<第170回臨時国会 2008年12月09日 総務委員会 6号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 郵政株式処分停止法案について質問をいたします。
 三年前の郵政民営化の特別委員会でもずっと議論をしてまいりまして、そのときに、何よりも郵政民営化でサービスは維持をする、サービスは向上する、利便性の向上だとさんざん約束をしたわけであります。実態はどうか、その検証こそ必要だ。
 その点で、一つ取り上げたいのは総合担務の問題でございますが、郵便局の方が、郵便屋さんが郵便配達時に貯金を預かったり、保険、年金を届けたりする、こういう業務、総合担務がこの郵政民営化に伴って廃止となりました。鳩山大臣も、十一月二十一日の記者会見の場で、なじみの郵便配達をされる方が私の簡保の積立金を持っていってくれる、こういうことができない、こういう話があると述べておられます。
 今まで行われていたサービスが行われなくなるんですから、これはサービスの向上どころか後退だと私は思うんですが、この総合担務の廃止によってサービスがよくなったと言えるのか、大臣に率直に伺います。

○鳩山国務大臣 以前に答弁したとおりでございまして、やはり民営化という大きな流れについては、これは大改革として推進しなければなりませんが、郵便局というのは一つの日本の文化をつくっていたことも事実でございまして、なじみの郵便配達をする人が、簡保のお金を預かることができなくなる、あるいは定額貯金に積むお金を預かることができなくなっているという、総合担務ができないという状況は決していいことではないから、あるいは先ほど申し上げた、郵便局長が集荷できなくなっているという状況もありますので、その辺どういう改善をしたらいいのか、これは検証しながら、具体的にいい方法を考えていくべきだと考えております。

○塩川委員 今までのサービスが提供されなくなる、いいことではない、結果として悪くなっているという事態であります。
 金融サービスの問題では、あわせて、この間の株価の下落も反映した投資信託が大きく落ち込むという問題がございます。
 そこで、日本郵政に何点かお伺いしますが、この投資信託の基準価額、一万に対して、今幾らぐらいになっているか。十六種類あります投資信託について、下落幅が一番小さいもの、全体下がっていると承知しておりますけれども、下落幅が小さいものと、大きく下落をしている、その数字についてお示しいただけますか。

○米澤参考人 お答え申し上げます。
 ゆうちょ銀行におきます投資信託の販売は公社時代の二〇〇五年十月から開始しておりまして、現在、取扱商品は九種類、十六商品となっております。
 これらの取扱商品につきまして、直近の基準価額につきましては、最も高いものが野村の世界六資産分散投信、安定コースで八千三百十円、最も安いものがDIAM世界リートインデックスファンドで三千四百七十五円でございます。

○塩川委員 すべて下がっている中で、いいものでも八千円台、悪いものでは、REITということもあります、三千円台ということです。大きく下落をしておるわけです。
 そこで、今、日本郵政、ゆうちょ銀行におきまして、この口座全体の評価損率が一定割合以上の顧客に対しアフターフォローするということを聞いております。評価損率が一定割合以上、私は二割以上、二〇%以上というふうに聞いておりますけれども、そういう顧客というのは、今、投資信託の全口座、五十四万口座というふうに承知していますが、それのうちのどのぐらいの口座数になるのか、お示しください。

○米澤参考人 お答え申し上げます。
 ゆうちょ銀行におきましては、委員御指摘のとおり、従来より、口座の評価損率が一定率以上のお客様に対しましてアフターフォローを行っているところでございます。
 この十月及び十一月には、全受益者約五十四万口座のおおむね半数に当たります約二十六万人のお客様に対しましてアフターフォローを実施したところでございます。

○塩川委員 この評価損率が一定割合以上にアフターフォローする。今言った二十六万の数というのは、これは二割以上下落ということで承知しておいてよろしいですか。その点だけ確認。

○米澤参考人 お答え申し上げます。
 正確に申しますと、百万円以上御購入になられましたお客様につきまして、評価損率が二〇%以上ということでございます。

○塩川委員 五十四万のうち二十六万ですから、半数の方が二割以上下落をするというのが実態であります。郵便局に預けている方というのは小口の方で、貯蓄性の高いものをということでやっている。そういう方々の中に、結果としてこういった投資信託の運用を通じて下落をするような事態が大きなショックにもつながっている、不安の声も広がっているわけであります。郵便局への信頼を大きく損なう事態にもつながっている。
 あわせて、日本郵政の方で今わかれば教えてほしいんですが、簡易郵便局の閉鎖というのも数多いわけですけれども、民営化直前の公社の最後の時点の簡易局の一時閉鎖が幾つで、現時点での簡易局の一時閉鎖が幾つかというその数字、お示しいただけますか。

○米澤参考人 お答え申し上げます。
 一時閉鎖局の局数でございますけれども、九月末で四百十七局でございます。

○塩川委員 もう一つの、民営化直前の公社の最後のときには幾つだったか、その数字はわかりますか。

○米澤参考人 お答え申し上げます。
 直前が四百十七局、十一月末で見ますと四百四局というふうになっております。

○塩川委員 違うんですけれども。つまり、民営化の時点では四百十七なんですが、そのときに、一度に六十八局を閉鎖しているんですよ。ですから、それを差し引きますと、公社の時代の最後というのは、一時閉鎖は三百四十九なんです。それに対して今現在四百十七ということであれば、大きく減少したまま、そういうことは明らかであるわけで、この点でも金融サービスが後退をしている。ATMの撤去や手数料の引き上げなどを初めとして、金融サービスをとりましてもこれだけの大きな後退をしております。
 そこで、法案提出者の方にお伺いをしますが、総合担務の廃止や簡易郵便局の閉鎖など、郵政民営化によって金融のユニバーサルサービスが投げ捨てられる結果になっているのではないのか、このことを思うわけですが、お考えをお聞かせください。

○自見参議院議員 先生御指摘のとおり、総合担務の廃止、決して好ましいことではないというふうに鳩山大臣も言われましたけれども、そういったことが出てきた原因と結果というのがあります。それは決して個人に帰するものでなくて、この法律が持っている総合的欠陥だ、構造的欠陥だ、そういうことを我々は御存じのように申して、それが、今はもう、まず過ちを直すにしかず、こういうことでございまして、まず株式の売却を凍結して、そしてまさに、これはいろいろなお立場もございますけれども、本当に、明治以来続いてきた、国民のための、特に過疎地における金融の基本的なライフラインと申しますか、そういったことをきちっとやはり確保するような構造にやり直さねばいけない。三事業一体だというふうに我々は申しております。
 そして、何も、利益、利益、利益というのはもう民間、普通の株式会社の本質でございますが、その中にも、そうではなくて、公共性と公益性を含む、やはり国民のものである、そのことをきちっと組み直していかなきゃならない、そういうことでございます。
 総合担務の廃止というのはその結果出てきたことでございまして、そのことは先生もよくおわかりだ、こういうふうに思っております。

○塩川委員 サービス向上を掲げた郵政民営化が、現状としてサービスの後退になっているわけですから、見直しが必要なわけで、そういう点でも、郵政株式の売却の凍結というのは何よりも求められている、そのことを述べて、質問を終わります。

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 午前中、郵政の株式売却の凍結法案の審議をしました。引き続いて午後におきましても、郵政関連、特に投資信託に関連して質問をいたします。
 午前中の中でもこの点について日本郵政からお答えいただきましたが、二割以上下がっている方が全体の半分近くある。そこでもう一点お伺いしたいんですが、その場合、百万円以上の投資信託を購入されている方の中で二割以上の下落の方が二十六万件ということですが、この百万円に満たないような方というのはどのぐらいの件数に上るのか、およそで結構なんですが、教えていただけますか。

○米澤参考人 お答えいたします。
 今ほどのお尋ねでございますけれども、午前中も申し上げましたけれども、百万円以上御購入の方で評価損率が二〇%以上、こういう方が二十六万人。全体で五十四万人の受益者のお客様がいらっしゃいますので、もちろん、この中で損失をこうむっておられない方あるいは百万円以下の方、両方の方がいらっしゃいますけれども、その差し引きの部分がそれ以外の部分というふうになろうかと思います。

○塩川委員 その百万円以下の購入者の方のおおよその人数を教えていただきたいのですが。

○米澤参考人 申しわけございません。手元にちょっと資料が、数字がございません。後ほど御説明に上がりたいと思います。

○塩川委員 よろしくお願いします。
 そこで、こういう資産運用商品としての投資信託ですけれども、その顧客に対して販売をする際に、顧客の資産がどのぐらいあるかとか、対象とする方についての目安というのはどのようにお考えなんでしょうか。これだけ以上持っている人に対して対象にするとか、その辺のお考えをお聞かせいただきたいのですが。

○米澤参考人 お答え申し上げます。
 投資信託の販売につきましては、いわゆる適合性の原則というものがございます。すなわち、そのお客様に売ってよろしいかどうかという判断が必要になってくるわけでございます。
 その中でも、その財産、どのぐらいお持ちなのかであるとか、あるいは生活資金であるのかないのかとか、さらには金融知識が豊富であるのかないのかといった多面的な形で判断をしているということでございます。

○塩川委員 三割ルールがあるんだということを承知しているわけですけれども、その点をお聞きしたいのですが、もちろん不動産は除いて、金融資産におきまして、大体そのうちの三割ぐらいを最大の枠として投資信託を購入してもらう、そういうことを内部でルールとされているということをお聞きしているのですが、そのとおりですか。

○米澤参考人 お答え申し上げます。
 一定の目安としてそのようなものはございますけれども、資産が大変大きな方、その方の三割と、あるいはそうでない普通の方の三割ということでは相当違ってきますので、そういった場合も実態に合わせて判断をしております。
 ただ、一般的に申し上げますと、そういうリスク性の商品について一定の割合以下というふうなルールを設けているところでございます。

○塩川委員 少ない方についてと大きい方については違うという話ですが、少ない方であっても三割ルールというのが一つ基準としておありだということでは、少ない資産の方においても投資信託の対象とされておられるわけで、実際、購入されている方の六割は六十代以上の方だとお聞きしております。老後の資金として運用されておられる。
 そういった方の中で、実際、投資信託を購入された方のお話を幾つかお伺いしました。まさかこうなるとは思わなかった、こういう声に対して、郵便局、ゆうちょ銀行の方が、下がることもあると説明したよねと、こういうふうに言いますと、それはそのとおりだけれどもというやりとりになるわけですが、こんなに下がるとは思わなかったのと聞かれたのに対して、それはそうよ、だって郵便局だものという答えなわけですよね。あるいは、証券会社だったら買っていなかった、郵便局のあなただから買ったんだ、こういう声ですね。
 実際、その勧める商品としても、この投資信託のうち野村世界六資産分散投資、これは郵便局独自の商品です、野村が郵便局のためにオリジナルの商品をつくったんですよと言われると、あ、そうなんですか、それだったらという話になるわけですね。つまり、皆さん、郵便局だから信頼して購入している。もちろん、手続上に瑕疵があったと申し上げているわけではない。しかし、郵便局への信頼なしには購入しなかった、これが少なくない方の声だということなんです。
 そこで大臣に伺いますが、このように投信を購入された方が、郵便局だから購入したんだ、ほかの勧めだったら買わなかった、こういう声が上がるのはなぜなのか、その点について、お気持ち、お考えをお聞かせいただけますか。

○鳩山国務大臣 郵便局の信頼というのは、百三十年を超す事業の継続、あるいはそれを支えてこられた特定郵便局長さんを初めとする方々、先人の労苦のたまものだろうと思うんですね。しかも、国民、庶民にとって身近な金融機関として、私たちも子供のころ小遣いをもらってこれを郵便局に預ける。これは国ですから、絶対に安心だという気持ちで預けてきたということがあります。
 私自身の体験から申し上げると、物心ついてからバブルの崩壊までというのは、投資信託というのは大体、ちゃんと利益を生むものだという印象があったと思うし、おびただしい投資信託に関する宣伝とか勧誘というのがあって、単発の株を買うと、それは物すごく得をすることもあるが大損することもあるが、投資信託という仕組みであれば余り損はしないものだという宣伝がずっと行き届いてきたんではないか。
 それでも、最近のいろいろな金融情勢ですから、それは投資信託でも元本割れする、損することもあるということぐらいは何となくわかっていても、やはり郵便局ですからね。郵便局で投資信託を買うと何かこう安心感がよりあるんだろうと思うわけです。そういった意味では、購入をする方に対しては、実際にリスクが相当あるんだということをできる限り懇切丁寧に説明する必要があるのではないかな、そんなふうに思っております。

○塩川委員 身近な金融機関としての郵便局への信頼があるからだ、国そのものだからということであるわけで、購入される方というのはこれまで要するに郵便局に裏切られたことがないわけですね。ですから、小口貯蓄ですから、元本保証のあるものが大好きな方といいますか、そういった方にしてみれば、投資信託の購入を機会に、率直に言って、利用者が最も大切にしてきた安心の郵便局というサービスが損なわれてしまったのではないのか、この点が今言えることだろうと思っております。
 そこで、重ねて伺いますが、〇五年の十月から販売が開始された投資信託ですが、郵政公社の時代に法改正が行われました。投資信託の販売を導入した理由、これは何だったのか、お聞かせください。

○鳩山国務大臣 郵政公社の時代に始まったわけでして、私が今申し上げたように、郵便局と投資信託というのはイメージ的には本来結びつきにくいものではないかなというふうに思いますが、平成十五年の五月に証券市場の活性化策として検討されたというふうに聞いておりまして、そして、平成十七年十月から販売が開始されたんですね。
 このときに、ちょうど麻生総務大臣の時代でして、これは平成十六年に答弁しているんですよね。一年前のことを言っているんですね。昨年の五月の証券市場、アバウト八千二、三百という時代であったと。今と何か似ているんですね、日経平均の値段は。それが、今は一万一千ぐらいになっておりますけれどもというような答弁をしながら、やはり郵便局の方の収益源の多様化ということも考えようということを言っておりますし、証券市場の活性化ということも当時から答弁されているわけで、そういう中で投資信託の販売が始まったものと思っております。

○塩川委員 その答弁は私の質問に対しての答弁になっていくところですが。
 郵便局の収益源の多様化というのも、その麻生大臣の答弁では、民営化を想定しての収益源の多様化と述べておられる。それにあわせて、証券市場の活性化のためという二点が目的でした。
 あの当時、〇三年の四月に株価が七千六百円、それを割るかという状況がありましたから、そのときに株価対策として導入されたのが郵政公社での投資信託の導入だったわけです。そういう点では、動機が不純だったんじゃないのかということが問われますし、当然民営化を展望して行われたのが投資信託でもありました。
 そこで、民営化後の収益源の多様化のためと言われる投資信託、日本郵政に伺いますが、投信の手数料収入の推移がどうなっているのかを教えていただけますか。

○米澤参考人 お答え申し上げます。
 投資信託の販売は、平成十七年十月から開始しておりまして、投資信託関係手数料につきましては、平成十七年度二十億円、平成十八年度百二十一億円、平成十九年度上期八十六億円となっております。
 また、平成十九年十月以降、ゆうちょ銀行となってからの手数料につきましては、平成十九年度下期四十九億円、平成二十年度上期四十七億円となっているところでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 平成十七年度は後期だけですが、二十億、十八年度百二十一億、十九年度、公社と民営会社、通算して百三十五億円、二十年度上期で四十七億円。この手数料の実績というのは、日本郵政としては多いと考えているんでしょうか少ないと考えているんでしょうか、評価について聞かせていただけますか。

○米澤参考人 大小につきましてはなかなか評価は難しいところではございますけれども。
 ゆうちょ銀行全体の業務純益、先般出しました中間決算では二千八百十二億、グループ全体で見ました中間利益が二千二百二十四億。これに比べると、そう大きなウエートではないということではございますけれども、一方で、こういった新しい収入源、まさに先ほどお話ございました収益源の多様化という側面は重要であるというふうに認識しております。

○塩川委員 新しい収入源として重要だということでは、その点では今郵政会社としては手数料稼ぎに非常に躍起となっている。投信などの金融商品販売というのは、もうかるところに力を入れていくことに当然なりますから、それだったら、結果として、金持ちを相手にすればいいんじゃないのかという話にもなりかねない。
 そもそも、あまねく公平にと行われていた郵貯の事業において、資産のある人、お金のある人を対象にこういう事業が進められるということが、結果として、あまねく公平にと言われる金融のユニバーサルサービスそのものを損なうものになっているんじゃないのか、私、率直に思うんですが、大臣のお考えをお聞かせください。

○鳩山国務大臣 先ほど原口委員の質問に対してお答えしましたように、郵貯、簡保というもの、ゆうちょ銀行、かんぽ生命という会社になっても、やはり国民や庶民にとって、簡便で小口の身近な金融機関としての役割は失ってもらいたくないという思いを強く持っております。
 そういう意味で、ユニバーサルサービスがこれからも続くことを願っておりますし、株式完全売却後においても金融二社と郵便局会社との間で代理店契約を継続するから大丈夫だというふうに言われるわけでありますが、しかし、一〇〇%株式を売却すれば、政府とは完全に関係の切れた銀行、保険会社になるわけでございますから、やはりそうした場合に、ゆうちょ、かんぽと郵便局会社が切れてしまうという可能性があって、その懸念の声があるわけで、その辺にどういう対処をしていったらいいか、どういう見直しをしたらいいかということが大きく絡んでくると考えております。

○塩川委員 金融のユニバーサルサービスの義務づけが外される、そこにおいても郵貯の性格が変質していくのではないのか、このことがやはり問われてくるだろう。
 そもそも官から民への資金の流れというのはアメリカ仕込みで行われてきたわけで、こういった郵政民営化が、本丸、もともとのアメリカ流のカジノ資本主義が破綻をしたときでありますから、こういう官から民への実態を考えたときにも、破綻したモデルに追随をするのか、このことが問われているわけで、その点について一言伺って、終わりにします。

○鳩山国務大臣 郵政民営化委員会が見直しの案を出すと思いますし、我々も真剣に見直しについて考えていこうと思っております。

○塩川委員 アメリカ流のカジノ資本主義の追随を転換せよということを求めて、質問を終わります。