<第171通常国会 2009年03月26日 消費者問題に関する特別委員会6号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 両参考人には貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。
 早速ですけれども、質問させていただきます。政府案に関連しまして、消費者政策委員会の機能の問題について両参考人にお伺いしたいと思っています。
 消費者庁の運営に消費者の意見が直接届く透明性の高い仕組みとして設置をするということですけれども、どういう機能が発揮をされることになるのか、これまでの国民生活審議会とどのように変わってくるのか、また、とりわけ消費者行政への監視、そういった機能というのは果たせるのかどうか、その辺についてこの仕組みがどうなっているのか、それぞれ御意見を伺わせていただけないでしょうか。

○松本参考人 最初のところでも発言させていただきましたが、消費者政策委員会の機能という部分については、従来の国民生活審議会とどこが違うんだと。私自身、ここが画期的に違うというほど大きく違いはないような印象を持っております。
 ただ、独自の事務局を持つということで、ある程度独立して調査審議ができるスタッフが下に張りつけられるということになりますから、従来よりはより活発な審議調査ができるだろうと思います。

○紀藤参考人 消費者政策委員会に関しましては、はっきり言って、まだ未定稿というか、予測ができないというか、特に目新しいものがあるのかと言われたら、意見を直接述べるというものでありまして、今の国民生活審議会がほとんど私は実際上機能していないと思うんですけれども、そういう意味から見ると、斬新な部分としては少ない部分が大きいんじゃないかなと思います。
 その最大の理由の一つに、委員が十五人という、やはり規模が大き過ぎるということがあります。具体的な実動委員会ということになると、委員は五人程度で十分じゃないかと思います。
 それは、消費者権利院法案だとたしか五人程度になっていたと思うんですけれども、そのぐらいでなければ、委員が十五人もいるとまとまらないと思いますので、もし政策委員会を具体的な実動委員会のようなものにしていくのであれば、十五人という数は、最高裁判所の裁判官が十五人いることを考えても、やはり余りにも大きくてまとまりに欠くというのが私の意見ということになります。

○塩川委員 ありがとうございます。
 続けて松本参考人に伺いますが、いわゆるすき間案件の対処の方法についてですけれども、少し論点整理といいますか、政府案と民主党案、両案における特徴点ですね、長所と短所といいますか。このすき間案件の対処方法についての両案のポイントについて、お考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。

○松本参考人 そんなに変わらないと思います。
 ただ、法律論的に、民主党案の方が、従来なかった仕組みですから、議論の余地はいっぱいあるんだろう、それが実現するなら、非常にユニークな、新しい制度として意味があると思います。しかし、やろうとするところは基本的に同じです。
 ただ、民主党案は、すき間には限らないんだというところを強調されているところがあって、そもそも民主党案では権利院には何の権限もないわけですが、本来の権限のある官庁が動かない場合にも、権利院がその種の訴訟を起こして何かできるということをたしか強調されていたかと思います。そこは、政府案ではすき間に限定しているわけですから、違いがあると思います。

○塩川委員 ありがとうございます。
 続けて、両参考人に違法収益の剥奪に関連してお尋ねしたいと思っています。
 先ほども幾つかお話もありましたけれども、民主党案では、今回消費者団体訴訟の法案が提起をされて、それでの対応ということになるわけですけれども、政府は今回この問題を先送りしているわけであります。
 違法収益の剥奪の必要性というところでは一致しているんでしょうけれども、先送りをした理由といいますか、何が課題となっていたのかという点を論点整理するとどんなことがあるのか。その点について、先送りした理由といいますか、何が課題として考えられていたのかということについて、お感じのところをそれぞれの参考人からお聞かせいただけないでしょうか。

○紀藤参考人 とりあえず、最大の理由は、やはりやる気の問題だと思います。
 やはり、立法機関と官僚の問題というのは永遠の課題だと思います、行政と立法機関というのは。行政官僚が持っている先例性とか法律の縦割り的な発想であるとか官民の区別であるとか、そういうものに立法機関がまさに挑戦する問題だと思います。ですから、立法機関が立法すれば、それは法整合性の立場から全体の法体系が変わるということを意味しますので、それはぜひとも法体系の問題として考えていただきたいと思います。
 それで、特にいわゆる昔流の法律家に一番多いのは、行政法と私法との峻別です。いわゆる公法私法峻別論という議論がありまして、国と市民との関係と市民、市民との関係は峻別しないといけないというような考え方がまず一つ基本にあります。ですから、違法収益の吐き出し制度というのは、まさに国が民間にかわってやる制度ですので、これは民民のルールに国が関与するということで、特に精神的なあつれきが多いという領域でありまして、特に反対があります。
 ただし、そういった反対を押し切って、犯罪被害者基本法ができ、犯罪被害者が刑事司法に参加するルールができ、犯罪被害者が損害賠償を刑事事件の中で請求していくルールができてきたということで、実は、二十一世紀以降、ヨーロッパでは当たり前のルールが、官民峻別論あるいは公法私法峻別論を打破する形で、日本の古い法体系を打破する形で成立してきたという歴史を考えると、この違法収益吐き出しは、ほかの国ではやっている制度であるわけですから、公法私法峻別論だけでははかれないということで、別途のルールとして当然にできる制度と私は考えていますので、ぜひ立法機関で、古い法律家の、古い頭の人たちにだまされないで、ほかの国でやっている制度ということで、法律をぜひともつくっていただきたいなと思っております。

○松本参考人 紀藤参考人のおっしゃったことと基本的に近いことでありまして、一つは、やる気があるかないかだろうし、もう一つは、伝統的な法律になじまないんだという議論がいつも新しい制度を導入するときには出てまいります。差しとめについて消費者団体に権利を認めるという法律をつくるときにも、相当そういう点で、従来なかった、我が国の法律になじみがないからという議論がございました。そこを何とか乗り越える努力をしていかないと、なかなか難しい。
 特に政府提出立法の場合には、非常にかたい法制局を突破しなきゃならないわけですから、それを説得するためにきちんと研究を徹底的にしないとだめだというところがございます。
 その点、議員立法はもう少し緩やかに大胆な発想を取り入れることも可能ですから、議会の方でそういう新しい発想を取り入れた法律を制定されることはよろしいかと思いますが、ただ、やはりちょっと先まで詰めた上でやっていただかないと、うまくいかないということにもなりかねないかと思いますが、その点はよろしくお願いいたします。

○塩川委員 ありがとうございます。
 紀藤参考人に、違法収益の被害者還付制度の必要性のことで。
 お話の中でも、国税との関連のことがございました。過去、豊田商事事件やジー・オー事件などで還付事例があるということも伺っているんですけれども、ここでも、個別事案ごとに国税庁の胸先三寸で還付が決められているのは行政の統一性の観点からも不合理だというお話がございました。
 その還付事例の具体的な内容、特徴をお話しいただきたいのと、あと、法制度とすればオウム真理教に係るものがあるんですけれども、それがどういうものであって、これを本来包括的な制度として行うべきだというところに教訓として生かせるもの、考えていることがありましたら、関連して御説明いただけますか。

○紀藤参考人 国税の制度は、ジー・オーの事案も豊田商事の事案も、いずれも詐欺で摘発された事案ということになります。詐欺で摘発された事案に関しては、その詐欺で認定された企業から得られた税金というのは基本的に違法収益という、当時は違法収益という発想じゃないんですけれども、得られた利益は、いわゆる犯罪で得られた収益がいわば国庫に帰属しているという状態ですので、それを是正するという立場から、国税というのは税の中立性という議論をよくしますけれども、これも税法の古い学者の意見で当然あるわけですけれども、それを打破して、いわば国税庁が詐欺で得られた収益はやはり被害者に返すということで、豊田商事事件で初めて先例をつくり、その後、ジー・オー事件で先例が生かされた。
 今、ワールドオーシャンファームでも、エル・アンド・ジーでも、近未来でも、同じようにこの税金を返すという制度をやってほしいということを国税に申し入れているところです。
 ちなみに、近未来通信は、二千万円しかいわゆるお金がないんですね。二千万というのは破産管財人の報酬金で全部消えてしまう金額ということで、基本的にはゼロなんですけれども、ゼロだとすると、国税からの還付金というのがすごく重要になる。実は還付金だけでも三億円ぐらいあるというふうに考えられます。
 ですので、これは被害者にとっては極めて重要なお金なんですけれども、二つの問題点があって、基本的に刑事事件で詐欺で立件されないものに関しては国税は返さないという方針であるということです。詐欺で立件されるかどうかは、そのときの時代情勢によって、警察の胸先三寸で決まる面があります。ですので、だれが見ても詐欺事案に関しても、詐欺で立件されない限り国税からは還付されないということになります。
 それから、破産手続がなされなければ破産管財人がつきませんので、そもそも還付する対象がありません。ですから、破産申し立てができず、単に破綻したというような事案に関しては、この国税からの還付ができない、そして被害者が泣き寝入りになるという実情があって、最近では、和牛預託商法でふるさと共済牧場というのが破綻したんですけれども、これは二百億円を超える被害があったケースなんですが、結局、破産申し立ての予納金が集められずに、被害者がそのまま泣き寝入りになったというケースがあります。これも恐らく、破産できれば、詐欺で摘発されておりますから、国税の還付金という問題が生じたと思うんですけれども、それがそのまま泣き寝入りになっているという事案があります。

○塩川委員 時間の関係で、地方消費者行政に関連して幾つかお聞きしたいと思います。
 今、消費生活センターの弱体化の問題などもございまして、地方消費者行政の予算が大幅に減少しているということがあります。いろいろお話を伺っておりましても、啓発や未然防止の予算がそもそも大幅に削られているですとか、消費者団体への補助金もどんどん削られていくという中で、現場の最先端の方が一番御苦労されている事態が生まれているわけで、消費生活相談員の方は新聞も本も買えない、読めないというような状況にも至っているということが挙げられています。
 そういう点でも、相談員のレベルアップの障害にもなっているわけで、本来、相談業務にしてみても、支援行政としても充実が求められている、被害状況などの新たな問題も多数起こってきている点で、なぜこんなふうに後退してしまったのかなというのは率直なところ思うわけですけれども、その要因について、松本参考人にお伺いいたします。

○松本参考人 いろいろ考えられると思います。
 一つは、地方自治体、地方でありますから、首長さんがどれだけやる気があるのかというところに、地方の場合は予算配分等で差がつくわけですから、やる気のない、余り関心のない首長さんの自治体であれば、そもそも最初からそういう相談員も置いていないし、置いていたとしてもほかの必要性が出てくればすぐになくすということになりがちである。トップがどうかによって変わるというのが、地方自治のいいところでもありますし、怖いところだろうと思います。
 さらに、地方の消費生活センターや相談員がきちんと法律上位置づけられていなかったことというのも一つ大きな影響があるのではないか。すなわち、全体として税収等が減る、交付金が減る中で、全体の減る中で、地方のさまざまな行政需要にどれだけの予算、どれだけの人を割くかということを地方のトップは考えていくわけですが、その際に、法律的な根拠がない部門の場合ですと減らすターゲットにされやすいというところが一般的にはあるんじゃないかと思います。
 当該消費者行政をやっている部門がこれは重要なんだと言っても、別に法律が何もそういうことを求めているわけでもないんだからということで、自治体内部の財政当局に対して強く主張ができないということ。地方全体の予算の減少以上に、消費者行政の予算減少がそれ以上に出ているということの主たる原因はそこにあるのではないかなと思われます。
 その点については、今回消費者安全法によって少し手当てがされたので、精神的な規定といえば精神的な規定ですけれども、若干の改善が図られるのではないかなと思われます。地方のトップの方の意識を改善する、それから消費者行政を担当している方々の発言力を高めるという効果があっただろうと。
 ただ、それでも地方全体の税収が減っている中でどうするんだということでありますから、その分、国が何らかの支援をする必要があるのではないかと思います。

○塩川委員 あと、特に広域あるいは専門性を担うような都道府県における消費者行政ですけれども、必ずしも行政権限が十分に機能していないんじゃないのかということをお聞きすることがあります。
 先ほど紀藤参考人もおっしゃいましたように、警察との連携がしやすいという側面もあって、例えば東京都などではかなりそういう点では取り組みがあるというふうにお聞きしているんですけれども、それが全体のものとなっているわけではないのだろうと。中には、相談員に対して、情報収集するだけでいいんだ、救済にまでそんなに努力しなくてもというようなスタンスがかいま見えるような行政側の対応があったりとか、県の条例があっても、この条例をそもそも周知していないとか、その条例を使わせようとしないとかいう話なども相談員の方から伺う機会がございます。
 こういった現状について、今回の両法案などでの対応はどうなっていくのか。消費者行政の拡充という点で、都道府県の機能をどう生かしていくのかということについて、お考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。お二方にお願いします。

○紀藤参考人 地方の消費者行政については、行政組織と非常に不可分にかかわっているという関係で、私は、ちょっと先ほどから意見をできる限り控えていたんですけれども、もう繰り返し聞かれますので、自分の意見を開陳します。
 まず、地方自治体での消費者行政については、都道府県と市町村ということで、場所的な二重行政になっているという面があります。どちらに行けばいいのかというのは、地元の人にとっても、どちらに行ってもいいということなんですけれども、県の出先があれば県の出先に行くというのが恐らく普通だと思います。
 そういう中で、県の消費生活センターの出先があるところにわざわざ市の消費生活センターを置く意味は、確かに市の方にはないということになりますので、結果的に予算が減る、あるいは、地方自治体はほとんどが人口減で苦しんでいますので、人口減の中で、できる限り自治体に住んでいらっしゃる方の生活を支えながら、かつ二重行政を防ぐという意味で、どんどん消費生活センターが削られていくといった歴史をたどったというのが実情だろうと思います。
 それで、これを改善するにはどうするかということなんですけれども、実は相当難しいのではないかというふうに思います。私は山口県出身なのでよくわかるんですが、やはり田舎で人口が減っていって、県全体でも百万人ちょっとの人口しかないときに、さらにこれから生活重視といっても、なかなか予算の関係で難しいんじゃないかという実情にあるところで、やはり国の予算がある程度行くような仕組みをつくらないと、地方自治体で頑張ってくださいねといっても、高齢者が多い、子供はほとんどいない、働き手がほとんどいないような都道府県だと、実際には極めて難しいのではないか。
 そうなると、最終的に、地方自治体と中央との関係は、今の日本がまさに象徴的なんですけれども、ナショナルミニマム的な発想をしなければどうしようもないんじゃないかな。日本のどこに住んでも、最低限同じ程度の行政サービスは受けるという発想をしないと難しいんじゃないかな。地方自治体だけに任せていたら、破綻する地方自治体も出る中で、ナショナルミニマム的な考え方がなければやはりやっていけないような自治体も出てくるんじゃないかなということを懸念すると、国の役割も大きい。
 ですから、民主党の考え方というのも、地方のことを考えると、十分に理解できる面もあります。

○松本参考人 今の御指摘は、恐らく、法律の問題というよりは、やはり予算措置をどうつけるのかというところが大きいんだろうと思います。
 それで、第二次補正予算で百五十億円の基金が各都道府県に出されて、各都道府県、さまざまな企画を考えて、三年間で使い切るということをやっているはずです。ただ、直接的な人件費には充てられないので、それを何とかしてくれというのが各自治体からの要望です。
 ただ、二次補正の別の費目、ちょっと正確な名前は忘れましたが、何たらかんたら活性化交付金というものがあって、それは各自治体が自由に使えるお金である。その中で、消費者センターの相談員を増員したり、職員を増員したりしている自治体も既にかなり出てきているということを聞いておりますから、国が一定のお金を出し、そして自治体の首長が意識してきちんと取り組む、それによってかなり改善されてくるんだろう。取り組まない首長がいる自治体は、次の選挙で落選するんだというぐらいに消費者の意識が高まらないと、これはうまく回らないかもしれない。そういう意味で、消費者教育というのは市民教育だと思います。
 以上です。

○塩川委員 最後に、松本参考人に、ほかの方からも御質問ございましたけれども、地方消費者行政の拡充のために、マンパワー、こういった人件費の手当てというのはどうしても必要なわけですけれども、国の支援方法としてどのような方法が考えられるのか、そういう点で、国も国会も知恵を出してという話もありましたけれども、先生もぜひ知恵を出していただいて、何か工夫があるのじゃないかと先ほどもおっしゃっておられましたが、その辺で何か示唆するようなものがもしありましたら、簡単で結構ですけれども、いかがでしょうか。

○松本参考人 はっきり言って、私はこの分野の知識はほとんどございませんから、わかりません。
 自由に使えるお金を交付するとほかの目的に使われるから、目的を絞って国がお金を出すという形にできれば、地方の行政だけれども国からの支援で動くということになるんでしょうが、そういうのが、何か建前上、今はだんだんできなくなってきているという話を聞きます。そこが何かうまくいかないものだろうか。消防とか警察と並ぶセーフティーネットとしての消費生活センターということでうまくいかないだろうか。これは、自治体の首長の方が意識をすれば変わるはずなんです。私のところは消防署は要らないんだなんという首長がいたら、次の選挙は恐らく通らないはずなので、そういうふうになれば、国が一々縛らなくてもいいのかもしれないです。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。