<第171通常国会 2009年04月14日 総務委員会 14号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 先週、電波法の審議が行われましたけれども、私の方では、電波法の法案の改正の中身にもありました、経済的に困難な世帯に対しての地デジ対応の支援の問題についてきょうは質問したいと思っております。
 電波法の改正案では、受信機器購入等の支援に係る電波利用料の使途の拡大として、経済的困難等の理由のため地デジ視聴ができない世帯に対し、地デジチューナーなどの無償支援を可能とする内容が盛り込まれておりますが、このことについては当然の措置だと考えております。
 地デジ移行でテレビが見られなくなるのは二〇一一年の七月より先の話じゃなくて、現在も生まれている事態というのをまず御紹介したいと思うんです。
 例えば、大田区の大森西地域などで伺っているお話ですけれども、ビル陰の影響などでアナログ電波が届かないという地域で、数十年前に電波が届かないことが確認をされて、では原因者がだれかといっても、よくわからないわけですね。NHKが調査したけれども、原因者も特定できない。
 しかし、現にテレビが見られないわけですから、NHKもお金を出し、ビルオーナーもお金を出し、また住民の方もお金を出して、アナログの共聴施設をつくった。これが、この間町内会で管理をしてきたわけですけれども、完成から三十年以上たっていますから老朽化をした。地デジにおいては見られるということもあり、維持も大変だということもあって、ここでアナログの共聴施設は撤去しようと。
 そうなりますと、地デジの電波は届くから地デジのテレビは受信機があれば視聴できるんだけれども、アナログ共聴施設が撤去されたために、個人対応に任された地デジ受信機などの措置が経済的な理由でできないという方が現に生まれているというのが実態であります。
 地デジの場合ではUHFのアンテナの改修も必要ですし、もちろんアンテナだけで六万から十万かかりますし、ケーブルテレビの加入も、この前議論しましたように、有料チャンネルで月額五千円とかということもありますから、これではなかなか払うに払えないということで、そういう方の中には、生活保護を受けて月々の生活費が五万円程度だ、とてもテレビやチューナーを買うには無理だ、また、食べていくのがやっとでテレビはあきらめるしかない、地震や災害などの情報がテレビから得られなくなりとても不安だ、こういう声が寄せられております。
 総務省にお聞きしますけれども、このように、アナログ受信共聴施設が解散をしてしまった結果、地デジ対応の費用が負担できずに地デジもアナログも視聴できないという世帯が生まれているという実態を把握しておられますか。

○山川政府参考人 先生今御指摘されたように、例えば、アナログの共聴施設が撤去されて、そこにお住まいの方々が早急にデジタル対応しなければならないということではございますけれども、経済的理由によりまして自分で対応が困難な方がいらっしゃるという事例があることは承知しております。

○塩川委員 テレビを見られない、とにかくテレビはあるんだけれどもアナログの画像でザーザーいうだけで、とてもじゃないけれども視聴できないという世帯が現に生まれているわけですから、こういった世帯が、生活保護世帯だけではなくて、高齢者世帯を含めて地デジの準備ができないでいる。こういう実態に対して今現在措置が求められている。こういう現状についてどうするのかをぜひ大臣としてお答えいただけないでしょうか。

○鳩山国務大臣 例えば、ビル陰でアナログの共聴施設をつくって、皆さんアナログのテレビで見ておった、ところが、その施設も古くなって、例えば危ないから取りかえたときに、アナログ、デジタル両方受信できるのではなくて、もうこれからはデジタルだからといって、デジタルを受像できるようなアンテナ等の共聴施設をつくった、ところがその家の方々はアナログのテレビしか持っていないから見られない、こういうケースでございますか、想定されているのは。(塩川委員「地デジは受けられるから。アナログの施設が撤去されたためにアナログのテレビが見られなくなる」と呼ぶ)
 だから、テレビがアナログで、アナログの共聴施設が撤去されちゃったら、何も見られないですね。新しくアナログの共聴施設をつくったってどうせあと何百日でなくなる。こういうことなんだろうかなと思って、これは物すごく多いケースであるかどうかはわかりませんが、そうなりますと、チューナーの配布というものを、電波法が今参議院へ行っておりますが、一日も早くできるようにしなくちゃならない、私は今そのことばかりが頭にあります。チューナーの配布を一日でも早くする、こういうことだろうと思います。

○塩川委員 今回の支援の枠組みの範囲というのはまずあるわけですけれども、それはおいておいても、時期が夏以降とかということになりますとその間そもそも見られないわけですから、そういった世帯は申請があれば法律が通って施行する段階でしっかりと担保するような、もっと前倒しでやるような仕組みというのもひとつ工夫していただけませんか。

○鳩山国務大臣 まず、チューナーに関していえば、電波料を使うのでありますので、これは電波法が成立しなくちゃならないということがあります。
 まさに緊急避難的に、そういうような実態が明らかなところに早目にチューナーの援助ができるかどうか。緊急避難としてそういうようなやや例外的な扱いができるかどうか、正直言って確証はありません、自信はありませんが、検討をしてもらおうと思います。

○塩川委員 ぜひ検討、具体化をお願いしたいと思っております。
 そこで、今回の簡易なチューナーなどの無償給付等の支援についてですけれども、支援対象者というのはどのような人を考えているのかについてお答えいただけますか。

○山川政府参考人 今回の支援につきましては、NHKの受信料全額免除世帯という世帯を対象として考えております。

○塩川委員 NHKの受信料の免除世帯というのは、内訳でいえば、生活保護などの公的扶助の受給世帯、市町村民税の非課税の障害者世帯、社会福祉事業施設入所者ということであります。
 そこで、伺いますが、生活保護世帯だけではなくて、障害者の方がいらっしゃる市町村民税の非課税の世帯など、当然のことでありますけれども、現行でもそういう所得水準の方はほかにたくさんいらっしゃるわけですね。例えば、国民年金のみ受給の高齢者が大体一千万人ぐらいいらっしゃって、国民年金のみの高齢者の方の平均の年金額というのは四万七千円ぐらいですから、こういう生活実態の方がたくさんいらっしゃる。
 そういったときに、支援対象というのが今言った範囲ということでは、とても実態に合わないんじゃないのか、経済的理由によって地デジに移行できないテレビ難民が結果として大量に生まれることになるんじゃないのか。この支援対象の範囲では結果としてテレビ難民が大量に生まれることになりはしないかと強く懸念をしておりますけれども、大臣はどのようにお考えですか。

○山川政府参考人 デジタル化に移行する過程でテレビをごらんいただけない家庭というのが出ないように、私どもとしては努力をしてまいりたいと思います。
 支援の対象をどうするかという議論でございますけれども、昨年の情報通信審議会の第五次中間答申の議論で、実際に、資産あるいは所得といった両面から経済的に困窮している世帯というものをとらえまして、生活保護世帯を支援対象とするのが適当ではないかという御議論がございました。
 しかしながら、現在の放送制度におきましては、受信に関する経済的負担を軽減して、国民すべてがひとしく放送を受信することができるよう措置する必要があるということでNHKの受信料全額免除世帯とされている世帯が、先ほど先生が御指摘になりましたように、生活保護などの公的扶助受給世帯、市町村民税非課税の障害者世帯と社会福祉事業施設の入所者でございました。
 こうした既存の放送制度との整合性ということにもかんがみ、私どもといたしましては、この支援対象世帯をNHK受信料全額免除世帯とさせていただいたところでございます。

○塩川委員 支援対象を既存の放送制度の枠内にとどめる必要はないんですよ。もともと条文には、書かれている中身を見れば、「経済的困難その他の事由」とあるわけですね。NHKの受信料免除世帯とは書いていないわけですから。
 結局、条文で見る以上は、経済的その他の事由とある限り、支援対象はNHKの受信料免除世帯に限定はされておりませんね。確認させてください。

○山川政府参考人 法律上の書き方は先生おっしゃるとおりでございます。
 その中身につきまして、私ども、財務当局と折衝させていただいた予算編成の過程で、NHKの受信料免除世帯ということで整理させていただいた、こういうことでございます。

○塩川委員 今の財務当局との折衝というのは政府部内の話であって、国民の立場からの話じゃないんですよ。
 大臣にその点を伺いますけれども、現行の生活保護世帯の捕捉率そのものも、日本は極めて低いと言われています。一割とか二割とかという数字が調査などでも出されておりますし、生活保護水準以下の生活をしているような高齢者世帯の方も少なくありません。独居老人の方ですとか母子家庭の方など経済的に困難な状況に置かれている世帯がたくさんある中で、支援対象世帯をさらに拡大するという考えはないのか。その点、ぜひお答えいただけないでしょうか。

○鳩山国務大臣 支援対象世帯は二百六十万世帯というふうに今のところは考えているわけでございます。
 先ほどからしつこく繰り返しておりますが、生活保護などの公的扶助世帯、市町村民税非課税で障害者の世帯、社会福祉事業施設の入所者、こういうふうにNHKの受信料全額免除世帯はなっておる。しかし、これにこだわる必要はないわけですね。全くこれと同じにやらなくちゃならないという義務はないわけです。
 私は、二百六十万世帯というのが水準としてはいいんだろうとは思うんです。余りこれを、三百万世帯だ四百万世帯だと広げる必要があるかどうかといえば、そんなに広げてはかえって逆に公平、平等と言えるかどうかという問題はあると思うけれども、ただ、見落としもあるかもしれないじゃないですか、こうやって。答弁していれば、こっちも何となくもっともらしく答弁していますけれども、やはり見落としがあるかもしれないから、これは実際に実施するまでの間に不断に検証して、ああ、こういうお気の毒な人もいるなというのが追加されたとしてもおかしくはない。
 今はこういうふうに、答弁したように考えていますけれども、これが不磨の大典で、絶対変更してはならないものではないし、NHKの受信料全額免除世帯イコールチューナーがもらえる世帯である必要もないわけですから。その辺は柔軟に考えて、一番困っている方にチューナーが行くようにしていきたい、こう思います。

○塩川委員 あくまでもテレビ難民を出さないということがポイントですから、最後の最後の段階でどうなるかというのは予測がつかない事態があるわけで、大臣がおっしゃるように、NHKの受信料免除世帯にこだわる必要がない、見落としもあるかもしれない、そういう立場で臨むことが必要だと思います。
 その点で、現行の枠組みがどうなのかということがあります。というのは、支援対象についてどのように枠組み、仕組みをつくっていくのかは、ことしの三月に地デジの受信機の支援に係るワーキンググループの報告が出されています。それを見ますと、申込者の資格証明は、申し込み時点で、NHK受信料全額免除世帯であることを確認することで行うことが適当だ、つまり、支援を受けるにはNHKの受信料免除世帯という確認が必要なんだと。その資格の確認は、資格要件がNHK受信料全額免除世帯であるために、NHKが行うとなっているわけです。
 ですから、NHK受信契約を結んでいることが地デジ受信機等の無償給付を受ける条件となっているということでいいですね。

○山川政府参考人 現在の放送法上の義務といたしまして、アナログの放送をごらんいただいている場合にはNHKと契約を結んでいただく、こういうことになっております。
 私ども、今回の支援を創設するに当たりましてさまざまな要件を検討させていただきましたけれども、基本的に、対象といたしましては、現在アナログの放送を受信していただいている方ということで、デジタルの支援をしていく中で、現在放送法上の国民の義務であるNHKとの契約の締結ということで範囲を考えるべきではないかというふうに判断した次第でございます。

○塩川委員 加えてお聞きしますけれども、支援対象世帯であることの確認作業はNHKが行うというスキームとして考えているということでよろしいですね。

○山川政府参考人 具体的なチューナー配布の方法につきましては法律成立後早急に詰めていきたいと思いますけれども、実際にそのお方が私どもの支援対象に確実になっているかどうかという判断というのは客観的に行う必要があると思っております。
 したがいまして、NHKの方での確認というのも一つの方法ではあろうかというふうに判断している次第でございます。

○塩川委員 これは委託先の支援実施法人というのを公募で決めるわけですけれども、この法人というのは余り大してやっていることはないんですね。つまり、確認作業はNHKに丸投げです。実際のチューナーの設置などの作業はまた別な業者にお願いをするわけですから。いわば、総務省がこの法人に丸投げをして、その法人は確認業務はNHKに丸投げをするんですよ。
 となると、つまり、NHKがやっている業務ですから、NHKの受信料免除世帯しかできないんです。それ以上に拡大するというときに、NHKに確認業務をやってもらっていたら、その先に行かないじゃないですか。現行のワーキンググループの詰めているような仕組みでいくと、NHKの受信料契約をチューナー無償給付の条件として、NHKに確認業務を丸投げするということは、今後さらにそれ以外の市町村民税非課税世帯に拡大しようという場合が生まれたようなときに、それへの障害となってしまうんじゃありませんか。
    〔委員長退席、森山(裕)委員長代理着席〕

○山川政府参考人 ただいまの先生の御指摘でございますけれども、基本的に、今回の枠組みの中で、NHKの受信料免除世帯という中に生活保護の世帯が入ってございます。私どもといたしましては、まずはこうした対象の世帯に、生活保護世帯を含めてですが、周知をする必要があろうというふうに思っております。そうした方々が自分が対象だということを認識していただいてお申し込みいただくという過程の中で、そのお申し込みが適正なものか、真正なものかということを判断する一つの材料といたしまして、NHKに御協力をいただくということを考えているわけでございます。
 先ほど大臣が御答弁させていただきましたけれども、このNHKの受信料免除世帯、今回の措置はそのようにしておりますが、今後の対応におきまして、それでいいのかという議論が出てきた際には、再度いろいろな確認の方法等を考えていく必要があろうというふうに考えておる次第でございます。

○塩川委員 大臣、一言。
 今言っていましたように、現行はNHKの受信料免除世帯に限るということで、確認作業はNHKにそのまま任せているわけですね。そうすると、それ以外に広げようという議論が出たときに、その枠組みでは拡大のしようがないわけですよ。
 ですから、例えば市町村民税非課税世帯に広げようというときには、その本人が市町村役場に申請すればそういう証明書が明らかになるわけですから、それをもって申請するとか、別な方策もあるんだ、そういう選択肢も可能な仕組みにしていくということが必要だ。その点についての大臣のお考えをお聞かせください。

○鳩山国務大臣 ですから、NHKの受信料全額免除世帯というスキームは、非常にわかりやすくて、便利で、採用しやすいからそういうスキームになっているわけで、それはそれでやらせていただくのが基本方針だと思います。
 ただ、何か別の観点でとらえて、一番困っている、別にこういう方がいたという方を排除するという必要もまたない。何か新しく別に、どうしても地デジのために援助すべきというその一つのパターン、基準に当てはまる方が出てきたら、それはまた別のやり方でやることを排除するつもりはないと申し上げているんです。

○塩川委員 テレビ難民が生まれないようにということで、最善の策をお願いします。
 終わります。