<第174通常国会 2010年03月11日 総務委員会 7号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、地方バス路線の維持対策について質問をいたします。
 地方バス路線の維持というのは、市町村にとって大変大きな課題ともなっておるところでございます。国土交通省が所管をしています公共交通活性化法というのがございますけれども、この法律をつくるに当たりましての交通政策審議会の報告書でも、「地域の公共交通は、地域の経済社会活動の基盤であり、その地域における公共財的役割は非常に大きなものである。」このように述べております。
 そこで、大臣にお伺いしますけれども、過疎地、中山間地、地方において、地方バス路線の維持というのがまさに公共財としての役割を果たしているんじゃないのか、そういう認識を私は持っておりますけれども、大臣はいかがでしょうか。

○原口国務大臣 お答えいたします。
 例えば障害者の移動の権利のための法案、こういうものをつくったときも、移動の権利というのは一体だれが担うのかという議論をいたしました。その一方で、バス事業は、モータリゼーションが進展して輸送人員の減少が続いていて、総じて厳しい経営状況にございます。実は、私の遠縁もバス事業をやっておりまして、それは本当に大変です。
 では、このバス交通がなければどうなるのか。通学や高齢者の通院など、地域の生活の足として必要不可欠なものであって、今おっしゃるように公共的な、大変大事な役割を果たしているというふうに認識をしております。
○塩川委員 公共の役割を果たしている、その点で、移動の権利というお話をされました。まさに権利として、この交通権をしっかりと保障することが国の責務として大きいと思っておりますし、現状でいえば、高校生の足、あるいはお年寄りが病院や買い物に使う足として不可欠なものでありますから、生存権や教育を受ける権利を保障するという観点でも極めて重要であります。
 一方で、この間の規制緩和やあるいは国の補助金削減によって、民間のバス事業者の撤退が進み、これは結果として地方の疲弊を進めることになったんじゃないのか、このように私は思いますが、大臣の認識はいかがでしょうか。

○原口国務大臣 先ほど遠縁と言いましたけれども、遠縁というにはちょっと遠過ぎるので、知り合いと改めておきます。私よりか自見さんの方が近いですね。申しわけありません。
 おっしゃる認識を持っています。地域住民の足であるバス路線が廃止された地域にあっては、地域における生活がやはり不便なんですよ。地域が衰退する一因にもなっておりまして、総務省としては、バス事業者が不採算路線から撤退した場合において、地方公共団体がかわって行政バスを運行するなど、生活交通確保対策に対して地方財政措置を講じてきていますが、これはやはり、地域を回るお金、地域がみずから富を生み出す、それをふやさないと抜本的な改革にはならないんじゃないか、そういう心配をするぐらい大変厳しい状況にあります。

○塩川委員 基本的に同じ認識というお話でした。
 二〇〇二年の改正道路運送法の施行によって需給調整規制が廃止をされました。そのために、事業者が自由に路線撤退ができるようになりました。並行して、〇一年度から補助金の変更がありまして、広域のバス路線への補助は維持するけれども、同一の自治体内の路線については補助をなくしていく、いわゆる一般財源化という措置になったわけですけれども、これも路線廃止に拍車をかけるものになっております。
 総務省が平成二十年度に実施をしました、新たな過疎対策に向けた最近の施策動向等に関する調査研究というのがございまして、ここで、重点五テーマについて地方団体、過疎団体にアンケート調査を実施しています。その重点五テーマのうちでも、一番過疎団体が関心を示した、一番回答が寄せられたというのが生活交通の確保だったわけであります。
 ですから、そういう回答の特徴として、この調査研究では、路線バスの廃止に伴い交通空白地帯が生じていることや、高齢化に伴い、自家用車が運転できず、生活の足を奪われる交通弱者がふえることへの危惧など、生活交通の確保が困難であることについての具体的な指摘が半数以上を占めており、これに次いで、赤字補てんなど市町村の財政負担が大きくなっていることが比較的多く挙げられている。大臣もおっしゃった自治体の持ち出しがふえているということも、ここでも指摘をしているところです。
 そこで、具体的に、そういう地方バス路線を維持するための施策にどんなものがあるかということで国土交通省にお尋ねします。地方バス路線維持のための支援策にどのようなものがあるかについて御説明いただけますか。

○関口政府参考人 お答えいたします。
 国土交通省といたしましては、今先生御指摘のとおり、広域的、幹線的なバス路線につきまして、都道府県と協調して地方バス路線維持費補助を行っておりまして、平成二十二年度の予算案として約六十八億円を計上しているところでございます。
 また、バスだけではございませんが、コミュニティーバスあるいは乗り合いタクシーといった地域の交通への取り組みに対しまして地域公共交通活性化・再生総合事業というものを持っておりまして、これによりまして、平成二十二年度予算案では約四十億円を計上しておるところでございます。なお、この総合事業につきましては、立ち上がりの三年間を支援するという仕組みでございます。

○塩川委員 二つの支援策をお話しいただきました。
 地方バス路線維持対策ということですけれども、これは都道府県と協調して国が補助をする仕組みということですので、要は、市町村を対象とする仕組みにはなっていないという点でよろしいですね。確認で御答弁いただけますか。

○関口政府参考人 御指摘のとおり、広域的、幹線的路線に対する地方バスの補助につきましては、都道府県と協調して補助をしておりまして、市町村は直接関係しておりません。
 ただ、後段で申し上げました、地域公共交通活性化・再生総合事業につきましては、これはおおむね市町村が中心になって取り組む事業が多くなっておりますので、市町村と協調した事業が大変多くなっておるということでございます。

○塩川委員 もう一つ述べた総合事業の方ですけれども、これはお話がありましたように、実証運行三年間ということで、支援はそこで切られるわけですけれども、その先も実際バスは動いている、あるいはディマンドバスとか乗り合いタクシーとか動かしているのに、その時点で国の補助がなくなる。その先というのは、どういうふうに支援策というのは考えられるんでしょうか。

○関口政府参考人 今御指摘のとおり、地域公共交通活性化・再生総合事業につきましては、三年間の立ち上がりの支援ということでございまして、これは、やはり立ち上がりで最初の投資ですとか、組み立てるためのいろいろな経費がかかりますので、これを支援するということで、三年間取り組んでいただきまして、四年目以降は地域で自立した形で続けていただくというのが基本的な形でございます。

○塩川委員 とにかく知恵を出し合って、いいものをつくって利用もふやしていく、これは方向としては当然そうなんですけれども、実際にそれが、では、三年目でうまく軌道に乗って、四年目以降はぐっと立ち上がるかというと、その見通しもなかなか持ち切れないんじゃないかなと思っておりまして、三年が過ぎたところのその先というのは大変心配にもなります。
 そこで、この地方バス路線維持について市町村が使えるメニューというのはほとんどないという状況の中で、地方バス路線維持のための地方財政措置はどうなっているのか、この点について総務省からお聞かせいただけますか。

○小川大臣政務官 事実関係をお答え申し上げます。
 今ほど御議論いただいています、都道府県関連の国庫補助事業についてはその八割を特別交付税、そして市町村の事業でございますが、民間のバス事業、また市町村営のバス事業、さらには貸し切りバスが行っております生活路線バス事業、これらに対する地方の支出額について八割程度、特別交付税措置を行っております。総額で四百六十億円余りのうち三百八十億円、大半が市町村向けに措置をしているということでございます。

○塩川委員 あわせて、昨日成立しました改正過疎法におきまして、過疎債の対象としてソフト事業にも拡大をする、当然のことながら、公共交通の維持のために自治体が出すそういう費用にも充てられる、それも入るということでよろしいですね。

○小川大臣政務官 国会の方でそのような形で御議論いただいているという趣旨を踏まえて運用に当たってまいります。

○塩川委員 これはどうなんでしょうか、過疎団体の場合において、過疎債を活用するのと特交で措置してもらうのと、これは実際、利用するとして、どっちを有利とする考えなんでしょうか。現場ではどうなんでしょうか。

○小川大臣政務官 特別交付税措置は支出額の八割というのが基本でございまして、ただし、総額が今のところ四百億円程度でございます。これに対して、過疎債は二千億円に余る財源がございまして、このうち、どの程度をどういう基準でソフト対策に振り向けるか、これは今まさに議論をしているところでございますが、交付税への算入率は七割。この財源総額と、算入率と、さまざまな地域の実情を考慮いただいて御判断いただくということになろうかと思います。

○塩川委員 特別交付税措置、八割というのはありがたいというのはあるんでしょうけれども、そもそも特交そのものが二百にも上る項目があって、実際に額で幾らなのかといっても、明細もわからないという状況もあります。
 過疎債で、これも七割というのもありがたい話でありますけれども、借金は借金だよねという話もございますし、地方財政健全化法との関係で、それがあるがゆえに過疎債に手を出すのも遠慮しようかと、抑制要因にもなるんじゃないのかという懸念もあるわけです。
 私、今思うのは、やはり交通権、地方の足をしっかりと保障していく、移動する権利を保障していくという上でも、この地方バス路線をしっかりと維持するために国が責務を果たしていく、このことが求められていると思っています。
 さらに言えば、今、合併で市町村のエリアが拡大をする、一つの市町村の面積が広大になってきているわけですね。現行の国交省の補助メニューというのは、広域、複数の市町村にまたがるバス路線の維持について一定の要件に合うものにつき、都道府県がお金を出すのに合わせて国がお金を出すという仕組みですけれども、一つの市町村内のバス路線についての補助メニューはないわけですよ。だけれども、もともと、その一つの市町村の面積が大きく広がってきているわけです。そういったときに、この現状に合わせた工夫が必要なんじゃないのかなというのを率直に思うわけなんです。
 先日、民主党の福田筆頭の地元の日光市に伺いましてお話をお聞きしましたら、今、日光市というのが、旧日光市に加えて足尾町と藤原町、それから栗山村と今市市という点では、面積が全国の自治体で三番目というような広大な面積となって、栃木県の面積の四分の一近い。でも、そういう広い中でもバス路線というのは、子供たち、高校生やお年寄りのためにもなくてはならない、しっかり維持していきたい、しかし財政負担が大変大きいんだというお話もされておられました。
 そういった合併して広域化した市町村が、その自治体内のバス路線を維持するために、国の補助はないわけで、こういった合併して広域化した自治体がバス路線を維持するのに見合った支援策というのを、今こういう段階において、もっと工夫して考える必要があるんじゃないのかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○原口国務大臣 私も福田筆頭の地元へ行きましたが、広いですね、本当に広い。
 おっしゃるように、複数の市町村間を結ぶバスについて、これはなかなか厳しい状況でございまして、合併市町村のバス路線の維持に対する財政支援、例えば民間バス事業者の運行を維持するための運営費補助、これは合併補助金の対象となっていますし、旧市町村のうちバスが運行されていない地域に、格差是正の観点からバスを運行するためのバスの購入費、これも合併特例債の対象となっています。
 それから、二十一年度、これから特交を出していきますけれども、この中でも、委員御指摘のように、人口が急減する地域についての特交の率を上げようと、今回、ここにいらっしゃる皆様のお力のおかげで新過疎法をおつくりいただきました。その立法府の御意思に報いる思いでも、今回の特交を、そういう人口が急速に減少していく地域により厚くできるように、そういう工夫をさせていただきましたが、なお、さらに何ができるか検討していきたい、こう考えています。

○塩川委員 そういう点では、面積要件というのをもう少し考えてほしいというのは特に広域団体の共通の声でもあります。
 移動する権利をしっかりと保障する、その点でも国の責任を果たすことが求められているという点で、ぜひ御努力いただきたいということを申し上げて、質問を終わります。