○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。 地方財政に関連して、公立病院問題について質問をいたします。 先日の本法案の本会議の質問の際に、私は、「今日、地域医療の中核を担ってきた自治体病院が、経営難を理由に、その存続さえ危ぶまれる事態が各地で進行しています。政府は、医療費抑制策をとり続ける一方で、九〇年代に、景気対策と称して相次ぎ公共投資を推進し、自治体病院にも過大な増築、改修計画を押しつけました。このことが、今日の自治体病院の経営難の要因の一つになっているのではありませんか。」こういう質問に対し、総理の答弁は、「いわゆるバブル経済崩壊後の景気対策として公共投資が大幅に追加される中で、公立病院においても、地方公共団体による自主的な判断ではありますが、積極的な施設建設が行われ、一部では、結果として後年度における減価償却費が増加し、経営悪化の一因となっている事例も見られます。」このように述べておられます。 そこで、伺いますが、ここで挙げられております経営悪化の一因となっている事例というのは、具体的にはどこの病院のどのような事例なのかをお示しください。 |
○塩川委員 赤平市の例も紹介をされました。これはNHKの「クローズアップ現代」でも紹介をされて、地域医療の存続にかかわって極めて重大な事態だということが大きく報道もされたところです。赤平市で出しております「広報あかびら」におきましても、病院の経営問題を紹介して、「平成五・六年に行った診療棟・管理棟の改築等による起債償還額が、毎年約二億五千万円あり、償還が平成三十六年度まで続き負担が大きい。」このように取り上げております。 バブル崩壊後の景気対策として、公立病院においても積極的な公共投資が行われたことが経営悪化の要因となっている。これは一つ赤平の事例ではなくて、全国でもこのような事例が多くあるということが言えると思います。 そこで、お尋ねしますが、バブル崩壊後の九二年、九三年当時、国の景気対策として、自治省は地方団体に対し、地方単独事業を後押しするためどのような施策を行ったのか、また、その中で公立病院に対してはどのような後押し策を行ったのか、この点についてお答えください。 |
○塩川委員 今お話がありましたように、公立病院の建設に当たりまして、標準面積、標準単価の廃止という形で、要するに起債をやりやすくする、こういう仕組みになったということは確かで、当時、全体を見てみれば、国としての積極的な公共投資も行われましたけれども、それを上回る規模で地方における単独事業が積み上げられてまいりました。 当時の報道などを見ても、自治省は、全国財政課長会議、地方課長会議を開き、各自治体の九月補正予算編成に当たっては地方単独事業を大幅に追加計上するよう要請をするとか、臨時三事業、地方道、河川、高校などの全額起債を認めるとか、自治体がなかなか独自財源がないような際に、余裕のない自治体に対しては地方交付税の交付対象とする方向だとか含めて、積極的な支援策を行ってまいりました。その一つとして、公立病院への起債の柔軟化、このことも行われたわけです。 資料でお配りしましたが、病院事業債の許可額の推移ということで棒グラフが立っておりますけれども、九〇年代の前半で、国が景気対策として地方単独事業の上積みを求めた時期に急速に起債が増加をしております。下に数字を並べてありますけれども、地方単独事業費全体を見ても、九一年、九二年、九三年、九四年と一〇%を超える前年比の伸びということで、大変急速に地方単独事業が積み上げられてまいりました。 これらを見ても、国は地方公共団体による自主的な判断と言いますが、国の積極的な関与なしにはこのような地方単独事業の積み上げもなかったし、公立病院への積極的な投資も行われなかったことは明らかじゃないでしょうか。大臣、その点、いかがですか。 |
○塩川委員 地方に対してブレーキを踏んでいるかのようなお話もありましたけれども、アクセルの方が実際には全開だったというのが当時の状況だということです。 例えば、当時の新聞記事などでも、「地方自治体の大型補正 景気への起爆剤期待」ということで写真が出ています。この写真は、自治体単独事業拡大のため、自治省は単独事業推進相談室を設置したというので、看板を掲げて、これを大きく加速させようと、写真に当時の大臣が写っております。塩川自治大臣で、同じ塩川でも大分違いますけれども。自治省が単独事業推進ということで大いにあおったということがあります。 また、別な報道では、「地方単独事業の規模 自治体に報告求める」「自治省は地方自治体の補正予算で、各自治体が上積みをした地方単独事業の規模について報告を求め、上積み額が少ない自治体には積極的に上積みしていくよう指導していく方針だ。」自治省は上積み額を報告させることにしているというお話。報道でもありますけれども、このように、単独事業推進相談室を設置するとか、地方単独事業の規模について自治体に報告を求めるとか、当時行っていたと思いますけれども、その点、確認したいと思いますが、いかがですか。 |
○塩川委員 国は、地方自治体による自主的な判断と言いますけれども、実態は、ここにありますように、単独事業推進相談室ですとか自治体に報告を求めるというような形で、国が主導的な役割を果たしたことは明らかであります。 改めて大臣に伺いますが、九〇年代前半の公立病院への過大な投資について、国にも責任の一端があるのではないか、国の責任は免れることはできないのではないか、いかがでしょうか。 |
○塩川委員 国の制度改正で起債のやりやすさがあったということですから、まさにそこのところで、推進室も設け報告もとることによって、地方のこういった起債、新たな設備投資をあおる仕組みに対して国がしかるべき役割を果たしたことは明らかですから、そういう経営悪化に対する国の責任を踏まえてこの問題に対処する必要があると思います。財政健全化法で地域に欠かせない公立病院事業を追い込むようなやり方であってはならないわけで、そういう点でも、過去のこのような借金、赤字に対する国の責任を踏まえた上での対応が求められていると思います。 その上で、さらにこの間の普通交付税の措置額の減額というのは論外であります。 お尋ねしますが、普通交付税措置額の減額が今の公立病院経営悪化の要因の一つとなっている、こういう認識はお持ちでしょうか。 |
○塩川委員 自治体病院の赤字数というのが、平成十三年が四八%、それが平成十八年は七九%ですから、急速に赤字の状況が拡大をしているわけです。そういう点でも、この交付税の減額の措置というのは経営悪化の要因の一つとしっかりと見ていくことが問われていると思いますし、さらに、今回の公立病院改革ガイドラインで交付税の算定指標を病床数から病床利用率に変更したということ、これは、病床利用率の低さは医師不足が大きな要因の一つではないかと思うんですが、その点の大臣の認識を伺います。 |
○塩川委員 医師の確保ができなくて空きベッドが出てしまう、それが恒常的かどうかという点が問われるんだと言いますけれども、恒常的なのは医師不足であるわけで、医師不足が恒常的である以上、病床利用率が低いのも恒常的にならざるを得ない。そういう点でも、医師不足を招いてきた国の責任が免れないわけです。 財政危機の要因をつくってきた国の景気対策の問題とあわせて、公立病院に経営責任があるかのように、交付税の算定指標を病床数から病床利用率に変更して、交付税をさらに減額して財政圧迫を与えるようなやり方は許されない、こういうことはやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。 |