<第170回臨時国会 2008年10月08日 総務委員会 2号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 法案について質問いたします。
 この道路特定財源制度の中でのこの法案、地方の財源の穴埋めをするのは当然のことでありますが、世論調査でも、国民の六割は道路特定財源の一般財源化を支持しておりました。今回の法案では、使途を道路に限定するとなっております。
 そこで、大臣に伺いますが、なぜ使途を限定するのか、なぜ一般財源として自由に使えるようにしないのか、その点についてお答えください。

○鳩山国務大臣 これは、先ほどお答え申し上げましたように、いわば政治的に閣議決定されたものと言っていいのかと思います。つまり、暫定税率の上乗せ分が一カ月分失効した。それが地方に六百五十六億円の穴を生んだ。これはやはり、各自治体が道路関係の予算と思って見込んで組んでおったものが消えていってしまったわけだから、この際、この穴は、この六百五十六億円は道路に使っていただこうというふうに決めたわけでございます。
 しかも、これは平成二十年度限り、全く一回限りの措置でございまして、福田前総理の英断によって来年の四月からは一般財源化するわけでございますから、道路関係諸税も新しい税金に生まれ変わるということで、これからのことはこれからのことで大いに議論をしていけばいいと思いますが、今回は道路ということで御理解ください。

○塩川委員 日経新聞の報道なども拝見しても、ことしの四月の時点で、ある県では、道路整備費のほかに、イベントですとか教育ですとかあるいは福祉を含む幅広い行政経費について、一部の執行を留保したということが行われた。ですから、それが現時点でどういうふうになっているかということの実態調査もおありではないと思いますけれども、交付金ですから、福祉にも医療にも教育にも、もちろん道路にも使えるように、充てるようにすればいいわけで、福田総理も一般財源を言ったわけですし、もともと今回の六百五十六億円は色のついていないお金から持ってくるわけですから、例えば地域住民が願う地域の公立病院の維持の費用に充てるとか、そういうことだって可能にする選択肢があってもいいんじゃないですか。いかがでしょうか。

○鳩山国務大臣 今度の交付金は道路に使っていただかなければなりませんが、ただ、道路関係の予算、決算段階でも同じだろうと思いますが、都道府県は道路関係に使うお金の大体四割ぐらいでしょう、目的税や何かで入ってくるのが。市町村に至っては三四、五%しかないんじゃないでしょうか。そこの穴を埋めているわけですけれども。
 ですから、そのことを考えると、金に番号は振れませんから、やりくりでやっていただける部分もゼロではないかと思いますが。

○塩川委員 地方の財源の自由度を制約すべきではないということを申し上げたい。
 もともと道路建設の予算はこの間ずっと減っていて、地方の単独事業もずっと減っている。しかし、そういう中で国の直轄事業費はふえているわけですよね。それは、道路特定財源の制度というのが高速道路を優先するという仕組みになっている、そういう中で生まれているわけで、高速道路優先の道路政策から、地域の住民に身近な生活道路の維持管理などを中心にした道路政策への転換を求められております。そして、道路特定財源をなくして、国民生活にとって緊急性と優先順位に従って何にでも使える一般財源化を図ることが国民の要求であります。その点で、今回の法案が道路特定財源制度の枠内での措置という点で私どもは同意ができない、このことを申し上げるものであります。
 その上で、やはり今の地方の実情というのは深刻であります。そこで、大臣が初閣議後の記者会見で、麻生総理の言葉を紹介されておられるのを拝見いたしました。麻生総理は、去年の福田内閣誕生で無役になって、地方行脚して、地方は疲弊をしている、これを元気にしなければこの国は元気にならないとおっしゃったということですが、では、一体だれが地方を疲弊させたのか、お聞かせください。

○鳩山国務大臣 やはり一番大きな原因は、一極集中、あるいは一極だけでなくても大都市への集中ということが自然に起こっていったことなんだろうと思うわけでございます。それに、高度経済成長期は遠く去り、バブルも去りというような要素が加わっていったんだろうと思います。
 そこで、地方分権ということで、これは地方分権だ、地方主権だというのは全く正しいことなのですが、三位一体改革というのをやった。大いに意味のある改革をやったんですが、私は、税源の移譲が決して十分ではなかった。ただ、所得税から住民税への移しかえ、このことによってもまた地方によって随分ばらつきが、有利不利が出てきてしまう。
 補助金は四兆七千億円も切っていった。それで、国もスリム化をやるんだから地方もスリム化しろというので、地方も随分努力をした。地方の普通会計というんでしょうか、多分十兆円ぐらいの減がこの数年の間に起きている。非常に厳しい財政状況の中で、五兆一千億ですか、地方交付税が減額をされたのも極めて大きいと思うわけで、ここで地方税財源、税源も財源も真剣に考えないと地方を本当に元気にすることはできない、こういう使命感を持って日々を過ごしております。

○塩川委員 一極集中が何か自然に起こったような話をされますけれども、やはりこの間の大都市に資源を集中するような規制緩和政策、これが後に大きな影響を与えたんじゃありませんか。
 そのときに、だれが政権を担っていたのか、このことが問われる。まさに麻生総理が、日本経済は全治三年と言いますけれども、では、全治三年にするような大重体に追い込んだときに、政権にいたのは一体だれだったのか。自民党、公明党の皆さんじゃありませんか。その責任こそ問われているんではありませんか。九〇年代の公共事業を積み増しするような国のやり方が地方の借金も膨大にし、その上に、二〇〇〇年代の三位一体改革という名での五兆円の地方交付税の削減というのが大きな影響を与えた。そのことを今大臣も、五兆円の減額というのは大きいということをお認めになったわけですから、その点を行ったのが一体だれかといえば、小泉内閣のときの自民党、公明党の政治であります。
 その点では、大臣も記者会見で、この五兆円の地方交付税がボディーブローとしてきいて地方の元気がないというお話をされますけれども、では、この地方の元気を奪う五兆円の地方交付税の削減を行ったときの総務大臣というのは一体どなたでしょうか、お聞かせください。

○鳩山国務大臣 私の記憶に間違いがなければ、片山さんから麻生さんに移っていったのかなと思いますが。

○塩川委員 五兆円の地方交付税削減のときの大臣は、片山大臣と麻生大臣と、それから竹中大臣が最後の方で少しかかわってこられたわけであります。
 ですから、小泉内閣の発足以来、麻生総理はいつも中核におられました。まずは自民党の政調会長の任につき、その後総務大臣の任につき、その後外務大臣ということで、小泉内閣の期間は政府と党の要職をずっと務めた方であります。そんな方というのは、麻生さん以外だと竹中さんぐらいしかいませんよ。ですから、小泉内閣の右腕が竹中さんだとすれば、左腕の役割を果たしたのが麻生総理ということになるんじゃありませんか。
 地方の元気を奪うような五兆円の削減を行った、そのいわば張本人の一人が麻生総理本人だ。そのことへの反省の言葉が一言もない、このことについてはどのようにお考えですか。

○鳩山国務大臣 もちろん、三位一体改革ということには大きな意味はあるわけですね。ただ、私はボディーブローという表現をいたしましたが、みずからが、大都会が選挙区だった者が福岡の久留米というところに移って政治活動をやっておると、とにかくそれは極端な違いを感じるわけですよね。地方団体の、例の再生団体とか早期健全化団体とかというのの四つの指標の最後は、将来負担みたいな項目がありますね。この間見たら、東京二十三区、私がかつて選挙区としておったのは文京区、台東区、中央区ですが、三区とも将来負担がマイナスだというんですね。つまり、配当が残るという。ほかの自治体が何百%という将来の負担みたいなのが残っているのが、負担がマイナスだということは、プラスだということですよ。もし自治体をやめれば、金をみんなに配って回れるという話になる。そこまで違うのかと思うと、本当に愕然たる思いがいたすものです。
 麻生総務大臣時代、懸命にやられて、よかれと思ってなさったことが、やはり多少効果を発揮できなかった部分とか、そうしたものを、十カ月に百六十一回全国行脚をする中で、地方を回って講演をして、地方の声を聞いて、今よくわかられたのではないだろうかと。
 そういう意味で、当然、今までの三位一体の若干の反省も多少はあると思うんで、それを含めて、鳩山、おまえは地方を元気にしろよ、こういう指示を与えてくれているんだと思っています。

○塩川委員 自分は反省したからよろしくという指示を出したわけじゃありませんでしょうから、そういう点でも、反省もなしに具体的に本当に対策がとれるのかというのが、私どもが訴えるところであります。
 そこで、大臣も地方交付税の五兆円の削減が非常に大きいとお認めになったわけですから、これをどうするのかということであります。地方団体からは、昨年から地方交付税の復元、増額という要求がある。その点で、来年度、地方交付税の増額、大臣の御決意をお聞かせください。

○鳩山国務大臣 地方六団体からも強烈に要求をされております復元、復活ということについては、私なりに、できることがどこまであるかわかりませんが、それは懸命にやっていかなければならぬことだと思っております。
 そもそも三位一体というのはニケアの宗教会議か何かに出てきた話でしょうから、何か三つ一体だと格好いい、三という数字がめでたいというのは中国の関係かもしれませんが、三つだと。
 だけれども、本当は、あれは補助金の削減と税源移譲をまずセットでやるべきだったのではないのかな、その後で地方交付税のことは考えるべきではなかったのかなと、私は個人的に当時そう思っておりました。

○塩川委員 三位一体改革というのは、結局は地方交付税を削ったということなんですよ。中央の、国の財政再建のために利用されたんだ、これが地方団体の共通の認識だと思いますよ。
 だからこそ、改めて復元の増額という要求があるわけで、少なくとも来年度増額をする、昨年、増田大臣が増額ということで、仕組みそのものは何とも問題のあるものではありますけれども、来年度、増額をするという決意として、もう一回言っていただけますか。

○鳩山国務大臣 増額に向かって努力しなければ私は務めを果たすことにならないと思っておりまして、小学生のころに、六年生ぐらいのときでしょうか、地方交付税というのを習って、法人税、所得税、酒税の、あのときは三二%でしたか、それを小学校のときに習う。小学校のときに、六年生だと思いますが、その三、七という話を聞いたんですよ。地方税と国税を分けて、地方税が三で国税が七なんだと。しかし、仕事は逆なんだから、だんだん一対一にしなければならないというのを聞いたのは、もう私にとって四十五、六年前なんだろうと。
 こう思いますと、本当に地方行政とか地方分権という課題は、五十年間解決できないで来ているんだと思えば、まず一歩踏み出すことは、昔は三税だった、今は五税なんだから、これはまたいろいろな計算法を新たに生み出してもいいし、増額できるように全力で頑張ります。

○塩川委員 先ほどの質疑の中でも、地方税源の移譲の話はあったけれども、地方財源のお話がなかったものですから、改めてその立場で御努力をいただきたいということと、最後に、今、地方経済、中小企業の実態を考えたときに、今のアメリカ発の金融危機というのが日本の実体経済にも大きな影響を与え始めています。
 その点で、中小企業金融について、きょうは吉川経済産業副大臣にお越しいただきました。ありがとうございます。具体的な対策について求めたいと思います。それは、中小企業金融の上での信用保証制度、信用補完制度の問題ですけれども、昨年の十月に、この信用補完制度に責任共有制度が導入をされました。これは、これまで融資額の一〇〇%を保証してきたものを、原則八割の部分保証として、残りの二割を金融機関が持とうという仕組みに切りかわったわけであります。
 信用補完制度というのは、そもそも、リスクの高さゆえに金融機関からなかなか融資が受けられない中小企業のために、信用保証によってその資金繰りを援助しようという仕組みになっているわけです。信用保証協会が公的な保証人として融資の橋渡しをするものです。
 その点で、もともとリスクを負おうとしないのが日本の金融機関でしたから、この二割のリスクを負わせたことによって、信用保証の利用件数が大きく減少しております。〇八年の上半期、前年同期比で見ても、保証件数で全国ベースで九%減、東京などでは一五・四%減、大阪では二四%減と、大きな影響が出ているわけです。
 私は、この部分保証、責任共有制度の弊害は明らかだ、だからこそ直ちに責任共有制度を凍結すべきだ、きっぱり廃止をすべきだと思いますが、大臣の御所見をいただきます。副大臣の。

○吉川副大臣 塩川先生の御質問にお答えをさせていただきます。
 この責任共有制度につきましては、先生が以前から関心を持たれておりますことにも、私もよく理解をさせていただいておるところでありますが、大臣ではなくて、私は今副大臣でございます。
 この制度につきましては、くどくどと御説明を申し上げることはないわけでありますけれども、金融機関に適切な責任を分担させることによりまして、融資先の財務状況の管理や経営アドバイスに積極的に取り組むことを促すものでございます。
 導入に際しましては、中小企業団体や民間金融機関と議論を重ねてまいりました。セーフティーネット保証や小規模事業者の方が通常利用される分は対象外としたほか、さらに、金融庁、民間金融機関も含めて、責任共有制度を理由とした融資の拒絶は行わないよう周知を徹底いたしておるところでありまして、さらに周知徹底もしてまいりたいと存じております。
 ただいま御指摘がございましたように、昨年来、民間の金融機関が融資残高を減らす中で、保証づき融資残高は横ばいとなっています。また、今次創設する緊急保証制度につきましては、責任共有制度の対象外となっておりまして、引き続き、中小・小規模事業者の利益が何であるかを常に念頭に置きまして、適切な運営の確保に万全を期してまいりたいと存じております。

○塩川委員 〇二年の、導入の仕組みをつくった法律を変えるときに、当時の平沼大臣は、中小企業向け融資が確保されるような状況になるまでは導入するのは現実的ではないという形で、資金繰りが難しいときに導入するものではないんだと言っていたわけですが、現状では、その資金繰りは深刻になっている。
 先日の代表質問で、与党の公明党の太田代表からも、この責任共有制度、これが金融機関の融資姿勢の硬直化を招き、中小企業を直撃している、与党からもこういう批判の声が上がっているわけで、実際には、信用保証協会はいいと言っても、銀行がうんと言わないから信用保証が利用できない。
 セーフティーネット保証というのは、いわば転んだときのつえです。一般保証の方は、転ばぬ先のつえですから、こっちの方も使えてこそ初めて中小企業はしっかりと対応できるわけで、今実態が深刻なんだということを、実態調査をきちっとやっていただきたい。実態調査もやって、その上でふさわしい対策を求めたいと思いますが、現状をしっかり把握する、実態調査を行う、この点について、いかがですか。

○吉川副大臣 ただいまも申し上げましたように、今次創設する緊急保証制度につきましては、責任共有制度の対象外となっておるところでありますし、小規模事業者に対しましては、一千二百五十万までは一〇〇%保証するということになっております。また、災害や不況などに対応したセーフティーネット保証につきましても一〇〇%保証するといった工夫を行っているところでありまして、さらに、この制度におきましては、これまで百八十五業種でありました不況業種を大幅に、二倍を大きく超えて拡大をすることといたしておりまして、この制度が導入をされますれば、一〇〇%保証の対象となる中小企業者が大きく拡大することとなると思っております。
 実態調査につきましては、御検討をさせていただきたいと思います。

○塩川委員 責任共有制度の凍結、廃止を改めて求めて、質問を終わります。

○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、地方税等減収補てん臨時交付金に関する法律案に反対の討論を行います。
 年度当初見込んだ地方税の減収が補てんされるのは当然のことであります。しかしながら、この法案は、道路特定財源制度の枠内の措置であり、補てんされた財源の使途が道路関係に限定されております。もともと、本法案が必要になったのは、本年度の総予算の審議に当たって、暫定税率の廃止や一般財源化を求める世論を無視して、福田内閣と与党があくまでも暫定税率を強行しようとしたことにあります。こうした経過に思いをいたすなら、その補てんを道路関係に限定することは到底容認できません。
 自治体で予算の執行が留保されたのは道路関係だけではありません。福祉や教育の投資的経費や経常的経費の一部も執行が留保されました。補てん財源は、道路だけでなく、福祉や教育にも使えるようにすべきであります。今年度限りとはいえ、道路特定財源を前提として財源補てんは容認できません。
 政府は来年度からの道路特定財源の一般財源化を閣議決定していますが、来年度を待つのではなく、この法案から国民の求める道路特定財源の一般財源化に踏み出すべきであることを申し添えて、討論を終わります。