○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。 きょうは、私は、日系ブラジル人などの定住外国人の現状について質問をさせていただきます。 三十万人を超える日系ブラジル人など定住外国人の失業問題が深刻であります。きょうのニュースでも、群馬県大泉町の調査で、五人に二人が仕事がない、十二月から雇いどめとなっている、こんなことも報道されておりました。主に製造業の職場で働いてきた定住外国人の労働者は真っ先に解雇をされ、教育費が負担できずに、子供たちの就学も困難になっております。 そこで、舛添厚生労働大臣に伺いますが、定住外国人労働者の解雇や雇いどめの状況、また、雇用形態として派遣や期間社員など非正規雇用が多い、こういう状況をどのように把握しておられるのか、お聞かせください。 |
○塩川委員 求人が昨年の六倍になっているとか、五千六百人の雇いどめの状況というお話がありましたが、これは、深刻な地域ではあれ、一部のハローワークでの調査であります。全体はどうなっているのかということについてだれもわからない、政府はそういう実態を把握していない、これが現状であります。 例えば、浜松市が三、四年に一回、南米系外国人の生活・就労実態調査報告書というのをまとめております。その中では、就労形態は、正社員が八・九%に対して、派遣や請負が七六・四%、八割に上る。また業種別には、自動車を初めとした製造業従事が八三・三%で、ほとんどを占めている。さらには、住まいが会社の社宅や会社契約のアパートという人が四七%、半分に上る。まさにワーキングプア、ホームレス状態に置かれる、そういう実態というのが浜松市の実態調査だけをとってもうかがわれる。 そういう点で、政府として、全国でこういう定住外国人の生活・就労実態調査をきちっとやってもらいたい、実態調査を行っていただきたい、この点についてお答えください。 |
○塩川委員 まずは、具体的な実態調査をしっかりとやっていただきたいと思います。 仕事と同時に住まいも失うというような深刻な現状があるわけで、浜松市に限らず、全国共通した特徴である製造業を中心とした非正規切りが定住外国人を直撃しているわけです。 そこで、そもそもにさかのぼって、森法務大臣に伺います。 今日、多数の日系ブラジル人、ペルー人など、日本で暮らし、就労するようになったそのきっかけ、理由は何だったのか、その点についてお聞かせいただけますか。 |
○塩川委員 八九年の入管法の改正で、日系外国人の身分、地位に基づく在留資格を明確化した、これが一つのきっかけとして、この時期を境に増加をしているということになっているわけであります。 そこで、当時の審議はどうだったのか拝見をした際に、八九年十二月七日の参議院の法務委員会での入管法改正案の審議ですが、当時の労働省の監督課長が答弁の中で、労働者派遣を行うことが禁止されている自動車部品の製造事業において、組み立てとか塗装あるいは検査等の業務にブラジル人等の日系人を派遣して就労させていたという事業主を派遣法違反で摘発したという事例もある等、いわば八九年の入管法改正以前から、日系ブラジル人が当時はまだ禁止されていた自動車産業への派遣労働者として働いていたという事実を報告しております。 ですから、定住者という就労可能な在留資格を与えられることになれば、派遣や請負などの企業側にとって都合のいい働かされ方が拡大することは、入管法の改正当時から十分予測できたことであります。 森大臣に伺いますが、それなのにまともな手だてをとらなかったことが今日の深刻な定住外国人の実態を生み出すことになったのではありませんか。お答えください。 |
○塩川委員 法務省の入国管理局が編集協力をしております「国際人流」、こういう雑誌がございます。法務省の方なら御存じだと思いますけれども。その九〇年七月号の中で「在留日系ブラジル人等の稼働状況等に関する実態調査」というのが取り上げられております。これはだれが実態調査をしているかというと、法務省の入国管理局であります。 その中では、この調査そのものは入管法の改正が施行された九〇年六月の直前の八九年の十一月に行われたものですけれども、雇用先、請負先についてということで、雇用先企業のほとんどは請負業を事業の一つとしている、また、請負先企業は、自動車部品等の製造業者など、いわゆる大企業からの下請業者が多い。つまり、自動車産業の請負労働者として当時からも多くの定住外国人の方が働いていたということを法務省の調査で指摘しています。 また、雇用の形態についても、その多数が契約社員またはその類似の形態の契約等を行っているということで、正社員ではない非正規雇用に置かれているということを指摘しております。 ですから、定住者という就労可能な在留資格を与えることになれば、派遣や請負など、いつでも使い捨てにされるような就労形態が拡大をすることは、入管法改正当時のこの法務省の実態調査でもわかっていたことであります。 こういった背景に、当時、人手不足ということで、大企業の要求で受け入れの拡大をしてきた。結局、大企業の要求で受け入れを拡大してきたことが今日の事態を生み出すことになったのではありませんか。改めてお聞かせください。 |
○塩川委員 この実態調査で請負先企業の動向ということも指摘をしておりまして、「近年わが国における内需拡大が進み常々これらの労働に従事する労働力が不足する状況下で、勤勉に稼働する日系ブラジル人に対する請負先である製造業者からの需要は依然として根強いものがあり、これを求める傾向は今後も続くものと思われる。」 つまり、大手製造業が定住外国人の求人を強く要求しているということがこの入管法改正の契機となったということははっきりしているんじゃありませんか。その点をわきに置いて何らのまともな対策をとらなかったことが今日の事態を生み出した。 当時から、企業側は、必要なときに雇用し要らなくなったら切り捨てるという、使い捨て労働者として日系ブラジル人らを受け入れてきましたけれども、加えて、この間、外国人労働者問題では、技能研修生、実習生の制度の劣悪な労働条件や無権利の問題も大きく取り上げられているときであります。こういう事態を放置してきた政府の無策と受け入れ企業の責任が厳しく問われていることを指摘するものであります。 そこで、雇用労働問題について舛添大臣に伺います。 具体的な実態を指摘したいと思います。 静岡県のある会社、A社とした場合に、このA社におきましては、日本人の方は期間社員ということで、雇用契約期間は六カ月間、勤め上げれば満期慰労金も出る。一方、日系ブラジル人の方は同じ有期雇用であってもアルバイト、こういう立場に置かれて、雇用契約期間も二カ月での短期の更新であり、満期慰労金も出ない、こういう実態がある。こんな形で五年も十年も働く中で、不当な扱いが継続をしているということもありました。 また、静岡県のB社、C社におきましては、この間、派遣のブラジル人を解雇して、そのかわりにベトナム人の研修生、インドネシア人の研修生を受け入れるようなことも行われている。 さらには、私がお聞きした埼玉県のD社の労働者の方は、ここで解雇される。製造業の現場で何年も働いてきた外国人労働者の方が解雇されているわけですが、その方は、以前から請負会社、派遣会社、こういう経緯をたどって、しかし、いずれもいわゆる派遣先、発注者の指揮命令下にあった。偽装請負、違法派遣という形で、いわば派遣期間制限の実態があるという事例も存在をしております。 このような形で労働条件の切り下げ競争が行われているわけです。 そこで舛添大臣に伺いますが、このように、外国人であるがゆえの差別的な扱いを受けている。これにとどまらず、加えて、派遣法の改悪など労働法制の規制緩和が外国人労働者の解雇や労働条件の悪化に拍車をかけているのではないのか。そういう認識は、いかがですか。 |
○塩川委員 ですから、同じ期間契約社員であっても、期間社員とアルバイトという待遇の違いを設けているということにおいて不当な差別的扱いが行われているという実態があるわけです。 そういう意味でも、日系ブラジル人を研修生に切りかえるというところで見ても、研修生、実習生そのものが今劣悪な労働条件のもとに置かれている。いわばそういう形で労働条件の切り下げ競争が行われているその理由として、今御指摘のように、外国人であるがゆえの差別は認められないのは当然であります。 これに加えて、派遣法の改悪などの、この間の労働法制の規制緩和がこれら外国人労働者の深刻な就労実態を生み出しているのではないのか。この点については、大臣はどのように受けとめておられますか。 |
○塩川委員 実態をどれだけ把握しているのかという全国の実態調査もない中で……(舛添国務大臣「今やっているじゃないですか」と呼ぶ)全国の実態調査もない中で、そういう問題についてやはり徹底的に行えということを改めて強く要求するものであります。 雇用確保の指導監督を行うことは当然のこと、私どもは派遣法の抜本改正を要求しております。同時に、大企業による下請企業への買いたたきなどの下請いじめの実態もありますから、こういった不当な優越的地位の濫用などについても是正をさせて、しかるべく労働者の権利保護を図っていくという対策が求められているわけです。 入管法の改正や、実習生、研修生制度、そして派遣法の改悪など、労働法制の規制緩和が外国人労働者を二重三重に劣悪な労働環境に追い込んできた。そういった事態を放置して、日本全体の労働条件の改善はあり得ません。政府の責任と、安上がりの労働者として活用してきた大企業の責任を厳しく問うものであります。 そこで、この定住外国人にかかわって、もう一点、教育の問題がございます。塩谷大臣にお聞きしたいと思います。 ある埼玉県在住の日系ブラジル人の方のお話を伺いました。この間の景気悪化を口実に解雇された方であります。日本に来たのは八九年、先ほどの入管法改正のとき。最初は本人のみでしたけれども、半年後に妻と当時二歳の子供を呼んだそうです。なぜ日本に来たのかというきっかけは、両親から、日本はいいところだ、親戚が多くいるので大丈夫と聞かされ、出稼ぎも日本がいいと勧められた。当初、二、三年で帰ろうと思っていたが、妻が日本にいたいと言う。また、今子供は四人になって、一番上以外は日本で生まれている。日本語のみだ。そのため、子供も日本にいたいと言っている。このように、二十年近くたって、日本に定住する外国人がふえている中で今の大失業に襲われております。 ブラジル人学校、ペルー人学校のほとんどは、私塾扱いのために自治体からの助成金もありません。授業料に消費税が課せられ、通学定期券も認められていない。学校運営費のほぼ一〇〇%を保護者からの授業料に負っているため、授業料が高額となります。教材費や給食費、スクール代などを合わせて月四万円から六万円にも上ると言われております。 そこで塩谷大臣に伺いますが、このような日系人の子供の不就学、就学をしていない状況、不就学が増加をしている、そういう実態はどのように把握をされておられますか。 |
○塩川委員 全体の状況を把握されておられないということで、そのこと自身が重大だと言えます。 大臣の地元の浜松市の調査でも、年度当初千人以上いた児童生徒が四百人近く減少しているということでした。一方で、公立学校への編入がふえているわけではない。愛知県は県内のブラジル人学校十六校に緊急実態調査をことし一月に行いまして、義務教育年齢の在籍生徒数の減少率は、昨年五月とことし一月で比較をしますと四一%減少している。 失業保険の給付が切れるこの三月、四月ぐらいに、経済困難を理由に不就学急増の第二波が来ると言われております。もちろん帰国する方もいらっしゃるでしょうけれども、そもそも、失業によって学費の負担ができなくなっているという深刻な実態が広がっているということが今大きく問われているところです。 そこで、ブラジル人学校関係者から政府に要望書が提出をされております。その中の要望項目を紹介したいと思うんですが、外国人学校に在籍する子供に対して公立学校の就学援助制度と同様の就学援助を行ってもらいたい、また、外国人学校に通う子供に通学費用、通学定期が適用されませんので、こういう通学費用の支援を行ってもらいたい、さらには、外国人学校の授業料に課される消費税負担、これをどうにかしてもらいたい。 以上三点について、文部科学省としてはこの要望をどう受けとめ、どう対応されようとお考えでしょうか。 |
○塩川委員 もともと深刻な実態がある中でのブラジル人学校の経営難でありますから、そもそも、文科省として、この位置づけの問題が問われるんだと思います。 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、A規約では、「この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。」としております。そして、〇一年九月の経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解では、締約国が少数者の民族学校を公式に認め、それにより、これらの学校が補助金その他の財政的援助を受けられるようにすることを勧告するとあります。 ですから、政府としてこの勧告をしっかり受けとめて、ブラジル人学校等に支援を行うべきだ、このことこそ政府の課題ではありませんか。 |
○塩川委員 政府の責任で解決することを強く求めて、質問を終わります。 |