<第169回国会 2008年5月28日 内閣委員会 第20号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 渡辺大臣と修正案の提出者に質問をさせていただきます。
 まず最初に、労働基本権に関連して提出者の方に伺います。
 修正案で、十二条では、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」とあります。
 そこでお伺いしますが、ここでも重ねて質問のあった点ですけれども、この「国民に開かれた自律的労使関係制度」とは何を意味するのか、この点についてお答えください。

○松本(剛)委員 この委員会でも質疑が行われているところでございますが、公務員の労使関係については、やはり国民の目というものもあるということで、特に最近、残念なことも発生をしている中で、これまでも議論してきた中で透明性が大変重要なポイントであろうというふうに私どもも認識をいたしまして、そこで、ここに「国民に開かれた」ということを一つ大きなポイントとして記載させていただいたところでございます。
 自律的な労使関係制度を措置するということにつきましては、先ほども御答弁を申し上げましたが、昨年の十月の政府の行政改革推進本部専門調査会報告において、現行のシステムが「非現業職員について、その協約締結権を制約し、一方で使用者を、基本権制約の代償措置である第三者機関の勧告により拘束する。このように労使双方の権限を制約するシステムでは、労使による自律的な決定は望めない。」このような現状の認識を示している。このことを踏まえまして、修正をされました本第十二条においては、この現状の問題にかんがみて自律的労使関係を措置することを政府に求めているものである、このように申し上げているところでございます。
 本法が成立をいたしました暁には、法律に従って措置されるものと私ども提案者としては期待をしているところでございます。

○塩川委員 非常にわかりにくいんですけれども、読み上げたところはそのとおりなわけですが、現状認識にかんがみてということなんですが、要するに、「自律的労使関係制度を措置する」という場合に、協約締結権を付与するということなんでしょうか。

○松本(剛)委員 政府の原案は、「国家公務員の労働基本権の在り方については、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う」、以下省略をいたしますけれども、そのように議論しておりますし、また、今回の修正案でも「協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、」となっておりますので、その趣旨から今の回答をお読み取りいただけたらというふうに提案者としてはお願いを申し上げたいと思います。

○塩川委員 専門調査会の報告でしたら、今読み上げていただいた後の部分を引用していただければもっとはっきりすると思うんです。読み上げていただいた部分は「協約締結権を制約し、」という文言でありますけれども、その後のところでは、「一定の非現業職員について、協約締結権を新たに付与する」と書かれているわけです。引用するのであれば、ここの部分であればまだしも、その前段で書かれているということを見ましても、協約締結権の付与というのが明確にされていない。本来、労働基本権は憲法で保障されてきた権利でありますし、協約締結権を付与すると明記しなければ担保にならないと率直に申し上げたいと思います。
 その上で、今お聞きしました「自律的労使関係制度を措置するものとする。」という前の部分に「その理解のもとに、」とあり、国民の理解のもとにという趣旨で受けとめているわけですが、これは何を指すものなんでしょうか。

○松本(剛)委員 お答え申し上げたいと思います。
 今、もう塩川委員がおっしゃったとおりでございます。国民の理解のもとにということで、特に公務員の場合はやはり国民の税金のもとに成り立っているということを考えますと、国民の理解が必要であるということで、私どもとしては国民の理解のもとにというふうに記載をさせていただいたわけでございます。
 おっしゃったように、労働基本権も労働者、働く者にとっては大変重要な権利であるということでございますので、労働基本権は本来確保されるべきものであるということでありますけれども、これと今回の国民の理解というものとをあわせて、国民の理解のもとに自律的労使関係制度を措置するものとして本条を規定したということでございます。
 なお、先生がおっしゃった専門調査会、これは位置づけとしては政府の調査会の報告でございますから、この報告は調査会としての御報告だと思いますが、私どもが引用させていただいたところの後、これは全部読むと長くなりますからあれですが、「よって、一定の非現業職員について、協約締結権を新たに付与するとともに」ということで記載がありますが、その後にもずっと文章が続いておりますので、全体としてどのようにこの報告を解釈するかということについては、またしっかりと受けとめていかなければいけないところではないかなというふうに思っております。

○塩川委員 松本委員の質疑を拝見しておりましても、労働基本権を付与する、特に協約締結権を付与すべしというお考えということはよくわかりますから、そういう趣旨で書かれるべきものだということを改めて申し上げておくものです。その上で、「その理解のもとに、」ということですけれども、国民の理解を得ることは、これまで労働基本権の回復を先送りしてきた政府の責務でありますので、何らか前提条件をつけるようなことではないということを申し上げておくものであります。
 次に、渡辺大臣に伺いますが、労働条件の変更に係る規定というのが今回の法文上にも何点か挙げられているところであります。
 七条の三号のところの「給与、退職手当、年金その他の処遇を見直し、必要な措置を講ずること。」とか、第十条のところでも、「優秀な人材の国の行政機関への確保を図るため、職員の初任給の引上げ、職員の能力及び実績に応じた処遇の徹底を目的とした給与及び退職手当の見直しその他の措置を講ずること。」とか、定年まで勤務できる環境の整備及び定年の引き上げの検討に際し、これらに対応した給与制度のあり方等について検討することとあります。
 労働基本権の代償措置である人事院の関与なしに、いわば一方的に労働条件の変更を明記するようなあり方というのは不当だと率直に考えますが、大臣はいかがでしょうか。

○株丹政府参考人 御答弁申し上げます。
 ここの場での御議論でもたびたび出てまいってございますが、基本法案でございます。基本法案につきまして、今御指摘がございましたところについては、勤務条件等政策的な方向性につきまして、国会におきまして法律により定めようというものでございます。
 例えば、勤務条件の中でも、給与改定という個別具体の話になりますれば、人事院勧告を経ずしてやるというのはいかがなものかというのは当然御指摘のとおりだと思いますけれども、基本法案の性質上、政策的な方向性につきまして法律で定めようということでございますので、その趣旨で御理解をいただければと存じます。

○塩川委員 労働条件の変更ということでは不利益になるような場合も当然起こるわけで、その点は、一方的に明記されているという点が問題だと申し上げておきます。
 この点に関連して、修正案の提出者に伺います。
 修正案の中に「高年齢である職員の給与の抑制を可能とする制度」とありますけれども、この「高年齢」とは何歳以上を対象とし、この「制度」というのは、この文脈から見ますと、いわば賃下げも含めて可能とする制度ということをお考えなのか、お聞かせください。

○松本(剛)委員 塩川委員に御回答申し上げたいと思いますが、その前に、先ほど労働基本権のことで国民の理解のお話について御指摘がありました。私が申し上げましたのも、やはり、公務員に限らず、政治全般にも常に国民の理解を広く得ることが大変重要であるということで申し上げた趣旨でございますので、その趣旨を御理解賜りたいと思っております。
 それで、御指摘の事項でございますが、これについては、定年を段階的に六十五歳に引き上げることを検討するという規定でございます。これは、天下りの問題にも関連をするところでございますが、政府案についても定年の延長について記載がありましたものを、「六十五歳に引き上げる」ということで具体化、修正をさせていただいたものでございます。
 この規定の導入に伴って、しかし国民的な視点からは、厳しい財政状況のもとにあるということもかんがみて、人件費の増大の抑制を図るためにこの規定を導入したものでありますが、具体的に高年齢の範囲をどのようにとらえるかということについては、今後の制度設計の具体化の段階で検討をしていくべきものというふうに思料しているところでございます。

○塩川委員 重ねて伺いますが、六十五歳の定年延長との関係でというお話でしたけれども、ここの法文上では、その部分と、定年まで勤務できる環境の整備ということがあります。ですから、定年の六十までの前の人、五十代の方も、ここで言う「給与の抑制を可能とする制度」の対象としては排除されていないのではないかと考えます。「職員の給与の抑制を可能とする制度」の対象として、定年まで勤務できる環境の整備ということも書かれているわけですから、六十前の方も含むということになるのではありませんか。

○松本(剛)委員 ただいま御回答させていただいたように、定年を段階的に引き上げるということの規定の導入に伴ってこの規定も設置をされた、その趣旨にかんがみて、具体的に今後、制度の設計が行われる中で規定をされるものというふうに理解をしておるというところでございます。

○塩川委員 条文上では含めて書かれていますから、あわせて制度懇の中でも、定年まで勤務できる環境の議論の際に、人件費抑制のため、高齢公務員の賃下げ、昇給ストップも議論されていたものですから、これを具体化したものではないかと考えます。一方的な労働条件の変更は認められないわけで、だからこそ労働基本権こそ回復せよという声が上がるのだ、この点を求めておくものです。
 次に、キャリア制度に関連して大臣に伺います。
 大臣は、キャリア制度について、採用試験の段階で幹部候補者が事実上固定化され、その後も同期が横並びで昇進していくような人事運用が身分制的だと批判されていると答弁しています。
 キャリア制度には法的根拠はなく、運用で行われてきたわけですが、今回の法案で六条三項三号に、「管理職員に求められる政策の企画立案及び業務の管理に係る能力の育成を目的とした研修を行うものとすること。」とあります。つまり、管理職員には企画立案及び業務の管理の能力が必要だ、それを目的とする研修を行うということですから、幹部職である管理職員の能力として企画立案能力が求められているということはよろしいですね。

○渡辺国務大臣 今回の政府案第六条において総合職試験というものを定めております。「政策の企画立案に係る高い能力を有するかどうかを重視して行う試験」ということでございます。
 今回の基本法案では、現行の採用試験の種類を大幅に見直しをいたしております。今申し上げた総合職試験のほかに、一般職試験、専門職試験を設けております。人事評価に基づく厳格な選抜と絞り込みを根本原則とする幹部候補育成課程を整備するという規定も設けているところでございます。こうしたことによって、御指摘の身分固定的な人事慣行は根本的に改められると考えます。
 さきの国家公務員法改正において、能力・実績主義の徹底が規定されました。今回の改正とあわせて、現行のキャリア制度は廃止され、根本的に異なる仕組みができるものと考えております。

○塩川委員 大臣の答弁で、総合職試験とは「政策の企画立案に係る高い能力を有するかどうかを重視して行う試験」とあります。私が指摘をした六条三項三号のところには、管理職員に求められる、管理職員に対する研修として「政策の企画立案」ということが含まれているわけですね。つまり、管理職員には政策立案能力を求めるとなっているわけです。それと対応するように、総合職試験では政策の企画立案に係る能力を重視した試験を行うとなっているわけです。一方、一般職の試験や専門職の試験は、この政策の企画立案に係る高い能力ということを重視するとはうたわれておりません。
 ですから、そういう点では、まさに専門職の試験の合格者、採用者というのが管理職と直結をする、そういう能力を持つ者ということを認められる、そういう中身になっていると思うんですが、その点いかがでしょうか。

○渡辺国務大臣 今回の幹部候補育成課程の考え方は、人事評価に基づく厳格な選抜と絞り込みを根本原則とするものでございます。したがって、一般職試験合格者あるいは専門職試験合格者であっても、まさにこうした厳格な選抜と絞り込みの過程の中で管理職員に求められる政策の企画立案及び業務の管理に係る能力を認められる場合には、当然、管理職員として任用されることがあるわけでございます。

○塩川委員 試験のみで企画立案能力の判定が全部できるわけではありませんけれども、企画立案能力を重視する総合職試験に合格してきたということになれば、幹部に求められる企画立案能力が見込まれるということになるわけです。
 一方、今回の法案では、一般職試験、専門職試験では政策の企画立案能力が重視をされておりません。現行の1種、2種では、幹部職の能力を見る試験、そういう趣旨になっておりませんので、いわば今回の試験制度によって、今までは幹部職候補と結びつける法文上の規定がなかったものが今回の法案では法文上明記をされるということになるという点では、これまで運用で行われてきたキャリア制度に法的根拠を与えるものだと言わざるを得ません。
 最後に、幹部職員の内閣一元管理の問題についてお聞きしますが、内閣人事庁が内閣人事局に変わるということもありますけれども、いずれにせよ、官房長官のもとで幹部の適格性の審査が行われます。
 そこで、大臣に伺いますが、各専門分野ごとでそれぞれ発揮をされている、各省で仕事をしている幹部職員の適格性というのが、当然、企画立案能力とか管理能力とかが問われるわけですけれども、これは、内閣人事局は所管の府省より的確に判断する立場にあるんでしょうか。官房長官のもとで的確に判断するということができるんでしょうか。

○株丹政府参考人 政府の原案におきまして、当時の政府の原案では内閣人事庁でございますけれども、人事庁におきまして、的確に、人事評価の情報を含めまして、人事情報を得るようにしてございます。そういったものに基づきまして、適格性の審査、すなわち候補者の能力、適性というものをきちんと把握して、その上で判断をしてまいるという考え方でございます。

○塩川委員 そういう言い方では従来と変わらないわけですけれども、しかし、今度は官房長官のもとで適格性の審査が行われるということになれば、やはりそこは政権への近さが人物評価で重きを置かれるようになる、政権党の意向に沿った官僚が生み出される懸念というのがあるということを申し上げて、質問を終わります。