<第174通常国会 2009年03月02日 総務委員会 6号>
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
きょうは、個人住民税の扶養控除の廃止に関連して質問をいたします。
今回の地方税法の改正案の中では、個人住民税の年少扶養控除の廃止と特定扶養控除の縮減が行われます。
そこで質問しますけれども、この個人住民税の年少扶養控除廃止と特定扶養控除の縮減によって、平年ベースで見たときに増収額がどのくらいになるのかを教えてください。
○小川大臣政務官 お答え申し上げます。
年少扶養控除の廃止による増収が四千百七十七億、特定扶養控除の縮減による増収が三百九十二億、合計で四千五百六十九億と試算をいたしております。
○塩川委員 大臣に伺いたいんですが、この個人住民税の扶養控除の廃止、特定扶養控除の縮減が、今お話しのように増収額として四千億円を超えるものであります。
これは自治体にとって見れば増収で結構な話ですけれども、しかし、負担をする住民にとっては負担増だ。住民にとってみたら、四千億円を超える負担増で増税ということになるんじゃありませんか。大臣として一言お答えいただけますか。
○小川大臣政務官 この点は税制調査会の中で大変真剣に議論した部分でございます。ただ、よく個人住民税の扶養控除の見直しが単体で国会でもこの間御指摘をいただいてまいりましたが、ここは、公約のそもそもの姿であります配偶者控除の見直しとセットで御議論をいただく必要があろうかと考えております。
この配偶者控除、扶養控除のセットでの見直しを選挙で掲げてきた民主党は、結果として配偶者控除の存続を決断し、子ども手当や高等学校の無償化を初めとした政策も着実に実行していくという、トータルで御判断をいただきますと決して負担増にはならないというふうに慎重に設計したものでございます。
○塩川委員 所得税と住民税の違いはあります。住民の皆さんにとっての住民税という点では、負担増、増税となるのは明らかですねと。その点の確認なんですが、いかがですか。
○原口国務大臣 控除を廃止するというその一点だけをとってみると、それは増税です。
ただ、委員御理解いただきたいのは、先ほど小川政務官が申しましたように、私たちは、扶養控除、これは特定扶養控除、年少扶養控除、あるいは成年扶養控除、こういったものがございますけれども、所得税についてはそれぞれのことを倒して、それで控除から手当へという流れをマニフェストでお約束したわけです。しかし、現下の経済が大変厳しい、あるいは個人の生活も厳しいということで、それらの控除については残すということにして、必要最小限のものについて今回の住民税の措置になったわけでございまして、地方団体からも扶養控除を見直すのであれば所得税と住民税を一体として見直してほしい、あるいは、課税最低限が逆転してしまうという問題もありますし、納税者の事務負担が増大するということもございまして、それぞれの家計あるいはそれぞれの個人というものに着目して、総合的な判断の上でこういう結論になったということをぜひ御理解いただきたいと思います。
○塩川委員 控除の見直し、廃止という点では増税となるという話ではありました。
そこで、私がこの問題を取り上げていますのは、個人住民税におきましての過去の負担増、地方団体としての増収の額を見ましたときに、この四千億円を超える金額というのは大変大きなものであるわけです。
そこでお尋ねしますけれども、過去四十年間を見た場合に、総務省の方が各年度ごとに税制改正による事項別増減収見込み額を出しております、そこで見たときに、今回の四千五百六十九億円を超える個人住民税の増税が行われたのはいつで、その金額は幾らなのか、その点についてお答えください。
○小川大臣政務官 事実関係をお答え申し上げます。
今の金額に見合うのが、定率減税の縮減並びにその廃止、平成十七年、十八年でございます。これとあわせて三兆円規模の税源移譲が行われたときには、その分、住民税は増収、増税になっております。
○塩川委員 三兆円の場合は税源移譲ですから、所得税が軽減をされて、その分、フラット化が住民税で行われたということであります。
ですから、今回の四千五百六十九億円も住民にとって増税になることは明らかでありますけれども、この四千億円を超える規模で個人住民税の増税が行われたというのは、税源移譲は対象としては適当ではありませんから、定率減税の縮減、廃止であります。これ自身がもともと恒久的な減税と言われていたものを、その他の法人税は減税措置は恒久化を図りながら、庶民の所得税、住民税における定率減税は廃止をするということで、これは私どもも当然こういうことは許されないということで反対をいたしましたし、民主党の皆さんもその立場でおられたと思います。
そういう点でいえば、十七年度改正で定率減税の縮減三千八百八十億円、十八年度改正で定率減税の廃止四千二百七十四億円、合計して八千億円を超える大増税となったわけですが、これに次ぐ過去最大規模の負担増となっているのが今回の扶養控除の廃止であるということは事実としてお認めになりますね。
○小川大臣政務官 その限りにおいては事実でございます。
○塩川委員 過去最大規模の増税であることは明らかであります。
そこで、この問題について、民主党として総選挙でどう言っていたのか。この間、自民党の谷委員からもこの問題で指摘がございましたけれども、民主党は、住民税の扶養控除の廃止について、増税となる住民の皆さんに対して政権につく前に説明をしたことがあるんでしょうか。大臣、いかがですか。
○原口国務大臣 民主党としては、個人住民税の扶養控除廃止についてはやらないという説明を選挙の直前にしているというふうに認識をしています。
○塩川委員 今でも民主党のホームページに掲載されているということは谷議員も紹介しておられましたけれども、私も拝見いたしました。「民主党が主張している配偶者控除と扶養控除の廃止は所得税のみであり、住民税は含んでいません。」と今でも掲載をされております。民主党の総選挙マニフェストには、住民税の扶養控除廃止は盛り込まれていないわけであります。
そういう点でいえば、増税を強いられる住民の皆さんに対して何ら説明をしていないというのが今回の措置ではありませんか。
○小川大臣政務官 少し大事な点ですので、きちんと順を追って御説明させていただきたいんですが、税制調査会で、公開の場で議論を申し上げ、そして、この国会という、これ以上ない公式な場で精いっぱい説明責任を果たそうとしている、そのことは御理解をいただきたいと思います。
その上ででありますが、そもそも、配偶者控除と扶養控除をあわせて所得税に限って廃止するというのが我が党の案でございました。そのことの是非に対する御批判は、これは甘んじてお受けをしたいと思っております。
しかしながら、それを踏まえて年末にかけましてさまざま議論を行いました。まず、所得の再分配機能を全国区で行う所得税と地域の会費としてお納めをいただく住民税でこういう控除に格差を設けた場合、納税をいただく方、課税最低限が大幅に逆転する、こういう問題が税の性格からしてどうか。同じ所得課税としてすべて控除項目をそろえ、むしろ控除額も住民税の方を少なく制度設計してきた歴史的な経緯からいってどうか。そして、課税庁である市町村からいえば、この所得課税の情報はすべて税務署から経由していただいておりますので、ここが大きくかけ離れることになりますと申告上も大変大きな問題が出てまいります。
さらに、税収の増減でありますが、当初、政権公約上予定をしていた所得税の配偶者控除、扶養控除、合わせて一・四兆円の増収と、所得税、住民税で扶養控除を廃止した場合の一・四兆円、増減収上、これは幸い公約違反にならない。そして、配偶者控除は、子ども手当との関係でいえば、恩恵の及ぶ世帯がかなりかけ離れる可能性がある。
数多く申し上げましたが、非常に重要な点でございまして、これらをまさに総合的に検討した結果でございます。ぜひ御理解をいただきたいと思います。
○塩川委員 課税する側の都合は説明されているんですけれども、課税される側の住民に対する説明がないんだということを私は申し上げているわけです。そういう点でも、マニフェストにも書かれていない、やらないとまで言った住民税の扶養控除の廃止をしたということが厳しく問われなければなりません。しかも、それが過去最大規模の負担増となっているという点も極めて重大であります。
それとの関係で、先ほどの議論でもありましたけれども、個人住民税の扶養控除の廃止などについて、その扱いにつき四大臣が合意されております。この四大臣合意の趣旨といいますか、そこが意味するところは何なのかということについて簡単に御説明いただけますか。
○原口国務大臣 これは、四大臣、菅大臣と当時の藤井財務大臣と総務大臣である私、この三人は税調会長と会長代行であったわけです、それに加えて厚生労働大臣、まさに子ども手当を所管する大臣との間で、今後どうするか、今回の子ども手当の財源も含めて、あるいは二十三年度も含めてどのようにやるかと。
先ほどから御説明を申し上げているように、今回の案を出してきた厚生労働大臣と、私が申し上げているような、まるっきり児童手当というものをなくして、子ども手当と地方へのさまざまな保育サービスを中心としたサービス給付という形にした私の案との間でせめぎ合っていたわけで、それをさまざま調整して、来年は同じような形にしませんよ、二十三年度は児童手当というものを併置した案というものは私は認められないと主張したわけです。その中でこういう形に落ちついているというふうに私は認識をしています。
○塩川委員 「子ども手当等の取扱いについて」という四大臣合意ですけれども、この中に、「所得税・住民税の扶養控除の廃止及び特定扶養控除の縮減に伴う地方財政の増収分については、最終的には子ども手当の財源として活用することが、国民に負担増をお願いする趣旨に合致する。」とありますけれども、ここで言っている「最終的には」という言葉の意味について説明いただけますか。
○小川大臣政務官 少し技術的に補足をさせていただきます。
今、児童手当の地方負担分として自治体は約七千億負担しています。これが子ども手当に全額国費が実現すれば、この七千億が地方にとっては自由に使えるお金になるということであります。加えて、今回の扶養控除の見直しで約四千億の増収効果がある。合わせて一・一兆円前後になります。一方、現在の児童手当あるいは保育所の運営を含めた国全体で行っております子供政策が約二兆円です。この枠組みはその半分を地方が負担している。
ということは、ここの現金給付で地方が負担をしている七千億、そして増収になる四千億の一兆円で、もし国の側が地方に自由に子供政策を任せてみようという決断をいただければ、まさに大臣がかねてから主張しています、現金給付は国で、現物支給はしっかり各自治体でということが実現する。そこに込められた思いが「最終的に」というその一言に込められているということでございます。
○塩川委員 大臣、今の小川淳也大臣政務官の言葉について、本会議で問われたとき原口大臣の答弁としては、子育て政策の補助金を一般財源化し、それにより浮いた国費を子ども手当の財源とすることが考えられると述べているわけですけれども、子育て政策の補助金を一般財源化するというのは、今お話のありましたように、国が現金給付、地方が現物給付、サービス給付という観点の中で、そういった中には民間保育所の運営費の交付金、補助金について、これを一般財源化する、補助金を廃止するということも含まれているということでよろしいんでしょうか。
○原口国務大臣 塩川委員にお答えいたします。
まさにその部分をずっと議論してきたわけです。つまり、サービス給付については、地域の実情、一番住民に近い人たちがみずからの自主財源によって、中央政府はその最低の基準やさまざまな保障を支援しながらも、みずからの判断においてやれるようにする、それがいいのではないかということを議論してきたわけです。
しかし、これで最終的な結論が出ているわけではなくて、私たちが、今小川政務官が申し上げた案と、今皆様にお願いをしている子ども手当、全額国費で子ども手当を行う一方、児童手当については地方、事業主負担があるハイブリッド案との間で議論をして、今年度限りにおいてこの制度を実施に移すように皆様にお願いをしているというのが現状でございます。
○塩川委員 民間保育園の補助金の一般財源化というのも含まれ得る、排除されていないということであります。
この間、報道で見ますと、昨年十二月の四日に国会内で原口大臣と長妻厚生労働大臣が会談をし、原口大臣が、児童手当の廃止で浮く地方負担分を保育所運営費などに対する国の補助金約五千五百億円分に充当し、国の補助金は廃止する案を提示したと伝えていますけれども、これは事実ですか。
○原口国務大臣 議論の過程においては幾つか案を出していますから、今お話をされたものがすべてではございません。
これは、地方の側からも、自分たちも知恵を出すよ、先ほど浮いた分という表現がありましたけれども、それをそっくりそのまま自分たちがほかの財源に使うということも考えてはいない、そういうお話が地方の団体からもございまして、今お話しのところは一つの案として検討に加えたことは事実でございます。
○塩川委員 幾つかの案のうちの一つとして検討を加えたという話でした。
私は、保育園の運営費交付金の一般財源化というのが、公立保育園に対する補助金の一般財源化によってどうなったのかということが事実として問われてくるんだろうと思います。
日本保育協会の調査では、公立保育所の運営費が一般財源化をされた前年の平成十五年度と、その後の平成十九年度の保育所運営費の入所児童一人当たりの月額経費を比較してみると、全市平均で二・四%の減額となっている。
いわば、公立保育園における一人当たりの子供にかける金額というのが減らされているという実態が生まれているわけです。私はそのことを強く懸念し、また、保育関係者からもこの点について非常に懸念する声が上がっているということを率直に政府として受けとめる必要がある。こういう形での公立保育園に対しての補助金の一般財源化がもたらしたマイナスということを民間保育園でも繰り返すのか、このことが厳しく問われているわけですから、こういうことがあってはならないというのが現場の声だ。
この点についてはどうお考えですか。
○原口国務大臣 委員がおっしゃったのは、私たちの政権でというよりか、前の政権でなされたことによって、結果、保育の現場にいろいろな不安が広がったと。今回も同じような話がたくさんありました。
義務づけ、枠づけ、保育園の最低基準についても、それを中央政府が一気になくすのかと。そして、なくすだけじゃなくて、支えるお金そのものも、さっきの西先生との議論のときも全く同じなんですよ、何か制度を変えるときには、変えたふりして額も減らすんだろう、それが国のやり方だよね、もうそんなことは二度と認めたくないという御意見があった。私のコンピューターは、保育の関係の方がどこでメールを調べられたかわかりませんけれども、物すごいメールで、昔、菅総務大臣も同じような思いをされましたか。(発言する者あり)大丈夫でしたか。何で私だけなのかよくわかりませんが、それでしたよ。
私は、それを、私たちの政権になったら変わりますよと言いたかったけれども、現場でそういう御不安を考えたり懸念を持っておられたら子育てにも影響しますから、今回、長妻案といいますか、厚労大臣の案を受け入れたわけでございます。
○塩川委員 時間ですから、この問題は機会を改めてまた深めていきたいと思いますけれども、国のナショナルミニマムに対する責任の一環として、この保育の問題にどう対応するのかというのが問われている。義務づけ、枠づけの廃止の問題と一体に、私たちはその点を国の責任を放棄するものではないのかということで指摘をしてきたわけです。
今回の住民税の扶養控除の廃止というのは恒久的な措置ですけれども、四大臣合意にありますように、子ども手当の法案というのは一年限りのものであります。一万三千円とは書いてあるけれども、再来年度から二万六千円にするということは一言も書いていないわけであります。そういう点でも、私は、子ども手当については現状でいえば一年限りの措置なのに、その見合いでの扶養控除の廃止は未来永劫続く、こういう形での負担増を押しつけるような仕組みというのは許されない、このことを指摘して、質問を終わります。