<第171通常国会 2009年02月24日 総務委員会 4号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、郵政の資産売却の問題について質問をいたします。
 日本郵政がかんぽの宿など計七十九施設をオリックスに一括売却する方針について、大臣は承服しがたい点があると述べ、なぜオリックスなのか、なぜこの時期なのか、なぜ全国一括なのかと問題点を指摘いたしました。
 郵政の資産は、国民、利用者が営々と積み上げてまいりました国民共有の財産であります。勝手に切り売りすることは許されません。不透明な資産売却は、オリックスへのかんぽの宿売却方針だけではありません。なぜ一括売却なのかを問題にするのであれば、過去のバルク、一括売却の検証も必要であります。
 そこで、日本郵政に伺いますが、郵政公社時代に、バルク、一括売却の案件は、十六年度に六十件、十七年度に百八十六件、十八年度に百七十八件行われておりますが、十八年度のバルクについて聞きます。
 鳥取の岩井の旧かんぽの宿の購入者はだれで、そのとき郵政公社の行いました鑑定評価額が幾らで、購入者の評価した額は幾らか、それぞれお答えください。

○藤本参考人 平成十八年度のバルク売却の中で、鳥取岩井簡易保険保養センターの件でございますか。
 バルク売却の購入者は、コスモスイニシアを代表とする、株式会社リーテック、東急リバブル株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、株式会社穴吹工務店、株式会社レッドスロープによる七社で構成されるグループの共同購入でございます。
 それから、鳥取岩井簡易保険保養センターの鑑定評価額でございますが、これは三千七百万円でございます。それに対しまして、購入者の評価額、これを徴したわけでございますが、それは一万円でございます。

○塩川委員 グループで購入しているわけですけれども、登記をした者はどなたかといえば、レッドスロープ社だと承知していますが、その点だけ確認させてください。

○藤本参考人 お答えいたします。
 鳥取岩井簡易保険保養センターの所有権の移転先は、有限会社レッドスロープでございます。

○塩川委員 これはよく知られていますように、一万円で購入したレッドスロープ社が六千万円で売却をしたという案件ですけれども、この一万円という、購入者がつけた、評価した額に対して、郵政公社側での鑑定評価の額が三千七百万円だったということであります。鑑定評価額三千七百万円の物件が一万円で譲渡をされている。一万円で購入したレッドスロープ社は六千万円で売却をしております。
 もう一つ、沖縄の東風平レクセンターの例がございます。そこでも、この東風平センターで登記した者はどこなのか、それから郵政公社側による鑑定評価の額は幾らか、そして購入者の評価した額は幾らか、それぞれお答えください。

○藤本参考人 旧沖縄東風平レクセンターでございますが、これは鑑定評価額が六千二百五十六万七千円でございます。それから、会計処理上必要な関係がございまして購入者の評価額を徴した額は一千円でございます。

○塩川委員 登記した者、東急リバブルと承知していますけれども、確認お願いします。

○藤本参考人 所有権移転先は東急リバブル株式会社でございます。

○塩川委員 郵政公社側で鑑定評価をした額六千二百五十六万円の物件が千円で譲渡をされる。千円で購入した東急リバブルは四千九百万円で売却をする。まさにぬれ手でアワの大もうけが行われている。
 西川社長に伺いますが、郵政公社による鑑定評価額と比べて極めて低い金額で購入、譲渡されている。安売りと言われても仕方がないのではありませんか。

○西川参考人 お答えいたします。
 これはいろいろなケースがあるかと存じますが、バルク売却の場合は、文字どおり、一括して幾らという入札をされまして、その中で一番高値のところに落とす、こういうことでございますが、その購入した金額を各物件に落札者の方は割り振るわけでございます。それは、郵政公社がとっておりました鑑定などとは関係なく、価額の割り振りをいたしております。
 千円でございますとか一万円でございますとかというのは、多分、備忘価額的に割り振ったものであろうと思います。それで、帳簿処理を彼らの方で行っておるということだと理解をいたしております。

○塩川委員 鑑定評価の額が百十四億なんですよね。購入者の評価した額が百十五億です。それを購入しているわけですから。
 一方で、千円とか一万円というものがあるとしたら、他方で、郵政公社側が鑑定評価をした額よりも高い額で割り振られている者もあるということになるわけですけれども、では、郵政側が鑑定評価をした額より高い物件というのでいえば、例えば、参議院の総務委員会で我が党の山下芳生参議院議員が取り上げましたけれども、大阪の枚方のレクセンター、ここの購入者は長谷工コーポレーション、この一つの物件だけ長谷工コーポレーションが手に入れているわけですけれども、購入をしてから次の転売までわずか十一日間ですよ。十一日間で転売できるような物件がどうして割高と言えるんですか。結局は、そういう期間でも転売できるような、そういうのが見込めるような評価額でしかなかったということでいっても、もともとの評価額そのものの妥当性が問われているんじゃないでしょうか。
 同じように、埼玉の上福岡、現在はふじみ野市になりますけれども、戸建ての住宅街の中に旧上福岡江川二号社宅というのがありました。この購入者はコスモスイニシア、旧リクルートコスモスですけれども、購入したら直ちにマンションを建てるわけですよ。そのマンションによって、近隣住民、一戸建ての地域ですから、突然十一階建てができるというので、反対運動も起こるというトラブルになっているような事案、すぐマンションをつくって販売できるような、そういう物件であるわけですね。
 ですから、そういうのも含めて、百十五億円というところでは極めて安値の売りだったのではないか。もともとの鑑定評価額に疑問が生ずるわけですけれども、この点、西川社長、経緯について調査するお考えはありませんか。

○西川参考人 お答えいたします。
 こういったバルク売却というのが果たして我々の不動産の処分の仕方として妥当なのかどうか、そして、その際の鑑定評価を、いかに公正妥当な評価が得られるようなやり方をするかといったことにつきまして、先日設置いたしました第三者委員会、専門家によりますものでございますが、ここでよく議論していただき、検討をしていただくよう今お願いをいたしているところでございます。

○塩川委員 過去の経緯について調査をしていただきたいと思っているんですけれども、そのお考えはありませんか。国民新党の調査でも、七割が転売されている十八年度のバルクですから、そのことも含めて過去の経緯について改めて日本郵政として検証する、問題点を洗い出す、そういう考えはありませんか。

○西川参考人 お答えいたします。
 ただいま申しましたように、私どもの売却のあり方として、そういうバルクセールというものが妥当なのかどうかといったことを再検討していただこうというふうに考えておりますので、その中で、過去の公社時代のバルクセールというものを実例に検証をしていただくということも当然あり得ようかと考えております。

○塩川委員 安売りという批判は免れないわけです。
 加えて、このバルクの落札者についても疑問があります。
 資料を配付いたしましたが、日本郵政から出していただいた、十六年度、十七年度、十八年度のバルクの落札者についての資料でございます。
 そこで、いろいろ片仮名とかアルファベットの購入者が挙がっていますけれども、確認、おさらいですが、CAM5、CAM6、CAM7というのは出資者はどこか、また、G7―1、G7―2の出資者はどこかを教えていただけますか。

○藤本参考人 お答えいたします。
 入札参加申し込みの際の定款等の提出書類によりますと、平成十六年度におけるバルク売却で共同購入者の一員となっておりますCAM5とCAM6につきましては、株式会社リクルートコスモスの出資でございます。
 それから、平成十七年度のバルク売却で共同購入者の一員となっておりますG7―1及びG7―2につきましては、それぞれ株式会社リーテックの出資でございます。また、CAM7につきましては、株式会社リクルートコスモスの出資でございます。
 同様に、平成十八年度におけるバルク売却で共同購入者の一員となっているレッドスロープにつきましては、株式会社リーテックの出資でございます。

○塩川委員 レッドスロープはリーテックの一〇〇%子会社、G7―1、G7―2がリーテック出資のSPCですけれども、このリーテック社の社長は、リクルートコスモス、現コスモスイニシアの出身の方ですね。その点を確認させてください。

○藤本参考人 その点につきましては、ちょっと確認しておりませんので、今直ちにお答えできません。

○塩川委員 リーテック社のホームページを見ますと、代表取締役のところにリクルートコスモス出身と書かれておりますから、事実でございます。
 東京新聞の報道でも、このリーテック社はコスモスイニシアなどから出資を受けて、増資もしているわけであります。そうしますと、このCAM5、CAM6、CAM7、G7―1、G7―2、レッドスロープ、リーテックなど、名前はいろいろだけれども、いずれもリクルートコスモス、現コスモスイニシアの関係企業ばかりであります。
 その上で、一括売却が行われた、バルク売却が行われた十六年度、十七年度、十八年度のこの三回について、それぞれ落札者の代表はだれかをお答えください。

○藤本参考人 平成十六年度から平成十八年度までの三回のバルク売却につきましては、すべて一般競争により入札を行っておるわけでございますが、これら三回の入札におきましては、落札者を含みまして、平成十六年度においては三グループ、十七年度においては十一グループ、平成十八年度は二グループが入札に参加をいたしてございます。
 これら三回の入札におきまして、いずれも株式会社リクルートコスモス及び商号を変更しました株式会社コスモスイニシアを代表とする共同購入者が落札をしたものではありますけれども、これは、それぞれの入札参加者の競争の結果であろうというふうに考えておる次第でございます。

○塩川委員 リクルートコスモス、現コスモスイニシアを代表としたグループがすべて落札をしております。
 そこで、十八年度の入札の経緯について伺いますけれども、この入札、二グループということですが、これは、経緯の中で、一方が辞退をしたと聞いているんですけれども、そのとおりですか。

○藤本参考人 事実の経過を申し上げますと、第一回の入札に際しましては、これは落札者がございませんで、第二回の落札で落札者が決まったわけでございますが、その際に一社が辞退をしたということでございます。

○塩川委員 冒頭確認しましたように、一万円が六千万円になるとか、千円が四千九百万円になるとか、こういう話ばかりがあふれているわけで、そもそもバルクという手法をとる必要があったのかということが率直に疑わしいわけです。
 入札者が少ない場合であっても、ふさわしくこれを見直す、切り分けてやれば、違う形で売買、譲渡が成り立つようなことだってあったわけで、こういったバルクという手法をどうしてもとる必要があったのか、その点についてお聞きしたいんですが、いかがですか。

○藤本参考人 日本郵政公社におきますバルク売却の経緯でございますが、売りづらい物件でございますとか、多くの物件を効率的に売却する方法として、平成十六年度からバルク売却を一般競争入札で行っておるわけでございます。
 バルク入札を行わなかった場合の影響といたしましては、やはり郵政公社の側で不動産を売却するための陣容の整備でありますとか、そういうものに時間がかかる、経費がかかる、あるいは売却するのに時間がかかる、そういったデメリットもあることから、今申し上げましたように、売りづらい物件や多くの物件を効率的に売却する方法としてバルク売却を選択したというふうに聞いております。

○塩川委員 公社側も鑑定評価を行ってきているわけで、それぞれについてふさわしいやり方というのは当然あったわけで、それをバルクにしたことで、結局は参入者を制限することによって特定の者に落ちるような経緯になったのではないか、そういうことが疑われる。
 この入札の経緯などについて、資料を明らかにしていただけますか。

○藤本参考人 内容的には今申し上げたとおりでございますが、御質問の御趣旨が、そのときの意思決定のあり方であるとか、そのときの文書という趣旨でございますれば、調べてお出しをしたいと思います。

○塩川委員 入札、落札の経緯についての資料を出していただけますか。

○藤本参考人 関係の文書といいますと、バルク入札を行った際の関係文書、あるいは入札者のすべてと、それがそれぞれどのような値入れをされたかという入札の札、そういった一式につきまして提出をいたしたいと思います。

○塩川委員 大臣に伺いますけれども、この三年間にわたって落札の代表者がリクルートコスモス、リクルートグループだったわけですけれども、このリクルートが総合規制改革会議のメンバーだったということは、大臣は御存じでしょうか。

○鳩山国務大臣 不敏にして今承知しておりません。

○塩川委員 このリクルートの代表取締役会長兼CEOが総合規制改革の委員になっております。ちょうど郵政民営化の議論の始まる〇一年から〇四年の期間にかけてであります。
 大臣は、郵政民営化を論じていた規制改革会議の議長だった宮内氏のオリックス不動産に一括譲渡というのは、国民から見たらできレースではないかと受け取ると述べておられます。規制改革会議のメンバーだったリクルートが常にバルクの落札者だったというのは、国民から見たらできレースではないかと受け取るのではありませんか。

○鳩山国務大臣 三回のバルク売りで全部リクルートコスモスあるいはコスモスイニシアがこれを落としているということを考えますと、まずそのことに、本当にこれは偶然なんだろうかという疑問を抱くのは私だけではないと思うし、そういうような疑念を国民が感じるとしてもおかしくないという思いはありますね。

○塩川委員 郵政公社時代の不動産売却についても調査、検証をしていただきたいと思いますが、改めて御決意をお聞かせください。

○鳩山国務大臣 これは、先ほど原口委員とも松野委員ともお話をした件なんですけれども、本当に残念で悔しいことです。
 というのは、そもそもかんぽの宿が信じられない低廉な価格でたたき売りされようとしていた。それで、理屈の上ではこれは事業譲渡だから、どんな立派な土地にどんな立派な建物が建っていても、営業上損が出ていたら一万円で売れても御の字だなどということが平気で私の報道に対する反論として書かれている。そういう発想でいえば、一万円が六千万円になり、千円が四千九百万になるのは、そういう理論でいけば当然のことなのかもしれない。
 いろいろ考えて、最初、このかんぽの宿だけの問題であってほしかったものが、次々さかのぼって、バルク売りの中で、バルク売りだけじゃないかもしれないけれども、わけのわからないことが生まれてくる。リーテックと書いてあったら、リーテックに売ったんじゃありませんと言ってみたり、もうわけがわからないじゃないですか。
 ですから、できる限りの調査をしなければならないと思っておりますけれども、日本郵政株式会社法第十五条の私の持っている権限の報告徴求というのが、公社時代までさかのぼることができるのか、あるいはそれは拡大解釈だから無理だよと言われるかわかりませんが、事務的に詰めてみて、精いっぱいの努力をしたいと思います。

○塩川委員 疑念を持つということであれば、それを行動に移していただきたいと思います。
 私どもは、官から民へをスローガンにして、結局は民間企業が郵政の国民共有の財産を切り売りするものだということを一貫して指摘してまいりました。その一方で、国民サービスが後退をしている現実があります。国民、利用者から、郵政民営化によってサービスが後退したという声が寄せられております。
 資料の二枚目ですけれども、日本郵政に伺いますが、局外ATM、学校ですとか病院に設置をされているこの局外ATMの設置箇所数について、〇三年度末、〇五年度末、それから直近の〇八年九月末の局外ATM設置箇所数がどうなっているのかをお答えください。

○米澤参考人 お答え申し上げます。
 局外ATMの設置箇所数でございますけれども、〇三年度末で二千八百七十四カ所、〇五年度末で二千五百六十四カ所、〇八年九月末で二千百五十一カ所でございます。

○塩川委員 局外ATMというのは、二〇〇三年度以降で二五%も減少しているわけです。
 郵政産業労働組合が各地でアンケートを行っております。それをお聞きしましたが、国立病院からATMがなくなり職員も患者も困っているとか、病院や市役所のATMがなくなった、もとに戻してほしい、こういう切実な声がそれぞれ各地から寄せられているわけです。
 この中では、京都府内の工業高等専門学校においても、学内にあるATMについて、設置を存続してほしいという署名が六千も集まって校長先生が郵政と交渉したにもかかわらず、一方的に撤去をされてしまう、こんなことなんかも行われていたわけで、簡易郵便局の閉鎖や総合担務の廃止などとあわせて、金融サービスが大きく後退をしているという現実は明らかであります。
 また、民営化移行時における主な送金サービスの料金も、資料の三枚目で表をお配りしましたように、普通為替で一万円送金のときに百円が四百二十円、四・二倍、三万円送金で二百円が六百三十円、三・二倍、十万円を超えるものでは四百円は六百三十円、一・六倍と大きく値上げをしているわけです。これは郵政民営化によって利便性が向上したとはとても言えないような現状にある。
 一方では、郵政民営化によって民間企業が国民共有の財産を切り売りするという事態が生まれ、他方で、利便性の向上を言っていたにもかかわらず、明確なサービスの後退がある。
 大臣に伺いますけれども、郵政民営化というのは、そもそも間違いだったんじゃないですか。お聞かせください。

○鳩山国務大臣 郵政民営化という大改革は、先ほどもお答えをしておりましたけれども、小さな政府をつくる、官から民への流れをつくる、そういう意味では郵政民営化は間違いではない、私はこう思っておりますが、そもそもが、日本の郵政文化というのは我が国固有の、国民みんなでつくってきたもの、そのウエットな文化が壊されはしないかという懸念は従来から持っていたということが一つ。
 そして、今後の問題としては、光が強ければ影も強いので、その影の部分を少しでも少なくするために努めるのが私の役割、こう考えております。

○塩川委員 官から民への流れそのものが、オリックスの問題や、あるいはリクルートコスモスの例に挙げられるような、まさに切り売りをされるような事態につながっているわけですから、こういった誤りをしっかりと認めた上で、改めるべき点は改めるということが必要であります。
 そういう点では、我々は一から見直せと申し上げているわけですけれども、今のサービスの後退の大きな原因ともなっているのが、金融のユニバーサルサービスの義務づけがなくなったという点であるわけです。その点で、見直すというのであれば、金融のユニバーサルサービスも義務づけるということも含めてしっかりと見直すべきだと考えますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

○鳩山国務大臣 今の御指摘の件は、私も政治家を三十年以上やってきて、共産党さんとは余り意見が合ったことはありませんでしたけれども、比較的きょうは合っているような気がします。

○塩川委員 見直しと言うのだったら一から見直す、三事業一体、四分社化を見直すのとあわせて、金融のユニバーサルサービスの義務づけをしっかり行う、それでこそ本当に国民の声にこたえることになると申し上げて、質問を終わります。