<第170回臨時国会 2008年12月11日 総務委員会 7号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、給与法に関連しまして、医師の給与の引き上げの問題をまず質問いたします。
 人事院は、若手から中堅の医師の人材確保を図るため、初任給調整手当の引き上げを行うことを勧告いたしました。人勧報告では、国立の医師の給与は、民間病院や独立行政法人国立病院機構に勤務する医師の給与を大きく下回っており、その状況は看過できないものとなっている、そこで独立行政法人国立病院機構の医師と均衡するよう一一%引き上げることが適当とし、給与法の改正案は勧告どおり改定をいたしました。
 独立行政法人の国立病院機構との均衡はとったとしても、民間との格差は残るわけですけれども、この点、民間準拠という人事院ですが、不十分ではないかと思いますけれども、どのようにお考えか、お聞かせください。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 今回の医師の給与の特別改善は、近年の全国的な勤務医不足を背景として、国の医療施設における人材確保の困難性を考慮して、初任給調整手当の改定を勧告したものでございます。
 勤務医につきましては、民間病院等との人材獲得で競い合っているという関係がございますので、その給与につきましても、そのことを考慮しながら決めていく必要があるというふうに従前から考えております。
 国立病院の医師と民間の勤務医との年収差は、先生御指摘のように約二百六十万円程度あるわけでございますが、国立病院におきましては、高度で専門的な医療を必要とする多様な症例が経験できる、あるいはよい指導医がいる、あるいは新しい機材があるなど、業務や研究、研修面で人材確保という観点からは優位性があるというふうに言われてきております。したがいまして、人材確保ということを総合的に見た場合には、国立病院における勤務医の給与といたしましては、平成十六年三月まで同じ国立病院であった独法化しました国立病院機構の勤務医との給与差、約百三十万円を埋めまして、公務の医療施設としての適切な給与水準を確保することが適当であるというふうに判断したところでございます。

○塩川委員 もともと国立の病院と独法になった国立病院とは同じところにあったのが、独法によって独自の給与体系をつくることができた。結果としてその独法が上がっているということは、やはり医師確保が大変だから民間との関係で引き上げざるを得なかったわけで、じゃ、その独法の水準が妥当かといったところについては、やはりもう一歩踏み込んだ対応が必要ではないかと思っております。
 あわせて、きょうは公立病院の医師の給与水準がどうなっているのかについてお聞きしたいと思っています。
 公立病院の医師の給与水準は、民間病院や独立行政法人国立病院機構の医師と比較してどのような水準にあるのか、また地域によって医師給与に差があるのかどうか、この点についてお示しください。

○久保政府参考人 公立病院の医師の給与水準につきましては、人事院報告で示されました民間や独立行政法人国立病院機構の水準と厳密な意味での比較可能な調査、これは行っておりません。
 ただ、各公立病院の決算状況調査の一環といたしまして、人事院調査の対象とした給与の範囲に加えて、時間外勤務手当や通勤手当も含めました総給与の支払い額ベース、これで調査した結果を申し上げますと、公立病院の医師一人当たりの年収額は一千五百万円を超えておりまして、人事院報告で掲げられました民間、一千三百九十万円余りでございますけれども、これでありますとか、国立病院機構の水準、一千二百六十万円余りを上回っております。
 その要因として考えられることでございますけれども、一つは、離島や僻地などの公立病院では、やはり医師確保の必要上、相当程度高額の給与を提示せざるを得ないケース、これが多いのではないかと考えております。
 また、都道府県別に見ますと、北海道や東北あるいは離島の多い長崎県とか沖縄県では比較的高いという結果が見られますし、また、都市部におきましては逆に低い傾向が見られております。高い県と低い県では約一・四倍の差がございます。

○塩川委員 決算状況調査そのものは、時間外勤務手当とかも含めた込み込みのものですから、単純な比較はできないわけであります。
 私、現場の公立病院のお話を伺いますと、やはり公立病院の医師は民間に比べて低いというのが実際の実感なんですね。
 そういう点で、もう一歩踏み込んで、これは現状がどうなのかということについてぜひとも調査をいただきたいということを要望するのと、そうはいっても、やはり地方において医師の確保がなかなか困難になっているという点は確かで、その辺、北海道、沖縄が都市部よりも高い給与となっているということにもまさにそのことがあらわれているんだろうと思っております。ですから、そういう意味でも、医師確保の困難さを前提に、ふさわしい措置が必要だ。
 もちろん、給与だけで事が解決するわけではなくて、私の地元の埼玉県にもお話を伺いましたが、医師給与を引き上げればどんどん医者が集まってくるという話じゃなくて、実際には、お医者さんの意見として、短時間勤務とか休暇を取得しやすい勤務環境をつくってほしいとか、産科、小児科の当直などの仕事環境全体を見直してほしいとか、育児とか介護とかこういうものについてのしっかりとしたサポートをお願いしたい、こういう働きやすい環境づくりに努めることが重要です。医師の絶対的な不足を解決するのとあわせて、医師給与の引き上げなどの適切な対応が求められているわけです。
 そこで、その点について大臣、公立病院の給与水準の問題、お考えのことがありましたら一言いただけますか。

○鳩山国務大臣 先生にお届けした資料があると思います、都道府県別の公立病院の平均給与月額、一般的には久保局長が御答弁申し上げたこと以上のことは私は申し上げるわけにはいきませんが、この資料を見たとき、私、やはりびっくりしましたのが、最高が沖縄県で、月額でいえば百五十三万ということなんでしょうか、一番低いのが奈良県で百七万となっている。東京は百十一万。これは、大体ほかのいろいろな資料と全く逆の傾向ですよね。物価水準とか民間の平均給与とか、この逆の数字が並んでいる。北海道が百五十万を超している、沖縄県が百五十三万。この数字を見たときに一番思ったことは、こうまでしないと離島とか僻地には来ていただけない。つまり、本当に離島や僻地にとっては医師不足が深刻なんだなということを、この数字を見てつくづくと思いました。
 それにしても、医師の数については、何と日本の国は見通しの悪いことをやってきたんだろうかと。塩川先生、私は文部政務次官というのをやったんです。それから文教委員会の理事をやって、それから文教委員長をやって、それから文部大臣をやったんです。大体続いているんです。その間、私は文部科学省とずっとつき合っておって、医師が多過ぎるから減らしましょう、少ないからふやしましょう、臨時増募だ、いや、やっぱり減らしましょう、しょっちゅう。これは厚生労働省と文部科学省で打ち合わせしておったのかわかりませんが、全く見誤っておったんだなと思って、その当時のことについては絶対の反省をすべきですね。

○塩川委員 ぜひそれに沿った対応をお願いしたいということと、その上で、自治体にとって医師確保のための人件費負担は少なくないわけですから、自治体財政の支援も必要であります。
 そこで、公立病院に関する財政措置のあり方等検討会報告書を出されておりますが、その中で、公立病院における医師確保に関する財政措置の一つとして、厚生労働省の新たな国庫補助制度を紹介しておりますが、どのようなものか、厚生労働省からお答えをください。この点、公立病院も対象としているのかについてもあわせてお願いをいたします。

○榮畑政府参考人 この新しい国庫補助制度に基づき勤務医について講じられる措置ということでございますが、喫緊に対応すべき課題でございます産科医の確保、それからまた、大変厳しい勤務状況にある救急医の処遇を改善して、その確保を図ること、この二つを考えておりまして、具体的には、平成二十一年度概算要求で、産科医への手当や休日、夜間の救急を担う勤務医に対する手当のことというふうに承知しておるところでございます。
 このいずれの補助事業につきましても、厳しい都道府県の財政事情などを考慮し、都道府県の負担を義務づけていないとともに、公立病院についても補助対象とするというふうに考えて、現在、概算要求をしておるところでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 二点、ちょっとお聞きしたいんです。
 今回の三分の一の国の補助について、都道府県の裏負担は必要でないという話でしたけれども、あわせて、都道府県、市町村が負担しない場合でも事業者への補助が可能だと承知していますが、その点の確認と、これは公立病院もそもそも対象となっているのかについてお願いできますか。

○榮畑政府参考人 現在概算要求中の事項につきましては、どちらも都道府県、市町村の負担がなくとも直接事業者に出すということと、それからまた、自治体病院や公立病院についても対象とするということで概算要求を今しておるところでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 自治体としても、地域医療をしっかり支えるためには奮闘したいけれどもなかなか財政が伴わないような場合だって、民間の事業者などが手を挙げれば、少なくとも国の分の三分の一の補助ができる。これに伴って、都道府県、市町村にも努力いただきたいということを促す方向でも、独自に、民間事業者への国の直接の支援策として、あるべきことの一つなのかなとは思っております。
 公立病院も対象とする方向でということで、その点でも、直接ここの産科、救急に対する支援策というのを強めるという点で、私どもとしてもこういう制度については前向きに考えていきたいと思っています。
 あわせて、この報告書では、公立病院における医師確保に関する財政措置、つまり「地方財政措置を講じるべきである。」と言っておられるわけです。大臣に伺いますが、この点、どのような地方財政措置を講じるべきとお考えなのか、お示しください。

○鳩山国務大臣 公立病院は、離島や僻地の問題が、先ほども申し上げましたけれども、要するに、採算がとれればいいわけですが、採算性だけで設立されているわけではありませんから、より厳しい状況に置かれがちだと考えております。
 もちろん本来は、医師の給与改定等に関しては、現在の医師の給与水準や過去の改定の経緯、さらには病院の経営状況によって異なるものでありましょうし、基本的には病院経営を行う診療報酬等の収入をもって賄うべきものであることだとは思います。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、いわゆる採算性では考えることができない過疎地や救急医療など、不採算部門における費用が増加してきているわけでございますから、いわゆる経営努力で解決できることには限界があるわけで、したがって、地方財政措置を講じる必要が出てくるわけでございます。
 医師不足の著しい過疎地や産科、小児科、救急医療等の分野においても、医師の処遇改善はもとより、必要な医療の供給体制が確保できるように、これらの分野に関する財政措置のさらなる充実に向けて努力してまいります。
 この場合は、特別交付税というものが考えられると思っております。しかしながら、地方財政計画をこれからつくっていく上で、先ほど地方交付税の増額と基準財政需要の積み上げがパラレルでなければいけないと申し上げたわけでございまして、そういった意味では、地財計画をつくっていく上で地方の一般会計から病院の特別会計への繰り出しをどこまで認めてもらえるかということが一つの焦点になりますので、懸命に頑張っていきたいと思っております。

○塩川委員 基準財政需要額に適切に盛り込んでいただいて、地方交付税そのものの復元、増額ということに大いに御奮闘いただきたいと思っていますし、あわせて、社会保障費の抑制路線そのものの転換も必要だということを申し添えておきます。
 残りの時間で、非常勤職員の日々雇用問題についてお尋ねします。
 昨年十一月六日の総務委員会で、非常勤職員の日々雇用問題について質問しました。谷総裁は、日々雇用問題について検討する必要があると答弁をしておりました。ことしの人勧報告では、非常勤職員の「任用形態・勤務形態の在り方についても問題意識を持って考えていきたい。」と述べております。
 人事院に伺いますが、日々雇用問題についてどのように対応されるのか、お聞かせください。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 非常勤職員制度は、臨時的に生ずる多様な業務や短時間の業務に対しまして弾力的に対処することを可能とするためのものでございます。しかしながら、非常勤職員の中には、業務面から見ると、恒常的に必要と考えられる業務を代替している者が見られるなど、現状の運用には必ずしも本来の趣旨に沿わない面が見受けられるというところでございまして、人事院としては、このような現状に対して、任用形態、勤務形態のあり方について問題意識を持っているところでございます。
 しかしながら、この非常勤問題というのは、業務の運営方法、組織・定員管理、予算、人事管理方針などと密接不可分な関係にありますことから、今後においては、政府全体として非常勤職員のあり方をどのようにしていくのかについて幅広く検討していただくことが必要と考えております。そのために、人事院としても、必要な検討を進めていくつもりでございますが、政府全体の取り組みに対して積極的に協力をしていきたいというふうに考えております。

○塩川委員 日々雇用の場合には、実際に雇用予定期間が三カ月ある場合でも、実際の雇用通知書の中身を見ると一日単位の日々雇用となっている。そういう点でも、雇用の安定性という点でも極めて重大であります。
 そこで厚生労働省に伺いますが、労働契約法というのがございます。十七条二項に「使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」とあります。
 それで、一般論として聞きますが、仕事量が三カ月あって、三カ月の期間を定めて募集しているけれども、採用に当たって渡される雇用通知書には任期は一日、雇用は日々更新とある場合には、この十七条二項に照らして、「必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新する」という規定に当てはまるのかどうか、その点をお聞かせください。

○渡延政府参考人 お答えいたします。
 労働契約法、これは国家公務員、地方公務員に適用はございませんが、御指摘の第十七条二項は、労働契約について労働者と使用者の間の紛争を防止する観点から、有期労働契約について、労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い契約期間を設定することのないよう使用者は配慮しなければならないことを規定したものでございます。
 この規定については、個別具体的な事案ごとに判断をすることになるものでございます。
 なお、ここで、契約期間について、一定の期間、例えば三カ月なら三カ月といったものにしなければいけないといった、特別の長さ以上の期間とすることまでこの規定は趣旨として求めているものではございません。

○塩川委員 時間が参りましたので終わりますが、今言ったように、日々雇用ということ自身が雇用の不安定性で問題になる。今、民間におきましても、有期雇用の方がその雇用契約を途中で打ち切られるようなことがある。それと同じようなことが公務の場合でも起こり得るわけで、こういう制度そのものをきっぱりとなくすべきだ、そういう立場で改めて質問したいと思っております。