<第169回国会 2008年5月15日 総務委員会 第19号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、参考人の方から貴重な御意見を伺いました。何よりも、行政に対する国民の信頼を回復するための取り組み、御尽力に心から敬意を表するものであります。
 この年金問題についての国民の不信を解消する上では、皆さんと御一緒に取り組みを進めていきたいと思っております。その点で、第三者委員会の取り組みについて何点かお伺いをさせていただきます。
 最初に、梶谷参考人にお伺いをいたします。
 この間、梶谷参考人は全国の地方の委員会にも足を運んで実情をお聞きになる、こういうことに取り組んできたというふうにお聞きをしております。そういった中で、地方ごとのばらつきもあるということをお聞きしているわけですけれども、回ってこられまして、具体的にどのようなばらつきがあるとお感じなのか。そういう点で、何らか国として対応が必要なこともあれば、国に対する要望ということでも、この機会にお聞かせいただければと思っておりますが、よろしくお願いいたします。

○梶谷参考人 全国を回りまして、先ほど来お答えしたことではありますけれども、調査内容についてかなり詳しくするところと、必ずしもそうでないところ、それで、委員から指摘されてさらに追加で資料収集をするというようなこと、いろいろなケースがあるんだろうと思います。そういうものが積もり積もって、若干の処理率等の違いとかいうものがあろうかと思います。
 それから、結論がちょっと違うのではないか、同じケースでありながら結論が違うのではないかというような御指摘もございますが、私は必ずしもそうではないと思っているんです。やはり具体的な一つ一つの事情というものがみんな違うわけですね。例えば、例に挙げられました、二、三カ月支払いがないという事案であっても、背景事情がずっと違う。例えば、三カ月だけ払わなかった、ところがその後ずっとすべて払っているというようなケースと、時々ぽつぽつと支払いがないというようなケースだとかというふうなことで、一つ一つ見ると非常に違うということがございます。
 だから、それをどのように、中央委員会としては、各地域の方たちにできるだけ標準化、平準化するかということはなかなか難しいところがあるわけでございます。そこが非常に苦労しておるわけで、だからこそ我々は各地へ行って共通の問題点をいろいろ議論して、そういう中で各地方委員会が独自にお考えいただくということになっておるわけでございます。
 そういった意味で、具体的にどのようなことをするかというのは非常に難しいのでありますが、できるだけ会合を多く重ねまして、共通の認識を持って、問題点が那辺にあるか、あるところは非常に迅速にやっている、あるところはちょっと遅いというようなことを、どこに問題点があるのかというのを、自分のところだけではわかりませんので、皆さんと議論をしながら、問題点を認識しつつ進んでいくということが必要ではなかろうか、このように思っているわけでございます。

○塩川委員 都道府県別の受け付け件数と委員の数にかなりアンバランスがあるのではないかということ、これは事務室の方からの資料もいただいて、都道府県別の受け付けの件数の資料がないということで、新聞報道でしか私も把握のしようがないんですけれども、委員数で割ってみますと、一番少ないところと多いところでは三倍以上の開きが出てきているわけですね。そういった点でも、体制の強化ということが求められていると思います。
 さらに五十チームふやすとかという話がありますけれども、その際でも、予定されている一年間でほぼこの五万件をやろうと思いますと、一チームで大体三百件ぐらい扱わなくちゃいかぬ。その数で割り戻しますと、例えば大阪などでは委員の数を二倍以上にふやさなくちゃいけないんじゃないかとか、出てくるわけですね。
 そういう点で、現状の体制で本当にいけるのかなという懸念を覚えるわけですが、その体制の強化の点についてはどのようにお考えでしょうか。

○梶谷参考人 私の立場とすれば、多々ますます弁ずということで、多ければ多いほどいいというふうに思っておるわけでございます。ただ、いろいろな要素から、簡単にふやすというわけにはいかないということも承知しております。
 というのは、やはり、事務職員の方をふやすといっても、だれでもいいというわけには当然いかないわけですね。相当な経験と能力がなければいけないというようなこともございますので、その人材確保、かなり総務省の皆さん方は努力をされておるというふうに聞いております。
 ただ、おっしゃるように、余りばらつきがあってはいけないし、それから、やはりできるだけ迅速にやるということは私どもの至上命題であると思います。そういった意味で、できるだけ多くの方たちを集めて、そしてこの年金記録の回復に努めるということをいま一層早めていかなければならないというふうに思っております。
 そういった意味では、まさにおっしゃったように、もう少しふやした方がいいのではないかという御意見に対しては、全面的に私としては同感でございます。

○塩川委員 委員で、チームで審査をする、その作業そのものも、より前に進めていかなければいけないわけです。その点、前さばきでの事務局、事務方の作業というのは当然必要なわけで、その強化もこの間されてきているわけですけれども、一部の指摘では、もちろんそれぞれ事務局の方にも専門の方もいらっしゃるわけですが、国から出向で来られるような方も一定数いらっしゃる。その出向が、かなり短期間でころころ入れかわっているんじゃないのかということなども指摘があるんですけれども、そういう実情というのはどうなんでしょうか。
 その点でも、委員の数をふやすと同時に、前さばきの事務局体制のあり方の問題について何かお感じの点があれば、お聞かせいただけますか。

○梶谷参考人 まことに申しわけありません、今御指摘の、出向の方が短い期間でかわっていくという事実は、私は把握しておりません。まだ一年しかたっておらないわけでございまして、また、当初よりも倍増しているというような状況の中で、そういう事例は私のところには達しておらないわけでございます。
 やはり、ある程度経験というものも必要でございますので、余りかわるというのは望ましくないことは事実であろうというふうに思っております。

○塩川委員 次に、小澤参考人に伺います。
 委員の方がそれぞれの専門性を生かして、国民、訴えの皆さんの要望をしっかり受けとめて対応されておられると思うわけですけれども、中には必要以上に記憶の正確さを求めるような委員もいるんだというような報道の指摘などもございます。その辺について、特に地方の委員会などでの委員の方の取り組みの姿勢、その点でお感じのこと、あるいは、こういう改善があったらよいのではないかというお考えがありましたら、お聞かせいただけないでしょうか。

○小澤参考人 いろいろ内容を審議するときには、やはり重要視するのは、勤務実態であるとか人事記録、在籍証明、失業保険者証だとか、あるいは源泉徴収票、こんなようなものを、あれば求めます。
 それから、保険料控除については、やはりその控除されていた何らかの記録、それから、そこに出てくる保険料額の妥当性、極端な話ですけれども、給与明細を出していただいたんですが、その給与明細のところに、社会保険料と書いて、割と小さな数字が入っていたんですね。そうすると、これは分析してみると、当時の雇用保険料の金額と全く一致する。そんなことで、本人は社会保険に入ったつもりなんですが、それは雇用保険であったとか、そんなこともあったりします。
 それから、短時間労働者の勤務形態が、先ほどもちょっとお話ししましたように、いろいろ変わるケースもある。そんなことから、何らかの同僚の方の証言とか、履歴書だとか、勤続の感謝状とか表彰状とかというようなものがあったりしまして、本人が申請している内容を裏づける何らかのものがあったらなるべく出してください、そうすると判断が非常にしやすいですという形はとっていますが、これが出ないとだめですよという形にはなってございません。
 限界事例というか、もうほとんどそういう証拠的なものがないというような中で、いろいろ同僚からの証言を集めたり上司の証言を得ますと、間違いなくその時期にいたなと。そして、そこの会社自体が、我が社は入ってきた人間は全員社会保険に入れていたというような証言をいただいたりして、この場合には、裏づけの資料というのはほとんどないような状況でこれを認めるというような方向で考えたりしております。
 そんな意味で、絶対これを出さなくちゃだめだというような形のものはないんじゃないかなと思いますが、地方の状況で、具体的にどんなケースがあったかはちょっと把握しておりません。

○塩川委員 続けて小澤参考人に伺います。
 厚生年金の場合、標準報酬月額の記録が改ざんをされていた、年金が減っている事例というのがあって、この点、第三者委員会としても取りまとめをされたというふうにお聞きしているんですが、こういった、一部の報道などでは、大体七〇年代と九〇年代の不況の時期に集中しているんじゃないかとか、かつては全部抹消するという形から、一部引き下げる、減額をするという形で、なかなか巧妙で実態が被保険者にわからないというようなことなども紹介されていました。
 こういう事例というのは、これからの相談の案件としてふえていくとお考えか。その点について、何らか対策なり、第三者委員会としてお考えのことがありましたら、御紹介いただけないでしょうか。

○小澤参考人 標準報酬を変更するというのは、法的にいいますと、年一回の算定基礎届という、お給料が変わって来年以降こうなりますよというのが一つと、それから、途中で固定的賃金が変更になると、月額変更届という、過去三カ月の賃金の上昇によって標準報酬を変えるというパターンがございます。このパターン以外に標準報酬を変えなくちゃいけない理由というのは余り制度的にはないわけで、ただ、会社の方が、景気が余りよくなくて、そして一部経営者の報酬は、役員会議の、取締役会の議事録で、こういうふうな形で変更にするよ、ダウンするよというようなことは、議事録を添付することによって減額をするというケースがございます。
 そのほか、第三者委員会に今回ってきているケースとしては、倒産等何か、全喪という言い方をしますけれども、すべての会社の社員がやめてしまうというか、事業所として適用事業所を廃止してしまうというときに、何らかの形で少し遡及して標準報酬を変えたりしているようなケースは間々目にしますけれども、これはいろいろな事情があってそうされたんだろうなということで、私どもとしては、そのときの状況をなるべく把握しながら、ポイントは、本人たちが給料を幾ら引かれていたのか、そのまま多分、不景気があって会社を閉鎖するぞといっても、本人たちからは保険料は従来どおり取っていたということが推察されるケースが非常に多いものですから、それはそのまま認めるような方向で進めております。

○塩川委員 最後に、梶谷参考人に伺います。
 先ほど長妻委員も指摘をされ、過日の委員会で原口委員もこの問題を指摘しましたヒアリングのお話ですけれども、非あっせん事案のうち、ヒアリングが行われていないケースがかなりの数に上る。私も、もともとの対応の基本方針でも、国民の立場に立って対応するということがあるものですから、やはり実情についてきちんとまずは聞いてもらいたいというのが訴えた方のお気持ちでもあるでしょうし、この第三者委員会に国民が期待するところでもあるのかなと思います。
 先ほどのお話でも、非常に時間がかかる、結果として結論が変わらないという場合もあるんだと。それはそういう事情もあるのかもしれませんけれども、やはりその趣旨を酌み取るという点で、きちんとヒアリングをするような機会というのを設けていただきたい。そういう点で、体制上の問題ということであれば、その体制の強化ということを第三者委員会のお立場から政府に対しても要請をするということで対応することが必要なのではないかと率直に感じるんですが、お考えのほどをお聞かせください。

○梶谷参考人 先ほどもお答えを申し上げたつもりでございますが、なるべくヒアリングをするということは、本人の納得という点からも重要なことであるということは十分認識をしておるところでございます。
 体制を強化すればそれは可能ではないかというお話でございます。それらを十分、御意見を考慮しながらこれから対応をさせていただきたいというふうに思っております。

○塩川委員 ありがとうございました。