<第169回国会 2008年5月14日 内閣委員会 第15号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、法案につきまして、本会議でも指摘をした点ですが、官民人材交流に関連して官民癒着問題について質問したいと思います。
 この間の防衛事務次官と防衛産業、防衛企業との癒着の問題ですとか、あるいは薬害をめぐる製薬企業と厚生官僚との癒着の問題など、官民癒着に対する国民の疑念というのはますます高まってきているところです。この点について、過日の本会議の私の質問に福田総理は、「もとより、交流が官民癒着との疑念を抱かれることなく、国民の信頼を得られるよう進めていくべきことは当然であります。」と述べておられます。
 そこで、大臣にお伺いをいたしますが、こうした官民癒着の疑念を抱かれないようにすることが公務員制度改革の柱の一つだと考えておりますが、大臣はどのように御認識でしょうか。

○渡辺国務大臣 昨年の国家公務員法等改正におきまして、まさに官と民の不適切な関係を絶つことから、退職公務員の現職に対する口きき規制等の行為規制を導入したところでございます。場合によっては刑事罰も科されるという大変厳しい内容になっておりまして、こうしたことが定着をしていくことによって官民のアブノーマルな癒着関係は根絶されていくべきものと考えます。
    〔委員長退席、岡下委員長代理着席〕

○塩川委員 今回の法案においても、官民癒着の疑念を招かないようにするということが改革の柱としてうたわれるべき趣旨だと思っておりますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。

○渡辺国務大臣 昨年の法改正においてこの点の手当てを行ってきたわけでございます。さらに、昨年の法改正でも議論をしたところでございますが、官民癒着の是正と同時に、官と民の人材の交流というものは進めていくべきであるというのが私どもの基本的な立場でございます。まさに、癒着を排しながら官民の人材交流を活発にしていくことが求められるものと考えます。

○塩川委員 その官民人材交流に当たって、当然、透明性の確保とかそういうしかるべき措置をとるということが求められております。その点は法案でもうたわれておりますが、そういう趣旨で透明性の確保を図るということだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○渡辺国務大臣 経済社会情勢の変化に迅速的確に対応した行政を進めていくためには、官と民がお互いの知識経験を生かせるよう、人事交流を抜本的に拡大していく必要がございます。特に、社会経済情勢の変化に対応して政策の企画立案能力を高めるため、民間の専門能力を持った人材を行政に受け入れることは極めて重要でございます。
 このような観点から、国家公務員制度改革基本法案においては、官民の人材の流動性を高めるため、現行の制度を抜本的に見直すことを定めているものでございます。

○塩川委員 ですから、そういう流動性を高める上でも、透明性の確保を確立することが重要だと考えますが、大臣はいかがですか。

○渡辺国務大臣 現在の官民人事交流法における交流手続については、人事院による公募、民間企業の応募、各府省による計画の作成、人事院による計画認定といった手続を経て交流派遣または交流採用が行われております。
 手続の簡素化については、交流制限に伴う対象確認作業等の手続の煩雑さが指摘をされ、企業側の負担感も大きいことから、これらの手続について、より簡素化する方向での見直しが想定されているところでございます。
 交流対象の拡大については、現在民間企業に限られている交流対象自体を大学法人や公益法人などまで広げる方向での見直しが想定されるところでございます。
 今回の基本法案は改革の理念、基本方針等を定めることを目的としており、具体的な内容については基本法案成立後、検討を進めることになるわけでございます。

○塩川委員 官民の人材交流について、七条の点で、手続の簡素化及び対象の拡大を行うという点で大臣の御答弁がありました。民間の負担軽減のための手続の簡素化の問題についてはまた後で御質問しようと思いますが、その七条で今、対応をとる前提として「透明性を確保しつつ、」とうたっているわけでありますから、そういう立場で当然この法案は臨んでおられるということだろうと思います。
 そこで、現行の官民交流の制度について人事院に伺います。
 民から官に人が移る、こういう交流がどのような制度で行われているのか、その点について最初に伺います。

○尾西政府参考人 官民交流に関しまして、民間からの採用方法といたしまして現在ございますのは、まず、国と民間企業との間の人事交流に関する法律、いわゆる官民人事交流法でございますが、これに基づく交流採用、それから、一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律、いわゆる任期付職員法に基づく任期つき採用、そして、国家公務員法に基づきます選考採用、それから非常勤職員としての採用という四種類がございます。

○塩川委員 その四種類の中で、民から官に来てまた民に戻るということを前提としているのは、このうちのどの制度でしょうか。

○尾西政府参考人 制度的に、民から官に来てまた民に戻るということを予定しているのは、最初に申し上げました官民人事交流法でございます。

○塩川委員 ほかの制度は同一企業に戻ることを前提としておりませんが、官民人事交流法は同一企業に戻ることを前提として制度がつくられております。こうした交流は官民癒着の疑念が生じるわけで、官民交流法はその疑念が生じないような規制をとっておると思います。
 官民人事交流法において官民癒着の疑念が生じないようにどのような規制が行われているのかについて、簡単に御説明ください。

○尾西政府参考人 官民人事交流法におきましては、公務の公正性の確保という観点から、官民癒着といった疑念が生じないように、まず、法律及び人事院規則で交流基準を設けるなどの措置を講じております。具体的には、採用に当たりまして、交流元企業に対する許認可等を行うポストにはつけない、あるいは同一の企業との継続的な人事交流は制限する、そういう措置を講じております。また、当然のことながら、交流採用者には国家公務員法に基づく守秘義務が課せられるということでございます。
 さらに、先ほど大臣からも話がありましたけれども、募集に当たりましては、私ども人事院が民間企業の公募を行いまして、その上で、公募に応じた企業と交流先の国の機関との間で採用の計画を作成して、それについて私ども人事院が認定し、その上で採用する、そういう手続をとって透明性も確保しておるということでございます。
    〔岡下委員長代理退席、委員長着席〕

○塩川委員 今お答えになった中で、許認可権限のある府省との間ですとか国と契約関係のある民間企業との間の交流制限、また、同一の民間企業との継続的な人事交流に関する制限、この二点が交流基準などを念頭に具体化されておるわけですけれども、こういった制限を設けている趣旨がどういうところにあるのかについて、改めて。二つの角度、官職の制限の部分もそうですし、あと同一企業との継続的な人事交流を制限している、それぞれどういう理由で設けられているのかについて、もう一回お願いできますか。

○尾西政府参考人 官民交流といいますのは、公務の活性化といったために推進が必要ではあるわけですけれども、一方で、官と民との癒着という疑念が生じないように、公務の公正性をしっかりと確保しておく、そしてそういう疑念を持たれないようにといった趣旨から、やはり企業の所管関係等についてはしっかりと目を配っていく、あるいは同じ企業との間で何回も何回も続くということがないようにしていく、そういうことであろうと思います。

○塩川委員 こういった規制というのは官民人事交流法にあるわけですけれども、先ほど挙げていただきましたその他の人事交流の制度、任期付職員法ですとか国公法に基づく選考採用ですとか、非常勤職員もそうですけれども、今答弁いただいた規制は、官民人事交流法以外のその他の制度にはあるんでしょうか。

○尾西政府参考人 先ほど申し上げましたその他の仕組みにおきまして、どういった措置があるかということでございます。
 まず、任期付職員法と国家公務員法に基づきます選考採用の場合でございますけれども、こういった場合は、もちろん国家公務員としての守秘義務が課せられているほか、現在のところですと、他の一般職員と同様に、国家公務員法百三条に基づきます営利企業への再就職の制限というのがかかわってくるというのが一点でございます。
 それからまた、こういった任期つき任用ですとか選考採用の場合も、募集に当たりましては、特段の事情がない限りは公募等によって幅広く人材を求めるということを各府省に要請しておるところでございます。
 また、非常勤職員につきましても、国家公務員法に基づく守秘義務が課せられておりますほか、募集に当たっては原則として公募によるということを各府省に求めておるということでございます。

○塩川委員 許認可権限のある府省との間の民間企業の交流制限、許認可権限のある役所の方には行けませんよ、あるいは同一の民間企業について継続的な人事交流はだめですよといったような規定は、ほかの制度にはあるんでしょうか。

○尾西政府参考人 基本的に、戻るということを前提にしているわけではないので、若干官民交流の場合とは違いますけれども、例えば任期つき職員の場合でありますと、営利企業に採用されている人にこちらへ来てもらった場合には、配置ですとか従事する業務について配慮をしてもらう、あるいは同一の営利企業から継続的に来ることがないようにということで、それは各府省さんにお願いしているところでございます。

○塩川委員 今お話のあるように、官民人事交流法と同様の制限がすべての制度に並びであるわけではありません。そういう点でも、今お話しになったように、戻ることを前提としていないほかの制度では対応が違っているというのが実情であるわけです。そこで、ほかの制度とは違って官民交流法は民間企業から来た人が再びもとに戻ることを前提としていますから、その対応が十分かどうかというのは置いておいても、癒着の疑念が生じないようにするためのさまざまな規制を設けているわけです。
 そこで、具体的な事例でお聞きしますけれども、本会議質問でも紹介をしました原子力安全委員会の規制調査官の点であります。
 原子力安全委員会事務局の規制調査課に、規制調査官として二〇〇三年四月から、三菱重工業、三菱電機、日立製作所から任期付職員法で受け入れております。この方たちは任期が終了して出身企業に戻られたと思いますけれども、確認させてください。

○袴着政府参考人 先生御指摘のとおり、原子力安全委員会事務局規制調査官として、民間企業出身の任期つき職員を平成十五年四月以降採用しており、そのうち、現在在籍しているのは三名でございます。
 以前在籍した方は、また出身元の企業に戻っておられます。

○塩川委員 二〇〇三年に来られた方は、二〇〇六年に出身企業に戻られております。二〇〇六年にその後任という形で、任期を引き継ぐような形で、やはり別な方でしょう、いずれにせよ、先ほど紹介しました三菱重工業、三菱電機、日立製作所から任期付職員法で同じ規制調査官のポストに入っております。
 この方たちの任期が終了しましたら、出身企業に帰る予定になっているのではありませんか。

○袴着政府参考人 現在在籍しています三名の方々が任期が終了した後にどうされるかは、個別具体的には承知しておりませんが、基本的には戻られるものではないかというふうに考えております。

○塩川委員 事実上の人事交流といいますか、特定の企業から受け入れて、帰って、また同じ企業からいらっしゃると。
 この人事交流の場合には、官民癒着の疑念を抱かれないように、先ほどの官民人事交流法などでのさまざまな規制はもとより、透明性の観点からも交流先企業は公募となっていると承知をしておりますが、これらの民間企業から任期付職員法で採用した方たちは公募で採用されておられるんでしょうか。

○袴着政府参考人 これらの職員につきましては、これまで、企業から推薦を受けまして、人事院の承認を得まして、業務に必要な専門的知識あるいは実務経験の観点から選考の上、採用しております。これまで公募はしておりませんが、二十年度からは公募することとしております。

○塩川委員 これまで特定企業からの推薦で受け入れていたわけです。
 任期付職員法は、先ほど確認しましたように、出身企業に復帰することを前提としておりません。そういう点で官民人事交流法とは違う規制になっているわけです。
 事実上の官民交流人事をしながら、官民交流法の規制を逃れて、いわば任期付職員法で実質的な官民交流を継続するというのは、実態として脱法行為なのではないのかと率直に思いますが、しかるべく見解をお聞かせいただけますか。

○袴着政府参考人 任期つき職員の採用につきましては、任期付職員法に基づき、また、人事院の承認も得て進めているところでございますし、特に法令上問題があるというふうには思っておりません。

○塩川委員 いや、法令上もともと足りないものではないのかということを聞いているわけですけれども。
 もともと原子力安全委員会というのは、規制官庁、保安院などに対する監視、監査などを行うわけですけれども、しかし、その規制官庁のもとには、電気事業者やあるいは原発のメーカーがあるわけですね。ですから、本来監督される立場の民間企業の人間が、その規制官庁を監視する立場の原子力安全委員会の事務局にいるということ自身に、やはり疑念が生じるんじゃないでしょうか。それで、特定のポストのように、特定の企業から行っては帰る、行っては帰るという形になっているという点でも、極めて官民癒着と言われるような実態というのがうかがえる。そういう点でも問われるものですし、そういう意味でも、同一企業との継続的な人事交流に関する制限が適用されないような脱法的な扱いは是正されなければならないと考えます。
 民間企業から任期つき職員で採用している場合に、原子力安全委員会事務局に限らず、内閣府の中でも、ほとんど出身企業に復帰、また復帰予定となっております。また、ほかの省庁でも同様の実態にあると承知をしております。こういったような脱法的な措置によって、法が求める透明性が確保できないような状態が政府全体に蔓延する可能性というものもあるわけで、そういう点でも現状が問われているわけですけれども、その上に、今回の法案でさらなる官民人事交流を拡大するということが先ほど大臣の御答弁でもありました。
 そこで、大臣に伺いますが、官民人事交流法の人事交流の定義に基づいての具体化が行われるわけですけれども、官から民に行くという点での目的というのはお話のあったとおりだと思いますけれども、営利を目的とする民間企業が官の方に来る、民から官ですね、そういう場合の官民人事交流を行う利益、メリット、それは民間企業にとってはどういうものなんでしょうか。

○渡辺国務大臣 官民の交流は、国と民間企業の双方にとって、人材の育成、活用、組織運営の活性化や相互理解の促進等につながるものであると考えております。また、官民の交流によって、この国の進むべき方向性について官民で共通の認識が持てるようになるということは、まさしく、国のみならず民間企業においても有意義であると考えます。
 なお、官民の人事交流が官民癒着との疑念を抱かれることのないよう、公務の中立性、公正性には十分留意すべきと考えております。

○塩川委員 総務省に官民人事交流推進会議というのがございまして、昨年から三回ほどにわたって審議を行ってきていると承知をしております。
 その中でも紹介されております総務省の人事・恩給局の委託研究「民間企業等における官民人事交流に対する意識に関する調査研究」の報告書、昨年、平成十九年の三月ということで出されている報告書がありますけれども、この報告書というのは、「本調査研究の主眼は、官民人事交流の相手方である「民」側の真意・本音を可能な限り如実に引き出すこと、」民間企業の官民交流についての本音を聞き出すということを目的にしている調査なんだということをうたっております。
 その中で、具体的に民間側の官民人事交流のメリットについて指摘をしております。「民側の能動的な働きかけによる民から官への派遣を通じて、民側が得たいと考えているメリットを整理すると以下の三通りが考えられる。」といって、一つが「派遣する社員の人材育成」、二つが「官庁等との人脈・ネットワーク形成」、これなどは先ほど大臣がおっしゃったことだと思いますけれども、同時に三つ目に、「新たなビジネス機会の創出」とうたっているわけですね。つまり、ビジネス機会の創出というのが直接的なメリットとなるんだということをここでは民側の本音として紹介をしているわけです。
 ですから、官民人事交流を推進するとした場合に、民間企業が人事交流で官に人材を出すときに、その人材が官の中で出身企業の新たなビジネス機会の創出のために業務を行うとすれば、官民癒着そのものじゃないのか。官民人材の交流を推進する、拡大するといった場合に、こういった疑念が、民のメリットを尊重した方向で進められれば当然官民癒着の疑念というのが拡大するんじゃないでしょうか。「民間企業その他の法人の意向を適切に把握した上で、」と第七条にもうたわれているとおり、官民人材交流というのは官民癒着の疑念をさらに拡大するということになるのではありませんか、大臣。

○渡辺国務大臣 官民の人事交流というのは、まさに官民共通のこの国の進むべき方向性についての認識が持てるようになります。国のみならず民間企業においても極めて有意義なことと考えます。
 この人事交流が官民癒着との疑念を抱かれることのないような公務の中立性、公正性には、今後とも十分留意すべきと考えております。

○塩川委員 いや、そのようにおっしゃっても、要するに本音ベースでいったら、やはり官民人材交流といえば新たなビジネス機会の創出というのが大きな目的、ねらいなんだということを願っているということがここに示されているわけです。そういう点でも癒着防止の規定の強化こそ必要なわけですけれども、今回の法案ではその点はどうなっているのかを伺いたいと思います。
 法案では、この官民人材交流について七条で、「その透明性を確保しつつ、手続の簡素化及び対象の拡大等を行うこと。」とありますけれども、この手続の簡素化、対象の拡大、先ほど大臣から少し先行して御答弁をいただきましたが、改めて確認でお答えいただけますか。

○渡辺国務大臣 基本法の七条一号におきましては、手続の簡素化について、交流制限に伴う対象確認作業等の手続の煩雑さが指摘をされています。企業側の負担感も大きいことから、これらの手続について、より簡素化する方向での見直しが想定されるところであります。
 また、交流対象の拡大については、現在民間企業に限られている交流対象自体を大学法人や公益法人などまで広げる方向での見直しが想定されるところであります。

○塩川委員 手続の簡素化ということで、交流制限作業の簡素化という点では交流基準の見直しということになるわけです。先ほど御紹介しました官民人事交流推進会議の第二回の会合で出されている資料に、「官民人事交流に関する各省からの意見等」ということで、どうやったら官民人事交流が進むのかということについて、ここで書かれております。
 要するに、進まないのをどうしたらいいのかというのについて、「交流基準の見直し等」ということで、「連続交流制限の緩和」「派遣先企業の不利益処分等による交流制限の緩和」、行政処分を行ったような場合についてはストップよというのについて、ちょっとその辺を緩和してくれとかいう話ですし、「所管関係の規制は事後行為規制とする」ということで、事前規制を事後チェックに切りかえましょうという話ですとか、「交流先の業務制限の緩和」などもうたわれています。
 ということは、今大臣がお話しになった手続の簡素化は、ここで挙げられているような緩和措置を行うということでよろしいんでしょうか。

○渡辺国務大臣 今回の基本法案は、改革の理念、基本方針等を定めることを目的といたしております。具体的な内容については、基本法にのっとって検討をしてまいります。
 人事交流については、その透明性を確保しつつ、手続の簡素化及び対象の拡大等を行うことになるわけでございます。

○塩川委員 否定もされませんでしたし、官民癒着防止の規定が見直しの対象となることは明らかです。
 この委託研究の報告書では、民間企業の意見として、官民交流と官民癒着は境界が不明確だということなども述べています。いわば官民交流と官民癒着は紙一重なわけで、癒着防止の制限を規制緩和するのでは、さらに官民癒着を拡大するのではないかという懸念を申し上げて、きょうの質問を終わります。
 ありがとうございました。