<第171通常国会 2009年03月25日 総務委員会 10号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。NHK予算案について質問をいたします。
 最初に、小丸経営委員長にお尋ねをいたします。
 小丸経営委員長が社長を務めます福山通運の子会社、山陰福山通運が、山口、鳥取、島根、兵庫県の一部地域でNHK受信料の契約収納業務を受託していたという件についてであります。
 放送法を見ますと、経営委員の内閣総理大臣の任命に当たって、放送法が国会の両議院の同意を必要とすると規定をしておりますのは、経営委員会が全国民的な了解と支持のもとにあるべきとの考えだと思います。直接の利害関係者である国民の意思を経営委員の選任に反映させることが必要であることから、両議院の同意を必要としておるわけです。
 そこで、お尋ねいたしますが、国民の代表たるべき経営委員が、国民である受信者と直接の利害関係を生ずる受信料契約や受信料収納を行う業務に携わることは不適切ではないかと考えますが、お考えをお聞かせください。

○小丸参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のありました委託契約は、先ほども御説明を申し上げましたが、NHKが郵便事業会社との契約を廃止し、かわって山間部や遠隔地での契約収納業務を引き受ける業者がいなかったため、この地域に配送ネットワークを持つグループ会社でございます、子会社でございますけれども、山陰福山通運に対しましてNHKから要請があったものであり、私が経営委員であることは関係なく結ばれたものであります。したがって、この契約により私の経営委員としての活動が何らかの影響を受けるということはございません。
 以上でございます。

○塩川委員 放送法の趣旨に立ち返ってお考えいただきたいと思うんですが、経営委員が受信者と直接の経済的利害関係のある立場に身を置くというのが適切かどうかという問題であります。
 今回の二十一年度の予算、事業計画及び資金計画議決に当たっての経営委員会の意見というのが出されております、これは小丸経営委員長のもとで出された意見でありますけれども。その中には、外部委託の一層の活用により、契約総数目標の上積みを図ると求めておるわけであります。ですから、小丸経営委員長が経営をされるその会社に受信料の契約収納業務を委託している、そして経営委員会の立場で外部委託の一層の活用を図れ、契約総数目標の上積みを図れと求めている。これは極めて密接な関係があると言わざるを得ません。
 みずから経営する企業の受信料契約業務の受託を拡大することにもつながる意見を経営委員長の立場でNHK執行部に要請するということは、適切だと言えるんでしょうか。改めてお尋ねいたします。

○小丸参考人 お答えを申し上げます。
 まず、放送法上では問題がないと認識をしております。
 福山通運グループは運送会社なので、あらゆる企業や個人の方々までもお客様としております。大きな企業であれば、何らかの形でお取引をしているというふうに私は判断をしております。したがいまして、NHKとの取引は、福山通運グループといたしましても、売り上げに対しては〇・〇四%でございまして、特別な利害関係には当たらないと考えております。

○塩川委員 金額の多寡の問題ではございません。みずから経営する会社の業績にかかわるような、NHK受信料の契約収納業務の拡大にも結びつく意見を経営委員会のお立場で出されている、この点について適切だと言えるのか。もう一度お答えいただけますか。

○小丸参考人 本件は、山陰の特殊な地域でございまして、委託をされる業者の方がいなかったという過程もございます。先ほども大西理事の方からの説明があったとおりでございまして、そういった場面でありましたので、当社がやむを得ず、受信料の公平負担という立場から、私どもが業務委託をしたわけでございます。

○塩川委員 そうしますと、経営委員会として、NHKが大変だからみずからの企業が対応するようにしたというふうに受け取れますけれども、いかがですか。

○小丸参考人 何度も申しますけれども、大変山間部でございますし、過疎地でもあるということで、私ども非常に西日本のネットワークは強うございます、そういった形でもって私どもの方に依頼が来たというふうに私は思っております。ですから、私が経営委員とかなんとかということではなしに、営業の一環として現地のレベルでは考えて実行したものだと思います。

○塩川委員 改めて、特定利害からの独立が求められる経営委員の立場として慎重であるべきだということを申し上げておくものであります。
 次に、経営計画に基づく受信料契約目標に関連してお尋ねをいたします。
 二〇〇八年七月八日の経営委員会に出されました資料で、「次期経営計画について」というのがございます。受信料収入の推移と見通しに関して、ここでは、「リスク要素(アナログ停波による契約廃止・変更)」というふうに記載されている資料が出されておりました。
 その中では、アナログが停波をします二十三年度に、見込みとして、契約総数がマイナス八十三万件、衛星契約がマイナス百五十一万件、計マイナス百九十五億円の減収ということが記載をされておるわけですけれども、経営計画においては、このようなアナログ停波に伴う支払い率低下のリスクというのは織り込まれているんでしょうか。お尋ねします。

○福地参考人 結論から申しますと、含まれておりません。
 経営委員会に提出いたしました資料は、経営計画をつくります過程でリスク要素を想定しておくことが重要であるというふうに認識して作成したものでございます。
 経営計画では、アナログ停波に伴うリスクが顕在化しないように平成二十三年の完全デジタル化を円滑になし遂げる施策を盛り込んでおります。こうしたリスクが現実のものとならないように、経営計画に掲げました施策に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。

○塩川委員 この参考資料の中では、総務省の地上デジタル放送に関する浸透度調査で、アナログ放送終了後も購入予定はないと回答した二・八%、この部分がデジタル受信をしない場合に、地上四十八万、衛星三十五万件が契約廃止と想定する、これ以外にも若干記載がありますけれども、このように想定されることというのが掲げられて、リスクとして取り上げられているわけですけれども、その内容について、実際には経営計画の契約目標については反映はされていないというお話でございました。
 こういう指摘、このリスク要素というのは、受信機の普及がおくれている現状では当然起こり得る事態でありますけれども、アナログ停波に伴う支払い率低下のリスクが経営計画に反映されていないということは極めて疑問がございます。
 それを踏まえて、衛星契約の年間の増加数が、二十年度については四十五万件となっておりますけれども、二十一、二十二、二十三年度は六十万件と大幅増です。つまり、アナログの停波を予定しております二十三年度、今言ったリスク要素もある、それにもかかわらず今年度よりも多い六十万件ということが目標として設定されているわけです。
 改めてお尋ねしますが、アナログ停波のマイナスの影響を考慮していない契約目標には、無理が出るんじゃないでしょうか。

○福地参考人 受信料をお支払いいただいております方が、お支払いいただけない方に対する不公平感が大きいということは認識しております。公共放送の経営を預かる者といたしまして、公平負担の徹底を極めて重い課題として受けとめております。
 経営計画では、支払い率を、三年後の平成二十三年度末に七五%、五年後の二十五年度末に七八%に向上させることを掲げております。このために、五年間の契約総数の増加で二百四十万件、未収削減で百十五万件、合わせて三百五十五万件の支払い者の増加を計画しております。
 御指摘のように、決して楽な計画でないと思っておりますが、訪問集金の廃止に伴う地域スタッフの業務転換によります契約、未収対策の強化等の営業改革施策に全力で取り組みますとともに、経営二目標のもう一つの柱であります接触者率の向上を図ることによりまして受信料をお支払いいただける方々をふやしていくなど、NHKの全組織を挙げて取り組んでまいります。

○塩川委員 アナログ停波のリスク要素を組み込まないで契約目標を立てるということがそもそも妥当なのかということが問われていると思うんですが、そこはどうですか。

○福地参考人 この受信料のリスクについては、いろいろ検討いたしました。検討いたしましたけれども、経営計画に織り込まないでも我々は大丈夫だという判断のもとに、計画に記載いたしました。

○塩川委員 実際には、受信機の購入世帯数が見込みよりも大きくおくれている中では、かえってリスクが大きくなっているのではないかと私は率直に思っております。その点でも、今後の対応方を注視していきたいと思っております。
 一方で契約総数はふやしていきましょうということで、他方でその契約収納にかける営業経費率は下げようということになっておるわけです。経営計画では、地域スタッフを三年で一千人程度削減、四千四百人にする、このように掲げてあります。営業経費も大幅に減少させながら、受信料収入は大きく伸ばす計画となっています。これでは、結果として、支払い率向上のために現場で無理な契約収納にならないかという懸念が浮かぶわけでございます。
 経営計画では契約収納業務の外部委託化を進めるとしておりますが、既に、現状でも、一部ではありますが、契約収納業務の外部法人への委託が行われてまいりました。この間、受信料契約をめぐってこのような委託業者によるトラブルも発生をしております。
 そこで、お尋ねしますが、NHKも報道しておりますクルーガー社のトラブル事例について御紹介をいただきたい。クルーガー社というのはどのような会社なのかということもあわせて御説明をお願いいたします。

○大西参考人 御質問にお答えします。
 平成十八年六月に、契約収納業務を委託している株式会社クルーガーの元社員が、十四件の受信契約に関する個人情報を持ち出した上で、三人のお客様から約五万円を詐取するという事件がありました。
 NHKは、株式会社クルーガーに対して、管理監督を改めて徹底するよう指導するとともに、取引停止一週間の処分を行いました。被害者には、会社側から謝罪を行うとともに、弁済を完了しております。
 以上でございます。

○塩川委員 この不正を行いました元社員というのは、そもそもこのクルーガー社に在籍中に不正行為も行っていたと承知しておりますが、その点を確認させていただきたいのと、クルーガー社というのはそもそもNHKとはどういう関係にある会社なのかについて改めて質問いたします。

○大西参考人 お答え申し上げます。
 二件が在籍中、一件が在籍を終わった後ということでございます。
 クルーガー社については、契約の取り次ぎ、支払い再開等の業務を業務委託している会社でございます。
 以上でございます。

○塩川委員 クルーガー社に在籍中に不正行為を行っていた。クルーガー社のコンプライアンスが問われているわけです。
 この社員は主にマンションなどの集合住宅を対象に衛星放送の契約の取り次ぎを担当していたと報道もされております。クルーガー社はNHKから受信料の契約収納業務の委託を受けているわけですが、実際には随意契約ということで承知をしております。契約目標を達成しようというときに、現場の営業職員あるいは地域スタッフでは足りないというときに、特別チームとして投入して、営業目標を達成するということを掲げた部隊だというふうに聞いております。これが視聴者との信頼を損なったわけです。
 そのクルーガー社について聞いたお話を一つ紹介いたしますが、ある地域でのことですけれども、平成十九年五月中旬ごろに、クルーガー社の男性二名が、仮にAさん、このAさん宅へ訪問し、NHKですと名乗り、一名が上がらせてもらうと部屋に入り、息子夫婦所持のカラーテレビを見つけて衛星契約をするように勧められた。Aさんは、それは息子たちのテレビで、現在首都圏に転勤して今いないんだ、Aさん本人は自分の部屋のカラーテレビで契約をしているそうですけれども、息子のテレビは見ていないし接続してもいないので今のままで十分ですと言ったけれども、しつこく契約変更を迫ってきて困った。手持ちのお金がないと言ったら、銀行まで一緒に行ってやるからそれで払ってくれと言われたので大変困った。これがクルーガー社の社員が行ったことだ。このようなお話をお聞きしております。
 NHKでは、受信契約の際に、手持ちのお金がないと言われると、銀行まで連れていって支払いを求めるということをやっているんですか。

○大西参考人 銀行まで行って受信料を支払うというような指導はいたしておりません。委員御指摘の事実は把握しておりませんので、事実を調べたいというふうに思います。

○塩川委員 では、もう一点。
 これはクルーガー社ということではございませんけれども、関連して、契約収納業務についてもう一点確認もし、調査もお願いしたいんですが、神戸の事例であります。神戸で、三月三日に放送受信契約が行われた件についてお尋ねをします。
 今まで契約をしていなかった世帯で、テレビが故障して映らない状況にあった。そこに契約を求めて職員の人が来た。三月中には購入する予定なんだということを言ったわけですけれども、そのテレビ購入を待たずに新規契約を取り結んだという話であります。つまり、受信機が設置をされていないにもかかわらず受信契約を取り結んでいた。
 受信機が設置をされていないのに受信契約を取り結ぶということはできるんですか。

○大西参考人 放送法に書いてありますように、受信機を設置したという事実、した者は受信契約をしなければならないということでありますので、受信設備をしていないのに契約をするということはあり得ないことだというふうに思っております。

○塩川委員 普通、そういう場合においては、購入した時点ではがきを送ってもらって、そのはがきを持って契約に行くという手続をNHK内部ではとっているということですけれども、それも行わずに、テレビ購入予定だから契約はしてくれと迫るようなことが行われていた。このことについて、事実関係を確認していただけますか。

○大西参考人 お答え申し上げます。
 事実関係を確認したいというふうに思っております。

○塩川委員 経営計画では、契約収納業務の公開競争入札等で外部委託化を進め、地域スタッフ体制を改革すると言っております。
 地域スタッフの方が担っていたような仕事を民間法人に切りかえていくということも行われるわけですけれども、そういった法人委託の中でさまざまなトラブルが生まれているというのが現状であります。支払い率の向上の目標や営業経費率の削減目標がひとり歩きして、視聴者との信頼を損なったり、地域スタッフなど関係者にしわ寄せすることのないように、必要な見直しを行うべきであります。
 最後に、会長に一言。
 契約目標にこういった無理があれば、視聴者との信頼関係を損なうことになりかねない。こういうことはきっぱりとやめさせるということについての御決意を伺いたいと思います。

○福地参考人 公平負担を徹底するために、支払い率三年後七五%、五年後七八%という目標を設定しております。この目標はNHKの全部門が総力を挙げて取り組んでまいります。
 公共放送NHKにとりまして、視聴者との信頼関係が何よりも重要でございますし、目標の達成に向けた契約収納活動を行うに当たっても、御指摘のようなことがございましたが、これが変わってはならないと思います。
 引き続き、視聴者とのトラブルを起こすことのないように、各種の法令遵守をすることはもちろんでございますし、それから、受信料制度の意義について誠心誠意お話をして理解をちょうだいする、丁寧な視聴者対応を行うということが大事だと思います。そういった指導を要請してまいりたいと思います。

○塩川委員 終わります。