<第170回臨時国会 2008年11月20日 総務委員会 5号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 人事院勧告、報告に関連して、本府省業務調整手当の新設について質問をいたします。
 人事院勧告の報告では、「近年、各府省において本府省に必要な人材を確保することが困難になっている」としております。総裁に伺いますが、人材確保が困難となる要因の一つに超過勤務の増加の問題があるのではないかと私は考えますが、総裁の御見解、お考えをお聞かせください。

○谷政府特別補佐人 希望者が減ってきておりますということについてはいろいろな事情があると思いまして、それぞれの要素の影響を正確に分析し切るということはできないと思います。しかし、公務員を志望するということの中にはいろいろな要素があるわけでございまして、その中には、公務員の勤務の実態がどういうものであるかということも当然含まれると思います。具体的に超過勤務の実態がどうであるかということについてまでは申し上げられませんけれども、勤務条件のあり方が影響するということはあり得ると考えております。

○塩川委員 勤務条件のあり方が問題となり、公務員の勤務実態として超勤の問題があると思っております。
 そこで、数字でお伺いしますが、本府省及び本府省以外の超過勤務時間について、平成十五年と平成十九年においてそれぞれ何時間か、年間と月平均の数字でお示しください。

○川村政府参考人 お答えを申し上げます。
 国家公務員の平均超過勤務時間数ですけれども、平成十五年の実績でございますが、年間で二百二十二時間、本府省が三百三十九時間、本府省以外が二百五時間となっております。月平均にしますと、全体で十八・五時間、本府省が二十八・三時間、本府省以外が十七・一時間ということでございます。
 十九年の実績でございますけれども、同じように、年間で二百三十一時間、本府省が三百五十七時間、本府省以外で二百十一時間でございまして、月平均にいたしますと、全体で十九・三時間、本府省では二十九・八時間、本府省以外で十七・六時間という状況でございます。

○塩川委員 この間の推移ですけれども、地方は横ばい傾向ですが、本府省は地方に比べて残業時間は大変長いですし、しかも増加傾向にあります。ここにあらわれないようなただ働き、サービス残業の問題もあるのではないかと思っております。
 人事院は超過勤務の縮減を求める上で、超過勤務の縮減に関する指針を平成十一年に出しております。その中では、「一年につき、三百六十時間を目安としてこれを超えて超過勤務をさせないよう努める」としております。同時に、国会関係、国際関係、法令協議、予算折衝等に従事するなど、業務の量や時期が各府省の枠を超えて他律的に決まる比重が高く、三百六十時間の目安が困難となる事情のある部署においては、この三百六十時間によらないということができるとしておりますが、今回の本府省業務調整手当が支給されるような職員というのはこの指針で示しているような他律的な業務の比重が高い部署に相当すると思いますが、そうですね。

○吉田政府参考人 今回の本府省業務調整手当の支給対象につきましては、今先生おっしゃいましたような本府省の非常に固有な業務に従事されているという方もいらっしゃいますが、ただ、本府省の中でそれと一体になって作業をしている、例えば庶務の方とかそういう方も対象にしておりますので、一概にすべてがこれに該当するとは限らないというふうに考えております。

○塩川委員 すべてが該当するとは限らないということですけれども、本府省の固有の業務に相当する、他律的に決まる側面、要素もあるということであります。人勧の報告では、「国家行政施策の企画・立案、諸外国との折衝、関係府省との調整、国会対応等の本府省の業務に従事する職員の業務の特殊性・困難性」とありますから、本府省業務調整手当の対象となる業務が他律的な業務に相当するということが言えるということであります。
 そこで、今回の人事院勧告の報告では、「他律的な業務の比重の高い部署における超過勤務の上限目安の設定等の検討」を進めるとあります。
 人事院が定めた他律的業務に対する超過勤務時間の目安というのは何時間を考えておられるのか、そしてその根拠はどのようなものか、お示しいただけますか。

○川村政府参考人 お答え申し上げます。
 先生先ほど御指摘になられましたように、現在人事院が定めております超過勤務の縮減に関します指針で、一般的には、一年につきまして三百六十時間を超過勤務の上限の目安としておるところでございますけれども、お話がありましたように、他律的に決まる比重が高い、そういう業務はこの目安によることが困難である特段の事情があるということでございまして、当面はこれによらないことができるというふうに今の指針ではなっております。
 しかしながら、このような他律的な業務につきましても、職員の健康の維持を図る等の観点から、やはり上限の目安時間を設定することが適当であるというふうに考えられますので、現在それを検討しておるところでございます。
 現在、検討の過程でございますけれども、上限とする目安時間といたしましては、関係者からの意見等も踏まえまして、一年につき七百二十時間を検討しております。これは大体、月に直しますと、月六十時間ということで、一日三時間ぐらい。十時以降のそういう深夜勤務にはならないようにというようなのを一つの目安として考えておるところでございます。

○塩川委員 七百二十時間、月六十時間、大変長時間になるわけですけれども、この月六十時間というのはどれだけの残業時間に当たるのか、健康との関係でも問われてまいります。
 例えば、社会経済生産性本部のメンタル・ヘルス研究所の白書などを見ますと、残業がふえれば生活習慣を乱す、特に睡眠時間が減る傾向にある、家族との関係は残業が六十時間以上になると問題がうかがえる、自殺への思い込みというのも六十時間以上になるとふえるということで、「以上の結果からは、残業はしてはならないもの、特に六十時間以上はしてはならない」、こういう指摘があるわけですが、現状、月六十時間、年間七百二十時間を超える勤務をしている、そういう公務員というのはどれぐらいの人数に上るのか、本府省と本府省以外の数字でお示しいただけますか。

○川村政府参考人 お答え申し上げます。
 職員数全体で申し上げますと、大体二十二万六千を対象にいたしまして、七百二十時間というのはこのうち大体四千三百人ぐらいございます。
 本府省と本府省以外に分けますと、本府省、大体三万一千というのが全体でございますけれども、七百二十時間以上は二千二百。それから、本府省以外ですと十九万五千でございますけれども、このうち七百二十時間以上というのは大体二千人ということでございます。

○塩川委員 ですから、七百二十時間を超える超過勤務をされている方は、本府省以外では全体の一・一%ですけれども、本府省だけとると七・一%と、大変高い比率になってくるわけです。
 その際に、このような長時間勤務が心と健康にどういう影響を与えているのか、そういう調査というのは行っておられるんでしょうか。

○川村政府参考人 お答え申し上げます。
 職員のメンタルの関係を初めといたしましていろいろな健康の保持ということは大変重要な課題であると思っております。
 一般的に、そういう健康保持の観点からも、超勤はできるだけ縮減することが重要であるというふうに考えておりますが、具体的に何時間でしたらどうというような形での調査というのは行っておりません。

○塩川委員 七百二十時間を容認するような数字というのが、目安ですから、それすら超えるような実態というのが現に生まれているわけで、そういう点でも極めて重大であります。
 長期の病休者数、長期の病休者率の推移を見ましても、平成八年、平成十三年度、十八年度という五年刻みで見ましても、国家公務員全体で千百八十一人、〇・二一%が、十三年度には二千二百十八人、〇・四六%、十八年度には三千八百四十九人、一・二八%と増加をする中で、特に平成十八年度を見ますと、本府省以外では一・二一%なのに、本府省では一・四二%と健康被害が増加もし、その中でも、今言ったのは精神疾患に関連しての数ですが、増加をしているわけです。そういう点でも、長時間労働の影響というのは大変重大だと思っております。
 そこで、人事院総裁に伺いますが、こういった七百二十時間ということで、こういう長時間労働を容認する実態で意欲を持って働くことがそもそもできるのか、お伺いします。

○谷政府特別補佐人 大変厳しい勤務環境というのは多年にわたって続いてきたところでございまして、その中で、本府省に勤務する職員は努力を重ねてきてくれたと思っております。
 このことにつきましては、差し向きの問題としてこういう目安を設けておりますが、並行いたしまして、超勤縮減対策というものを内閣及び各府省の御協力をいただきながら進めているところでございまして、そういう意味で、いろいろな角度からの対応策というものを検討していかなければならぬと考えております。

○塩川委員 大臣に伺いますが、年間七百二十時間を容認するかのようなこういう目安というのは、私は大いに問題ありだと思っております。その点についての大臣のお考えを一つお伺いしたいのと、そもそも、超過勤務時間の解消を訴えても、業務量そのものが変わらない、あるいは逆にふえているかもしれない、そういったときに、現場では必ずしもふさわしく人員の配置が行われていない。これでは超勤の解消もできませんし、意欲を持って働ける職場もつくれないということで、私は、全体としての定員削減、人員削減というのが、こういったしわ寄せに影響が出ているんじゃないのか。ですから、そういう点でも、人員削減について、もう限界に来ているんじゃないのか。この点についてあわせてお伺いしたいんです。

○鳩山国務大臣 先ほどから七百二十時間という目安が議論されておりまして、十二で割って月六十時間。しかし、これも恐らく超過勤務命令が出たという前提での七百二十時間でございましょう。そうすると、実際には千時間とか千五百時間、二千時間ということがあるとすれば、これはまさに人間的な生活、ワーク・ライフ・バランスなどということが盛んに言われながら、全くその実態に反するような状況があって、そうした中で、健康を害する、病気休職者数がふえてきているという状況、この因果関係は当然推定されるだろう、こう思うわけでございます。
 一方で、行政改革を大変進めてきましたし、これからも行革だ、無駄ゼロだということで、定員については、スクラップ・アンド・ビルドではありますものの、五年五・七%というような計画も実施中でございます。
 そういう意味で、業務内容や業務量というものをよく精査しながら、公務能率の一層の向上に努めつつ、必要な定員というのはどれくらいであるかは、適切に本当に措置しなければならない。場合によっては、私は今でもいいことかどうか、悪いことであるのかよくわかりませんが、非常勤職員を活用して補うというようなこともなされているし、これからもそういう必要性が増していくのかもしれません。
 いずれにいたしましても、職員に過重な負担がかからないような、そして能率が向上するような、そういう業務形態を考えていかなければならない。しかしながら、実際問題として、先ほど小川淳也委員からもみずからの体験の御披露がありましたように、相当なきつい労働の圧力というのが国家公務員にかかっているという実態は素直に認めなければならないと思います。

○塩川委員 長時間労働に歯どめをかけなければいけない、サービス残業、法違反を容認するような立場であってはならない、そういう点でも、私は定員削減を見直すべきだということを申し上げて、質問を終わります。