<第173臨時国会 2009年12月01日 総務委員会 3号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 郵政民営化凍結法案について質問をいたします。
 利用者のサービスを低下させて、また、国民共有の財産を食い物にしてきた郵政民営化を根本から見直すことが必要であり、郵政株式売却の停止は当然のことであります。
 そこで、この法案ですけれども、株式売却の停止と同時に、かんぽの宿やメルパルクなどの資産の売却の停止も行うという中身になっております。そこで亀井大臣にお伺いいたしますけれども、かんぽの宿やメルパルクの資産売却を凍結する理由は何なのか、その点についてお答えいただけますでしょうか。

○亀井国務大臣 委員御指摘のように、抜本的な見直しを遂行していくためには、やはり資産を凍結するという措置をとっていく必要があると思います。
 残念ながらかんぽの宿を含めてそうしたものの処分というのが極めて不自然、不適切な形でやられてきておるという状況も踏まえて、こちらをきっちり措置した上で改革に取り組んでいきたい、このように考えております。

○塩川委員 御答弁にありましたように、抜本的見直しのためには資産の凍結が必要だ、この間のかんぽの宿をめぐるような処分が不自然、不適切であったのではないか、こういうことでございました。
 そういう点でかんぽの宿やメルパルクの資産売却には多くの疑惑がありました。この委員会でも随分この問題で質疑が行われてきたところであり、その点では原口大臣もその先頭に立ってこられたわけでございます。今回の法改正は、やはりこういう疑惑の解明と一体であってこそ意味があると考えております。
 原口大臣は、日本郵政の保養宿泊施設かんぽの宿の一括売却問題で、民主党、社民党、国民新党の三党の疑惑追及プロジェクトチームの座長としても追及の先頭に立ってきた議員でございました。さらに、五月の十五日には、原口議員を初めとした三党の有志の議員の方が、かんぽの宿などの施設を不当に安い価格で売却して会社に損害を与えるおそれがあったとして、西川社長らを特別背任未遂などの容疑で東京地検に刑事告発されておられます。こういうお立場で疑惑の解明を進めてこられた。
 そういう方々が今回新しい政権を担うということになったわけですけれども、新政権になってから、この立場でかんぽの宿を初めとした資産売却をめぐってどのような真相解明を行ってこられたのか、その点について原口大臣にお尋ねします。

○原口国務大臣 塩川委員にお答えいたします。
 塩川委員も、まさにその先頭に立って疑惑の追及をされてこられました。この立場になりまして、まさに監督をする立場でございますから、私たちが野党時代に要求をしていたさまざまな資料をまずは開示するようにということで指示をしたところでございます。
 大きなところから言うと、これは福田筆頭も随分この委員会で、あるいは塩川委員もお話しになりましたけれども、そもそもこの民営化に至るプロセス、そのプロセスにおいて十九回アメリカのさまざまな主体と当時の竹中氏が会談を持った、その中身については、これは増田総務大臣でしたが、すべて開示をしますということでしたけれども、いつだれとやったかということは黒塗りで開示をされましたけれども、その中身についてはもうなくなっているということでございました。なくなっていると。文書の保存期間がまだ過ぎてもいないのに、なくなっているなんということはないということで再調査を指示したところでございます。
 それから、かんぽの宿等の売却の問題で言うと、そもそも、塩川委員、簡易生命保険法の百一条には加入者福祉施設となっておりまして、この三項において、「第一項の施設に要する費用は、公社の負担とする。ただし、その一部は、公社の定めるところにより当該施設の利用者の負担とすることができる。」、こう定めてあったにもかかわらず、いつの間にか赤字ということにすりかえられて、そして、塩川委員が先頭に立って追及をしてくださったような不透明な売却に至る。この売却に至る経緯がわからないんです。この売却に至る経緯をしっかりと文書で開示するように、そして納得のいく説明ができるように、ここのところに今中心を移しております。
 また、この以外でもカードの問題もございました。あるいはJPエクスプレス、ここについては先ほど重野委員に御答弁させていただきましたけれども、なぜこんなに早急に決める必要があったのか、その資料がないんです。
 本当にこんなことでいいのか。さらに私たちは開示と説明を強く求めて、この総括なくして新郵政が国民の郵政事業における権利を保障できるということを自信を持って総務大臣の立場としては言えない、そう考えておりますので、また御協力をよろしくお願いいたします。

○塩川委員 こういう取り組みを一歩一歩ぜひ進めていただきたいと思うんです。
 そういう点でも、これは、私も本会議で質問もいたしましたし、原口大臣も記者会見の中でこういうかんぽの宿の問題などについて疑惑を解明するチームをつくるというお話がございました。かんぽの宿を初めとした疑惑解明の特別調査チーム、こういうものを立ち上げるというお考えはございますか。

○原口国務大臣 これは先ほど亀井大臣もしっかりと追及をしていくというお話をされましたけれども、そもそも、総務省は日本郵政に対して業務改善命令も出しています、それから、それについての改善計画をまさに検証する立場にあります。省を挙げてこの分野についてのことをあいまいにしない、そういう決意を持っているところでございまして、特定のチームにするかどうかはまだこれからの判断でございますけれども、私たち自身の、総務省自身のコンプライアンスも問われていることだ、大変重要な御指摘である、このように考えております。

○塩川委員 そういう点では、郵政民営化の総括ということに当たりまして、新たな利権についてのさまざまな疑念があるわけですから、そういうことについてきちっと整理もし精査もする、そういうチームをぜひ立ち上げていただきたいと考えております。
 そういう点でも、この間のいろいろな疑惑についてもう一歩踏み込んだ対応という点で、再調査、改めて資料の要求をされておられるということですが、現段階で、例えばかんぽの宿の問題ですとかクレジットカードの話も一言ございました、また、旧郵政公社時代の三回にわたるバルク売却の問題についても、これも多くの疑問のあるところであったわけであります。こういった一連の問題について、改めて郵政会社に対して報告徴求を求めるとか、こういう総務省としての権限も活用した対応というもののお考えはございますか。

○原口国務大臣 これは前政権におきましても、今委員がおっしゃるような報告徴求をしているわけです。しかし、ここでも、それこそ委員が追及してくださったように、肝心かなめのところに行くとその書類がないということになるわけです。
 この委員会で明らかになったのは、まさにオリックスの関連会社でございましたけれども、そこに、決定をした人が、その決定書の中にいわゆるアンパイアの人間がその先の企業に行くということも明らかになりましたが、なぜそこに至るかという書類がないんですよ。ないということは、普通の会社じゃあり得ないんです。あり得ないから、もう一回捜してくださいと。
 新体制になりました。新しい齋藤社長は、まさに今までの総ざらいをする、そして、これは総ざらいだけに力をかけているわけにもいきません、しっかりとした総括を早急に行って、未来に開く、亀井大臣がよくおっしゃるように国民の負託にちゃんとこたえられるような体制に新しい社長の体制のもとでなるものだと思っておりますが、今の委員の御指摘を踏まえてさらに精査を続けていきたいというふうに考えております。

○塩川委員 郵政改革基本法を来年の通常国会に出されるということでございますので、当然それに向けて、今の日本郵政の現状がどうなっているのか、このことを国民的に明らかにするというのがいわば抜本的な改革を行う前提として必要だ。そういう点でも、必要な調査をしっかりやっていただいて、国民の前にそれを明らかにしていただきたいということを改めて要望するものであります。
 次に、郵政民営化によるサービス低下の検証の問題についてお尋ねをいたします。
 十月二十日の閣議決定、郵政改革の基本方針で、「郵政事業の抜本的見直しについては、国民生活の確保及び地域社会の活性化等のため、日本郵政グループ各社等のサービスと経営の実態を精査する」とありますが、この各社のサービスの実態を精査するという中身がどんなものかということについてお示しいただけるでしょうか。

○原口国務大臣 お答えいたします。
 十月二十日の閣議決定において、郵政事業の抜本的な見直しに当たっては、今委員が御指摘のように、「日本郵政グループ各社等のサービスと経営の実態を精査する」としたものでございます。
 この中身は、今、日本郵政グループを監督する総務省としては、現在、民営化前後における、前後ですね、前後における経営の状況、サービスの改廃等、それから日本郵政グループから財務データ、例えば承継計画がありました、その承継計画とどれぐらい乖離しているのか。コンビニもできますわ、国際ロジスティックもできますわ、そんな話が、バラ色のことが出てきました。しかし、一体それはどうなったのか。
 そして、郵便局ネットワークというのは、言うまでもなく、局会社は、委員御案内のようにゆうちょ銀行等の手数料で成り立っています。この手数料が先ほど御指摘にあったような低下する状況になると、ネットワークそのものも維持できない。いわゆるサステーナビリティーがどこまであるのかということについても精査をしているところでございまして、しかるべき精査が終わりますれば、ヒアリングを今実施しているところでございますが、可及的速やかにこの委員会、国会に御報告をさせていただきたい、このように考えております。

○塩川委員 郵政民営化を見直すに当たって、基本方針でも書かれていますように、国民の権利としてネットワークを利用しようということでございますので、国民、利用者の立場からこの現状がどうなのかということをしっかりと把握することが必要だ。そういう点で、民営化によって利用者サービスがどのように低下をしたのか、そこの実態調査をぜひともやっていただきたいと思うんですが、そういう調査をぜひこの機にということで要望したいんですが、いかがですか。

○原口国務大臣 全くおっしゃるとおりです。
 ですから、私たちは、郵政事業における国民の権利を保障する。これは今ようやっと人口に膾炙するような言葉になりましたが、塩川委員御案内のとおり、金融社会権。つまり、広くあまねく等しく多くの人たちがみずからの決済機能を保障される。こういったこともとても大事でございまして、この分社化ありきの民営化によってサービスがよくなったところがどこがあるのか。むしろ逆で、遠くなった、地域においては集配局もなくなった、今までのサービスができなくなった、そういうお声をたくさんちょうだいしておるところでございまして、まさに委員がおっしゃるように、国民の視点からの検証、見直しを行ってまいりたい、このように考えております。

○塩川委員 そういう利用者サービスという点では、今金融社会権というお話がございましたように、全国で金融決済機能を利用することができる、そういう場をしっかりと保障する。そういう窓口サービス、そこには当然のことながら、郵貯に限らず保険や郵便の事業の仕事、そういう窓口サービスをしっかりと保障するということ。
 と同時に、郵便事業において、この間の集配局の統廃合がございました、そのために遅配の問題ですとかさまざまな不便が生まれています。
 そういった窓口サービスと郵便事業の両面からしっかりとした調査を行っていただきたいと思いますが、そういうお考えでよろしいですね。

○原口国務大臣 まさにおっしゃるとおりです。
 郵政民営化の委員会で、あれは我が党の安住委員だったと思いますが、「あすなろ村の惨劇」という紙芝居を出しました。あのとき、それをごらんになった国民の皆さんは、まさかこんなことにまでという思いがあったと思います。逆に言うと、当時の与党の皆さんは、郵政民営化ってこんなにバラ色なんだという紙芝居をおつくりになりました。しかし、現実は、今塩川委員がおっしゃったように、地域からさまざまなサービスが奪われているわけです。公の、まさに地域のよすがであったものがなくなっている。
 このことを、単に金融事業だけではなくて、三事業全体で検証をしてまいりたい、郵便事業についても当然のことながら検証してまいりたい、このように考えています。

○塩川委員 新たな利権の疑惑の問題と同時に、国民サービスの低下という現状を浮き彫りにするということが郵政の改革を行う上での国民的な合意を図る上でも極めて重要な作業になってくると思いますので、そういう調査内容についてもしっかりと国民の前に明らかにしていただいて、国民的な議論を促すというところにつなげていただきたいと考えております。
 最後に、分社化についての問題でお尋ねしたいんですが。
 これは、毎年末に政府の中で税制についてのさまざまな要望のやりとりがございます。総務省からは、二〇〇五年から、ゆうちょ銀行と郵便保険会社かんぽ生命が郵便局会社に業務委託をする際に支払う手数料に係る消費税の非課税措置の創設を要求しております。
 そもそも、消費税の課税が行われるというのは、郵便局会社とゆうちょ銀行、かんぽ生命が別会社になっているからであるわけですけれども、こういうのを考えても、改めて四分社化を見直して、ゆうちょ銀行、郵便保険会社を含めた一社体制にするということがこういう消費税の課税をなくすことを含めて合理的なあり方ではないかと考えていますが、その点についてはいかがでしょうか。

○亀井国務大臣 今、委員御指摘のように、もう極めて明らかに業務が非効率になっていく。いろいろなサービス面においてもがたがたになっていくということをわかっておりながらとあえて私は申し上げているんですが、わかっておりながらそれを強行してしまった。その今の現実を、先ほど来いろいろ議論されておりますが、現実をしっかりと検証した上で今後の事業展開について検討をしていくべきだ、このように考えておりますので、今後の事業展開につきましては、税制その他を含めて、この点を抜本的に我々としては取り組んでまいりたい、このように考えています。

○塩川委員 新たな姿については今後ということでございますので、私たち、本会議でもお話ししましたし、基本方針のあり方についての提案も持っております、ぜひそういった議論を重ねる中で、国民サービスをしっかりと保持し、利権などには無縁な体制につくっていくという郵政改革に取り組んでいきたいと考えています。国民サービスを後退させ、新たな利権を生み出さないという、そういう改革に向けてまずは郵政民営化を凍結するということは当然だということを改めて申し上げます。
 同時に、今回の審議の過程については一言ございます。
 今回の会期延長の理由は、与党側からは、郵政民営化の凍結法案を成立させるということで、現に閣法として三本残されておりましたが、実際、延長になってから審議を行うのはこの郵政民営化の凍結法案一つ。そういう点でも、私は、延長までして審議をするというのであれば、十分な審議時間を保証することが当たり前だ。それにもかかわらず、きょうの運営を見ましても、きょうの朝、提案理由説明が行われ、質疑が行われ、そして採決。そして、緊急上程まで行う。こういう審議日程になっているというのは極めて重大なやり方であり、こういうことについてあってはならないということを強く申し上げなければなりません。
 この総務委員会におきましては、そもそも、本来は大臣などの所信に基づいてその質疑を行う、大臣所信の質疑の機会も現時点までないまま法案のみを優先して審議をしてきた。そういう過程においても、法案そのものについて私どもはこれを同意するものではございますが、しかし、こういう委員会運営、審議の過程については同意できないということについて厳しく指摘をし、質問を終わります。