<第169回国会 2008年5月20日 総務委員会 第20号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 今回の法改正の理由の一つは、危険物施設において危険物の流出があった場合に、なぜ流出をしたのか、その原因の調査ができるようにするものであります。総務省の説明ペーパーでも、「屋外タンク等からの危険物流出等の事故について、消防機関が原因調査を行うために、必要な措置を講ずることができるようにする。」とあります。
 そこで、ここでの例示をしております屋外タンク貯蔵所に関して質問をしたいと思います。
 最初に、屋外タンク貯蔵所の漏えい事故の件数及び、その中で五百キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所の漏えい事故件数について、平成六年の数字と平成十八年の数字をそれぞれ紹介していただけますか。

○荒木政府参考人 屋外タンク貯蔵所の危険物流出事故につきましては、平成六年には十九件発生しておりますが、十八年には五十二件と増加をしているところでございます。このうち容量五百キロリットル以上の大型タンクにつきましては、その危険物流出事故は、平成六年に三件でありましたが、平成十八年には十八件となっているところであります。

○塩川委員 五百キロリットル以上が、平成六年三件が、十八年には十八件と大幅にふえている。大半が、出光ですとかコスモ石油とか新日本石油などの大手の石油元売事業者であります。
 重ねてお聞きしますが、平成六年と十八年を比較しまして、屋外タンク貯蔵所の漏えい事故が増加をしている原因、背景はどのようなものなのか、消防庁として認識している点について伺わせてください。

○荒木政府参考人 危険物流出事故が増加している要因についてのお尋ねでございますが、平成六年に屋外タンク貯蔵所において発生しました危険物の流出事故十九件のうち、主な事故原因としまして、腐食等劣化によるものが七件、確認不十分によるものが三件、管理不十分によるものが二件となっているところでございます。
 また、平成十八年に発生した流出事故が五十二件ございますが、その事故原因を見ますと、腐食等劣化によるものが二十件、確認不十分によるものが六件、管理不十分によるものが十件となっているところでございます。
 この事故件数の増加の理由としましては、高度経済成長期に建造されました危険物施設の老朽化に伴うもの、あるいは、長引いた不景気や国際競争の激化などにより企業における保安部門への投資が削減されていることなどが考えられるところでございます。
    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

○塩川委員 今回、調査権限の強化を図られるわけです。それ自身は重要なことでありますが、今御答弁がありましたように、この間、屋外タンク貯蔵所における危険物の漏えいの事故の理由につきましても、老朽化に伴うもの、また企業における保安部門への投資が削減をされているという点で、大まかなこの要因というのは明らかであるわけです。ですから、そういう点でも、そこに着目をし、対応した対策をとることが必要ではないかと考えています。
 そこで、大臣に伺いますが、今、理由として述べていました、老朽化に伴うもの、あるいは企業における保安部門への投資が削減をされている、こういった原因、理由に対応して、消防庁として、政府としての漏えい防止対策はどのようなことを行ってきているのか、その点についてお聞かせください。

○増田国務大臣 お答えを申し上げます。
 総務省消防庁では、平成十五年から、危険物関係業界あるいは団体、そして消防関係行政機関の参画を得まして、危険物等事故防止対策情報連絡会というものを開催してまいりました。そこで官民一体で事故防止を図るための方策を検討いたしますとともに、毎年度、アクションプラン、正式には危険物事故防止アクションプランと呼んでいますが、このアクションプランを取りまとめまして、共通の認識、目標に基づいて事故防止対策を推進していく、こういうふうにしてきたところでございます。
 それから、屋外タンク貯蔵所に着目してのものといたしましては、これは耐震性の強化を図るために、平成十六年に耐震改修の期限を二ないし三年繰り上げるようにするなど、危険物施設の安全確保に取り組んできたところでございます。
 したがいまして、こうしたこれらの従来から行っている取り組みとあわせて、今回の消防法の改正ということによりまして危険物施設の事故防止対策をさらに強めていきたい、こういうふうに考えたものでございます。

○塩川委員 屋外タンク貯蔵所の耐震改修の期限前倒しは当然の措置だと思っております。
 お聞きしたかったのが、具体的に、屋外タンク貯蔵所で漏えい事故がふえているその理由として、一点が老朽化に伴うものだ、二点が企業における保安部門への投資が削減をされている、こういう要因、理由に対応した消防庁としての事故防止対策というのはどういうことを行っているのか、そこをお聞きしたかったんですけれども、いかがですか。

○荒木政府参考人 私ども消防庁としましては、ただいまも大臣からお話ございましたように、関係の業界あるいは団体にも参加をいただきまして情報連絡会、これは危険物等事故防止対策情報連絡会という名称のものですが、こういった場を設けまして、これらの場で、先ほど来申し上げました事故の原因等、私ども、これは推測の部分がございますが、やはり事故等の状況を見ますと先ほど申し上げたような要因が考えられますので、老朽化等のおそれがあるものにつきましてはできるだけ早目に改修いただくように、そういった場を通じまして要請しているところでございます。
 いずれにしましても、今回の法改正によりまして、かなり今流出事故等がふえておりますが、そういった際に、今度は調査が法に基づいてできるようになりますので、これまで以上に具体の情報を集めることができますので、そういったものも踏まえて、さらに関係業界等に対する取り組みを積極的にやっていただくように必要な要請をしてまいりたい、このように考えております。

○塩川委員 老朽化に伴うものという点でのお話が、早目に改修を要請しているということです。耐震改修の期限前倒しは当然のことですけれども、老朽化対応での早目に改修を要請するというのは具体的にどういうふうにやっているんですか。そこをお聞きしたいんですけれども。

○荒木政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、これまでの事故の要因を分析しますと老朽化等が背景にあるというものが考えられますので、これらにつきまして、私どもも具体に、個別に一つ一つを、これとこれはいつまでにということは申し上げる基準もございませんので、できるだけ、これまでの経過年数等を勘案しまして、あるいは、施設の点検もいたしますのでそういった点検の状況等を踏まえて、必要なものにつきましては早期に取り組んでいただくようにお願いしているという状況でございます。

○塩川委員 いや、基準もないけれども必要なものについては早目に改修を要請というんですと、必要なものという基準はないわけですが、そこがよくわからないんですけれども。
 具体的に、早目に改修というと、どういう施設に対して早目にということを言っているんですか。年数で、あるいは七〇年以前のものとか、そういう点で具体的に要請をされているんでしょうか。一般的に言っているのではなくて、具体的な個別の施設を念頭に置いた要請をされているということなんでしょうか。

○荒木政府参考人 私どもは、昭和五十二年以前に設置されたものにつきましては、できるだけ早期に改修をしていただくようにお願いをしているところでございます。

○塩川委員 あともう一点の、企業における保安部門への投資が削減をされている、これが漏えい事故が増加をしている要因になっているんですが、この点についてはどういう対応策をお考えなんですか。

○荒木政府参考人 ただいまの保守管理に要する経費の面での取り組みにつきましては、先ほどのアクションプランを毎年度具体に、今年度はこういったことについて取り組もうというようなことを、業界も入りました先ほどの会議で決めているわけでございますが、保守点検につきまして、企業も経営状況が厳しい中ですが、取りまとめるアクションプランの中に盛り込みまして、それぞれの企業においてしっかりと取り組んでいただいているところでございます。

○塩川委員 そのアクションプランの中に、投資が削減されているから投資をふやしてくれ、あるいは維持してくれという要請をされるということなんですか。

○荒木政府参考人 これは関係業界も参画いただいている会議で取り決めるものでございますので、それぞれの企業においてもこのアクションプランに基づいて積極的に取り組んでいただくということで、私ども期待しているところでございます。

○塩川委員 いや、積極的に取り組むというかけ声ではなくて、具体的に、投資が削減されるのが事故がふえている要因ということであれば、投資の額をふやしてくれ、あるいは維持してくれという要請をしているということなんですか。

○荒木政府参考人 再三お答えしますように、アクションプランは企業も業界も入りましたその中でまとめるものでございますので、企業におきましても自主的、主体的に取り組んでいただくということで、その中に位置づけをしている。私どもは当然、そういったことで、自主的に、積極的にお取り組みいただくことを期待している。消防庁としては、それを要請するということで取り組んでいるところでございます。

○塩川委員 事業者の対応を期待しているということであります。事業者がそういう点で安全対策を軽視するような状況が生まれるのではないかという懸念があるのであれば、規制官庁としての対策を強化すべきであります。例えば立入検査などを積極的に活用すべきなのではないかと思うわけですね。
 そこで、平成六年度と十八年度を比較して、屋外タンク貯蔵所に対する立入検査の数はふえているんでしょうか、どうなんでしょうか。平成六年度と十八年度の屋外タンク貯蔵所に対する立入検査の数を示していただけますか。

○荒木政府参考人 危険物施設の立入検査の件数でございますが、平成六年度には三十万九千七百八十七の施設に対しまして立入検査を実施したところでございます。これは、その時点の対象施設が五十五万五千三百九十八ございましたので、その五五%に対して実施しております。
 また、平成十八年度には二十三万三千二百六十七施設に対しまして立入検査を実施しております。これは、その時点の対象施設の約四七%に対してのものでございます。
 このうち、屋外タンク貯蔵所に関しましては、平成六年度には四万六千二百七十一施設に対しまして立入検査を実施しております。これは、その時点の屋外タンク貯蔵施設が八万五千九十八ありますので、それの五五%に対して実施をしたことになります。
 また、平成十八年度には三万五千九十八施設に対しまして立入検査を実施しておりまして、これは対象施設七万一千七百五十七施設の約四九%に当たるところであります。

○塩川委員 立入検査の件数も割合後退をしているわけですね。事故予防対策として屋外タンク貯蔵所など危険物施設への立入検査を強化する必要がある。あわせて、立入検査を行う要因そのものは、この間、予防要因はふえております。しかし、現場に行く立入検査の数は減っているわけですから、そういう点での予防対策の強化が具体的に現場の実情を踏まえて行われることが求められているんだろうと思います。
 この間、規制緩和措置として開放検査の周期の延長なども行われている、そういう方向は実際逆方向なんじゃないのかということが問われていると思うわけです。政府としての漏えい防止対策がもう一段強められなければいけない、そういう点で、事業者任せの自主検査の導入を行うような規制緩和要求が出されているという点は筋違いだということも述べまして、質問を終わります。