<第174通常国会 2009年01月25日 総務委員会 1号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 補正の関連の地方交付税法の質問をいたします。
 今回の法案について、私ども、国税の減収による地方交付税総額の減少分の補てんは当然であると考えます。しかしながら、その財源が問題である。補てんされる財源は国の責任で確保されなければならない。しかしながら、地方交付税の減少額の二兆九千五百十四億七千五百万円のうちの半分は、実質的には地方の負担となる。これは国の責任の放棄であり、容認できない。昨年、同様の法案が出されたときにも私どもは反対をいたしました。このことをまず冒頭に申し上げておくものであります。
 その上で、交付税制度について質問させていただきます。そういう点でも、地方を疲弊させた小泉構造改革路線の総括が求められているんだろうと思っております。特に小規模団体の地方財政措置、交付税措置に関連して質問をいたします。
 資料を配付させていただきました。
 総務省提出資料ということで、地方の一般歳出、決算ベースの削減状況ということで、平成十一年度七十九・一兆円が、平成十九年度六十六・三兆円、十二・八兆円の減額、これは財政力指数あるいは人口規模で見た表となっております。これは一昨年、当委員会でも予算委員会でも、原口大臣が当時、この二年前のときの同趣旨の資料を使って質問しておられたのを私も記憶しております。それを十九年度まで引っ張ったものとなっているわけであります。
 ごらんいただきましたように、特に市町村で見れば、小規模自治体ほど削減率が高い。全市町村が一一・六%削減に対して、五万人規模が一三・八、五千人規模ですと三二・〇%の削減ということで、小規模団体ほど大きな影響が出ているということであります。
 そこで、大臣に伺いますが、結果として、小規模自治体ほど住民サービスの水準を引き下げざるを得ない状況が生じているのではないのか、この点について大臣のお考えをお聞かせください。

○原口国務大臣 塩川委員にお答えいたします。
 このグラフは塩川委員と御一緒に、野党の当時、野党の理事として政府に求めて出てきたものでございまして、まさに塩川委員がおっしゃるように、小規模自治体、特に財政力の弱い自治体に大きなしわ寄せが来ている。委員の認識と同じ認識を持っております。

○塩川委員 当時、原口議員が質問した中でも、小規模団体での住民サービスの低下について、総務調査室の個別の自治体へのヒアリング調査も踏まえて、三位一体改革のもとで交付税が大幅に削減された人口四千人未満の町村においての公共サービスの後退の事例を具体的に紹介しておられました。つまり、財政力の弱い団体ほど住民サービスの水準も後退せざるを得なくなっているのではないのか、その点について改めてお聞かせいただけますか。

○原口国務大臣 まさにおっしゃるとおりで、小規模な市町村は事業所数等が少なく、法人住民税が歳入に占める割合も低いため、まさに、近年までの景気回復等に伴う地方税収の増加による恩恵も乏しい。その上に、今おっしゃったような三位一体改革の大きなしわ寄せになって、住民サービスそのものが危機を迎えているし、公共サービス格差が広がっている、こういう認識をいたしております。

○塩川委員 公共サービスの格差、つまり、小規模団体であればあるほど住民サービスが後退せざるを得ないような状況に至っている、このことが言えるんだろうと思っています。
 そういう点で、この間、過疎法の議論もしているものですから、過疎団体の交付税措置がどうなっているのかという推移の資料を総務省の方にもつくっていただきました。この場にはちょっとお持ちしていませんけれども、比較がしやすいように、合併していない過疎自治体の十年、二十年のスパンでの交付税交付額の数字を調べてみますと、二〇〇〇年度と二〇〇七年度を比較しますと、過疎団体そのものは全体として規模が小さいわけですから、この七年間で、全体で八〇・一八%減っている。一万未満をとると七九・五%、四千人未満をとると七八%。そういう点でも、小さければ小さいほど交付税の削減が大きくなっているということが挙げられています。
 そこで、大臣に伺うんですけれども、こういった小規模自治体ほど交付税が削減をされてきている、これはなぜなのか、この点についてお答えいただけないでしょうか。

○原口国務大臣 これは、先ほど幾つか申し上げた、小規模市町村の事業所数の状況と、それからもう一つは、財政力指数が低い傾向にあるために、地方交付税の歳入に占める割合が高いため、三位一体改革による交付税額の減少による影響をもろに受けているということだと思います。
 さらに加えて、小規模の市町村のコストを反映する段階補正が過度に縮減されているということでございまして、段階補正というのは人口一人当たりの行政コスト差を反映する措置でございますけれども、これが影響したものと考えております。

○塩川委員 三点述べていただいた、そういう意味でも、私、この段階補正の見直しの影響というのは、これはやはり小さくないということを率直に思っております。
 この間地方団体でお話を伺って、高知県などにも伺った際にも、過去、高知県としてもこういう段階補正の見直しについてコメントを出されております。そこを見ますと、補助金の廃止、縮減とともに段階補正の縮小などが進むと、自主財源が極めて乏しい本県の市町村にはさらに厳しい影響が生じる、このように述べておられます。そういう点でも、補助金の削減とともに段階補正の見直しというのが、小規模自治体の地方交付税を大きく削減し、住民サービスの水準を引き下げる要因の一つとなっていると思っています。
 この点で、二〇〇二年から三年間、この段階補正の見直しが行われました。当時、片山大臣でございましたけれども、片山大臣が段階補正を見直す理由として何と述べていたか。
 これは〇一の骨太方針で言っていることですけれども、段階補正が小規模団体の合理化や効率化への意欲を弱めることになっている、だから見直しを図るんだという趣旨のことを述べているわけですね。片山大臣も、段階補正が小規模自治体の効率化や合理化や健全化への意欲を阻害している、もっとインセンティブを与えるような仕組みを考えたと。
 要するに、ペナルティーをかけるかのようなやり方をしているんじゃないのかという批判を私たちはしたわけですけれども、そう言うと、片山大臣は、今までの段階補正が過度に優遇だという受け取られ方をされると大変ですよ、過度の部分があるとすれば、それは実態と比べてみて過度は直した方がいいんじゃないですか、その方が段階補正は長続きしますよと地方団体の方に申し上げてきたんだということを言っているわけです。
 しかしながら、現実を見れば、こういった段階補正が小規模団体を過度に優遇した措置などではない、小規模団体における住民サービスを維持する、ナショナルミニマムを保障するための必要な措置だったのじゃないのか。このことが改めてはっきりしたんだと思うんですが、大臣のお考えをお聞かせください。

  〔委員長退席、黄川田委員長代理着席〕


○原口国務大臣 私は塩川委員と同じ認識を持っています。人口規模が小さくなればなるほど一人当たりの経費が割高となるのは当たり前で、先ほど片山元大臣のお話がありましたけれども、私は逆に、市町村の、特に小規模の市町村のコストを適正に反映させるように、来年度の交付税算定に向けて、段階補正の考え方の抜本見直しを検討させているところでございます。

○塩川委員 小規模団体のコストを適正に反映した、段階補正についての抜本的な見直しということですけれども、これは具体的にどんなふうにお考えなんでしょうか。

○原口国務大臣 先ほど委員がお話になりましたように、どんなに行政改革努力をしても、ここから下には下がらないという基準がありますね。そして、公共サービス基本法、これも委員とここにいらっしゃる皆様の御協力をいただいて制定することができましたけれども、公共サービスにおける国民の権利を保障するための最低の基準というものがあるはずでございまして、その基準に沿って、必要なコスト、人件費であるとか、地域の皆さんにサービスを行うためのさまざまなコストを適正に反映できる、そういうものにしていきたいと考えています。

○塩川委員 そういう点では、この間、小規模団体に対する措置として、昨年度、今年度と実施をされてきた地方活性化や地域雇用創出、こういった小規模団体の財政需要を反映する交付税措置が行われてきたわけですけれども、単年度の措置でしかなかったわけでありまして、そういう点で、条件不利地域に対応した安定的な補正措置が必要じゃないかという点で、今大臣おっしゃったのはそういうことに当てはまるんでしょうか。

○原口国務大臣 まさにおっしゃるとおりで、これは当時の藤井財務大臣ともずっと議論をしてきましたけれども、交付税を今度一・一兆円、地方の自主財源を十一年ぶりにふやす。その中でも一番考慮すべきところは、今塩川委員がおっしゃった条件不利地域、特に小さな自治体、過疎の地域、そういったところへの目配りをしっかりやるようにという議論をしてきたところでございます。また今後、それを交付税の基準の中に反映させていきたい、こう考えています。 

○塩川委員 単年度での措置ではないということでよろしいわけですね。

○原口国務大臣 安定的に、しっかりと地域が予見可能性ができるような、そういう交付税を目指していきたいと考えています。

○塩川委員 条件不利地域の実情を踏まえた、交付税本来の財源保障、調整機能を発揮する、こういった交付税制度に戻すべきで、小規模団体に対する安定的な交付税措置を強く求めるものであります。
 次に、交付税に関連してですけれども、段階補正の見直しですが、私どもは当時、段階補正の見直しが、市町村合併に向けて小規模市町村への交付税を削減する、兵糧攻めを強化しようとするものだということで反対をいたしました。合併のためのむちに使われてきた。これに対して当時の片山大臣は、私はむちと認識していないということを繰り返して述べておられたわけですけれども、現実はどうかといえば、あめとむちを駆使するということで合併が加速をした。
 ぜひ大臣に伺いたいのは、この段階補正の見直しというのが市町村合併推進の道具とされたんじゃないのか、その点についての大臣の認識はいかがですか。

  〔黄川田委員長代理退席、委員長着席〕


○原口国務大臣  委員がおっしゃるように、あめとむち、あめの方は恐らく合併特例債だったんだと思いますね。それから、むち、これは表現がどうかと思いますけれども、やはり大変厳しい、このままだと皆さんは自分たちで今の圏域を守れませんね、だから合併する以外ありませんねと、いわゆる兵糧攻め的な部分がなかったとは私は言えないと思っています。

○塩川委員 当時の全国町村会のを見ましても、段階補正の見直しというのが合併を強制するものとして反対の声を上げておられます。そういう意味でも、この段階補正の縮小が小規模自治体の切り捨てにつながり、国による合併促進のむちとなったことは明らかで、こういうことはもう繰り返さないということを改めて申し上げておくものであります。
 それと、交付税を国の政策誘導に使うようなことは間違いだ、このことを強く申し上げてきたわけで、その点でも、この段階補正というのはそういう形で使われたのだということを私たちは厳しく批判もしたわけであります。
 あわせて、この間行われてきた交付税措置との関係でいいますと、「頑張る地方応援プログラム」の問題がございます。二〇〇七年の「頑張る地方応援プログラム」については、当時、民主党としても反対をされておられます。その理由は何なのかということについてお聞かせいただけないでしょうか。

○原口国務大臣 これはやはり塩川委員がおっしゃるように、地方交付税というのは地方独自の財源なんですね。民主党としたら、これを補助金化して使ってはならない、特別な政策誘導を行ってはならない。
 平成十九年度に創設された「頑張る地方応援プログラム」は、独自のプロジェクトをみずから考え、具体的な成果目標を掲げて前向きに取り組む地方公共団体に対し地方交付税措置を講ずるものというふうにされているわけでございますけれども、私は、そういったことをやるよりも、まさに地方交付税をしっかりとした安定的な地方の独自財源としてお渡しし、そして、予見可能性のある、あるいは将来において安定的な、つまり、幾ら入ってくるかわからないというようなものであってはならないし、国の政策誘導の一つの措置としてやってはならない。
 塩川委員、今回、私たちは事業仕分けの中にもあえて交付税を入れさせていただきました。それはなぜかというと、今塩川委員から御批判いただいているような、地方交付税を補助金化する、こういうことはやってはならない、こう考えておるところでございます。

○塩川委員 「頑張る地方応援プログラム」は交付税に成果主義を持ち込むものだ、国が配分するもので、地方固有の財源である地方交付税を補助金に変質させるものだ、そういう点で私どもは批判をしたわけですが、この点でも当時、民主党がそういう角度での質問、本会議の反対討論で逢坂議員がこのような趣旨で述べておられたのもよく記憶をしているところでございます。
 ですから、こういった交付税を合併推進などの国の政策誘導に使うことはもう金輪際行わないということを改めてお聞かせください。

○原口国務大臣 塩川委員にお答えいたします。
 私たちは、もう平成の大合併は一区切りしたというふうに考えています。みずからの地域がみずから御決断いただいて、多様な地方自治体のその地域における最適規模というものがあるというふうに考えておりまして、重ねて申し上げますが、地方交付税をまさに補助金化する、あるいは成果主義で行うといったことを厳に慎んでいきたいと考えております。

○塩川委員 その点で、この二〇〇七年のときには新型交付税の導入も行われました。これについても小規模団体から厳しい批判の声が上がっておりますけれども、この新型交付税について今の政権でどういう対応を考えておられるのか、お聞かせください。

○原口国務大臣 お答えいたします。
 これも塩川委員がおっしゃるように、当時、これは小泉内閣ですけれども、抜本的な簡素化をする、予見可能性を高めるということでございましたけれども、現実に算定の簡素化に貢献したか。その面もないとは言わないけれども、むしろ、人口や面積による機械的な計算では捕捉し切れない財政需要といったことについて、それを捨象してしまえば条件不利地域は余計厳しくなるんだというふうに思いまして、こういう機械的なことはやるべきではない、こう考えているところでございます。

○塩川委員 そういう点では、今後の地方税財政の制度をどうしていくのかという方向性の話がありまして、これはですから今後の議論ではありますけれども、一括交付金化と重ねて、交付税との統合も含めた新たな財政調整制度の創設という、その中身というのがよくわからない。そういう点で、この間、過疎法の議論をしている際にも与党の方からは、三年後の見直しの議論として、地域主権改革の時期の節目との関係から、期限の問題というのもお話がございました。
 そういう意味で、私たち、これはどういう方向に進むのかということについて、まさに地方団体の実情を踏まえた、何よりも住民の皆さんの福祉を保持するという自治法の立場に立った、ナショナルミニマムを保障した交付税制度というのをしっかりと維持していくことが必要だということを申し上げておくものであります。
 小泉政権以来の、交付税の本来の機能をゆがめてきた仕組みを抜本的に見直す、そういう点でも、政策誘導的な措置はもうきっぱりとやめるということを申し上げ、住民の福祉を保持する、ナショナルミニマムを保障する、自治体本来の仕事ができるような交付税制度に戻すべきだということを述べて、質問を終わります。