<第171通常国会 2009年05月26日 総務委員会 20号>


【質問】

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 給与法について質問をいたします。
 今回の給与法に基づいて、国家公務員の一時金は平均して約八万円の引き下げとなります。公務労働者の方の中には、この夏のボーナス、およその額というのは見込まれておりましたから、いろいろな買い物をして、夏のボーナス一括払いとかいうことで支出を予定されていた方は当然おられるわけです。そういう中で、今地デジの問題がありますから、これを機会に、夏のボーナスで地デジのテレビを買おう、こういうことを決めて支払いを予定していた、こんな方も含まれているわけで、本来これだけの額が見込まれるということが実際には急遽減額をされるという点では、今回の措置というのは、公務労働者の方にとってその期待を大きく裏切るものになっていると思うんですけれども、大臣、その点について一言お考えをお聞かせいただけませんか。

○鳩山国務大臣 確かに、給与がどんどん上がる、ボーナスも上がる、消費もふえる、経済規模が拡大するということは、環境には悪いかもしれませんけれども、社会の姿としてはよりよいものかもしれない、そう思いますが、現在の世界的な経済や金融の情勢の中で一般の民間企業が給与を下げたり、あるいはボーナスを減額していく中で、国家公務員だけは全く別だというわけにはいかないというのがいわゆる情勢適応原則というものだろうと思います。それに基づいて人事院が判断をされ勧告されたものでございますので、このような形で給与法を提出させていただくことは間違っていない、こういうふうに考えております。
 また、テレビの買いかえ等は、ボーナスがちょっと減ってしまうかもしれませんけれども、定額給付金とエコポイントで買っていただければありがたい、こう思います。

○塩川委員 ボーナスが上がるという話が当初ありましたけれども、そんなことはないわけで、下がるというのについても、見込まれていたものが実際には直前で下がるという話です。
 この前、人事院への質疑の際にも、国家公務員の特別給というのは、通常、毎年五月に実施されます職種別民間給与実態調査において、昨年の八月からこの年の七月までの一年間に民間で支払われた特別給の実績を精確に把握して、官民較差を算出した上で、八月に人事院が勧告を行ってきたわけです。
 これまでも、景気の影響で民間の夏季一時金が削減された場合には十二月の特別給で調整してきたわけで、こういうこれまでのルールを一方的に変更して減額を勧告する、これをそのまま法案にするということは私は認められないとまず最初に申し上げるものです。
 その上で、大臣に重ねて伺いますが、今回の給与法で特別給を〇・二カ月分引き下げる根拠とした人事院の特別調査、これが、いわゆる本調査に比べて、サンプル数も五分の一と極めて少ない。また、本調査であれば面接、対面の調査であるわけですけれども、今回の特別調査は、とにかくアンケートを送って、書面で、あるいは電話でちょっと問い合わせするぐらいで済ませてしまっている。しかも、実際に一時金が決定している企業は一割程度ですから、そういう点でも、不正確な調査に基づいて引き下げを行うこと自身が問題なんだと考えるわけですが、大臣はいかがですか。

○鳩山国務大臣 先生御承知のように、私は組合会見も時々いたしておりまして、先生と同じお話を組合側からちょうだいいたしたところでございますが、全く異例の経済社会情勢の変化の中で、情勢適応原則に基づいて人事院が緊急の調査を行ったわけでございますので、それは人事院として精いっぱいの調査をされたというふうに考えまして、その結果を受け入れて、官民の比較の上で、官民のボーナスに関する考え方が近づいていくように措置をされているものでありましょうから、受け入れまして、当然、人事院勧告最大限尊重でこのような法律を提案させていただいているところでございます。

○塩川委員 情勢適応の原則といっても、では、その情勢を本当に正確に把握されているのか。今回の一時金については、現に支払われてもいないわけですから、そういう点でも、いわば仮置きの話をもって、その実態についても一割程度しか確認をしないで決めているということが極めて重大なわけで、人事院自身も人事院勧告の報告で、「データ確保の精確性等の不確定要素がある。」とみずからずさんな調査であることを認め、それに基づいて今回政府が引き下げを決めたことが重大であるわけです。
 その上で、この調査結果が、国家公務員だけではなくて関連労働者の一時金にもマイナスの影響を与えることになります。人事院も認めていますように、六百万人近い労働者に人勧の影響が出ると言っております。人事院の調査でも、今申し上げましたように、実際に一時金が決まっているのは一割程度で、中小の春闘は終わっていないわけですから、そういう点でも民間企業の労働者に与える影響も大きいと言わざるを得ません。
 そこで、大臣にお尋ねしますが、今回の人勧による一時金の削減というのが民間の労使交渉において労働者側にマイナスに働く、マイナスの影響を与えるんじゃないか、こういうことは考えなかったんでしょうか。

○鳩山国務大臣 要は、経済が好転をしていってまた成長軌道に乗っていけば、今回のような〇・二カ月分の減額というものも補っていけるわけでして、そのために景気あるいは経済の底割れを防ぐために、七十五兆円の経済対策を既に着実に実施中であって、現在審議中の予算においても、国費、いわゆる真水十五兆四千億、それから事業費で五十六兆八千億という経済対策を予算に組んで審議中でございます。そういうような形で、経済が上向きになっていくように、既に与謝野大臣等は、四―六については上向き気配でいけるというふうに自信を深めておられるわけでございます。
 政府としては、そういう万全の政策をとっていく中で経済対策をやっていくわけでございますので、今回、人事院勧告によって〇・二カ月分のボーナスの暫定的な引き下げが行われたわけですが、それを見て各企業がどう判断されるかというのは、私ども正確には把握しがたいですが、それは企業は企業なりのそれぞれの判断でなさるわけで、人事院勧告による〇・二カ月のボーナスの引き下げが直ちに民間給与に逆の影響を及ぼすとは私は考えておりません。

○塩川委員 民間の職場では人勧を参考にしているという事例があるわけです。今起こっているのは、上げるときには人勧に従わずに、下げるときには人勧に合わせて、そういう職場なんかもあるわけですよ。そういうことは御存じないんですかということをお尋ねしているんですが、いかがですか。

○鳩山国務大臣 ですから、企業というのは大変な数存在しておりますから、それは人事院勧告やこの給与法をじっと見詰めている会社もあるかもしれませんが、そうでない会社が大多数だと考えております。

○塩川委員 しかし、今回の人勧に基づいて民間が引き下げをするということになった場合に、結局、その引き下げたものをもとにまた人事院の方が本調査を行って、それがまた公務の引き下げにつながるという負のスパイラルになるんじゃないのか、こういういいかげんな調査をきっかけにして踏み進めることでいいのかということがそもそも問われているわけで、民間の一時金引き下げの口実に使われるという点でも極めて問題です。
 六百万人人勧の影響が出ると言われる、そういう職場で、例えば民間病院などもその中に含まれると人事院でも例示をしていますけれども、こういった民間病院も人勧準拠のところが多い。地域医療の崩壊が問題となっているときに、その地域医療の担い手であるこういう民間病院の従事者の一時金も人勧準拠で引き下げるということでは、地域医療の崩壊にも歯どめをかけることができないんじゃありませんか。
 こういうマイナスの影響が出ることについては、どういうふうにお考えですか。

○鳩山国務大臣 医療の問題は、民間病院のことについても公立病院についても、別途、さまざまな形でこれが充実していけるように施策を打っているわけでございますから、この〇・二カ月分のボーナスのカットが民間病院の医療の悪化に直接つながるものとは考えておりません。
    〔委員長退席、森山(裕)委員長代理着席〕

○塩川委員 医療の現場の対策についても、その場しのぎの一時的な対策が中心なわけです。今回の一次補正の中身を見ても、一時的ということがそもそも掲げられているわけですから。
 そういう点でも、深刻な地域の経済、あるいは先ほど述べたような地域医療の崩壊についても恒常的な、継続的な措置こそ必要であるわけで、その担い手である労働者の給与についても、これをしっかりと保障していくことなしには、地域の医療の崩壊も食いとめることはできないし、地域経済の安定ももたらすことができない。
 先ほど、経済への悪影響については、上向きつつあるんじゃないのか、この補正予算がプラスに働くのではないのかというお話がありました。今、外需頼みから内需主導に切りかえようという点ではそれぞれの党でも同じ主張ですけれども、要は何をやっているかの問題であるわけです。
 私は、やはり国民の家計を応援するということこそ必要になっているわけで、しかしながら、現状、政府の対応というのは、将来の消費税増税つきの一時的なばらまきを行う一方で、労働者の懐を冷え込ませるような一時金の引き下げを行うという点では、国民の暮らしも経済も立て直すことはできないということを率直に思います。
 大臣のお考えをぜひお聞かせいただきたい。

○鳩山国務大臣 確かに、先生がおっしゃる中で私が同感であるのは、各家庭、世帯の可処分所得が長期的にずっと下がってきている、これは決して国のためにいいことではない。これは配当に回すか給与に回すかという問題もあるのかもしれません。そういうことを考えれば、最近の総務省で行っております家計調査も、前年同月比減というのが多分相当期間続いているわけで、これを上向きにさせるということは景気対策、経済政策の上ではとても重要であって、そのためにあらゆる経済対策を行わなければならないと考えております。
 そういう意味で、家庭の消費が伸びる、内需が拡大する、つまり、そのもととして可処分所得がふえるということはとても大事で、大きな目標にしなければなりませんが、そのことと今回のこの給与法における〇・二カ月の削減は、私は直接はリンクさせないで考えております。

○塩川委員 そういう点が政策的にはちぐはぐだ、逆方向のことをやっているじゃないかということが問われているわけです。
 残りの時間で、地方との関係の質問をしたいと思います。
 先ほど逢坂委員の指摘にもありましたように、今回の人勧に関連して、四月の六日、五月の一日、五月の八日と通知が出されております。五月八日付の、人事院勧告を受け給与関係閣僚会議を開催した、このことを踏まえた通知におきましても、総務大臣の談話も添付をして地方に送っているわけですね。総務大臣の談話では、「地方公務員の給与についても、国家公務員の給与を基本とすべきと考えます。各地方公共団体において、地域の実情を踏まえつつ、今回の人事院勧告に係る国の取扱いを基本として対応していただくよう、要請してまいります。」ということで、通知を発出しています。
 この通知において地方に要請している中身というのが、一つは「平成二十一年六月分の期末・勤勉手当等については、各地方公共団体においても、地域の実情を踏まえつつ、国の取扱いを基本として対応されたいこと。」二つとして「期末・勤勉手当等の支給基準日を踏まえれば、速やかに対応する必要があることに留意されたいこと。」というように、もう目の前に期限があるような状況の中で、国と同様の一時金の引き下げをとにかく早くやってくれという中身になっているわけです。
 そこで、総務省に伺いますが、地方においては、地方の実情を踏まえつつとなっていますけれども、独自の調査も行わない形で一時金引き下げの勧告を行った地方人事委員会も少なくないわけです。独自調査なしに引き下げの勧告等を行った人事委員会が幾つぐらいあるのかについてお示しいただけますか。

○松永政府参考人 お答えいたします。
 今回、六十八の人事委員会のうち、二十九の人事委員会が独自調査を実施されておりまして、三十九の人事委員会では独自調査は実施されておりません。
 また、凍結措置を実施するよう勧告等を行った人事委員会は五十五ございまして、十三の人事委員会が凍結措置の勧告等を行うことを見送っているところでございます。
 独自調査の実施の有無が勧告等の実施の有無に直接つながるものではございませんが、独自調査が実施されずに勧告等が行われた人事委員会は三十三団体でございました。

○塩川委員 半分の団体が独自調査もなしに勧告等を行っているということであります。
 これは、四月六日付の通知に沿った事務連絡でも催促しているということもありますから、こういう現状もそこにも反映しているでしょうけれども、そもそも、慌てて調査するということを言っても、調査したとしても十数とかいう事業所への不十分な、極めて少ないサンプル調査でしかないというのも実態であります。こういった人事委員会の勧告等を受けて対応する地方公共団体が引き下げを実施することになりかねない。
 大臣に伺いますけれども、地方の引き下げの理由というのは、自分たちの実態、情勢適応原則と言いながら、地方の実情についての調査もなしに引き下げをやりますというのは、国がやっているから地方もやってくれというその号令に結局はこたえざるを得なかった、国のこういう通知というのが引き下げのいわば理由、言いわけになっている、こういう実態が生まれているんじゃありませんか。地方に対して引き下げを強いるようなことを国が行っているという実態が生まれていると思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○鳩山国務大臣 先ほどから私は〇・二カ月分の引き下げとかカットとかという言い方をしてまいりましたけれども、正確には凍結ということなんでしょうから、それは正確には凍結だというふうに先ほどからの答弁について御理解をいただきたいと思っております。
 五月八日の、これはやはり通知というのでしょうか、「人事院勧告の取扱いについて」の技術的助言、要請でもあるわけでありますが、今先生が読まれたとおりの内容でございまして、地域の事情は踏まえながらも、国の取り扱いを基本として期末・勤勉手当等について対応をしていただきたい、基準日は大体六月一日でしょうから、その前に当然条例改正等が入ってきますので、機敏な、速やかな対応に留意されてくださいという技術的助言を行ったわけでございます。
 人事院勧告というのは官民の比較に基づいて出てくる調査であり勧告でございまして、それは当然全国的な標準にもなり得るものでございますから、ほぼ国と同じようなやり方でやっていただければありがたいという旨の技術的助言をしたものととらえております。

○塩川委員 凍結という話がありましたけれども、では、民間はそれに準拠して下げた場合に凍結という措置になるのか、結局下げっ放しになるんじゃないのかという点でもマイナスの影響を与えるんだということを指摘しておくものです。
 最後に一点伺いますけれども、こういう通知というのが実際には地方を縛るようなものになっている。だからこそ、地方分権一括法のときに、こういう通知については減らしましょうということを方向として決めたわけですね。だけれども、結果として通知が減るどころかふえているという実態にある。
 そういう意味でも、技術的助言などと言いながらこういった形で地方を枠づけするような通知のたぐいについては減らしていくべきだ、このことを決意として伺いたいのと、そもそも技術的助言、通知というのは法的拘束力のない、強制力のないものだと思いますが、その点についても改めて確認いただいて、お答えいただけますか。

○鳩山国務大臣 通知数は、平成十六年百件、十七年百十一件、十八年百十三件、十九年百三十四件、二十年百三十一件。確かに通知は余り多くない方がいいということでもあるんですが、例えば平成二十年においては、個室ビデオ店の火災関係が九件、救急搬送で五件、それから税率の変動に伴う買い置きガソリンの保安関係四件、これはガソリンの税金が一月だけ変わったときのことを受けているんだろうと思いますが、そういう必要性があって技術的助言が減らないという部分があります。
 これは地方自治の根本にかかわる問題なので、私もよくわからないんですが、予算委員会へここのところずっと出ておりますが、私が言われるのは、例えば妊産婦健診だって、どうして地方自治体によってばらつきがあるんだ、地方財政措置してあるのにやらないということはおかしいじゃないか、あるいはがん検診等も、地方財政措置してあるけれども全然自治体によって違うじゃないかと。そういうときに、ですから、基準財政需要の積み方についてはホームページで明らかにすべしと言われて、確かにそうだというような答弁をしておるわけです。
 だから、地方自治といろいろな財政措置との関係というのは非常に微妙で難しい問題がある。やり過ぎれば地方自治を侵すけれども、全く技術的助言をしないとせっかくのいい政策が全く実現されない。非常に難しい、微妙な部分があるということを御理解ください。

○塩川委員 地方財政措置の問題は、交付税を減らしてきているから地方がやりたくてもできないというところが大もとにあるわけで、そういうことこそ是正をすべきだ。地方を枠づけするような、縛るようなことはきっぱりとやめる、こういう点についても、給与等についてもそのことを申し上げて、質問を終わります。

【反対討論】

○塩川委員 日本共産党を代表して、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。
 国家公務員の特別給は、毎年五月から実施される職種別民間給与実態調査において、前年の八月からその年の七月までの一年間に民間企業で支払われた一時金の実績を精確に把握し、官民較差を算出した上で決めてきました。ことし六月の夏季一時金は、既に昨年の人事院勧告で決まっています。景気の影響で民間の夏季一時金がカットされた年は、十二月の冬季一時金で調整してきたわけです。
 ところが、人事院は、突然、一カ月前に調査し、夏季一時金を事実上削減する勧告を五月に出しました。これは、今までのルールを一方的に踏みにじるも
ので、道理がなく、容認することはできません。
 調査のずさんさという点でも問題であります。
 対象企業は従来の五分の一で、対面調査は行われていません。しかも、民間企業で一時金の労使交渉が妥結した企業は一割にすぎません。人事院みずからが「データ確保の精確性等の不確定要素がある。」と認めるように、勧告制度が持つ精確性を損なうことは明らかです。
 一時金の削減が社会的に与える影響という点でも重大です。
 本法は、国家公務員の夏季一時金を〇・二月、平均約八万円削減するものですが、その影響は、国家公務員、地方公務員や私立学校、社会福祉施設など約六百万人の労働者のみならず、夏季一時金の労使交渉が妥結していない九割近くの民間企業の労働者の賃金にも否定的な影響を与えるものです。
 今、深刻な景気悪化の中で、外需頼みから内需主導の経済政策に切りかえるために、国民の家計を応援する政治こそ求められています。しかし、政府の対応は、消費税増税つきの選挙目当てのばらまきを行う一方で、労働者の懐を冷え込ませる一時金引き下げを行います。これでは、国民の暮らしも経済も立て直すことはできません。
 なぜこんなに急いだのか。それは、与党の担当者が、「人事院に早急な調査と勧告の前倒しの働きかけを行ってきました。今回の人事院の臨時調査もそれを受けてのことではないでしょうか。」と雑誌で述べているように、与党の動きが政治的圧力になったことは明らかです。労働基本権制約の代償措置としての人事院の中立公平な第三者機関という立場を投げ捨てるものと言わざるを得ません。
 以上、反対討論を終わります。