<第171通常国会 2009年01月13日 総務委員会 1号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 地方交付税法に関連して質問いたします。
 法案についてですけれども、国税五税の減額補正に伴って、地方交付税総額の減少額が全額補てんされるというのは当然のことであります。
 そこで伺いますが、今回の措置は将来の交付税の減額という仕組みになっていると思うんですが、その点を確認させてください。

○鳩山国務大臣 先ほど提案理由で御説明しましたように、世界的な経済不況の中で、交付税の原資である国税五税が七兆円を超すという減収になり、その影響で地方交付税に二兆三千億近い穴が生じる。しかしながら、それは地財計画による地方交付税をもとにして各自治体が予算を組んで既に執行してきておるわけですから、今さらそれを取り戻せ、返してこいということはとてもできないから、これを補てんしなければならないということでございます。
 そこは、折半ルールというのがございますので、穴埋めする地方交付税の加算額の半分強は折半ルールによって地方がこれを負うということで、五年間かけて、地方交付税のいわば先食いをしたような形の処理になっております。

○塩川委員 大臣が先食いとおっしゃいましたけれども、七年先の交付税にまで手をつけることになる。こういうやり方は将来の地方財政運営に支障を来すことになりはしないか。その点についてはどのようにお考えですか。

○鳩山国務大臣 先生御承知のように、もともと交付税特会の借り入れという形でしのいできたケースが多かった。これは国分、地方分とあったんでしょうけれども、現在、地方分としても三十三兆円というお金が残っている。国、地方の借金の合計が幾らという計算のときに、この三十三兆円は地方の借金として計算されてしまっているわけですが、それはもうできないことになってしまいましたので、今回のような措置をいたしました。
 実は、大きな問題として、昨年何回か御答弁申し上げたように、三位一体改革の中で五兆円以上の交付税の減額というのがなされた。それが今の地方財政に非常に大きな影響を与えている。そういった意味では、地方交付税の復元という作業をこれから懸命にやっていく。
 今後、いろいろな加算を予定している、あるいは求めていく、その範囲内で先食いする。一年当たり二千五百億ぐらいの先食いを上回る法定加算等をこれから求めていこうと思っております。

○塩川委員 大臣がおっしゃられましたように、この間、三位一体改革の名のもとに交付税が大幅に削減されたということがありました。政権によって対応が大きく変わるということでもあるわけで、将来について、この加算を求めていくということが実際に本当に担保されるのかということが率直に疑わしいということがあります。
 この点についても、もともと地方にツケ回しをすることにおいては変わりがないわけですから、私たち、政権の立場によって交付税が上がったり下がったりするようなことが起こるのであれば、その見通しも立たない、今現在から七年先まで地方交付税の先食いをするようなやり方そのものが認められない、このことを申し上げてまいりました。
 もともと交付税法に基づけば、毎年度分の交付税総額の見積もりは総務大臣の権限と責任のもとで行うことになり、地方財政計画の策定等は内閣の義務であることを規定しております。ですから、この法律の趣旨からいえば、年度途中であっても、地方財政計画で年度当初に見込んだ交付税の総額は国の責任で確保すべきであり、法案は補てんの一部を将来の地方交付税から減額するものだ、私どもとしてはこういう地方への負担転嫁は認められないということを申し上げておくものであります。
 そこで、定額給付金についてお伺いします。
 最初に、事務方で結構なんですが、定額給付金の中にあります所得制限の仕組み、これはどういうふうになっているのかについて、簡単に御説明いただけますか。

○岡崎政府参考人 所得制限の仕組みでございましょうか。
 私どもが考えておりますのは、十一月二十八日にお示ししたたたき台の中に書いておいたのですが、やはり所得の時点というのを、給付金をちょうだいする時点といいますか、給付される時点と合わせることにしてあると思いますので、平成二十一年の一年間の所得が基準額を超えた場合には、給付する際に、後で所得情報でそこをチェックして超えた場合に返していただくことがありますよという同意をとった上で給付をいたしまして、超えていることが後ほど確認された場合には返還を請求するという仕組みが基本ではないかということで、市町村にはお話をしております。

○塩川委員 一度は全員を給付対象にして、申請書に、税務情報を調べる場合もありますよということを断って、チェックをされるということであれば、給付がされる。二十一年の所得がはっきりした場合に、いわば千八百万円を超えるような人については、改めて連絡をして、返してくださいというふうにお願いをするという仕組みですよね。確認です。

○岡崎政府参考人 初めから明らかに超えることがはっきりしている人は申請しないかもしれませんけれども、基本的には、窓口で出す、出さないの混乱を避けるためには、同意をとった上で給付をして、後ほど返還を請求するというのは御指摘のとおりであります。

○塩川委員 市町村は、年度末から給付を開始するというだけでも大変な労力がかかるわけであります。その上、所得制限を実施しようと思えば、その市町村は、受給権者に税情報取得の同意を求めて、それから来年、二〇一〇年の五月以降、税情報をチェックして、一千八百万円以上となれば給付金の返還を請求する必要がある、こういう仕組みになるわけです。
 労力を考えましたら、市町村にとって、一度支払ったお金を後で返してくれと頼み込む仕組みというのはどういうものかな。もちろん手間も大変です。また、もらう側にとっても、一度もらった給付金ですけれども、チェックをしたといった場合に、後で返してくださいという仕組みというのも大変おかしな仕組みだと率直に思いますが、大臣、おかしいとお思いになりませんか。

○鳩山国務大臣 日本の国が、納税者番号というような形で、また、そうした税務情報をいろいろ使っていいというような法律でもあれば別でございますけれども、実際、一人一人からあなたの所得を把握したらそれを使うことがありますなどという了解をとって、しかも、平成二十一年、ことしの暦年の所得が確定するのは平成二十二年の五月か六月じゃないですか、そんな時点になって返してくれと。返したお金が地方自治体に入るんじゃなくて国へ戻っていくわけですから、私は、そんなばかげたことは本当はあってはならないとずっと言い続けて、所得制限をつけるのはやめるように要請をしたい、こう申し上げ続けておるわけです。

○塩川委員 市町村にやらないでほしいと要請したいというお話ですけれども、今も、こんなばかげたことはあってはならないとおっしゃいましたし、予算委員会の質疑のとき、逢坂議員の質問の際にも、所得制限というのは非現実的だと述べておられました。非現実的ということなんですね。

○鳩山国務大臣 そうですね、非現実的だと思いますよ。やるところがあったら、何だと世の中から批判を受けるような、非現実的なことだと思っております。

○塩川委員 では、そのような非現実的な所得制限の仕組みをなぜ盛り込んだんですか。

○岡崎政府参考人 基本的には、大臣のお話にありましたように、すべての方に給付するのが基本でございますけれども、当時、いろいろな議論がありますので、市町村が一定の金額以上の所得がある方は対象外としたいというようなことがあった場合には、それもすべて補助対象から外すのではなくて、排除することはないであろうという考え方のもとにこういう仕組みにしたのだというふうに理解をしております。
 十一月十二日の与党合意も、同様の考え方のもとに行われたというふうに理解をいたしております。

○塩川委員 与党合意を踏まえたものということですね。
 では、なぜ与党合意で所得制限を盛り込んだんですか。

○鳩山国務大臣 なぜ与党合意に盛り込まれたかというのは、私にはよくわかりません。正直言って、そうであってほしくないと願っておりましたが、さまざまな議論の中であのような与党合意となりました。私は、一切所得制限のない形を強く望んでおりましたから、実際そういう意見は述べましたから、与党合意がああいう形になってしまいましたが、私としては残念だったですね。
 なぜそういうふうになったか、なぜ与党合意がそういう形になったかは、私にはわかりません。そういう議論があったとしか言いようがないということです。

○塩川委員 麻生総理が迷走したからではありませんか。
 十月三十日、生活対策発表時には全世帯に実施と述べていたのに、十一月の四日には、貧しいとか生活に困っているところに出す、豊かなところに出す必要はないと発言をしておられるわけで、わずか五日間で制度の根幹である給付対象者の位置づけが変わったからです。総理が迷走したから、こんな非現実的な制度をつくることになったのではありませんか。

○鳩山国務大臣 経済財政諮問会議の議事録は明らかになっていると思いますが、そこでそういう議論が出ておりました。高額所得者には配るべきでないという所得制限論が出ておりました。その辺からいろいろ幾つかの所得制限論が出てきたのかなというふうに私は推測いたしております。

○塩川委員 ですから、そこも含めて、総理がおっしゃったからなんですね。その後の十一月の十日に、総理は、高額所得者には自発的にやってもらうんだ、辞退してもらうんだと発言をしている。だからこそ十一月の十二日の与党合意に反映をしたわけで、総理自身が非現実的な制度をつくったんですよ。
 それに加えて、年明けの発言であります。十二月の十五日に、例の、さもしい、人間の矜持の問題という発言など、昨年の末までは高額所得者に辞退を促していましたのに、年が明けると一転して、高額所得者がもらった場合には盛大に消費していただきたいと。これもまた迷走しているんじゃありませんか。大臣、いかがですか。

○鳩山国務大臣 私は、与党合意ができていくプロセスの中で、所得制限を設けるべきだという意見もいろいろあったんだろうと思います。私は、総理がそうした意見にも配慮されたのかなというふうに思っております。

○塩川委員 総理が十二月の十五日には、さもしい、人間の矜持と、高額所得者に辞退を促している発言をしているのにもかかわらず、年が明けたら、受け取って盛大に消費してもらいたいという発言が、矛盾していませんか、迷走しているのではないかと考えますが、大臣はいかがですか。

○鳩山国務大臣 現在でも、御自身が受け取るか受け取らないかについては、人の自由意思であるというようなことをまだおっしゃっておられるようでございますけれども、やはり総理としては、枠組みも決めていく過程でさまざまな意見があったので、それに配慮されて若干のあの発言の揺れがあったのかなというふうには思います。

○塩川委員 一月八日の予算委員会の答弁で、総理は、景気の情勢が大きく変わっており、生活給付金という色合いとともに消費促進という色合いと両方出てきている、消費促進の面を考えたら、高額所得者がもらわれた場合は盛大に消費していただきたいと述べておられます。
 景気の情勢が大きく変わったから消費促進が重要になったということなんですが、もともと、十月三十日の定額給付金を発表した生活対策の記者会見で、総理は、全世界的な金融システムの動揺が日本の実体経済に影響を及ぼすのは確実だから、自律的な内需拡大が必要と述べていたわけです。
 実体経済の悪化を確実視して消費刺激を含む内需拡大を強調していたわけですから、だったら、去年のうちから消費刺激が必要だという立場に立って、高額所得者にも定額給付金をもらって盛大に使ってくれと何で言わなかったんですか。

○鳩山国務大臣 先ほど寺田委員とのやりとりの中では私もいろいろな議論をいたしましたけれども、当初から、家計への緊急支援と景気刺激、消費の刺激というのか消費の増大というのか、二つの意味合いがあった。それが実体経済への波及というお話もありましたが、世界同時不況の中で、確かに消費の刺激という意味合いが若干色濃くなってきたのかもしれない。
 総理も経済に明るい方ですからそういうふうなお考えをお持ちなんだろうと思いますが、総理の若干の発言の揺れと私が申し上げておりますのは、やはりあの枠組みを決めていく中で、経済財政諮問会議でも所得制限論が出ておりますし、いろいろ所得制限論を総理におっしゃった方々もおられたのではないか、そういう方々に配慮をされたように思います。総理は、見た感じよりも物すごく神経細やかに配慮をされる方でございますので、そういう配慮があったのではないかなというふうに思います。

○塩川委員 十二月十五日にさもしいと言っておきながら、年明けには大いに使ってくれと言う。そういう景気情勢の認識そのものが、経済がよくわからないと言われちゃうんじゃないですか。本当に消費刺激の必要性を強調しているのであれば、所得制限の規定を残す必要もないわけであります。
 もう一つお聞きしますが、定額給付金が生活支援の制度という側面を持っているんだったら、本当に生活支援を必要としているホームレスやネットカフェ難民の人たちに確実に届くのか。その点を確認させてください。

○岡崎政府参考人 先ほどもお答えいたしましたが、ホームレスなりネットカフェの方というのは住民票がある方、ない方ございますので、二月一日現在で住民票がどこかの市町村にある方、住民基本台帳に載っている方については給付ができるようになりますし、そのときに残念ながら消除されたりどこにもないという方については、今回の仕組みではお配りすることがなかなか困難だと思っております。

○塩川委員 ですから、必要な方には届かないという仕組みになってくるわけです。高額所得者には盛大に使ってくれと言いながら、本当に必要とするホームレスとかネットカフェ難民の手元に届く保証がない。
 何でこんなふうに定額給付金事業の目的、性格が迷走することになるのか。それは、定額給付金の本来の目的が別なところにあるからだと言われているように、結局は選挙目当てのばらまきだったからであり、自民党にとってのもう一つの目的が連立のコストだという話も出ているじゃないですか。テレビ番組の中で、自民党の有力者の方が、国民の六割以上が反対している定額給付金をなぜ実施するのかと問われて、これは連立のコストだと述べておられる。
 こんな目的、性格づけというのが結局ぶれまくる結果を生み出している。ぶれてばかりの麻生総理がぶれていないのは消費税増税計画だけであるわけで、我々は定額給付金も消費税増税計画も撤回を求めて、質問を終わります。

========== 反対討論 ==========

○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の地方交付税法等の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。
 まず、予算委員会の不正常な事態を踏まえ、当委員会の慎重な審議日程が求められていたにもかかわらず、委員長職権で質疑終局、採決となったことに強く抗議をするものであります。
 今回、国税五税の減額補正に伴い、地方交付税総額の減少額が全額補てんされることは当然のことであります。問題は、どのような財源が充てられるかであります。
 交付税法は、毎年度分の交付税総額の見積もりが総務大臣の権限と責任にあること、地方財政計画の策定等が内閣の義務であること等を規定しているのであります。この法律の趣旨から、年度途中であっても、地方財政計画で年度当初に見込んだ交付税の総額は国の責任で確保すべきであります。
 ところが、法案は、補てん額の一部を将来の地方交付税から減額することになっており、地方への負担転嫁は容認できません。
 今回の補正対策では、国と地方が折半して補てんする措置として、地方負担分については、特例的に臨時財政対策債の発行にかえて一般会計から交付税特別会計への振替加算を行った上で、この振替加算分については、後年度における地方交付税の総額から減額する対策を打ち出したのであります。
 これは初めての対策でありますが、将来の地方交付税の総額を減額する手法は、後年度の地方財政運営に影響を与えるものであり、禍根を残すものと言わざるを得ません。
 以上を申し上げ、反対討論を終わります。