<第171通常国会 2009年04月09日 総務委員会 13号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 電波法の審議に当たりまして、アナログ放送の停波は二〇一一年七月二十四日、それに際して、地デジの受信機の普及がそもそも間に合うのかという問題を中心に質問をしたいと思っております。
 数字の確認を最初にさせてもらいますが、この間、〇八年三月、〇八年九月、そして〇九年一月と、地デジ対応受信機の普及についての調査を行っております。三回それぞれについて、普及の目標と地デジ対応受信機の保有率の調査結果がどうなっているのかをお答えください。

○山川政府参考人 委員御指摘の総務省での調査結果でございますが、まず、昨年三月の調査では、地デジ対応受信機の世帯普及率が四三・七%でございまして、当時の時点での普及目標とはほぼ一致しておりました。
 しかし、その後行った昨年九月及び本年一月の調査結果では、それぞれ、昨年九月は目標の五二%に対して四六・九%、本年一月は目標の五八%に対して四九・一%と、いずれも目標を下回る結果でございます。
 このため、私どもといたしましては、取り組みを強化し、普及目標を達成できるよう、関係者とともに全力を尽くしてまいりたいと思っております。

○塩川委員 〇八年三月のときに差は〇・三ポイント低かったわけですけれども、昨年九月の段階では五・一ポイントに拡大をし、ことしの一月の時点では八・九ポイントへと大きく拡大をしている、差が開く一方にあるというのが調査の結果であります。
 続けて、この世帯普及率の数字そのものの妥当性ということで何点か伺いますけれども、地デジ対応受信機の保有世帯、ことし一月では四九・一%ですが、その中には、保有はしているけれども地デジ放送を見ることができない世帯というのが含まれております。
 そこで、お尋ねしますが、この保有世帯四九・一%のうち、地デジ放送を見ることができる世帯及び保有はしているが地デジ放送を見ることができない世帯はそれぞれ何%か、また、保有はしているが地デジ放送を見ることができないとされている理由は何なのかをお答えください。

○山川政府参考人 私どもが本年一月に実施した調査でございますけれども、調査対象世帯の四九・一%の内訳といたしまして、実際に地デジを視聴できる状態にある世帯が四四・三%、視聴できない世帯が四・七%という結果でございました。
 こうした、受信機を保有しているにもかかわらず視聴できていないという理由につきましては、居住地域で地デジの放送がまだ開始されていない、あるいは受信アンテナや共聴設備がまだ地デジに対応していないなどの理由があるものと想定をいたしております。
 こうした状況でございますので、総務省といたしましては、全都道府県に拡大設置いたしましたテレビ受信者支援センターを活用いたしまして、国民への説明、相談体制の充実を図るとともに、放送事業者の中継局の整備促進や共聴設備の改修支援などの取り組みに努力してまいる所存でございます。

○塩川委員 実際に地デジ放送を見ることができる世帯というのは、四九・一%じゃなくて四四・三%ということであります。
 先日も質問しましたけれども、共聴施設におきましても、都市受信障害対策共聴などの対応状況は極めておくれているわけですから、これはこういう数字にも、テレビはあるけれども、そもそも受信ができる環境にないという事態にもなっているわけです。ですから、今後も、地デジ受信機の保有世帯数と実際の地デジ視聴可能世帯数というのは食い違うことになってくるわけですね。受信環境の共聴などが整わない、こういうことも残るわけです。
 そのずれが、そのまま二〇一一年に持ち越される可能性も否定できないわけで、本来、実態を正確に反映した世帯普及率は、保有世帯ではなくて、保有し地デジ放送を見ることができる世帯ではないかというのが私が指摘をしておきたいことであります。その点でも、政府が指標とする世帯普及率が実態を反映していないと言わざるを得ません。
 もう一点指摘をしたいのが、視聴者にとって地デジのメリットということであれば、当然のことながら高画質、高音質、データ放送といったメリットが享受されてこそ地デジ化の意味があるわけですが、このようなメリットを享受できる地デジ受信対応機というのは当然のことながら地デジのテレビでございますけれども、〇九年一月の調査での地デジテレビの保有率というのは何%なんでしょうか。

○山川政府参考人 この一月の調査でございますが、地デジチューナー内蔵テレビの保有率は四〇・四%という結果でございます。

○塩川委員 世帯普及率よりも一割も少ないわけです。チューナーなどでは地デジのメリットを享受できないわけで、この点でも、本来、地デジのメリットとして言われていたサービスが提供されないということでいえば、普及率の実態は四割。しかも、先ほど言った、共聴施設などで受信環境が整っていないところも含めれば、その四割もさらに切る事態というのは現にあるだろうということが想定をされているわけです。
 もともと、過去、地デジについて総務省としても行動計画を立ててまいりましたけれども、例えば第四次の行動計画、〇三年の十月のときには、普及目標の対象というのは、「家庭内で地上デジタルテレビ放送をアナログテレビ放送以上の画質で視聴するために用いられる機器」としていたのに、〇六年十二月の第七次の行動計画以降では、「アナログテレビ放送以上の画質や同等の機能で視聴するために用いられる機器」と、アナログ放送以上の画質を提供するのが地デジ放送ということを基準にしていたのを、わざわざ同等の機能という言葉をつけ足して、地デジのメリットが得られない地デジ対応の受信機、いわば地デジチューナーなども加えてかさ上げをするということがこの間行われてきているわけであります。ここでも、いわば数字のかさ上げが行われているわけです。
 加えて、世帯普及率には地域差がございます。昨年三月の調査、これは一定量のサンプルをとった調査ですけれども、全体の世帯普及率が四三・七%ですが、おくれている地域がございます。
 そこで、お聞きしますが、東北と四国と九州と沖縄はそれぞれ何%となっているのかをお答えください。

○山川政府参考人 サンプル数との関係で多少の誤差を含むということで御了解いただきたいと思いますが、昨年三月調査の結果では、委員指摘の各地方での地デジ受信機の世帯普及率は、東北が三七・九%、四国が三六・九%、九州が三八・八%、沖縄が二七・三%でございました。

○塩川委員 ですから、全国にならしてみますと四三・七%ですけれども、東北、四国、九州についていえば六ポイントぐらいの差がある。沖縄でいえば、全国平均にしてみれば、一六ポイントもの差が生まれているというわけであります。
 なぜこのような地域差が生まれるのかをお示しください。

○山川政府参考人 この世帯普及率の地域差でございますけれども、例えば地デジの放送開始時期、それから個別受信や共聴、CATV利用等の視聴形態がどうなっているか、あるいは世帯の年齢構成や生活環境の違いなど、さまざまな要因が複合的に作用しているものというふうに考えておりますので、明確にその理由を断定することは難しいわけでございます。
 いずれにせよ、世帯普及率が目標を下回っているということでございますので、御指摘の世帯普及率の地域差も勘案しながら、各地にテレビ受信者支援センターを設置いたしております、こうしたセンターを活用いたしまして、周知広報の強化や説明、相談体制の充実の取り組みに全力を尽くしてまいりたいと思います。

○塩川委員 複合的な要因、その分析もまだされていないということ自身が重大だと思います。
 要するに、三大都市圏は〇三年の十二月にスタートしたけれども、全国で始めたのは〇六年の十二月と、三年ずれているわけですよ。その三年のずれが、東北や四国や九州や沖縄で普及がおくれることにもつながっているわけですね。それは当然反映されていると思いますが、いかがですか。

○山川政府参考人 御説明申し上げましたように、この地デジの放送開始時期というのも、その要因の一つであろうというふうに思っております。

○塩川委員 大臣にお伺いしますが、今申し上げましたように、総務省の調査を見ても、目標と実際の調査結果が、どんどん差が開いているということが前提にあります。
 その上で、ことし一月の四九・一%の数字をとっても、その数字自身が実態を正確に反映していない。地デジの受信機は持っていても、共聴施設、マンション共聴などが改修されていないために映らないという世帯も実際ありますし、本来地デジのメリットということでうたっていた、そのテレビを購入している世帯そのものも、四九・一%から見れば大きく少ないわけですし、さらに地域差も現にある。現状でさえおくれているのが、さらにおくれた地域があるということです。
 こういった普及目標と普及実態が大きく開いているということについて、大臣はどのように受けとめておられますか。

○鳩山国務大臣 これは大変な危機感を持って、今後、普及に力を尽くさなければいけないことと考えております。
 実は、その四九・一%の数字について、私は、チューナーによってアナログのテレビで見られるようにしているところは結構あるのと事務方に聞きました。そうしたら、結構ありますと。四九・一%と言ったって、全部が地デジ対応のテレビを持っているわけじゃないんだね、当然そういうことになりますと。あるいは、四九・一%と言うけれども、いわゆるビル陰とかそういうような、あるいは辺地、共聴施設が必要で、まだそれができていないから見られないというケースもあるの、多少ありますと。そういうふうに私も思ったわけですね。それを今委員から御質問で、きちんと答えていって、したがって、四九・一という数字で、目標よりも九%低いなというだけではなくて、もっと大きな危機感を持たなければならない、こう思います。
 三年ずれたからということでありましょうが、地域的な格差も相当なものがありますから、その辺も踏まえて、より一層すべての対策を出し切るというような気持ちで、原口先生から延ばしてはいかぬという御激励もいただいておりますから、それはもう私どもも絶対延ばすことはあり得ない、こういう意味でこれから全力を尽くしてまいります。
    〔委員長退席、森山(裕)委員長代理着席〕

○塩川委員 この問題で、もともと地デジテレビの普及というのが、二〇一一年ということで、どういう根拠があったのかという問題があるわけです。
 二〇〇一年の電波法の改正の際に、では二〇一一年までに地デジテレビが全世帯に普及するという根拠はどこにあるんですかということも問うているわけですけれども、これは当時どういうふうにお答えになっておられますか。

○山川政府参考人 地上デジタル対応受信機の全世帯、当時四千八百万世帯でございましたが、この普及という目標は、二〇〇三年の四月に、デジタル放送推進のための行動計画において設定したものでございます。
 御指摘の、二〇〇一年に電波法の一部を改正する法律案を御議論いただきました際には、十年という期間を見て、これだけの期間があれば十分に消費者の皆様に無理なく御理解いただくことができる、さらに、テレビの買いかえサイクルは八年から十年と考えられている、さらに、二〇〇六年に三大都市圏以外の地域でも地上デジタル放送を開始して、そのころには受信機も安くなる、このことにより、二〇一一年までにアナログ放送を終了しても、十年あれば無理ない形で十分に導入可能であろうという答弁をさせていただいておるところでございます。

○塩川委員 十年あれば無理ない形で買いかえができるという話でしたけれども、今お話がありましたように、そもそも三大都市圏で電波が飛んでいるのが〇三年の十二月からですよね。全国で、まず県庁所在地からでもスタートしたというのが〇六年の十二月ですから、テレビの買いかえサイクルの八年から十年ということを言っても、〇三年十二月からとっても、実際には二〇一一年七月まで七年七カ月しかありませんし、全国でスタートした〇六年の十二月からとれば四年七カ月しかないんですよ。
 地デジのテレビを買うのは、地デジの電波が飛ばない限り買っても意味がないですから、そういうことを考えれば、全国でいえば、では買いかえようという気になるのは四年七カ月の期間しかないんですよ。それがどうして八年から十年と言われるテレビの買いかえサイクルにそもそも合っているんですか。そもそも、地デジのテレビの普及目標が、二〇一一年で打ち切るということが全く根拠がないということを当時から示されていたということじゃないですか。大臣、どうですか。

○鳩山国務大臣 私、たびたび申し上げておりますように、国策として二〇一一年七月二十四日、これに向かって全力で取り組んでいくということ、これを変えるつもりはありませんし、そういうやり方はハードルが非常に高いという御指摘をいただきましたけれども、そのハードルを越えていこう、こういうふうに考えているわけでございます。
 ただ、今の塩川委員の御質問に関して言えば、私は答弁書を見たときにおかしいと思ったんです。十年というのを、人間やはり十という数字は何となくいいのか、例えば郵政でも移行期間は十年という、だから二〇〇一年のときに二〇一一年ぐらいにデジタルへの移行というふうに考えたんだと思うんですが、答弁書にやはりテレビの平均買いかえが大体八年から十年ぐらいだからと言うのですが、今委員がおっしゃったように、買いかえようと思ったときに、まずデジタル波が来ていない地域がいっぱいあったということと、私も余りこういうことは得意ではありませんでしたから、要するに、アナログが停波するから、今買いかえるならばデジタルのテレビにしなければならぬというのは、うちの息子はわかっていても、私は多分わからなかったと思うんですね。
 そういった意味でいえば、二〇一一年にアナログを停波するということをやはりもっとはるか以前から相当な大宣伝をしておかなければ、テレビの買いかえ期間が八年から十年だからというのはほとんど意味をなさなかったように感じます。

○塩川委員 もともと、二〇一一年にテレビが買いかえられる、そういうサイクルじゃなかったんですよ。ですから、そういう点でも、この二〇一一年というのが、打ち切るという根拠がなかった。
 もともと十年というのも、周波数帯の変更にかかわって、免許が五年サイクルですから、その二回分で十年という、そちらの方が優先しているわけで、消費者、国民のテレビの買いかえサイクルなんというのは後づけの理屈でしかない。
 そういう点でも、二〇一一年の日までこのまま突入すれば、大量に地デジ難民が生まれかねないということですから、二〇〇一年の法改正時に我が党は修正提案もいたしましたけれども、例えば、アナログ停波予定の二〇一一年七月の一年前の時点で地デジテレビの普及率が一定の基準に達していないときはアナログ停波は延期するといった措置を検討、具体化すべきではありませんか。
    〔森山(裕)委員長代理退席、委員長着席〕

○山川政府参考人 地上デジタル放送への完全移行でございますけれども、この二〇一一年七月二十四日という期限に向けて、放送事業者を初め、メーカーあるいは家電販売店、地方公共団体などの関係者が、すべての世帯にデジタル放送を受信いただけるよう計画を立てて、現在取り組んでいるところでございます。
 家庭への普及率が目標を下回っている状況ではございますが、平成二十一年度予算に盛り込まれましたテレビ受信者支援センターによる国民へのきめ細かな働きかけ等に丁寧に取り組むことで、この二〇一一年七月までの普及は十分に達成可能と私ども考えております。
 したがいまして、現時点では、アナログ停波の時期を改めて判断することよりも、二〇一一年七月という期限に向けて関係者が必要な取り組みを全力で実施していくことが重要と認識しております。

○塩川委員 大臣にお答えいただきたいんですけれども、平成十年のときに、地上デジタル放送懇談会で議論した。その報告書の中では、停波に当たって条件をつける、つまり、送信側が一〇〇%は当然だけれども、受信側についても、受信機の世帯普及率が八五%以上であることを少なくとも停波の時期を決める条件にするんだということを提言しているわけです。まさに今こういうのに学んで、しっかりとした、地デジ難民が生まれないような措置を考えるべきじゃありませんか。

○鳩山国務大臣 ですから、地デジ難民が生まれないように、これからあらゆる施策を通じてやってまいります。
 二〇一一年七月二十四日を一たん定めた以上は、定めたときに一〇〇%まで持っていく、こういう計画でやるのが何よりであって、仮にこれを延期するようなことがあれば、それこそ放送局には、デジタル、アナログ両方流さなくちゃいかぬとか、またさまざまな負担がかかってまいりますので、これはやり遂げるという気持ちで頑張ってまいります。

○赤松委員長 塩川君、時間が来ておりますので。

○塩川委員 ええ。
 国民にテレビの買いかえを強要するんじゃなくて、アナログ停波そのものを強行せずに延期すべきだということを申し上げて、質問を終わります。