<第171通常国会 2009年05月12日 総務委員会 18号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 住基台帳法についての質問をさせていただきます。
 今回の住基法の改正案では、これまで日本国民だけを対象にしていました住民基本台帳法の中に、中長期の在留者や特別永住者など、一定の範囲の外国籍住民を加えることになります。これは、外国籍住民の方にとっても地方自治体にとっても必要な措置であります。
 しかしながら、今回の改正案では、入管法の改正案とリンクをして、外国人管理の面が押し出されているわけです。その点について質問をしたいと思っております。
 法改正では、外国人住民の利便の増進及び市町村等の行政の合理化を目的として、外国人住民を住民基本台帳法の適用対象に加えるとしております。これまで、自治体は外国人住民の情報を法定受託事務であります外国人登録に基づき取得してまいりましたが、入管法等の改正によりまして外国人登録制度が廃止となり、今後は自治体のみずからの業務の自治事務として外国人住民を住民基本台帳に記載することになります。
 しかしながら、外国人住民基本台帳は、新たな在留管理制度に関する提言におきましても、把握した正確な情報を不法滞在者、不法就労者対策を含め出入国管理行政に有効に活用する手段として新たな在留管理制度の中に組み込むものとなっております。
 そこで、質問いたしますが、住民基本台帳法の三十条の五十、外国人住民に係る住民票の記載の修正等のための法務大臣からの通知に基づいて、市町村の長は外国人住民基本台帳からの削除、消除を行うということになるのか、この点を確認させてください。

○久元政府参考人 今回の改正案の第三十条の五十の規定によりますと、法務大臣は、入管法及び入管特例法に定める事務により外国人住民の住民票記載事項に変更があったこと等を知ったときは、遅滞なくその旨を住所地の市町村長に通知しなければならないこととされております。
 在留資格の取り消しがあった場合にはこの通知がなされることになります。この通知を受けた市町村長は、当該外国人住民の住民票を職権で消除するということになるわけでございます。

○塩川委員 在留資格取り消しの通知があり、長の職権で消除するということになるわけです。
 この法務大臣からの通知は、総務省の外国人台帳に関する懇談会の資料などでも、在留期間を超えて滞在する外国籍住民の方の住民票を一律に消除することを予定していることが示されています。現に居住しているにもかかわらず、各種の行政サービスから一律に排除されてしまうことになる。
 大臣に伺いますけれども、このような行政サービスからの排除というのは、自治体の範囲内に住所を有する住民として外国籍の方がいらっしゃったとしても、そういった方をも含めて排除することにもなる。そういう点でも、地方自治法や、あるいは住民の利便の増進を目的にした住民基本台帳法、また国際人権規約等の規定に反する行いになるんじゃないのか。その点について、大臣のお考えをお聞かせください。

○鳩山国務大臣 先ほど逢坂先生の質問の最後にお答え申し上げましたように、これは、法務省としては、不法残留者がまだ大変数多いということがございまして、不法滞在には厳しく退去強制をしなければならない、しかし、適法に滞在している方にはできるだけ多くの行政サービス等人権、人道上も充実したサービスをしなければならない、そういう思想に基づいているものだと思っております。
 法務省では入管法に基づいて一元管理をするわけでございますから、したがって、オーバーステイというか、在留資格がなくなったとかということがわかれば、それを住所地の市町村長に通知しなければならないという規定になっているわけでありましょうから、それは市町村長が外国人住民の住民票を職権で消除することになるんだと思っております。
 ですが、先ほど申し上げたようなケースがあるのではないか。そういう場合には、市町村長も、全く機械的に処理するのではなくて、そこに友愛というか愛情を加えて処理するということもあるのではないか。こういうふうに申し上げているわけです。

○塩川委員 現行の入管法の枠組みでは機械的にという対応になるわけで、結果として自治事務が法定受託事務としての国の在留管理の事務に従属するような仕組みになっているんじゃないのかということが問われているわけです。
 本来、外国人の住民基本台帳制度というのは、当然のことながら、行政サービスの提供の基礎となり、外国人住民の方への行政サービスの目的のために利用されるべきもので、この制度を新たな在留管理強化のために利用するべきではないと率直に申し上げるものです。
 その上で、対象範囲の問題についてお伺いします。
 外国人登録はすべての外国人を対象としていましたけれども、住民基本台帳の適用の場合には四つの類型になるわけです。在留カードの交付対象者、特別永住者、一時庇護許可者または仮滞在許可者、出生による経過滞在者または国籍喪失による経過滞在者に限定をしているわけですけれども、ここに限定をする理由は何かについて総務省からお答えいただけますか。

○久元政府参考人 今回の、外国人住民を住民基本台帳の対象とする場合に一定の外国人住民を対象としているということの理由は、住民基本台帳制度の目的からくるものと考えております。
 すなわち、住民基本台帳制度は、市町村長が住民の居住関係を公証するということが大きな目的になっておりますし、また、事務処理の基礎として住民に関する記録を正確かつ統一的に行う、こういう目的を持っているわけであります。そういう目的からいたしますと、その対象はやはり適法に我が国に在留する外国人にすることが適当であると考えたわけであります。
 また、この考え方は、規制改革推進のための三カ年計画、これは平成二十年三月二十五日の閣議決定でありますけれども、この閣議決定では、外国人登録制度を見直して適法な在留外国人の台帳制度に改編するという方針が政府全体の方針として示されておりまして、そういう閣議決定を踏まえまして、観光目的で入国した短期滞在者等を除く、適法に三カ月を超えて在留する外国人を適用対象としているということでございます。

○塩川委員 国際人権規約などでの医療、社会保障を受ける権利等を踏まえて、やはり在留資格を有しない外国籍住民であっても基本的人権は原則として尊重されるべきで、この住民基本台帳の対象からの排除というのがこういう権利を侵害するものになり得る。そういう点でも、在留資格を有しない外国籍住民であっても、住民としての生活実態がある以上、自治体が住民基本台帳に記載することを可能とするような制度設計であるべきではないかと考えますが、この点についてはどうでしょうか。

○久元政府参考人 住民基本台帳制度の目的は先ほど御答弁を申し上げたとおりでありまして、その対象は法律において明確に定められるべきであるというふうに考えられます。
 また、このことは、実際に実務を担当する立場からも、先ほど御答弁を申し上げましたけれども、懇談会に参加された自治体関係者からの意見としても多数出されたところでありまして、私どもは、この制度の趣旨、考え方、また実際に実務を行っていく市町村の立場ということも考えまして、このような対象範囲を明確に定めているというところでございます。

○塩川委員 住民としての生活実態がある外国籍住民の立場に立った制度がそもそも求められているということを強く求めておくものであります。
 また、この点で、不法滞在の関係でも、現時点で不法滞在をされていても、後に難民認定や特別在留許可となって適法となる場合も少なくありません。
 難民認定申請者のうち、不法が八百六十六人、適法な仮滞在許可者はわずか五十七人ですけれども、後に難民認定される外国人も少なくありません。難民とは認められなかった七百九十一人のうち、特別在留許可などで在留を認められる人も三百六十人もいると承知をしています。
 退去強制手続にある仮放免の許可者の方はその後在留特別許可を受ける場合も多いわけですから、その点でも、この仮放免許可者が住民基本台帳の記載の対象とならないという仕組みはやはり改めるべきじゃないのか。仮放免について、住基台帳上も加える、そういう制度設計というのが必要なのではないかと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○鳩山国務大臣 一般的に仮放免とは、不法滞在者が退去強制手続に入っておって、入国管理局の施設に収容されていて、ただ、出国準備のため一時的に身体の拘束を仮に解く制度というふうになっているわけです。そういう場合には、仮放免となっても不法滞在者であることには変わらないので、退去強制されるべき地位にあることは確かですから、住民基本台帳の対象とすることは適当ではないというふうに思います。
 しかしながら、仮放免となった者が難民認定申請手続を希望していく、そして短期滞在を認められるというようなことになれば、これは住民基本台帳法の対象になると思いますし、特別在留許可を求めていく場合は、これは許可が出なければたしか対象にはできないかと思いますが、その辺は、法務省の方で把握した情報を適宜市町村に小まめに連絡して、どういう状況であるかということを市町村に知らせる必要があるのではないかというふうに思います。

○塩川委員 難民認定の申請中の方ですとか在留特別許可の申請中の方で結論が出ていない方がたくさんいらっしゃる。そういう人たちを行政サービスから排除するようなやり方というのは人道上問題があると思います。
 法務省に一点伺いますけれども、そもそも、こうした日本の難民認定について自由権規約委員会から意見がつけられているわけです。難民認定率が低いままである、認定手続にしばしば相当な遅延があり、その期間に申請者は働くことができず、社会的な支援が限定されていることを懸念すると指摘をされているわけですけれども、こういった現状を放置したままで、管理強化だけを強めるようなやり方でいいのかがまさに問われていると思うんですが、法務省としてはどのようにお考えですか。

○高宅政府参考人 お答えいたします。
 まず、難民認定を申請されている方につきまして、その立場は、先ほども申し上げましたとおり、半数の方は在留資格がある間に申請されておりまして、この場合には、一定の期間がたちますと大体就労を認められております。
 問題は、多分御指摘の点は、完全な不法滞在の状態で申請されて、かつ、その後仮滞在許可の対象にならなかった、要するに、逃亡のおそれがあるとか、あるいは安全な第三国を通っていることから難民としての保護の可能性が低いとか、そういう方であろうと思います。
 そういう意味では、本当は、不法滞在ということからいけばやはり退去強制の対象でございますので、そういう人たちについては退去強制手続の中で収容していくというのが原則でございます。先ほど大臣がおっしゃられましたように、その収容の中で、特に出国の準備のためであるとか、あるいは荷物の整理であるとか、いろいろな事情がございますが、仮放免がなされているということでございます。
 ただ、いずれにしましても、難民認定手続に時間がかかっているというのは先ほど申し上げたとおりでございますので、この点については、先ほども申し上げましたとおり、最大限の努力を払って早めていきたいとは考えております。

○塩川委員 平均で二年という話が逢坂委員の方からありましたけれども、そういった中での生活をどうしていくのか、そこに対しての権利保障などについてまさに問われていることだと思っています。
 委員長に要望ですけれども、この住基法の審議に当たりまして、この委員会で当事者であります外国籍住民の方の参考人質疑をぜひ具体化をしていただきたい、この点をお諮りいただきたいんですけれども。

○赤松委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

○塩川委員 最後に、日系人離職者に対する帰国支援事業について厚生労働省に伺います。
 現下の厳しい再就職環境のもとで再就職を断念し帰国を決意した人に対して、一定額の帰国支援金を支給するという制度ですけれども、その際に、なお書きがありまして、「入管制度上の措置として、支援を受けた者は、当分の間、同様の身分に基づく在留資格による再入国を認めないこととする。」とあります。
 当分の間再入国を認めないというやり方に、もう帰ってくるなと言っているのかという批判の声も上がっているわけで、なぜ再入国を認めないのか、当分の間というのはどのくらいの期間なのかについて、厚労省からお答えをお願いします。

○岡崎(淳)政府参考人 帰国支援事業でございますが、これは単なる一時帰国を支援するということではなくて、先生からも御指摘ありましたように、現下の厳しい雇用情勢のもとで日本で再就職することを当面断念して帰国される、これを支援するというものでございます。
 そういう状況のもとで、国の施策として支援するわけでありますので、やはり現下の雇用情勢が続く限りにおきましては、戻ってこないということを条件にさせていただいている。その際、当分の間としましたのは、経済雇用情勢の状況を見ながら判断する必要があるからということでございます。
 ただ、そういっても、どのくらいのめどかというような御批判もございましたので、この点につきましては、本事業開始から原則として三年をめどとしつつ、今後の経済雇用情勢の動向等を考慮して見直しを行う、こういう考え方も明らかにしておりますし、これはハローワーク等でもきちんと説明して、どうも当初は、将来全く帰ってこられないというような誤解を生じさせた面もあったし、それを前提とした報道もされましたけれども、そういう誤解がないようにきちっと説明しながら運用していきたい、こういうふうに考えております。

○塩川委員 まずは原則三年で、雇用情勢の変化を踏まえて対応ということですから、場合によると二年の場合もあるし、四年の場合もあるということでしょうか。

○岡崎(淳)政府参考人 御指摘のとおり、経済雇用情勢を見ながら判断したいというふうに思いますが、一応、現段階におきましては、三年をめどとして見直しを行うということを考えているということでございます。

○塩川委員 日系外国人の方は、一九八九年の入管法改正を機に、国内において制限のない在留資格になる。そういう中で、当時の人手不足の中、製造業などで、まさに今の日本の経済を支えているような自動車や電機などのそういう製造業の現場で就労を担ってこられた、日本の経済あるいは地域社会を支えてきた方々であります。
 そういった方々に対して、今回の場合について、仕事が減ったから帰っていいですよ、仕事が減っている間は帰ってこなくていいですよという枠組み自身は余りにも冷たい仕打ちじゃないのか。こういうやり方というのは抜本的に見直すべきだということを改めて要求します。その点についてお答えいただきたい。

○岡崎(淳)政府参考人 日系人の離職者の方への対応につきましては、私ども、ハローワークにおきまして、再就職の支援、あるいは、日本語がしゃべれないがために再就職が困難な方も相当おられますので、その方々のための日本語研修等も今般始めております。そういったような形で、今後も日本で働く希望をお持ちの方につきましては、これは十分に支援していくという考え方。
 一方で、本人の選択で帰国をしたい、ただその場合に帰国費用その他の面で難しいことがあるという方を支援するということでありまして、政府の方針として、その方々に帰国を強制するとか促すとか、そういう趣旨のものではございませんので、その点誤解がないように今後とも対応していきたい、こういうふうに考えております。

○塩川委員 再入国制限についてはぜひ見直していただきたいということを申し上げて、質問は終わります。