○塩川分科員 日本共産党の塩川鉄也でございます。 私は、国土交通省の進めております霞ケ浦導水事業について質問させていただきます。 今、那珂川への取水口の建設が問題となっているときであります。この那珂川は、関東地方では珍しく、源流部に深山ダムがあるだけで、ほかにダム、堰がない川として知られております。春にはアユ、サクラマス、ウナギ、秋にはサケが遡上する自然豊かな川であります。 日本釣振興会の統計によりますと、全国で最も天然アユの遡上が多い川が那珂川だと言われております。 そこで農水省水産庁に伺います。 那珂川のアユの漁獲高は、全国的に見てどのような水準なのか。この点について、過去五年間のアユ漁獲量について河川別全国順位で那珂川が何位となっているのか、また、最近二年間の那珂川でのアユ漁獲量と全国の漁獲量全体に占める那珂川の割合を示してください。 |
○塩川分科員 那珂川のアユの漁獲高は全国一位であります。大臣の御地元の兵庫県の揖保川は、十八年は全国五位ということで大変多いところの一つだそうですが、シェアからいっても、一番大きいのがこの那珂川というのが現状であります。 釣り具メーカーなどがアユ釣りの全国大会を開きますけれども、その際に、頻繁にこの那珂川で開かれております。栃木の黒羽という地域が多いと聞いておりますけれども、ダイワですとか「がまかつ」ですとか、あるいは全日本釣具商組合などが行う全国大会が、数年連続して那珂川で行われる。というのも、この那珂川が最も安定してアユの漁獲量が得られる川で、釣りの大会をするにしても、例年、変動が多いような川では困るということもありまして、ここに集中しているということをお聞きいたしました。 その那珂川に霞ケ浦導水事業において取水口をつくる、那珂川に幅五十メートルにわたって取り入れ口をつくる。那珂川の総水量の一二%の取水ということが言われております。地元の漁協の皆さんが声を上げておられまして、その訴えというのが、先祖から受け継いできたかけがえのない那珂川の清流と生態を守り、現在の姿を子や孫たちにしっかりと引き継ぎたい、こういう訴えであります。こういう漁協の皆さんのお気持ちを大臣はどのように受けとめておられるのか、ぜひお答えください。 |
○塩川分科員 自然環境の保全に万全を期すというお話、その点で工事の目的も含めて関係者の御納得をいただく努力をという話をされましたが、実態とすると、危惧の声の方が大きいというのが現状です。 その点で伺いたいんですが、アユの生態調査についてであります。 この間、国土交通省の現地事務所などがアユの生態調査などを行っております。それに関連してお聞きしたいんですが、産卵からふ化して川から海に流れ下る仔アユ、その仔アユが下るという降下調査を行っているわけですが、その仔魚が取水口に吸い込まれる懸念というのが大変強いわけであります。 そこで、国交省の方で調べた調査、データの中で、仔魚の降下量というのは、平均すると一年に大体何尾ぐらい降下をするとなっているのか、その数字についてまずお答えいただけますか。 |
○塩川分科員 六十一億尾という大変な数であります。年によれば百三十億というときもあったそうですけれども、もちろん、これは全体の実数の調査ではなくて、ポイントでの調査ですから推計ということでありますが、大変な大きな量であるということは確かであります。 今お話がありましたように、夜間に降下をする仔魚が吸い込まれないように、十月、十一月については夜間の取水はしないというお話ですが、この二カ月の仔アユの降下量が約九七%というお話でした。それ以外は三%となるわけで、三%でも、六十億尾でいえば一億八千万、約二億の数であります。こういう数が対象外となるわけですけれども、地元の漁協の皆さんなどが特に懸念をされておられるのは、自然環境と一体のアユの生育ですから、数%の仔魚の喪失というのが毎年毎年積み重ねられることによって、結果としてアユの大きな漁獲量の減少を招くのではないか、こういう強い危惧の声が上がっているわけであります。 この数%の仔魚の喪失が将来大きな漁獲量の減少となるのではないか、こういう危惧の声に対して、国土交通省としてはどのようにお答えするんでしょうか。 |
○塩川分科員 夜間だけとらなくても、昼間流れるのもありますし、十、十一月以外については取水の制限をしていないわけですから、そこで流れ下るというのは実際にあるわけで、その数というのは少なくありません。 その点について仔アユの降下についての迷い込み、吸い込み防止対策の検討委員会というお話でしたけれども、これは朝日の茨城県版を拝見しますと、その検討委員会の委員長さんが、個人的な感触では、今この時点で考えると導水事業をやった方がいいと思う、将来、導水事業があってよかったという方向でいってほしい、こんな発言をしているわけです。 これでは検討委員会は形ばかりで、建設先にありきということになるんじゃありませんか。その点、いかがですか。 |
○塩川分科員 委員長自身はやった方がいいと言っているという点では、その中立性、客観性というのがそもそも疑念が浮かぶ。これが本当の意味で関係者、国民の理解、信頼が得られるのかということが問われているんじゃないでしょうか。 あわせて、稚アユの遡上の対策のお話も先ほどありましたけれども、アユの遡上調査について水産庁に伺います。 水産庁が行っていますアユの遡上調査の中で、和歌山県の日高川などでの調査があるということを承知しておりますが、その内容、特徴について御紹介をいただけますか。 |
○塩川分科員 日高川のお話で、雨が多いと、その栄養分が海に流れ下って沿岸部の珪藻などが増加をし、それを摂取する動物性プランクトンがふえて、それがアユの生育にも大きなプラスをもたらすんだろうということがわかってきたというお話であります。そういう点でも、海で育つアユについて言えば、河川の影響が大変大きいということになります。その点で、アユは沿岸部の栄養分を摂取して成長いたします。今の水産庁の説明のとおりであります。 霞ケ浦導水事業に関連して、那珂川の下流域、沿岸部での稚アユの生態調査というのは行われているんでしょうか。 |
○塩川分科員 調査していないということであります。 那珂川の総水量の一二%を取水するという計画になっているわけです。ですから、そうなりますと、上流からの栄養分が結局途中でどこかに行ってしまうという点で、その沿岸部におけるさまざまな生態系の変化がどうなるのかということについてまともな調査、検討も行われていない中で取水口はつくりますよということは、これは順序が逆ではないかと思っております。 そういう点でも、このアユの生態を把握する調査がきちんと行われていない段階で事を先に進めるというのは、これはおかしいんじゃないのか、こういう声が上がって当然だと思います。こういう調査を取水口の工事着工の前に行うという考えはありませんか。 |
○塩川分科員 その検討委員会の委員長さんが推進が望ましいと言っているわけですから、その中立性そのものが疑われているわけであります。そういう点でも、必要な調査も行わないで進めるのは問題があるということです。 この間の国交省と地元の漁協との交渉の経緯を見ましても、もともと、昨年の七月に、導水工事事務所から那珂川漁協に対策案の説明をしたいと申し入れがあって、那珂川漁協の方は、十月の理事会で説明を受けて漁協の意見も述べると答えて、導水工事事務所も承知をしたわけです。それが、その十月の前の九月の十日に、導水工事事務所は約束を破って、国土交通省として皆様との調整について新たな段階に踏み出す決断をしたとして、一方的に取水口工事スケジュールを通告してきた、これが実情であります。 また、上流の方の栃木の漁連の皆さんに対しての説明は、数年前から、二年前とかそのぐらいの時期であるわけで、栃木の皆さんにしてみれば、急な話ということが実態でもあります。 そんなときに、昨年十二月には、国交省はこの霞ケ浦導水事業の五年間の事業延長を発表しております。この遅延の理由は地権者との同意のおくれというわけですが、一方で、漁業権を持つ漁協との協議については、それこそ目前に期限を切って工事を押し切ろうとしている。 大臣に伺いますけれども、この事業を五年間延長したわけですから、私自身はこの事業そのものは問題があると思っておりますけれども、少なくとも、延長したんですから、今、現地の工事事務所が行おうとしている四月の取水口の工事着工については取りやめるべきじゃないのか、目の前のゴールを切ったようなやり方についてはやめるべきだ、そういうふうに思いますが、大臣の御見解をお聞かせください。 |
○塩川分科員 流況調整河川といいますけれども、ほかの水系の水を引っ張ってくることについて、その生態系に大きな影響が出るんじゃないかということが言われるときですから、その点についての十分な検証が行われていないということであります。 霞ケ浦の水質を改善するといっても薄めるだけですから、またその水を那珂川に持ってくることについての危惧の声が上がっているわけです。霞ケ浦でコイヘルペスでたくさんのコイが死んだということが大問題になりましたけれども、同じようなことが起こるんじゃないのか。こういうことについてしっかりとした説明がされていないからこそ、現地では、立ちどまって考えるべきだ、こういう声にもなっているわけです。 私、そういう点でも、漁協の皆さんとのやりとりは、昨年七月の時点にリセットをしろということが今求められていると思います。そう言いながらも進めるということであるわけで、私は、その点に何があるのかということが問われていると思います。 そこで国土交通省に伺いますが、霞ケ浦導水事業に関し、〇五年度及び〇六年度の全体の契約件数及び契約金額が幾らで、そのうち国土交通省のOBが所属をする企業、法人の契約件数及び契約金額は幾らか。いわゆる天下り先の企業、法人が全体に占める割合がどのくらいになるのかということをお示しください。 |
○塩川分科員 私のお聞きしている数字と違うんですけれども。 では、国土交通省OBが在籍をしたことのある企業、法人でどのぐらいの割合を占めるのか。私がいただいた資料の中では、二〇〇五年について言えば、二億八千二百四十五万円で四一・八%ですよ。二〇〇六年について言えば、一億三千八百八十万円で二五・九%ですよ。皆さんからいただいた数字なんですが、何で違うんですか。 |
○塩川分科員 では、私が読み上げますが、天下り先企業、法人の合計で見ますと、二〇〇五年度で言えば、三十四件中九件、二六・五%、六億七千四百四十三万円中二億八千二百四十五万円、四一・八%。〇六年度、二十二件中六件、二七・三%、五億三千四百四十三万円中一億三千八百八十万円で二五・九%。契約金額においても三割、四割という規模であります。契約先が天下り企業、法人が大きな割合を占めている。 大臣、これでは国交省OBの仕事の確保のために工事をとめられないんじゃないかと言われても仕方がないような実態じゃありませんか。大臣としてお考えを聞かせてください。 |
○塩川分科員 一割と言われた公益法人の大半が随意契約という点でも極めて疑念のある事業でもある、きっぱりと見直すべきだ、このことを申し上げて、質問を終わります。 |