<第171通常国会 2009年02月27日 総務委員会 6号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、子供たちの学業を保障する就学援助について、地方財政との関係で質問させていただきます。
 最初に、文部科学省に伺います。
 文部科学省は、二〇〇六年の二月に就学援助に関する二つの調査を実施しております。一つ目の、就学援助受給者数の変化の要因等に関するアンケート調査がありますが、そこで文科省にお尋ねしますが、この調査の目的は何か、受給者数の変化の要因、背景は何か、どのようになっているのか、お示しください。

○徳久政府参考人 御答弁申し上げます。
 ただいま御指摘の調査でございますけれども、調査目的は、近年、要保護、準要保護児童生徒に係る就学援助受給者の増加傾向が見られることから、その要因、背景等の把握に資するため、十八年二月に調査したものでございます。

○塩川委員 それに加えて、受給者数の変化の要因、背景について、回答数の多かった項目をお示しください。

○徳久政府参考人 その調査におきまして、就学援助受給者数の変化の背景、要因につきまして、多かったものは、一つは、企業の倒産やリストラなど経済状況の変化によるもの、また、離婚等による母子、父子家庭の増加、児童扶養手当受給者の増等が多くなっております。

○塩川委員 経済的理由等によって貧困世帯が増加をしている、これが就学援助の受給者数の増加になっているというのがこのときの調査でありました。貧困の拡大が反映をしているわけであります。
 続けて文科省に伺いますが、就学援助の準要保護児童生徒数について、九七年度、それから二〇〇四年度、二〇〇五年度、二〇〇七年度は何人となっているのかをお答えください。

○徳久政府参考人 お答え申し上げます。
 就学援助における準要保護児童生徒数ということのお尋ねでございます。
 一九九七年度、すなわち、平成九年度でございますけれども、七十万人でございます。二〇〇四年度、平成十六年度でございますけれども、百二十一万人でございます。二〇〇五年度、平成十七年度でございますが、百二十五万人。それから、二〇〇七年度、平成十九年度でございますが、百二十九万人となっております。

○塩川委員 お手元に資料をお配りしてありますけれども、準要保護児童生徒数の推移を見ましても、九七年度以降大変増加をしております。それが、二〇〇四年、二〇〇五年ぐらいを機に、その伸びが鈍化をしているわけであります。貧困世帯自体の増加そのものは大変大きなものですけれども、こういう現状となっております。
 続けて文科省に伺いますが、市町村が給与しました就学援助の額について、二〇〇四年度、二〇〇五年度、二〇〇七年度が幾らかをお答えください。

○徳久政府参考人 市町村が就学援助といたしまして、要保護児童生徒、準要保護児童生徒の保護者に対して給与した金額でございますけれども、平成十六年度、二〇〇四年度でございますが、こちらにつきましては七百九十五億円、二〇〇五年度、平成十七年度でございますが、八百八十六億円、二〇〇七年度、平成十九年度でございますが、九百二十一億円となってございます。

○塩川委員 貧困世帯が増加している傾向がある中で、市町村が給与した就学援助の額も、伸びが鈍化をしているわけです。貧困世帯が増加しているにもかかわらず、就学援助の受給者、または市町村の就学援助費の伸びが抑えられております。背景には、自治体における就学援助の認定基準が厳しくなって、就学援助対象者が狭められている実態があるのではないかと考えます。
 そこで、文科省にお聞きします。
 先ほどお答えいただきました、二〇〇六年二月の就学援助調査の二つ目の項目ですけれども、平成十七年度における準要保護児童生徒に係る認定基準等の変更状況調査、その調査の目的は何か、そして、所得基準限度額あるいは率が引き下げられ、または認定要件、対象者が縮小された自治体は幾つなのか、お答えください。

○徳久政府参考人 平成十八年一月に調査を実施いたしました、平成十七年度における準要保護児童生徒に係る認定基準等の変更状況調査についてのお尋ねでございます。
 まず、調査の目的でございます。
 これは、準要保護児童生徒に係る就学援助は、その認定が市町村によるものであることから、平成十七年度から、税源移譲、地方交付税措置を行った上で国庫補助を廃止したところ、国庫補助廃止後における市町村の準要保護児童生徒に係る就学援助への取り組み状況を把握するために実施したものでございます。
 お尋ねの二点目でございますけれども、その調査におきまして、調査を行ったのが二千九十五市区町村等でございますが、母数が二千九十五でございますが、そのうち、平成十七年度で準要保護児童生徒の認定基準の引き下げ、縮小等を行った市町村は百五市町村となっております。

○塩川委員 調査の目的にありますように、三位一体改革に伴って準要保護についての国庫補助が廃止をされて一般財源化をされる、それを機に文科省として調査を行った。結果として、これは、切りかえた当初の一年間といいますか、その年の調査でありますけれども、既に百以上の自治体で所得基準など準要保護基準の切り下げの方向で対応が行われていたということがこの調査で明らかとなっております。
 〇五年度に準要保護の国庫補助が廃止をされ一般財源化される、それを機に、認定基準が厳しくなり、対象も伸びが抑えられ、支給額の伸びも抑えられるということにつながっていることが見てとれます。
 文科省に続けてお聞きしますが、このときの調査以降、同趣旨の調査というのはどうなっておりますか、その中身も含めてお答えください。

    〔森山(裕)委員長代理退席、委員長着席〕

○徳久政府参考人 現在、申し上げました平成十七年度において市町村の認定基準等の変更を行った調査以降でございますけれども、平成二十年度の状況につきまして、全市区町村教育委員会に対して調査を行っているところでございます。

○塩川委員 重ねて伺いますが、この二十年度の調査というのは、前回、三年前の調査と同趣旨のものなのか、その点の確認が一つ。要するに、認定基準が変更されているという調査と承知をしているわけですが、そうであるならば、十八年度、十九年度の調査というのはなぜ行わないのか、その点をお答えください。

○徳久政府参考人 ただいまお答えをいたしました準要保護児童生徒の認定というのは、市町村が実施をするものでございまして、市町村が地域の実情に応じて定めて実施をしているものでございます。
 私ども文部科学省といたしましては、そういうような状況についての現状把握のために行っておるものでございまして、基準そのものが毎年どう変わっていったのかということを追跡する目的ではないということでございます。

○塩川委員 要するに、二十年度だけを切り取ってどういう傾向かといっても、この間の三年、四年の流れの中でどういう変化が生まれたのかというのはわからないわけですよね。つまり、十七年度で変更を行ったというのは前回の調査でわかったとしても、十八年度、十九年度でやった場合には、現状ではわからない。
 今の千七百市区町村の中で、実際に準要保護の基準を見直したというのが、先ほど言った、国庫補助の一般財源化をした以降でどうなったかという全体像がわからないんじゃないですか。そういう調査は行わないんですか。その点をお聞かせください。

○徳久政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、準要保護児童生徒の認定基準は、市町村が適切に実施をすることになっております。
 文部科学省といたしましては、それらの現状について、例えば児童生徒数であるとか全体の支給額であるとか、そういうことも調査しておりますとともに、今言いました観点から、基準の変更につきましても、現状把握のために調査をしているということでございます。

○塩川委員 いや、ですから、現状把握にならないわけですよ。二十年度だけの変化を切り取っただけでは、全体の流れがどうなったかというのはわからないでしょうということを聞いているんです。現状把握として今年度だけの変更を切り取っても、それは全体の特徴をつかむものにはならないんじゃないですかとお聞きしているんですが、いかがですか。

○徳久政府参考人 もちろん、平成二十年度は現在調査中で、集計中でございますけれども、この調査結果が明らかになれば、当然のことながら、十七年度との比較においてどういうような市町村がふえたのかということは把握できると考えております。

○塩川委員 いや、十八年度、十九年度で変更したところは、二十年度でも変更しなければ出てこないわけですよ。そういったことでは全体像がわからないでしょうと言っているわけです。ですから、十八年度、十九年度も含めて調査を行うべきだ、このことを申し上げておきたい。
 あと、この二十年度の調査におきましても、回答日は一月の二十九日ということですから、既にお手元にデータをお持ちでしょう。集計結果の取りまとめは少し先なのかもしれませんけれども、大まかな傾向として、どのくらい基準を変更したのか、切り下げ方向に変更したのか、その数を教えていただけますか。

○徳久政府参考人 委員御指摘のとおり、この調査結果につきましては、締め切り日を一月二十九日というふうにしておりまして、一カ月弱たつわけでございますけれども、現在、申しわけございませんけれどもまだ集計中ということで、全体の粗い数字も含めてまだ積み上がった数字はございませんので、そちらの集計ができ次第、また御報告させていただきたいと思います。

○塩川委員 文科省に対しては、抜けている年度についてもきちっと調査をしていただきたいと重ねて要望しておきます。二十年度の調査についても、明らかとなった時点で教えていただきたい。
 そこで、総務省にお聞きします。
 就学援助に係る地方財政措置額について、二〇〇四年度と二〇〇五年度、二〇〇七年度がどうなっているのか、お答えください。

○久保政府参考人 要保護及び準要保護児童生徒の就学援助に対します地方財政措置でございますが、二〇〇四年度、平成十六年度でございますけれども、約百四十一億円、二〇〇五年度、平成十七年度でございますが、約二百八十三億円、二〇〇七年度、平成十九年度でございますが、約二百八十二億円となっております。

○塩川委員 二〇〇四年度から二〇〇五年度にかけて国庫補助の廃止、一般財源化、それに対応して地方交付税措置が行われています。その数字として今伺ったわけです。
 大臣に伺います。
 この間の市区町村における就学援助の額は大きくふえているわけですね。しかし、この間、その伸びが鈍化をしている。他方、それに対する地方財政措置というのは大きく変わっていない。その開きが大きくなっているという実態があると思うんですけれども、少なくない自治体において就学援助の支給基準や支給額の引き下げ、抑制が行われているというのは、このような自治体の財政需要に見合った地方財政措置が行われていないからではないのか。どのようにお考えか、お聞かせください。

○鳩山国務大臣 私、この問題は、考えてみるとかなり難しい問題で、結局、今、久保局長がお答えした数字、二〇〇四年度百四十一億円、二〇〇五年度二百八十三億円と倍増していますが、これは、その前年まで準要保護は文部科学省からの国庫補助があった、それが一般財源化されたから倍増したということなんだろうと思っております。
 準要保護児童と認定するかどうかというのは市町村の教育委員会だろう。そこにまた、いろいろ基準をつくっていく、それは自治事務だし、地方自治だから、それぞれの地域の実情に応じてこれは上下する、厳しくしたり甘くしたり。つまり、多くの子供に配ったり、少ない子供に配るように変えたりということが頻繁に行われているということなんですね。これは、地方の実情に応じてということだし、地方財政措置している金額の大体三倍ぐらいが払われていますから、基礎的自治体の単独事業で相当上積みをしている、まさに地方自治なんだな、こういうふうに私は今は思います。
 ですが、かつて私は文部政務次官も大臣もやった人間でございまして、教育の機会均等ということについてはうるさくて、したがって、いろいろな費目が一般財源化していくことにひどく危機感を覚えたわけです、一般財源化すると平等原則が崩れるんじゃないかと。
 平等原則が崩れるというのは、国が一律でやるということです。それに対して、地方自治は地方の自由裁量でやるということです。その両面にかかわってくる問題なので、非常に考え方が難しいなと正直思います。
 ただ、本会議でお答えしたように、とにかく認定するかどうかということで言うならば、できる限り広く認めるようにお願いしたいということを本会議では申し上げたつもりです。

○塩川委員 本会議の大臣の答弁では、自治体において円滑な事業の実施が図られるように、文科省とも協議しながら必要な地方財政措置を講じたい、この点でもなるべく優しく援助すべきと。このなるべく優しくというのはどういう意味なのか。要は、市町村が住民の福祉の増進を図るのにふさわしい地方財政措置をしっかりやってもらいたいというのが私の趣旨でありますけれども、その点についてはいかがですか。

○鳩山国務大臣 当然、そうあるべきだと思います。

○塩川委員 市町村の財政力の違いによって就学援助にばらつきが出る、この点でも経済的理由によって教育上差別されてはならないという立場から考えても、私は、ここはやはり大いに知恵を出すべき、ふさわしい対策をとるべきときだと思います。
 大臣自身も、三位一体改革に失敗の部分がある、そういうふうに答弁をされ、これは具体的にどういうことなのかといえば、少なくとも財政力の弱い団体にマイナスの影響があらわれたということをお認めになっているわけですから、その立場で、まさに就学援助を受けるような貧困世帯が多い自治体に結局より大きな負担がかかるような構図となれば、それ自身がさらに基準を引き下げるような悪循環にも陥りかねない、こういう事態こそ改めるためにふさわしい地方財政措置をとるべきだ。そのことについて一言御答弁いただいて、終わります。

○鳩山国務大臣 うそも隠しもいたしません。私は、三位一体改革のときに、文部省にしばらくいた人間として、義務教育国庫負担制度の堅持、つまり、二分の一から三分の一へ、それだけ一般財源化することに絶対反対して最後まで党で騒いだ人間でございますから、そのとき危惧したと同じようなことがこの就学援助問題で起きてはいけないと私は痛切に思います。

○塩川委員 交付税の抜本的な増額、復元を求める、このことを改めて強調して、質問を終わります。

地方交付税法、地方税法等改正案の反対討論

○塩川委員 日本共産党を代表して、地方交付税法、地方税法等改正案に反対の討論を行います。
 まず、地方交付税法等改正案についてであります。
 第一に、政府は特別枠で交付税額をふやしたと言いますが、三位一体改革で削減した五兆一千億円の交付税額を復元、増額することにはなっておりません。
 今回の雇用対策や公立病院などに対する特別枠は、二年限りの措置などを含んでおり、恒久的、安定的な財源措置ではありません。
 地域医療を担う公立病院を再建するために必要な財源は、全く不十分です。地域の実態を無視し、効率化を求める公立病院改革ガイドラインは、直ちに撤回をすべきであります。
 また、雇用と景気が深刻化するもとで、例えば就学援助費が急増するなど住民の福祉や教育のために必要な財政需要はますますふえており、交付税の大幅増額が求められています。
 国の行う大型公共事業に地方自治体の負担を強いる直轄負担金は、廃止を含め抜本的に見直すべきです。
 また、骨太方針二〇〇六に沿って、住民サービスを担うための人件費を初め、必要な経費を厳しく抑制し続けていることは容認できません。これが、地域に必要な単独事業を圧迫し、住民サービスの低下をもたらしているのであります。
 鳩山総務大臣は、三位一体改革は失敗だったと認めながら、本法案は、三位一体改革や骨太方針を何ら是正するものではありません。
 第二に、地方財政を確保する国の責任が果たされていないことです。
 地方交付税法は、ナショナルミニマムを保障するための財源保障を国に義務づけるとともに、財源不足が生じた場合には、交付税率の引き上げを政府と国会に求めています。
 財源不足は十四年も連続して続いています。地方の借金で不足額の穴埋めを繰り返すやり方は、もう通用しません。
 地方交付税法第六条の三第二項の規定に従って、交付税率を引き上げるときです。今まで一度も使われたことがないというこの規定を、今こそ実施すべきであります。
 次に、地方税法等の一部を改正する法律案についてであります。
 反対する理由は、大資産家優遇税制を延長、拡充していることです。上場株式等の配当、譲渡益課税は、二〇%から一〇%に減税されたままです。この軽減措置を延長した上、配当所得基準をなくす優遇策は直ちに廃止すべきです。また、固定資産税の負担調整措置は、負担水準が低い土地ほど税の負担を上昇させる仕組みになっています。住民に連続増税を強いる仕組みの延長は、容認することができません。
 以上を述べて、反対討論を終わります。