<第174通常国会 2009年03月05日 総務委員会 5号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 本日は八ツ場ダム問題の集中審議が行われるということで、私自身、この十年間、八ツ場ダムの問題を一貫して取り上げてきた者として、こういう機会を与えていただいて本当にありがたいと思っております。
 我が党は、この八ツ場ダムにつきまして、利水面でも治水面でも不要なダムであり、無駄で環境破壊につながるダムということで中止を求めてまいりました。私自身、何度も現地に足を運んでまいりましたし、そういう中で、長野原の町長さんやあるいは町議会議員の方と率直な意見交換も、中止という立場を表明した上でお話もさせていただいたところであります。また、我が党の場合は、一都五県、流域都県の各議会におきましても、我が党の議員団が中止の立場から論戦を行ってきた。
 そういう点では、国と地方と、そして住民団体と協力をして中止を求める取り組みを行ってきたところであります。ですから、今回の鳩山政権になっての八ツ場ダムの中止声明そのものは当然の対応であり、評価をしているものであります。
 同時に、その表明というものが、やはり、中止の根拠ですとか今後の対策について十分具体的な説明抜きに行われたために、住民の方や下流都県からの反発を招く原因となってきたということもしっかりと見ておかなければなりません。
 我が党は、このような鳩山政権の対応に対して、政府として真摯な謝罪を表明することが必要だ、また、住民の不安や要望に謙虚に耳を傾けてダム中止の理由を丁寧に説明するべきだ、そして、生活再建、地域振興策を住民とともにつくり上げる、このことを表明し、住民の理解と合意を得る民主的なプロセスが必要だと国交省に申し入れもし、要請も行ってきたところであります。
 そこで、前原大臣に伺います。十二月十七日あるいは一月十五日の記者会見でも述べておられることですが、前原大臣が、一月二十四日開催の水没予定地区住民との懇談会において、住民の皆さんに何を訴えようと考えていたのか、この点についてまず確認させていただきたい。

○前原国務大臣 塩川委員にお答えをいたします。
 今委員御指摘のように、一月二十四日に水没地区住民の方々との意見交換会を開催させていただきました。
 私が申し上げた趣旨は三点ございまして、一点目は、政策転換により御迷惑をおかけしている地元住民の方々におわびを申し上げたかったということであります。二つ目は、できるだけダムに頼らない治水への政策転換を進めるために、全国の事業中のダムの検証をするという考え方を説明するということでございました。三点目は、仮にダムが中止になった場合の生活再建のあり方について、もしお許しをいただけるのであれば、住民の方々と具体的なお話し合いをして御要望をお聞きしたい。この三点でございました。

○塩川委員 今、一月二十四日で、ぜひ住民の皆さんにお話をしたいと言っていた三点というのは、私どもも求めてきた点でもございますし、そういう点での前向きな対応だと思っております。
 私たち、昨年の十二月に、党として、水没予定地区の住民の方への訪問と対話の行動を行いました。一軒一軒訪問いたしまして、百二十軒余り訪問し、そのうち六十軒の方とは直接意見交換もさせていただきました。私も、旅館組合、旅館街のところに足を運んで、厳しい御意見もいただきながら、率直な今のお気持ちを伺ってきたところであります。
 そういう中で出された声も幾つか御紹介したいと思うんです。何の説明もなく突然中止はひどい、こういう声。今まで反対だったが、無理やり賛成させられた、引っ越していった人は気の毒だ、住民の気持ちをもっとわかってほしい、こういう声や、旅館がかわいそうだ、できなくては困る。また、以前は地域全体が家族のようだった、借家に住み、移転しなければならないが、土地代が高く移転先が見つかっていない、本心では中止は仕方がないかなと思うけれども、ダム湖ができないとだまされたという気持ちにもなる、こういう声や、どっちに片がつくにしろ早くしてほしいとか、生活再建をちゃんとしてもらえばダムがなくても構わないんじゃないかと思う、こういう声。はっきり言ってダムが必要なのか、ダムをつくる前はいいことばかり聞かされたが、今、政権がかわっていろいろな話を聞くと疑問がある、こういう声も出されておりました。
 誤った国策に翻弄された住民の皆さんのつらい思いを受けとめて、真摯に謝罪することが必要であります。
 また、ここでやめるとお金が無駄になるとか、観光資源としてダムが必要だとか、中止後の生活再建はどうなるのかといった疑問や不安の声が出されています。これらに丁寧に答えるという情報提供が必要であり、説明責任を果たす必要が求められております。だからこそ、私どもも述べ、大臣も表明をされておられた三点に基づいた丁寧な対応が求められていると考えています。
 そこで、もう一点お聞きしたいんですが、当日の懇談会では、これは私は新聞報道で承知している限りなんですが、大臣は、住民の皆さんには何の瑕疵もない、政権交代でダム中止を申し上げ、御迷惑と将来への不安を抱かせてしまったことはすべて政治の責任で、心からおわび申し上げたい、皆さんは被害者だと述べたと聞いておりますが、そのように述べたということでよろしいですか。
    〔委員長退席、橋本(清)委員長代理着席〕

○前原国務大臣 そのとおりでございます。

○塩川委員 こういった、住民の皆さんに真摯におわび申し上げたいという大臣の率直な思いというのを表明する機会というのが、やはり必要だろうと思っております。
 民主党中心の政権で政治主導と言われておるわけですから、水没予定地区の住民の方、百数十世帯でございます。そうなれば、政務三役で、合わせて六人でしょうか、一軒一軒訪問して、やはり、直接思いも伝えるし、おわびもして、丁寧な説明を行う、こういう取り組みもぜひ行っていただきたいと思いますけれども、そういうお考えはございませんか。

○前原国務大臣 御意見として拝聴させていただきたいと思います。

○塩川委員 そういう真摯な対応というのが、住民の皆さんのさまざまな思いを解きほぐす上でも力になるのではないかというのを、率直に提案はさせていただきます。
 一月二十四日の懇談会の場での発言者の方というのは、各地区からの代表での発言ということでもありました。一軒一軒訪問していて感じていることは、要するに一様ではないわけであります。一軒の家でも、御主人はダムつくれと言いながら、奥さんの方はダムがなくてもいいんじゃないかという声の方もいらっしゃいます。また、地つきの土地持ちの方と、借地借家の方での思いというのも一様ではありません。
 また、水没予定地区の対策委員会の役員の方とお話をお聞きしたときにも、生活再建をしっかりやってもらえばダムがなくてもいいんだという声で、同時に、一番心配なのが旅館組合の人たちのことなんだと。旅館組合の皆さんがダム湖観光を前提にして営業を立て直したいと思っている、そういう旅館組合の人の思いにきっちりこたえるようなことはぜひともやってもらいたい、こういう声もございました。
 そういう意味でも、だからこそ私は、おわびをしっかりすることと同時に、中止の理由を明確に説明するということが必要だ、それでこそ、誤解と不安を解いて前に事を動かしていく一番の力になると考えるものであります。
 そこでお尋ねしたいのが、懇談会の場で、八ツ場ダムの中止の理由についてはどのような御説明をされたんでしょうか。

○前原国務大臣 中止の理由につきましては、まず、政権交代による政策変更によって、できるだけダムに頼らない治水を考えていると。その理由は何かということで、現在の日本の置かれている人口減少、少子高齢化、莫大な財政赤字、そして、既存のいわゆるダム等のストックの維持管理費がこれから相当程度かかってくるということ、あるいは、ダムというものが水流を遮断して、水質の汚染、あるいは、砂がたまることによって砂の供給が海岸になされなくて、結果として海岸の侵食などが起きる地域も生まれて、そして、それが新たな公共事業というものを生み出していくというようなこと。
 そのさまざまなダムの、もちろん効用もあればマイナスの面もあるということで、現状認識をお話しし、そして、できるだけダムに頼らない治水をということの入り口として、計画着手以来多年にわたって完成をしていない二つのダムを中止したということでございます。それが、八ツ場ダムと川辺川ダムということでございます。
 さらに、我々、野党のときにいろいろ議論をしてまいりましたのは、治水面で申し上げますならば、カスリーン台風という台風のことがよく言われるわけでございますが、当然ながら、その後、いろいろな形でダムもできましたし、巨額の費用が投じられて河川整備も行われてきたところでございますけれども、果たして、伊勢崎の八斗島のいわゆる基準点における基本高水、こういったものが本当に今のいろいろな制約要因のもとで達成できるのかどうなのかといった問題もございます。
 また、利水については、もちろん今一都五県では要望されているところでありますけれども、当然ながら五十七年前というのは、人口もふえて、そして水需要もふえていったわけでありますが、現在の節水傾向とか、あるいはさまざまな形での人口減少というものもこれから生まれてくるということを考えたときには、水需要の将来的なベクトルを考えた場合には、当然ながら、フルプランの見直しもやっていかなくてはいけないだろうということです。
 利水面、治水面、今は一つの事例を申し上げましたけれども、我々なりに野党時代に治水面、利水面でのさまざまな分析も加えてきたところでございまして、そういったところから、我々は、八ツ場ダムの中止ということを方針として表明させていただいているということでございます。

○塩川委員 今のお話を伺っても、八ツ場ダム固有の中止の理由というのが住民の皆さんに届いていないんじゃないでしょうか。八斗島におけます基本高水のピーク流量の毎秒二万二千立米というのが過大なのではないか、これは前から指摘をされているところで、まさにその点で不必要なダムがつくり続けられてきたのではないかという、そこまで踏み込んで言っているかどうかというと、そこまではなっておりません。
 また、水余りの問題につきましても、将来的なフルプランの見直しというのはありますけれども、もともと中止を掲げたわけですから、であれば、水余りの現況の中で、水需要に対する利水対応としては八ツ場ダムが不必要になったんだ、そういう説明がなければ、住民の皆さんの誤解を解くことにはつながらないんじゃないのかと率直に思うんですけれども、今のように、治水上、利水上も必要がなくなったということを八ツ場ダムについて明確に語っていく必要があるんじゃありませんか。

○前原国務大臣 まさにそのとおりだと思います。野党のときに、さまざまなデータをもとに、我々は、私は現地には足を運んでおりませんが、さまざまな同僚議員が足を運んで、意見交換も重ねながら、そしてさまざまな分析を加えて、中止という方向性をマニフェストに盛り入れたわけでございます。
 ただ、我々は今与党になりました。政府を預かる身になりました。そして、住民の皆さん方にも再検証するというお約束をいたしました。再検証の基準をつくって、治水や利水も含めて基準をつくって、具体的に、もちろん予断を持たずに我々は再検証するわけでございますけれども、治水面では今こうですよ、利水面ではこうですよということを政府として責任を持ってお示しする準備を今しているということを御理解いただきたいと思います。
 委員のアドバイスは、私は率直に、前向きなアドバイスとして承っておきたいと思います。

○塩川委員 マニフェストでは八ツ場ダムの中止が掲げられて、民主党中心の政権が生まれると同時に八ツ場ダムの中止が表明をされる。当然のことながら、党としては八ツ場ダムの中止の理由を掲げているわけですけれども、そのことについて率直に語るということはないんでしょうか。
    〔橋本(清)委員長代理退席、委員長着席〕

○前原国務大臣 それは、委員会の場でも、先ほど申し上げました基本高水それから計画高水の差の問題であるとか、今までさまざまな形での利根川水系での、これは自民党政権でありますけれども、ダムがつくられてきたり、河川整備、堤防強化、さまざまな対応策がとられてきた中で、果たして我々はさらに進めていくことが本当に必要なのかといったところが治水については大きなポイントであることは、そのとおりであります。
 ただ、それを、やはり政府をお預かりすることになった以上は、しっかりとバックグラウンドというものをお示しする必要があるということでございまして、方向性とか基本的な考え方は、利水でも治水でも先ほどから申し上げているように大きな変化が起きているわけですから、お話をすることができますけれども、やはりそれにプラスをして、政府としての説明責任ということで今作業をさせていただいているということを御理解いただければと思います。

○塩川委員 下流の一都五県から国交相に対しても質問書なども出されておりますけれども、それに対する回答なども、マニフェストで八ツ場ダム中止を掲げた理由についてどう考えているのかという問いがあるとすると、それは民主党に聞いてください、そういう答弁の中身になっているわけですよ。そういうのはやはり誠実な対応ではないと率直に思います。
 また、八ツ場ダムの現地の工事事務所のウエブサイトを見ましても、いまだに八ツ場ダムの必要性というのを掲げて、QアンドAも置かれているわけですね。これで政策転換をしているんだろうかと思うんですが、こういうことをごらんになっていませんか。

○前原国務大臣 それは知りませんでした。早速チェックをして、もしそれが出ているのであれば取り下げたいと思います。

○塩川委員 「八ツ場ダムの役割」というので、「洪水から暮らしを守る」とか「増え続ける水需要を支える」というので、QアンドAなんかも後に出てくるわけですから、そういう点については、やはり政策転換をしたということが見えるような形で現場の対応はぜひお願いしたいと思っております。
 私は、やはりここで、中止表明から半年という時期を考えても、住民の皆さんはこれまで、もともと反対であったにもかかわらず、国の圧力のもとで賛成の立場を受け入れざるを得なかったという苦渋の選択をされてこられた。その際に国の方が盛んに言ったのが、治水上も利水上も必要なんだと。この理屈について、国が責任を持って答えることなしには本当の意味での納得を得ることができないということであります。
 有識者会議でしっかりとした検討を行うのも当然なんですけれども、やはり一日も早く、もともと中止ということを掲げてきた党が政権についたわけですから、その点を進めるということが何よりも重要で、そういう明確な説明が先延ばしをされることは、結果として、いたずらに住民の皆さんの悩み、苦しみも引き延ばすことになるんだということをぜひ受けとめていただきたいというのが私の思いであります。
 私どもは、過大の洪水予測を前提にした治水対策が問題だ、あるいは、首都圏は水余り状態になっている、ダムをつくれば現地での地すべりの危険性を高める、こういう角度での問題点や、ダム湖観光というのは本当に現実的なのか、こういうことについても、率直に、地域振興、地域経済の振興策という点でも、きっぱりと転換を図ることが前向きな対応につながっていく、こういうことを、中止を表明した以上、政府としてもぜひ明らかにしていただきたいと思っております。いかがでしょうか。

○前原国務大臣 今御指摘をされた点は、我々が野党時代に申し上げている点であります。したがって、問題意識の観点というのは同じなんです。
 例えば、地すべり一つとりましても、野党のときには、その危険性がある、果たしてそれができるのかということもありましたし、あるいは同僚議員がこれから議論してくれるであろう砒素の問題等もございました。
 しかし、政府としてこの問題を主体的に扱うようになった以上、では、本当に地すべりが起きるかどうかということについては、やるという前提で精密な調査をまたやり直さなきゃいけないということでありますが、我々は、本体工事はもうやらないということでありますので、今おっしゃったようなことについては、今、触れていないわけです。
 つまりは、野党のときに言っていたことと違うということではなくて、我々は、ダムに頼らない、ダムを中止するという前提になったために、その点についての調査はもうしないということになったために、前はそう言っていたよという言い方はできるのかもしれませんが、今はそういうことについては申し上げていないということであります。
 砒素についても、できるだけ情報公開、今までの政権で隠していた砒素の情報というものは徹底的に公開をしていくということは、我々からやらせていただいているわけでございますけれども、では、砒素がどのぐらい流れてきてそれがコンクリートを溶かして、そういう危険性があるということは野党のときに言っていましたよ。しかし、それはもうつくらないということになった以上は、厳密なそういった分析はもうする必要はないということで申し上げていないと。
 つまりは、そういうことで、我々は今まで言っていたことについて、すべてを申し上げていないこともあるんだということは御理解をいただきたいと思います。

○塩川委員 住民の皆さんのわだかまりを解きほぐすという観点で対応していただきたいという点では、大臣もその方向でとおっしゃっておられますので、ぜひ明確で丁寧な中止の理由の説明をお願いしたいということが、指摘する第一点であります。
 もう一つ指摘をしたいのが、生活再建の方策の問題でございます。我が党は、大型公共事業の中止に当たって、地域住民が受けた困難を償うなどの観点から、国や関係自治体などの、地域住民を交えた地域振興のための協議会をつくり、住民の生活再建や地域振興を図ることを義務づける、公共事業の中止に伴う住民の生活再建、地域振興を促進する法律を制定することを求めてまいりました。民主党もほぼ同趣旨の立法提案を行っていると承知しております。
 前原大臣は、八ツ場ダム中止表明の際に、何らかの補償が必要だということも述べておられますが、一月の住民懇談会の場には、お許しをいただければというお話もありまして、現実にはなかなかそういう場にならなかったということで、この点での御提案をされる機会にはならなかったわけであります。大臣から生活再建策についての説明の機会は、現状ではいまだにないということであります。
 私は、具体的に決めていくのは住民の皆さんを中心に行っていくわけですけれども、しかし、こういう大枠として、方向性としてどういうものを考えているのか、この点については、やはり国として明確に示すことが必要だ。そういう点でも、こういうダムの中止に当たって、住民に対する補償措置はどうするのか、これについてはどのようにお考えでしょうか。

○前原国務大臣 委員御指摘のとおり、今までの公共事業というのは、一たん着手をすれば最後までやり遂げるという前提に立っておりまして、途中でやめるということを前提にしておりません。したがいまして、途中でやめた場合の何らかの補償措置とかそういったものについての手当てや法律や、あるいはそういったものの財政的な裏づけがないというのはそのとおりでございますし、我々も、野党のときにそういった法案が必要だと。つまりは、公共事業をとめたときに、どうその地域の皆さん方の生活再建をバックアップするのかという裏づけの法律をもとにした財政的な支援が必要だということを言ってまいりました。
 そのことは、この国会に提出するかどうかということも内部で検討いたしましたけれども、具体的に、恐らく一番早くいってそういった議論がなされるのは、金子恭之議員の御地元の川辺川ダムではないかと思っております。今、県も白紙撤回ということを表明され、また、関係市町村、自治体が、ダムに頼らない治水対策というものを御議論いただく中で、五木村の皆さん方は、下流の人たちのために自分たちは犠牲になるという思いを強く持っておられるわけでございまして、下流の方々がもしその意見でまとまるのであれば、また今の推進というものの考え方を見直していただけるのかもしれません。
 そういった具体的な個別のダムの事案ができたときに、それにどう担保するかという法案というのは必要だと思っております。したがって、これは金子委員にも御協力いただいて、もし、そういった具体的な、計画中のダムをとめる、そして、それに対する住民の方々の生活再建をやるということになれば、当然ながら新たな法律を出させていただいて、そして、その法律に基づく財政措置をしっかりやっていくということになろうかと思っておりまして、その中身は内部で検討しているところでございます。

○塩川委員 先ほども紹介しましたけれども、一月二十四日の懇談会では、住民の皆さんには何の瑕疵もない、政権交代でダム中止を申し上げ、御迷惑と将来への不安を抱かせてしまったことはすべて政治の責任で、心からおわび申し上げたい、皆さんは被害者だと大臣は述べられた。
 何の瑕疵もない被害者である住民の皆さんに対し、個人への補償措置を行う考えはございますか。

○前原国務大臣 まだ中身については精査をしておりませんけれども、大事なことは、先ほど来から、八ツ場について申し上げれば、ダム湖を前提とした生活というものを考えて苦渋の選択を受け入れられたということでございますけれども、では、ダムがなかったらどうやって生活していくんだといったところが一番大きなポイントでございまして、やはり、生活再建というものが大きな柱になってくるんじゃないかと考えております。

○塩川委員 誤った国の政策によって住民が被害をこうむった、そのことに対する措置、おわびをする、つまり、過ちを、政策転換という形で、今までの政策を変更するということによって多大な迷惑をかけるということを政府として認めたわけですから、そのことに対し、迷惑を受けた方々に対する個人補償というのは、お考えはございませんか。

○前原国務大臣 今、予断を持って中身について言及することは避けたいと思いますし、いずれにしても、新たな立法措置が必要で、その中身については今後検討していきたいと考えております。

○塩川委員 国策に翻弄された住民に対して、何らかの補償措置を行うということは当然のことだということを改めて指摘しておきます。
 それで、先ほどの、ダム計画をとめる、それに伴って何らかの補償措置が必要で、法律をもとにした財政措置が必要となってくる、このことは川辺川ダムを具体的な事例として考えていきたいという話でありますけれども、時期的には今国会は難しいというおっしゃり方をしておられたかと思うんですが、いつぐらいというお考えでありましょうか。

○前原国務大臣 川辺川ダムのいわゆるダムに頼らない関係自治体の協議というものが、どのような形でいつまとまるのかといったところにもかかわってくると思いますし、私もその意味では、また、人吉や五木村、あるいは相良村、そういった地域に足を運んで、皆さん方との意見交換をさせていただかなくてはいけないと思っております。
 仮にことしまとまれば、意見交換をさせていただく中でどういった立法が必要なのかという検討を早急にしなければ、せっかくダムの中止で合意をしていただいたのに、何の法的な裏づけもない、また、法律がないために財政的な裏づけもできないまま、合意をしていただいた住民の皆さん方を放置するというわけにはいきませんので、できるだけ早く法案をまとめて、法案を提出し、当然ながらその法案に基づいた予算措置をつけるということになろうかと思います。

○塩川委員 今、この補償に関する法案、立法措置については、川辺川ダムや八ツ場ダムなどを想定されるということで、ダムということでの話として私は承知をしているんですが、ダムに限らず、つまり公共工事一般について、大型公共事業の中止に伴う住民の生活再建や地域振興を促進する法律、そういうものにするというお考えはございますか。

○前原国務大臣 現時点におきましては、ダムを中止した場合ということで考えております。
 ただ、他の公共事業を中止してどのような被害が出るのか、出ないのかということについては精査をする必要がありますので、具体的な事例が出てきた時点で考えなければならないと考えております。

○塩川委員 時間が参りましたが、もう終わりにしますけれども、民主党としても、この立法提案の中には、公共事業一般の話として提案もされておられます。そういう立場での具体化をお願いしたいと思っておりますし、地元の皆さんの意見をどう反映するのかという仕組みづくりというのもやはり工夫が必要だ、このように考えております。
 政府に、引き続く住民の皆さんとの懇談、対話の機会を設けることを求めると同時に、この八ツ場ダム中止の理由を明確に示すということを早急に行ってもらいたい。そして、この住民補償、生活再建の立法措置を住民の声を踏まえてしっかりつくっていただくということを要望し、質問を終わります。