<第169回国会 2008年5月29日 総務委員会 第22号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 独立行政法人統計センターを非公務員化にする法案について質問をいたします。
 最初、大臣に伺いますが、この統計センターを非公務員化することのメリットについてお答えいただけますでしょうか。

○増田国務大臣 身分関係でいいますと、これは国家公務員法が今まで適用されているわけですが、そこが適用されなくなるということになるわけです。
 実は、独立行政法人、独法というものは、今の点に見られるがごとく、今までの特定独法と言われるのは公務員並びでさまざまな規制がそこにある、それはそれとして合理的な理由があるわけでありますけれども。実は、そういったことによって、例えば人材を確保しようとするときに、国家公務員の採用試験を合格した者のリストの中から選ぶということになるわけでありますが、それ以外の人材が必要なときには人事院の方から個別に認めていただいて採用するなどといった手続があるものですから、全体として、そういったことを行うことに非常に消極的になる、萎縮するといったようなことがございます。
 法人のガバナンスでございますので、これはトップや管理職の立場にある者の考え方かというふうにも思いますけれども、やはり大胆にそのよさを発揮していく、直轄の組織と独法は違うわけですから、それは独法のよさを思い切って発揮していただきたいわけであります。しかし、かなり公務員並びのそういう規定があるということでありますので、むしろできる限り民間に近づけて、しかし、みなし公務員規定ですとか秘密保持義務ですとか、必要最小限のものをその中に入れ込んでいくという方がさまざまな面で柔軟性が確保される。
 いろいろ個々に具体的に申し上げるという手もございますけれども、まとめて申し上げれば、そういう考え方で今回も、従来も特定独法の数多くのものが非公務員型に既に切りかわっておりますが、来年の春から行われます新しい統計法の施行の一番いい体制ということをかんがみながら、そういう今の改正案の結論に達したものでございます。

○塩川委員 要するに、公務員並びを外すことによって採用ですとか勤務形態の柔軟化をという話でしょうけれども、逢坂委員の資料がいいのでちょっと拝借しながらお聞きします。このメリットというところで「柔軟な職員採用」ですとか「大学・研究機関等との人事交流が可能」というのがありますが、現行でも民間からの採用のシステムというのは、人事院としての採用試験だけではなくて、選考採用もありますし、任期付の職員法とか任期付の研究員法もあるわけですね。ですから、こういう枠組みを使えば当然対応することもできるんじゃないかと思うわけです。
 要するに、独自にやるとなったら採用試験などのコストもかかるわけで、そこはどれだけメリットになるのか、それが率直に言ってわからないんですけれども、その点、いかがですか。

○川崎政府参考人 先生御指摘の、公務員法制の中あるいは研究交流、いろいろなほかの法制の中での制度が確かにございます。そういったような形の制度を活用いたしましていろいろな任用形態があることは私ども承知しておりますが、しかしなかなか、きめ細かいところで、それをいざ使おうとしますと、それはそれでまた制約もございます。そういったことで、やはり統計センターのニーズに合った形で採用しようとすると、どうしてもその制度が存在してもまだ使いにくいというところがございますので、そういった柔軟性は必要であるというふうに考えております。
 なお、そのためには、当然のことでございますけれども一定のコストを払ってやらなければなりませんが、例えば採用試験等のコストにつきましては業務の効率化をしながら捻出していただくということをやっておりますので、トータルとして見ますと、パフォーマンスが上がるための必要な経費ということではないかというふうに考えております。

○塩川委員 専門性のある人材を確保するという必要性があるというお話ですけれども、百人、二百人を採るわけじゃないですよね、そもそも九百人もいないような組織の中で。
 その点、何人とかというのは想定があるんですか。

○川崎政府参考人 お答え申し上げます。
 統計センターの場合、大体毎年三十人程度の職員を採用しております。そういった者の中に、何人ということを明確に申し上げることは現時点では難しゅうございますが、できるだけ専門性の高い人間の割合をふやしていくということをやる。また、それを時期的にも、四月の年度がわりだけではなくて、いろいろな形で採用していきたいということでございます。

○塩川委員 要するに、年間数名になるかならないかのようなそういう専門性のあるスタッフを確保するために非公務員化するというのがメリットだというお話になるわけです。
 一方で、非公務員化についてのデメリット、懸念される点というのもあるんだと思うんですけれども、その点についてはどのようにお考えですか。

○川崎政府参考人 お答え申し上げます。
 単純に申し上げれば、非公務員化することによりまして、例えば、公務員としての守秘義務がかからなくなるとか、あるいは不正の禁止といったようなことにつきまして、そういった刑法の規定等がかからなくなるということがございます。
 そういったことのないように、今回の法改正の中では守秘義務を改めてかける、またみなし公務員規定としての刑罰がかかるような規定にしていくといったことでそのデメリットを補うようにしているということでございます。

○塩川委員 この非公務員化の議論の中で、昨年九月十二日の総務省の統計センター整理合理化案の中で、公平性、中立性の確保という点での検討が必要だということを申し上げているんだと思います。
 統計センターでは、消費者物価指数、完全失業率、家計消費支出等の我が国の金融市場や経済活動に直接影響を与え、又はその動向を左右する政策判断の基礎となる我が国の主要経済統計を扱うことから、職員における公平性・中立性の確保は、他の一般統計に増して強く要請され、そのあり方如何によっては、我が国の重要統計又は市場に対する国際的な信用問題にもつながるリスクを有している。
という指摘をしているわけですね。ですから、私、これがデメリットだということを考えれば、わずか数人の専門性のあるスタッフを確保する、そのためだけに非公務員化をする理由というのは全くないと考えますが、いかがですか。

○川崎政府参考人 お答え申し上げます。
 その点、これだけのためということでもございませんで、例えば、人事の中で人事運用が非常に柔軟にもできるということで、職員もより働きやすい環境をつくるとか、あるいは職員が例えば研究機関、大学等とより交流しやすくなるなどして、職員にも実力を伸ばして発揮していくいろいろなインセンティブを与えるというようなこともございます。そういったようなことを考えますと、総合的に見ればメリットが十分あるというふうに考えております。

○塩川委員 今、デメリットを超えるものかどうかというお話はありませんでしたけれども、大学、研究機関との交流というのは、任期付職員法ですとか任期付研究員法も含めて現在も行っているわけですよ。我々は官民交流についてはいろいろ問題があると考えていますけれども、現行のスキームでこの十年来そういうさまざまな運用が行われてきているわけですから、わざわざ新たに設ける理屈というのは、私は全く納得いくものじゃありません。
 お聞きしますけれども、諸外国を見ても、国勢調査を初めとして、消費者物価指数や失業率等の各国の基幹的重要統計の製表は、調査を行う行政機関みずからが実施しているのではありませんか。
 
○川崎政府参考人 お答え申し上げます。
 基本的には、諸外国の事例におきましても、基本的な統計調査の集計は国がみずから行っております。ただ、業務の中で、ある部分、秘密に触れない部分、例えばシステム開発を行うとか、ある部分が切り出せるものについては、それがまた民間の方でより効率的に行える場合については、民間に出しまして民間の力を活用するという事例はございます。

○塩川委員 しかし、日本でも統計局と一体で統計センターが一連の業務として行っている、そこまで含めて出しているような事例というのはないわけですから、そういう諸外国の例を見ても極めて特異なあり方であるわけです。
 ですから、今回、そもそも独立行政法人にするという形態そのものが諸外国に見てもないような事例ですけれども、それに加えて、さらに一歩進めて非公務員型にするということではなくて、アウトソーシングをやめて、やはり本来の国の機関に戻すべきだ、独立行政法人でやる場合であっても、中立公正を担保するという点で、統計という個人情報や企業情報を扱う部門であるからこそ、公務員であることが国民の理解を得られる道ではないかと思いますが、その点、どうでしょうか。

○川崎政府参考人 先生御指摘のとおり、統計の業務をできるだけ公益性、公正性、また秘密の保護などを厳格に守ってやっていくことは極めて大切であるというふうに私どもも考えております。
 ただ、組織の運営形態をどのようにするかというのは、そういったことを担保しながらもやっていく方法というのはあろうかと思います。これは、いわば行政組織の運営の形態がいろいろあるということでございますので、その意味では、これまで長年にわたりまして行われてきました議論である独立行政法人のあり方、あるいは独立行政法人の中での職員の身分のあり方、そういう議論を踏まえての一つの判断というものは合理性があるというふうに私どもは考えております。

○塩川委員 秘密保持義務ですとかみなし公務員規定という、公務員同等の責務を負わせなければできないような業務であれば公務員のままでいいわけで、そういう点でも理屈がないということを申し上げなければなりません。
 あわせてお聞きしますけれども、統計センターが独立行政法人になることによって、役員体制が変わりました。
 そこでお尋ねしますが、総務省の統計センター当時は、指定職、所長が一名ということだと思いますけれども、独立行政法人になって、役員、理事長、理事、監事について、常勤三名、理事長は一名ですね、理事が二名、非常勤は三名、理事が一名、監事が二名という構成になっています。そういう点では、役員も独立行政法人化でふえているわけですけれども、統計局統計センター当時の指定職一名の年収と、独立行政法人になっての役員、常勤、非常勤合わせた人件費の総額をそれぞれ示していただけますか。

○川崎政府参考人 お答え申し上げます。
 平成十五年四月の独立行政法人統計センター発足から現在まで、先生御指摘のとおり、常勤の役員は、理事長一名と理事二名の合計三名でございます。それ以前の、直前の総務省統計センターの指定職でございますが、管理部門には指定職以外にも管理職がおりましたけれども、指定職だけについて申し上げれば、統計センターの所長一名が指定職でございまして、平成十四年度の給与支払い総額は千七百十五万円ということでございました。それから、一方で、独立行政法人に移行いたしました平成十五年度の理事長の役員報酬は千七百六十四万円、それから理事二名の役員報酬は合わせまして二千八百十万円でございまして、役員報酬の総額が四千五百七十四万円となっております。

○塩川委員 独立行政法人になることによって役員の報酬がふえるわけですよ。だから、本来一体としているような業務の中で行われていたものを切り出すために、わざわざ頭に余計な人を乗せなくちゃいけなくなる。職員の方はどんどんどんどん減らす一方だ。こういう組織形態は不合理だと思いますけれども、大臣、いかがですか。

○増田国務大臣 役員の給与自身、できるだけ厳格に抑える、これは必要なことでありますし、体制もできるだけ小さくする必要がある。ただ、独立した組織でありますので、独立した組織で自由度を発揮するとなると、必要な役員数というものが、従前の組織とは違った形になるものも一方では出てくると思います。
 ただ、大事なことは、やはり国民の目線から見ておかしいものはおかしいというふうに考えなければいけないということで、独法にしたことによって今後どれだけ質の高い業務が提供できるのか、従前と比べて。一方で、従来の身分でその組織の中にいた総数の人数と、それから独法化した後の総数の人数に対しての人件費等がどのように推移していったのか、ちょっと私もそこまでは知りませんけれども、そこも全体としてやはり比較をしていかなければいけないのではないかというふうに思います。

○塩川委員 統計局、統計センターの一連の業務で行われていたのをわざわざ分断してやることによって、役員の頭が大きくなっているわけですよ。そんなことをやるんだったら、もとに戻すことによってその頭を取り除けばそれこそ効率化なんだという点でも、今回の非公務員化というのは逆行するものでしかないという点で、私たちは、これはそもそも非公務員化すべきではないし、そもそも国の機関でやるべきだということを申し上げて、質問を終わります。