましては、多くの自治体関係者がそういう声をお持ちだということと、現に、その先取りとして起きています北海道では、北海道の道立病院を指定管理者にする、そういう提案が出た瞬間に、オホーツク地域では内科医の先生方が大量に辞職願を出されるということもありまして、その勤務医の皆さん方の過重な労働実態を改善することこそが今必要であって、数字的な効率性だけが強調されるようなやり方ではますます医師不足は進んでしまうのではないかという心配をしているところであります。
 以上です。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。