<第171通常国会 2009年04月17日 総務委員会 15号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 消防法について質問いたします。
 最初に、もう一カ月前になりますか、十人の方が亡くなられた群馬県渋川市の高齢者の入所施設「たまゆら」での火災事故について、関連して質問をいたします。
 直後に現地にも行きまして、渋川市の関係の方ですとか御近所の方、県の方にも行ってお話を伺ってまいりました。介護を必要とするような方、認知症の方などもいらっしゃる、自力で避難することが困難な方が入所している施設だったわけですが、そこにヘルパーで入っていたような方などのお話でも、入所者がふえると理事長が一つの部屋をベニヤで仕切って二つにして入所者を入れるとか、そんなことも行われていた、火災になったらどうなるのかという心配の声はあったという話などもございました。
 施設の設置者、運営者の責任が問われるのは当然ですけれども、同時に、所得が少ない、所得がない、そして介護を必要とする高齢者が入所できるような施設そのものが足りないということが大問題であり、この点でも、医療介護施設を削減して受け入れ施設の不足の原因をつくってきた政府の責任が厳しく問われるということをまず指摘しておくものです。
 その上で、消防設備の問題もございます。
 四月の政令改正で、自力避難が困難な入所者がいる施設はスプリンクラーや火災報知機などの設置基準が強化をされましたが、地元の消防の方も、年末にも行って状況を見ているわけですけれども、「たまゆら」について対象になるかどうかというのもその時点では明確でなかったということもございました。
 いずれにせよ、事業者側にしてみても、資力に乏しい事業者も多いわけですし、なかなかこういう整備が困難な場合もあります。また、小規模な施設では義務づけのないような場合もございます。
 そこで、この防火安全対策、火災報知機などの義務づけのないような小規模な社会福祉施設などに対して、例えば火災報知機などを設置するような、防火設備設置の支援策をぜひ具体化すべきではないかと思いますが、お尋ねいたします。

○岡本政府参考人 お答えいたします。
 今委員御指摘のように、ことし三月の老人ホーム「たまゆら」の火災などのように、小規模の社会福祉施設の中には法律上の設置義務がないようなもの等もあるわけでございますが、このような老人ホームに自力避難が困難であるような方々もまた就寝をされるということになるわけでございますので、火災発生後直ちに、私どもは全国の消防機関に、いわば自力避難の困難な方がおられるかどうかなど、それぞれの老人ホームの実態に合わせた防火管理をどのようにするか、火災予防対策を徹底するようにという通知をいたして、また、一斉点検を現在行っていただいているところでございます。
 また、その中で、万が一火災が発生した場合に、自力避難困難なお年寄りを初めとする方々を連れて逃げられる人員を確保する、これはある意味ではソフトのやり方でございますが、それと同時に、逆に、火災報知設備をつける、いわばハードの対応をすることによってできるだけ早く避難ができるようにするという、いわばソフトとハードの両方の施策の掛け算によって火災予防というのは守られるというふうに考えております。私どもとしましては、小規模な社会福祉施設における防火指導を、今申し上げましたような一斉の視察といったことを加えて、徹底していくということをやりたいと思っております。
 また、その中でハードの対応として、火災警報器、例えば、先ほども述べましたが、現在、住宅用の火災警報器の中では、いわゆる単独でやるようなものよりやや値段は高くなりますけれども、一つの箇所で火災が発生した場合にはこれが直ちに個別の自動火災報知機ごとに連動していくというようなシステムもございます。
 また、このようなものを小規模な社会福祉施設等に設置していただくことによりまして全館に火災を早く報知するというようなこともできますので、現在、政府として検討いたします経済危機対策の中におきまして、防火指導の一環として、小規模な社会福祉施設に対しまして火災報知の設備を支援するといったスキームも検討している最中でございます。

○塩川委員 住宅用火災警報器、それが連動して各部屋で、一つで探知した場合には全部屋でという仕組み。その対象となるような社会福祉施設というのは、全国でどのぐらいあるものなんでしょうか。

○岡本政府参考人 対象の数を詳細、正確に把握できているという状況ではございませんが、いわゆる小規模な老人ホーム等を想定します際に、私どもとして、現在、予算的には約一万五千程度を対象として考えております。

○塩川委員 大臣に伺いますが、こういった資力に乏しいような小規模な施設においても今言った措置というのはぜひやっていただきたいと思いますし、同時に、多数が入所をされるような施設も当然ございます、これは当然義務づけのかかるような施設ですけれども。そういった施設についても、スプリンクラーをつけるにしてもかなりお金もかかりますし、事業者の努力を求めながらも、そこにプラスアルファの支援というのもぜひ具体化を検討いただきたい。
 その点について、例えば厚生労働省との協議ですとかの具体化などもぜひ図っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○鳩山国務大臣 この種のことについて私が詳しい知識を持っているわけではありませんけれども、事は人命にかかわることであり、しかも、小規模、大規模にかかわらず、老人ホームのように逃げおくれの起きやすいようなところは、いわゆる先手必勝というのか、先手先手で、それは支援とか義務づけとかいろいろあろうと思いますが、先手先手で行くことが大事ではないかな。私はそういうふうに思いまして、厚労省等も当然消防庁と相談をしてもらって、先手を打つという気持ちでやってもらいたいと思います。

○塩川委員 よろしくお願いいたします。
 法案に関してですけれども、今回のスキームでは、都道府県に、消防車の搬送・受け入れの実施基準についての協議及び実施基準に基づく傷病者の搬送・受け入れの実施に係る連絡調整を行う協議会の設置を求めております。
 医療については、医療法に基づき都道府県の責務がございますが、消防に関しては、都道府県にかかる義務というのはほとんどありません。また、都道府県単位をカバーする消防組織というのは東京消防庁以外にはないわけで、つまりは、市町村単位の消防組合、自治体消防と医療機関との連携強化というのが重要であり、課題だということだと思います。
 法案では、実施基準を定める区域として、都道府県の区域と同時に、医療を提供する体制の状況を考慮して都道府県の区域を分けて定める区域ごとに実施基準を定めることも可能としています。
 そこで、お尋ねします。この実施基準の策定区域が、二段階といいますか、二つに類型化されている理由というのは何なのでしょうか。

○岡本政府参考人 実施基準につきましては、都道府県の全域または医療を提供する体制の状況を考慮して都道府県の区域を分けて定める区域ごとに定めることもできるというふうにいたしております。
 実施基準につきましては、例えば消防機関が医療機関に対して傷病者の状況を伝達する基準といったものは、いわば伝達の確認の手段でございますから、県全域で統一して定めることが適当であると思いますが、搬送先の候補となる医療機関のリストなど、医療体制の状況が県内の地域でかなりばらつきがあるといったような地域がある場合には、その地域ごとに定めることが適当である場合もございますので、都道府県がそれぞれの地域の実情に応じて弾力的に地域設定を行えるように、そういうことを考えてやっているものでございます。

○塩川委員 そうしますと、地域ごとにばらつきもある、そういう点で、地域ごとに実施基準をつくることの方が有効な場合があるということでありますので、その際に、その地域ごとでの実施基準を定めるための協議の場が必要なんじゃないかと思うんです。
 今回の法のスキームでは都道府県単位での協議会ですけれども、今言った地域ごとの協議機関というのはどのように考えておられるのかをお尋ねします。

○岡本政府参考人 地域ごとの基準を議論をする場合は、その一つの典型的な例として考えられますのは、その地域の医療協議会に、例えば県内のA地区ならA地区に関します分科会といいますか、名前はちょっと別といたしまして、そういうものを担当するいわば協議会の内部の組織というものをつくった上で、それぞれにつきまして、その内部の議論を経た上で、最終的な実施基準の決定としては、その県全体の協議会で決定をしていただくといったようなプロセスを経ることによって、必要に応じた区分ごとの実施基準も策定できるというふうに考えております。

○塩川委員 実施基準策定に当たって、地域ごとで自治体消防と医療機関が連携もしているわけですけれども、そういった市町村消防の意見をどのように都道府県の段階で反映していくのか。そういう仕組みとして、今言った分科会の話なんかもあるんでしょうけれども、その他、市町村消防の意見をどのように実施基準策定に反映をしていくのか。その点についての内容をお答えいただけますか。

○鳩山国務大臣 塩川委員の問題意識は、私は正しいと思います。
 それは、医療行政については都道府県が単位であるということで、実施基準も都道府県が定めることになっておりますけれども、消防は自治体消防、市町村消防でございますから、そこのところは、市町村消防のそれぞれの地域の特徴もありましょう、それらの意見が反映された実施基準にならなければいけない、こう考えるわけでございます。
 今長官から分科会というような表現もあって、そういう方式もあろうかなと思いますが、基本的に言えば、実施基準を策定するときに協議会の協議がある。その協議会は消防機関と医療機関で構成されるわけでありましょうから、そのときに、少なくとも県内のすべての市町村消防の意見を聞くとか、そういう細かな配慮というのは私は絶対に必要ではないかな。
 救急搬送という意味では、当然、市町村の区域を越えて出ていくことは幾らでもある。もちろん、場合によっては県境も越えるわけですけれども、何といったって組織としては市町村消防ですから、この意見が反映されないで実施基準が定められたら、それは実効性を失うと思いますから、問題意識としては正しいし、きちんと市町村消防の意見が反映されるようなやり方を指導していきたいと存じます。

○塩川委員 今、県域を越えての救急搬送の話もございました。
 そこで、私も埼玉県の所沢市なものですから、実際、所沢の消防にお話を伺っても、一割二割、都内に搬送する場合というのが当然出てくるわけです。周産期医療などにつきましても、重篤の場合などについては埼玉県内だけではカバーし切れないというのが実態でもあります。埼玉県内で医療を充実していくというところでこの取り組みが求められるのは当然ですけれども、命にかかわるものという点でも、現時点に立った、都県境を越えるような、そういう連携というのも極めて重要であります。
 埼玉と東京もずっと東西に接しているのが長いものですから、東の方と西の方ではまた状況も違いますし、また、首都圏全体でもそういった都県境を越えてのいろいろなやりとりというのは多いわけですね。ですから、首都圏全体で、関係の都県の消防と医療整備関係の部局と、あと国の方が集まって、国が音頭をとってそういった協議の場をつくって必要な調整、連携強化を図っていく。そういう取り組みで、ぜひ厚労大臣とあわせて総務大臣の方が音頭をとっていただけないかと思いますが、大臣、その点はいかがでしょうか。

○鳩山国務大臣 当然、都道府県の県境を越えて搬送され、収容されるケースは多いようでございますから、きちんと各都道府県が連携をとって、その連携を踏まえた上で各都道府県が実施基準を定めていただければありがたい。
 理屈で言えばそうなるんですが、しかし、やはり都道府県をまたぐケースでございますから、それは国が調整役として乗り出す必要が当然あるだろうと私は思いますので、実際に搬送を行ったりする、あるいは医療を提供するのはもちろん基本的に国の役割ではないわけですが、総務省、厚生労働省は、県境をまたぐケースについていろいろ実態を把握したり、あるいは呼びかけるという役割は担うべきものと存じます。

○塩川委員 わかりました。
 今回のこういった救急搬送についての消防と医療機関の連携というのも、この間の奈良の事例ですとか、あるいは墨東病院の事例などが当然念頭にあり、救急患者のたらい回しをなくすということが基本でございます。そういう点でも消防と医療の連携強化は重要ですが、根本的には救急医療機関の疲弊という現状があるわけで、医師がもう確保できない、どんどんやめていくという実態があるわけです。
 私は、率直に、この現状というのは、この間の政府の医師抑制政策、医療費抑制政策というのが根本の要因としてある。医師の不足をつくり出してきた、救急患者のたらい回しを生み出す原因としての政府の医師抑制政策、医療費抑制政策、その点についての責任の認識をぜひ大臣に伺いたいと思いますし、それを踏まえた対応策をどうお考えなのかをお聞かせいただけますか。

○鳩山国務大臣 医師や医療の需要がどの程度かというのを予測するのは難しいことだったのかどうかと私は思うんですよ。
 というのは、私が文部政務次官になったときに、医師不足だといって臨時増募の枠をどんどん与えていったんです。それから七年か八年たって私が文部大臣をやったときは、それをまた全部もとへ戻していきました。このままでは医師がふえ過ぎるという議論が真っ盛りだったわけで、くるくるくるくる転換してきた。
 私は、その辺は、もちろん社会の変化を見通すというのは非常に難しいことだし、我が国が高齢社会へ突入していくことももっと把握しておくべきだったということであろうと思いますが、今までの日本国政府の見通しの悪さというのはいろいろあったんだろう。医師を養成するから過疎地域の公立病院も何とかするよといったって、当たり前に言えば、最低でも七年だか八年だか、十年ぐらいかからなければ医師というのはふえていかないわけでございますから、過去の見通しの悪さというのは大きく響いていると思います。
 それから、やはり優しい政治というのが本来自民党は得意だったんだと思う、政府も得意だったと思うんですが、どうもこの数年はばかに効率化ということに力点が置かれて、そうした中で、もう医療費も頭から抑えてしまえというようなことがあって、それがさまざまな影響をもたらしていることは間違いがない、こう思っております。また、診療報酬の問題も、これは事人命を助ける作業なわけですから、これからまた見直しをしていかなくちゃならないだろう。たらい回しと言われることの原因にそうした事柄が含まれているのは事実でございますから、そうした問題はどんどん政策転換していかなければならない、こういうふうに思っております。
 とりわけ、総務省的な発言をいたしますと、先ほどから出ておりますように、今まさに話題の救急とか産科、婦人科、小児科、僻地医療など、要するにもうかるかもうからないかということでいえば私立の病院は余り出ていきたがらないようなところは、公立病院や公的病院に役割を担ってもらわなければなりませんので、ことし三千六百億ほどの財政措置をいたしましたけれども、そうした医療機関への支援というのははるかに拡充していかなければならないだろう、そう考えております。

○塩川委員 医師抑制の閣議決定までした、そのころから、これは問題だという批判もあって、OECDの水準で見ても医師が少ないじゃないかという議論も当然あったということは改めて指摘をしなければいけないと思いますし、この間の医療費抑制も、効率化というだけではなくて、もともと毎年二千二百億円社会保障予算を削るという骨太方針という枠組みで政府として進めたわけですから、これは名実ともに撤回もするし、この間削った一兆六千二百億をもとに戻して社会保障の充実に充てる、こういう政策の転換というのを強く求めて、質問を終わります。