<第169回国会 2008年2月29日 総務委員会 第9号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、昨日に引き続き、道路特定財源に関連して質問をいたします。
 資料を配付させていただきました。
 道路の地方単独事業費と国の直轄事業費の推移がわからないかなと思いまして、手元にある中で調べましたら、国土交通省もかかわっておられる「道路ポケットブック」、この「道路ポケットブック」の中に道路事業の仕組みというのがございまして、そこから関連する数字を引き出しました。それでつくったのがこのグラフであります。見ていただきますとわかりますように、「直轄・地方単独の道路事業費(当初予算)の推移」ということです。道路事業費がピークの九〇年代の後半から現在までの当初予算ベースの地方単独事業費及び直轄事業費の推移のグラフをつくりました。
 一番上の折れ線グラフですけれども、道路事業費の財源、一般財源、特定財源の総額は、九六年度の十一兆六千六百三十九億円から〇七年度七兆四千五百八十三億円へと、六割に減少しております。地方単独事業費は、九六年度六兆三百億円から〇七年度二兆二千六百億円へと、三分の一に減少しております。一方で、直轄事業費は、九六年度一兆七千三百六億円から〇七年度二兆七百五十八億円へと、一・二倍に増加をしております。
 国土交通省に伺いますが、地方単独事業費と直轄事業費の推移はおよそこういう傾向だということでよろしいでしょうか。

○菊川政府参考人 お答えいたします。
 おおむねこういう数字なんですけれども、若干、端数の部分というんですか、多少違っております。まず、平成八年度でございますけれども、直轄、一兆七千三百六億円と書かれておりますが、これは私どもの数字も同じでございます。ただ、若干違うのは、地方単独事業、六兆三百億というふうなグラフになっておりますけれども、道路局で持っておりますのは五兆六千億円ぐらいということで、多少数字には違いはありますけれども、おおむね、全体としてはこういう傾向でよろしいかと思います。

○塩川委員 これは要望したんですが、きれいな数字でまだいただけていないものですから、当初予算ベースでこのポケットブックにあるものを、後でこの期間の実際に国交省の確認した数字をいただきたいということが要望で、その点をお答えいただきたいのと、それとあわせて、ここにもありますように、地方単独事業費が減少している、それは理由は何なのかという点と、あわせて、日本全体の道路事業費は大きく減少しているのになぜ直轄事業費は全体として増加をしているのか、この点についてあわせてお答えください。

○菊川政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、地方単独事業でございますが、平成八年度と比較しまして約四割に減少いたしております。その理由として、私ども考えられますのは、恐らく、地方公共団体におきます財政全体の状況、それから、道路予算とほかの例えば福祉などのそういった予算との相対的な関係、こういった財政需要を踏まえた予算全体の重点投資の考え方、もう一つは、直轄事業、国庫補助事業、単独事業といった道路予算の中での重点化の考え方などによるものというふうに考えられますけれども、個々の地方公共団体により状況は異なると思いますので、一概には申し上げることが難しいと考えております。
 また、直轄事業がふえておりますその理由でございますが、平成八年度から平成十八年度までの十一年間で、直轄事業は約二割、今先生の御指摘ありましたように増加いたしております。
 この原因といたしましては、直轄事業それから補助事業などといった道路予算の中での重点化の考え方もございますけれども、特に、平成十五年度からは、高速自動車国道、従前日本道路公団で有料道路でやっていた部分の一部を新直轄ということで直轄事業でやるようになりました。多分これがかなり影響しているというふうに考えられます。

○塩川委員 地方単独事業費が減少している、重点投資、財政状況が厳しい中で当然福祉にも充てなくちゃいけないという点で、道路事業費を減らさざるを得ない。同時に、直轄、補助、地方単独という配分の中で、より地方負担が少なくなるだろう補助とか直轄の方にシフトしているというのが地方単独が少なくなっている理由だという話でした。
 あわせて、直轄事業費が増加をしているということについて言えば、今お話ありましたように、やはり地方負担が少ない直轄事業の方に重点化をしているのではないのかということと、新直轄がここで出たという話であります。
 地方の事情というお話で全体として説明をされたわけですけれども、補助事業をさらに直轄へと地方の負担が少ない方向にシフトしているというお話もございました。地方負担が少ないからということだと思いますが、この間、国は補助事業の基準そのものを厳しくしてきているんじゃないでしょうか。補助金の廃止とか縮小、採択基準の引き上げを行ってきた。例えば、一般国道の舗装補修事業の削除ですとか、地方道整備事業での一次改良事業などの採択基準の引き上げ、都道府県道を二億円以上から五億円以上にするとか、市町村道を五千万円以上から五億円以上にするなど、いわば国が補助の基準を厳しくすることで、結果として直轄事業がふえる方向に地方を追い込んでいるというのが今の国の実態ではありませんか。その点、国交省、いかがでしょうか。

○菊川政府参考人 お答えいたします。
 公共事業につきましていろいろな批判がございました。そういう中で、できるだけばらまきとかいうようなことではなくて重点化を図っていくというような方向で進めてまいりました。恐らくその結果が採択基準の引き上げとかそういった形で反映されたというふうに思っております。

○塩川委員 重点化という中で見ましても、補助事業の内訳を見ても、例えば二〇〇〇年と二〇〇六年度を比較した場合に、一般国道の補助国道を整備する事業は六九・二%です。これに対して地方道を整備する事業が三六・一%と、補助事業全体の中でも、より生活密着の事業の方が大きく圧縮をされている。そういう点でも、国のやっていることというのが、生活密着の道路より、より大きな道路、高速道路、直轄へと向かう方向に追い込んでいるというのが実態じゃないでしょうか。
 大臣に伺いますけれども、今お話ししましたように、地方は財政悪化の中で、生活道路関連の予算もままならない、削らざるを得ないというときに、国の直轄事業は増加をする、当然それには地方の負担金もおつき合いをせざるを得なくなる、こういったやり方を地方は望んでいるんでしょうか。大臣、いかがですか。

○増田国務大臣 まず、直轄と補助、それから地方単独というふうになっていますが、全体、それぞれ整備される道路の性格の違いというものもありますので、やはり道路というのはそれぞれがバランスよく整備をされていかなければならない。
 その中で、この間の地方財政の状況というのは単独が減少しているということに大きく影響しているんだろうというふうに私は思っておりますが、直轄道路についても、例えば実施をしていくに伴っては負担金の問題がありますので、直轄の意思だけではなくて公共団体の意思というものとよく協議、調整をしていくということが必要になってきますから、大分財政がきつくなっていく上で、やはり個々の事業をどういうふうに実施をしていくかについては、直轄は地元の自治体とよくそのあたりについては話をしていただく。
 それから、補助、地方単独の実施の判断に当たっても、地方団体は地方団体として十分事業内容を吟味してやっていく。必要なものはきちんとその中で実施をしていく。それから、重点化をしたりやめていくものは、きちんと重点化をしたり、事業年度を翌年度に延ばしたりして当面休止をしたりといったような措置をそれぞれ判断していくことが大事だというふうに思います。

○塩川委員 バランスという話がありましたけれども、直轄事業がこのままでは地方単独を追い越すような、地方の財政事情を考えたらもう来年度ぐらいにここはひっくり返るんじゃないでしょうかね、クロスをしていくというような状況を考えるときに、本当にそれで地方の要望にこたえるような方向に向かうのかということを懸念せざるを得ません。
 なぜ直轄事業がふえる傾向にならざるを得ないのか。私は、それは国の取り分の道路特定財源が固定をされているからだ、そこに大もとがあると思います。
 今、日常生活に必要な地方単独事業が圧縮をされて高速道路ばかりができるようになる。それは、国の道路特定財源の取り分が毎年毎年三兆五千億円前後で推移をする、いわば安定的に固定して聖域としてそのお金が入ってくる、その際に、ではその使い道をどうするのかといえば、国の場合でいえば、臨時交付金で一定額出るのはありますけれども、直轄か補助かという扱いになってきます。地方の財政事情が厳しくなれば補助金のおつき合いもできないとなってくると、結局、この三兆五千億円を使い切るためには直轄事業をどんどんどんどんふやさざるを得なくなってくる。これが国の道路特定財源が招いている現状じゃないでしょうか。
 国の道路特定財源が三兆五千億円という規模で固定化をして道路だけにしか使い続けられない。それが、国の事業としては直轄を中心にどんどんつくることで高速道路ばかりをつくるという結果にならざるを得ないんじゃないでしょうか。
 大臣、伺いますが、この国の道路特定財源によって高速道路建設が聖域化をして、結果として生活道路関連費用を圧迫しているということになっているんじゃありませんか。

○増田国務大臣 この間の事業量を見ていくと、確かに直轄の方に大分シフトしてきている。それで、地方の単独事業、これは生活関連なんかが多いんですけれども、そういったものは大分減少しているということがございます。
 国それから自治体とも、いろいろ協議、相談をしながらそういった事業箇所を決めていったり、あるいは自治体の方の単独事業についての実施の判断等もいろいろあろうかと思いますけれども、やはり、特に国の場合の事業、高速道路、高規格道路、新直轄であったりあるいは地域高規格のようなものであったり、さまざまあると思いますけれども、まだ間が途切れていることによってきちんとした物流ネットワークが構成されていなくて、その上で企業進出などの地域間格差が拡大をしてきているといったようなことに対して、できるだけ早くそうした高規格それから新直轄などを整備してほしいといったような要望も大変強くなっているんだろうと思います。
 ただ、いずれにしても、申し上げたいことは、そういった事業の箇所なり完成までのスピード、それについては地元の自治体ともよく調整をして実施していかなければなりませんし、財政負担もよく考えていかなければならないわけでありますので、私はやはり、全体のバランスをよく考えながら事業実施をしていかなければならない、その上で、生活道路というのはそれほど大きなお金がかかるものではございませんが、そういった生活道路は生活道路できちんとした財源手当て、そしてその上での事業実施というのは必要であるというふうに思っております。

○塩川委員 直轄事業がふえるのが地方の事情によるかのような話をされるんですけれども、そうじゃない。国の道路特定財源が固定化をされていて、毎年毎年数兆円を注ぎ込む、その使い道として、結局は直轄事業中心にならざるを得ないから高速道路がふえていく、直轄事業がふえていく、こういう仕組みになっているわけです。
 ですから、地方にしてみれば、それはもちろん直轄事業の中で必要な道路をつくりたいという要望もあるでしょう、同時に、身近な生活道路もつくりたいという要望もあるにもかかわらず、国の道路特定財源が直轄事業優先という仕組みになっているために、地方の選択の幅を大きく狭めるものになっているんじゃないのか、ここを改める必要があるんじゃないのかということが問われていると思うんですが、大臣、改めていかがですか。

○増田国務大臣 地方のそういう道路整備について、地域でさまざまな状況がある中で、今大きな道路整備についての役割分担というものも考えていかなければならない。当然、分権化の中で、地方に対して、道路整備についての地方の役割というものをふやしていく、それから、それに向けての財源などもいろいろ地方に移していくということもあわせて、今後、道路のみならず、さまざまな分野で検討していかなければならないというふうに思っています。当然、そういったことが結論が得られれば、見直しするところはやはり見直しをしていくということが必要だろうと思います。
 今大事なことは、やはりそういった制度見直しは一方で必要でありますけれども、スピード感を持って道路を整備していかなければならないので、そういう中で、国の直轄事業を実施するについて、決して地方が受け身になる必要はないので、当然負担金の問題もありますから、きちんと国と協議をして、そして必要なところは急いで、スピード感を持ってやっていただく。それから、地方の生活道路のようなものも、やはり必要なものはきちんと整備をしていただく。
 事業量について、地方単独というのは今大変厳しい削減が迫られる状況でございますが、そうした地方単独事業も含めた、地方の安定的な財源の確保ということは、私どもも今後も努力をしていきますので、その上で、地方のさまざまな道路整備についての御判断を具体の整備に生かされるようにしていきたいというふうに思っています。

○塩川委員 直轄事業も大事だ、地方単独事業も大事だと言うんですけれども、傾向として、直轄事業がふえる方向にあり、地方単独事業が減る方向にある、こういう傾向は望ましいとお考えなんですか。

○増田国務大臣 やはり、全体のこうしたマクロの数字と、それから個々の残っている事業の箇所数というのは、個別の事情がございますので、私としては、道路整備について、地方単独事業が大変減っておりますけれども、しかし、そのことをもって一概にいい悪いということではなくて、全体のネットワークをいかに早く構築していくのかという観点でこれは考えていかなければならないというふうに思います。
 今全体で道路事業費三%削減をしていく中で、直轄事業そのものが、少しずつでありますけれども毎年毎年事業量をふやしていったり、あるいは特に補助事業がその中では減っていく傾向にありますけれども、それは、個々の自治体の中でどういうふうにそのウエートを考えていくか、これはやはりさまざまな要素があるのではないか。
 直轄でも新直轄などについての要望が大変強いことを私も見聞きしておりますし、やはりそれについては、今後の道路財源の確保ということから、各自治体、一刻も早く優先して新直轄を地元に引っ張ってこよう、今こういうような状況もございますので、そのあたりはよくそうした個々の地元の状況をお考えいただく必要があるのではないかというふうに思っております。

○塩川委員 国全体の事業量の圧縮というのはかかる、それ自身必要です。その点で、道路特定財源があることによって、結果とすると、地方の単独事業を圧縮する、国の直轄事業をふやすという方向にならざるを得ないんですよ、地方の負担が小さくなるとしたら、地方の負担の少ない直轄事業の方に流れていくわけですから。結果として、道路特定財源の枠組みが直轄事業をどんどんふやしていく、マイナスシーリングをかければかけるほど高速道路がどんどんできるということにもならざるを得ないという点でも、このゆがみを正すことが必要だということになってきます。
 国の道路特定財源が聖域となっているために、高速道路ばかりふえていくことになり、地方の生活関連道路の予算が圧縮をされる。道路特定財源という仕組みをなくすことなしには、高速道路優先、生活道路軽視の枠組みは変えられないわけで、道路中期計画の撤回、道路特定財源の一般財源化、暫定税率の廃止、そして地方の財源の穴埋めは国の責任できちんと行うということを求めて、質問を終わります。

「地方税法等、三法改正案の反対討論」
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 討論に先立ち、野党の徹底審議、慎重審議を求める要求を踏みにじり、質疑を打ち切り、採決をすることに断固抗議をするものであります。
 両院議長あっせんでは、総予算及び歳入法案の審査に当たっては公聴会や参考人質疑を含む徹底した審議を行うとしております。国会法五十一条でも、重要な歳入法案については、公聴会を開かなければならないとされております。しかるに、十年間で九兆円にも上る大増税法案であるにもかかわらず、公聴会は開かれておりません。一定の結論を得る段階に達しているとは到底言えないことは明らかではありませんか。このこと一つとっても、道理のない質疑打ち切りに断固抗議の意を表明し、日本共産党を代表して、地方税法等の一部を改正する法律案外二法案に反対の討論を行います。
 まず、地方税法等の一部を改正する法律案についてであります。
 反対する理由の第一は、軽油引取税及び自動車取得税の暫定税率を十年間延長するものになっているからであります。
 政府は、五十九兆円もの税金をつぎ込む道路中期計画を決定しましたが、計画は総額先にありきで、これまでの高速道路中心の道路建設をさらに進めようとするものであります。高速道路中心の道路特定財源は、住民が切実に望む生活道路の整備を削減する結果となっていることを当委員会でも指摘しましたが、その仕組みを見直すことなく、道路建設の自動装置となっている暫定税率を延長することは容認できません。
 さらには、軽油引取税の暫定税率導入と符節を合わせるように、旧自治省から運輸関係業界団体への天下りが始まるなど、道路特定財源が天下りの温床となっていることも明らかとなり、そのひどさを与党議員も認めざるを得ませんでした。総務大臣も調査をすると約束をしましたが、その回答もなく質疑を終わらせようとすることは、疑惑隠しと言われても仕方がありません。
 道路特定財源は、直ちに一般財源化をし、道路にも福祉にも教育にも使えるようにすることが、地方自治体の財政需要に合致をするものであり、政官財癒着を断ち切る道であることを強く申し上げるものであります。
 そして第二は、金持ち優遇税制である上場株式の譲渡益、配当への軽減税率を限定つきとはいえ維持した上、新たに上場株式等の譲渡損益と配当所得との損益通算の特例を創設しているからであります。金融資産を持つ富裕層優遇策は直ちにやめるべきであります。
 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案についてであります。
 反対する理由の第一は、地方交付税の総額を確保する国の責任が果たされていないからであります。
 地方交付税は、ナショナルミニマムを保障するための財源保障を国に義務づけるとともに、財源不足が生じた場合には、交付税率の引き上げ等を政府と国会に求めています。
 ところが、法案では、来年度五兆二千四百七十六億円もの財源不足額が生じているにもかかわらず、その補てんの大半を地方の借金で穴埋めすることとしています。制度改正をしてもなお巨額の財源不足が生じる事態が十三年も続いています。法の趣旨にのっとり、交付税率の引き上げを行うことこそ必要ではありませんか。
 第二は、骨太方針二〇〇六、二〇〇七にのっとり、人件費等を厳しく抑制するものになっているからであります。
 〇八年の地方財政計画で給与関係経費三千四十億円、地方公務員数二万八千三百十九人、国の削減率に合わせて地域に必要な単独の一般行政経費も一千百億円、いずれも削減されています。
 五兆一千億円の交付税の削減が特に財政力の弱い自治体で住民サービスの後退を引き起こしていることを総理自身も認めたにもかかわらず、この動きに一層拍車をかけることになり、許されません。
 第三は、地方交付税総額の復元、増額を求める地方の声にこたえるものになっていないからであります。
 最後は、地方法人特別税等に関する暫定措置法案についてであります。
 本法案は、前提となる税収の格差拡大そのものが明らかではありません。また、法人事業税の一部国税化は、今進めなければならない国から地方への税源移譲の方向に逆行するものであり、将来の消費税率の引き上げにも連動するものであることから、到底容認をできません。
 以上、強い抗議の意を込めて、反対討論を終わります。