<第171通常国会 2009年06月19日 総務委員会 23号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、日本郵政にかかわりまして、雇用労働問題に係る質問をいたします。
 この間、派遣切りや期間工切りなど非正規切りが社会問題となりました。日本郵政におきましても、郵便事業会社においてJPエクスプレスが発足をするのに伴い、正社員の出向ですとか、ゆうメイトの賃下げや雇いどめの問題などが起こっております。日本郵便事業会社の子会社の日本郵便輸送においても非正規切りが行われているということを指摘して、質問したいと思っております。
 日本郵便輸送というのは、旧日本郵便逓送を中心に郵便物の拠点間輸送を担ってきた複数の会社を再編統合して設立をされた、日本郵便事業会社の一〇〇%の子会社であります。そこで質問いたしますが、旧日本郵便逓送、現日本郵便輸送において二〇〇四年から派遣が活用されるようになりましたが、そのきっかけ、理由は何かをお答えください。

○伊東参考人 お答えいたします。
 先生御指摘の、日本郵政公社におきまして、平成十六年十一月から、当時の日本郵便逓送でございますが、派遣を行うきっかけになりました事業でございますが、当時の郵政公社におきましては、ゆうパックの取り扱い個数を拡大しようということでいろいろな対策をとられてきました。その一つといたしまして、コンビニエンスストアにおける集荷というものを拡大していくということを行ったわけでございます。
 その際に、コンビニエンスストアは二十四時間あいてございますので、コンビニエンスストアで引き受けられましたゆうパックを、例えば朝四時までに引き受けたものは当日配達するとか、あるいは夜の九時までに引き受けたものは翌日の午前に配達するとか、もちろんこれはすべての地域じゃございません、試行的な形で行われたわけでございますが、その委託を当時の日本郵便逓送株式会社が受けました。
 試行ということもございますので継続的に受託されるかどうかが明らかでないということも踏まえまして、当時の日本郵便逓送株式会社としては派遣職員による出向法を採用したというふうに聞いているところでございます。

○塩川委員 これはコンビニに設置をされましたポストから郵便物の集荷も行うことになっていると承知していますが、そのとおりでしょうか。

○伊東参考人 お答えいたします。
 もちろん、ゆうパックを引き受けて、それを集めるということによるゆうパックの利便性がメーンでございますが、あわせまして、ポストも設置して、そこで手紙、はがきを出していただき、それも取り集めるということも行っております。

○塩川委員 ゆうパックの事業と同時に、郵便のユニバーサルサービスの確保に当たっても重要な仕事をする、そういう業務を派遣業務という形で行っておったわけであります。
 二〇〇四年の十一月に、郵政公社は、今お話しのようにゆうパックのコンビニ集荷を開始しました。当初はローソンだけだったものが、サンクスなど計五社に拡大をし、ゆうパック取り集めの人員確保が必要になったために派遣社員の活用が始まったわけであります。
 派遣先の当時の日本郵便逓送に対し、派遣元のクレイブは郵便物の集荷業務に従事する労働者派遣業務を開始しました。中野営業所で勤務をしていた派遣労働者は、二〇〇七年十一月に日本郵便逓送の直接雇用、期間臨時従業員となり、その四カ月後の二〇〇八年三月に再びクレイブの派遣社員に戻っております。しかし、ことしに入って同業務は他の請負会社に委託をされて、中野営業所に勤務をしていたクレイブの派遣社員は三月末ないし五月末に雇いどめとなっております。
 実態は、二〇〇四年十一月から〇九年三月まで派遣期間上限の三年を超えて同一業務に勤務しており、明確な違法派遣だという事態であります。この件について東京労働局から日本郵便輸送に対し是正指導書が出されていると承知をしておりますが、どのような中身なのかをお答えください。

○伊東参考人 お答えいたします。
 先生御指摘の是正指導書でございます。ことしの五月十四日、東京労働局から日本郵便輸送株式会社あてに出されたものでございます。具体的には、労働者派遣法第四十条の二、これは雇用の期間、原則一つの業務につきましては一年から三年という期間があるわけでございますが、それに関しての違反ということで是正指導書が出されました。
 先ほど先生からも御指摘がございました、平成十六年十一月十日から締結しておりました派遣契約におきまして、三年が過ぎた段階で実はクーリング期間というのがございまして、三カ月と一日クーリング期間があればさらにまた派遣労働者として雇用できるという仕組みがあるわけでございますが、このクーリング期間の設定に問題があるということで指摘を受けまして、当該契約を中止すること、あわせまして、今回と同様な形態がないか点検を行い、同様の形態がある場合は適正な是正措置を講ずることという是正指導書を受けたと聞いているところでございます。

○塩川委員 今回と同様の形態がないか点検をということで、その点についてはいかがですか。今回と同様の形態がほかにあるかどうかについての事実関係を教えてください。

○伊東参考人 お答えいたします。
 日本郵便輸送株式会社におきましては、先ほど御説明いたしました是正指導書を受けまして、必要な措置というものを今とるべく準備をしているというふうに聞いております。
 まだ現在いろいろな作業を行っているというふうには聞いておりますが、先ほど御指摘がございました、同様の形態があるかどうかということにつきましては、現時点ではそういうふうな形態はないと聞いております。
 ただ、先ほど申し上げました三カ月と一日以上のクーリング期間の設定に仮に問題がないとしても、通算すると長期にわたる派遣ということにもなりますので、何らかの形で、もちろん大前提といたしましては、それぞれの派遣労働者の適切な雇用の安定の措置を講じた上でというのがこの是正指導書にも書いてございますので、それらを踏まえた上で、一定の時期に中止をするということで今検討しているというふうに聞いているところでございます。

○塩川委員 日本郵便輸送が明確な派遣法違反であるわけですし、それを踏まえて日本郵便として労働者の直接雇用、正社員化を行うべきだと考えますが、その点についてお答えをお願いしたい。

○伊東参考人 お答えいたします。
 郵便輸送株式会社、それから、当然のことながら郵便事業株式会社、また郵政グループ全体でございますが、こういった是正指導を受けるようなことがないように、当然、まさにコンプライアンスの話がもうずっと出ているわけでございますから、そういう観点からも今後適切な対応をしていきたいと思っているところでございます。
 ただ、作業の形態によりまして、すべて正規社員というわけにもまいらない部分がございますので、それぞれの作業の形態にふさわしい形、派遣も、あるいは非正規社員も正社員も含めた形での業務運営ということに私どもは努めていかざるを得ないのではないかというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 違法派遣を中止するのは当然のことで、結果とすれば郵便輸送が直接雇用していたという実態になるわけですから、そういう意味でも、直接雇用、正社員化を行うべきだ。今、派遣云々の話がありましたけれども、そういう対応ではなくて、直接雇用、正社員化を図るという立場で、こういうコンプライアンスが大問題となっているときだからこそ、こんな違法行為はきっぱりと是正をするという姿勢を示すことが必要であります。
 現に、労働者の方の訴えでも、雇いどめに遭った方は、日本郵便輸送で業務がなくなったわけではなく、請負労働者を受け入れている、結局、請負労働者に切りかえることで、さらに安価な労働力に切りかえるために私たちを切った、こういうやり方は許せないという怒りの声を上げているわけですから、こういった不当な立場に身を置かれている労働者に対して、しっかりと郵便輸送における直接雇用、正社員化を行うべきだ。この立場を改めて明らかにしていただきたいと思いますが、いかがですか。

○伊東参考人 先生たびたび御指摘いただいております派遣法に基づく適正な業務の運営ということにつきましては、改めて申し上げるまでもなく、郵便輸送会社におきまして今後確実に行われるようにということで、郵便事業会社あるいは日本郵政グループとしても対応していきたいと思っているところでございます。

○塩川委員 大臣に伺います。
 この違法派遣というのは、郵政民営化を前提とした旧公社時代の業務拡大の中で生まれた違法行為だったわけであります。新規業務に新たに参入するということをきっかけとして、そのための人員が必要だということでスタートしたものが実態として違法行為につながったという点でも、こういう違法行為を放置せずに、郵政の一〇〇%子会社である日本郵便輸送のこの実態を把握して、きちんとした直接雇用、正社員化につながるような是正指導を行っていただきたい。お答えをいただきたいと思います。

○佐藤国務大臣 労働者派遣法の問題ということでございますので、労働者派遣法というのは厚生労働省が所管をするわけでございますけれども、仮に労働者派遣法に違反するような行為がなされているのであれば、これは許されない事態であるというふうに思います。
 法令を遵守することは重要でございまして、御指摘の事案につきまして、ことし五月に日本郵便輸送株式会社の元派遣社員が日本郵便輸送株式会社を告訴して、提訴がなされていると伺っておりますので、今後の司法の判断を見守っていきたいと思いますし、同時に、しっかりと指導してまいりたいというふうに思っております。

○塩川委員 そのしっかりと指導していく中身のことですけれども、冒頭確認しましたように、郵便輸送そのものが、ゆうパックももちろんありますけれども、郵便物の取り集め、運送そして配達という形で、そういう業務を実際担っているわけですね。そういったいわば郵便のユニバーサルサービスを確保する上で不可欠な業務を担っているのが日本郵便輸送であります。
 ですから、郵便のユニバーサルサービスの確保を図る上でもこの郵便輸送の業務や経営実態を把握することは欠かせないと思うわけで、こういう違法行為があった実態についてきちんと調査をするということについて、総務省として行うべきではありませんか。

○佐藤国務大臣 どこまでできるかわかりませんけれども、先生からいただいた御意見をもとに、総務省としてできることをこれからしっかりとやっていきたいというふうに思っております。

○塩川委員 平成二十年度の郵便事業会社の事業計画を見ても、日本郵便輸送を一〇〇%子会社とすることでみずから運送業務を行う形態への移行を志向すると掲げているように、郵便輸送を子会社化することによってみずから運送業務を担うという点ではまさに不可分な関係にあるわけであります。そういう意味でも、こういった実態について調査をし、ふさわしい指導を行っていただきたい。
 大臣の率直なお気持ちをお聞きしたいんですけれども、こういった不当な立場に置かれている雇いどめに遭った労働者の方に対してかける言葉をぜひお聞かせいただきたいと思うんです。直接雇用、正社員化という形で雇用の安定を図るということを望んでおられるわけで、そういう思いにこたえた御答弁をぜひいただきたいと思います。

○佐藤国務大臣 こういうことがあるとすれば、先ほども申し上げましたように、本当に許されることではないというふうに思いますし、今後、こういうことがないこと等々、また先生の御指摘等々を踏まえて対応してまいりたいと思っております。

○塩川委員 これは違法行為ということで労働局が指導している案件ですから、そういう点でも、きちんとした是正、直接雇用、正社員化を図るという点で取り組みをお願いしたいということを申し上げて、質問を終わります。