<第174通常国会 2010年03月23日 総務委員会 9号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、地方の公契約条例の制定の動きを歓迎し、また、国としての公契約法の実現を求める立場から大臣に質問をいたします。
 地方行革の一環として、この間、公共サービスを民間事業者が担う事例、いわゆるアウトソーシングが増加をしてまいりました。契約単価の引き下げなどにより、公共サービスの担い手であります民間労働者の労働条件の悪化が生まれて、結果として公共サービスの提供にも支障を来すような事例が生まれています。
 そこで、資料を配付いたしました。この二つのグラフを見て、後で大臣に認識をお伺いしたいんです。
 一つは、ビルメン業務の契約改定率の推移。これは、全国ビルメンテナンス協会、ビルメンの業界団体が取りまとめた資料でございます。
 これは、継続物件の契約額の対前年度比の増減額の割合です。平成二年から九年ぐらいまでがプラスとなっているのは、少なくとも契約改定額が上がっている。それが、平成十年度以降は大きく下がってきています。ですから、マイナスである限りは下がり続けているという状況ですね。ここで見ていただくとわかるように、民間よりも官公庁、公団での下がりぐあいの方が大きいというのがこの間の実態でございます。人件費が大半を占めているのがビルメンの仕事でございますので、この単価が下がれば、ストレートに労働者の労働条件の悪化に直結をすることになります。
 もう一つが、公共工事設計労務単価の推移(全職種平均)を国土交通省の資料をもとにグラフにいたしました。
 公共工事では、工事費の積算に当たって設計労務単価が設定されておりますが、この間、毎年下がり続けております。公共工事受注を目指したダンピング競争の激化で発注価格が下がり、それが労務費にしわ寄せされて、現場では設計労務単価より低い賃金となっています。その実勢を調査して翌年の労務単価費をつくるわけですから、結果として設計労務単価自身が下がり続けることになっております。税金を使った公契約のもとで働く民間労働者の賃金が下がり続けるという、いわば民間労働者においての官製ワーキングプアの再生産が行われています。
 そこで大臣に伺いますが、このように公共サービスを担う民間企業で働く労働者の労働条件が悪化をしているのではないのか、この点での大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

○原口国務大臣 お答えいたします。
 公共サービス基本法に規定する安全で良質な公共サービスを受ける国民の権利は、公共サービスの実施に関する配慮、公共サービスに従事する者の適正な労働条件の確保や権利の保障があって初めて実現されるものというふうに認識をしています。
 公共サービス基本法は、私も立法者の一人ですけれども、一方で国や地方公共団体は、公共サービスを委託した場合であっても、今委員がお話しのような事例ですけれども、委託先との役割分担や責任の所在の明確化や、それに従事する者の労働環境の整備に努め、良質な公共サービスの提供を確保すべきもの、こういうふうに立法者の意思として、そこに皆さんがお話をいただいたということを記憶し、また、そのために公共サービス基本法が適正に守られるように期待をするものでございます。

○塩川委員 今、大臣がお触れになった公共サービス基本法、大臣が以前起草者となってまとめられた公共サービス基本法の十一条に、「国及び地方公共団体は、安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるようにするため、公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるよう努めるものとする。」とあるわけです。
 そういう点で、大臣として、委託先の企業の労働者も当然のことながらこの公共サービス基本法で言う労働者、公共サービスの実施に従事する者に当たるということでお答えいただいたと思うんですが、改めて確認したいと思います。

○原口国務大臣 先ほど申し上げましたように、公共サービスに従事する者の適正な労働条件の確保あるいは権利の保障ということには、委託先との役割分担や責任の所在の明確化、そしてそこに従事される方々の労働環境の整備に努める、これが良質な公共サービスを提供する上で極めて重要であると認識をしております。

○塩川委員 そういう点で、先ほどのグラフでございますけれども、このビルメン業界や公共工事に従事をする建設労働者の方の労働条件が大きく悪化をしているのではないのか。ですから、公共サービス基本法をつくったその背景、このような国や自治体が発注する業務における委託先の労働者の労働条件が悪化をしている、こういうのを背景として公共サービス基本法は生まれたのではないのか、そのように考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○原口国務大臣 委員も公共サービス基本法の制定に大変大きなお力を尽くしてくださいましたが、まさに委員がおっしゃるように、公共サービスにかかわる皆さんお一人お一人、もちろん、この公共サービス基本法というのは公共サービスを受ける国民の側の権利保障という法律の体系でございますが、この十一条におきまして、そのサービスの提供者の皆さんについてもしっかりとした配慮をすべきということをうたっておるものだと思料しております。

○塩川委員 この十一条には「必要な施策を講ずるよう努めるものとする。」とあります。ですから、公共サービスを担う受託先企業の労働者の労働条件の改善につながる施策であるべきだと思いますけれども、そういうサービスを担う企業の労働者の労働条件の改善につながる施策というのは具体的にどういうものなのか、お考えのところをお聞かせいただけますか。

○原口国務大臣 本規定の生かし方、十一条の生かし方については、あのときも随分議論させていただきましたが、公共サービスにおける権利を国民の皆さんが学んでいただいて、それをどのように保障していくかという観点から行動していただくことが重要でございます。
 総務省としては、そのような国民の皆さんの動きをしっかりと支えるとともに、みずからも職員の健康のための対策や処遇のあり方の指針を示し、さらに今おっしゃるような委託先、公共サービスに従事する皆さんの権利の下支えをしてまいりたい、このように考えています。

○塩川委員 そういう点でも、現状が労働条件悪化のもとにあるという点でも、こういう公共サービスを担う企業で働く労働者の実態調査というのを国として行うことも考えるときではないのか。そういう民間労働者の労働条件の実態についての調査を考えるというお考えはございませんか。

○渡辺副大臣 アウトソーシングにつきましては、厳しい財政状況の中で効率的に事業が行われるということを期待する反面で、そのしわ寄せが安全、安心の劣化にならないか、こういうことも危惧されるわけでございます。
 総務省としては、各地方公共団体の自主的な取り組みに期待をしつつ、必要に応じて助言を行ってまいりたい。国としてというよりも、各自治体が必要に応じて実態について調査をされるだろうというふうに考えております。

○原口国務大臣 あのときも議論しましたけれども、地方自治体については、これはそのときの議論を紹介するにとどめますけれども、公共サービス基本条例、そういったものにつないでいただいて、それぞれの取り組みをさらに強化していただきたい、このように願うものでございます。

○塩川委員 今、国や自治体が公共工事や委託事業を民間事業者に発注する場合に、この事業に働く労働者の労働条件を適切に確保させる公契約運動が進んでまいりました。御案内のとおり、千葉県野田市の公契約条例がそのスタートでございましたし、日野市や国分寺市、尼崎市などでもそういう条例制定の動きがあると承知をしています。
 大臣として、地方自治体で公契約条例制定の動きが広がっているのは、私は望ましい動きだと思っておりますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。

○原口国務大臣 お話しのように、千葉県野田市における取り組みは、働く人たちの権利を保障し、公共サービスの質を高めていこうという動きであると認識をしています。
 公契約における賃金等の労働条件のあり方に関しては、発注者である国の機関や地方自治体も含めて幅広く議論を進めることが必要でございますが、私は、公契約、それから発注制度についてもさらに合理化しなきゃいかぬというふうに思っています。電子政府、あるいは電子調達といったことを考えてみても、その部分を軽くし、働く人たちのさまざまな資源配分に使う、働く人たちの権利保障に使う、これが極めて大事だというふうに思っております。

○塩川委員 野田市の公契約条例の前文には、ぜひ国で公契約法をつくってほしいという趣旨がうたわれておるわけですね。
 「地方公共団体の入札は、一般競争入札の拡大や総合評価方式の採用などの改革が進められてきたが、一方で低入札価格の問題によって下請の事業者や業務に従事する労働者にしわ寄せがされ、労働者の賃金の低下を招く状況になってきている。」こういう状況を改善するためには、一つの自治体の取り組みで解決できるものじゃない、「国が公契約に関する法律の整備の重要性を認識し、速やかに必要な措置を講ずることが不可欠である。」と述べているわけです。
 ですから、こういった動きに対応して、ぜひ国として、公共工事はもちろんのこと、役務の提供も含めた公契約全般にわたる公契約法そのものを、地方で条例をつくるのを大いに頑張ってもらうのと同時に、公契約法をつくるということについて、今、一歩前に進めるときだと思っていますが、その点についてお聞きいたします。

○渡辺副大臣 御指摘の趣旨につきましては、野田市や江戸川区等の自治体を初め、全国市長会からも要望をいただいておりますし、また、そういう点につきましては、これまで累次大臣も幅広く検討していくべきであるというふうに分科会等でも答弁をしております。
 今後、幅広く検討をし、また、地方のさまざまな実情というものを当委員会を含めて各委員から伺いながらぜひ検討してまいりたい、そのように考えております。

○塩川委員 今、原口大臣も渡辺副大臣も、幅広く議論、検討したいという話でございました。閣僚の中では、仙谷大臣などが、これはある集会のあいさつの中で中央でも公契約法の実現に向け私も努力したいという積極的な発言もしておられます。
 昨年、我が党も含めて、民主党など野党で公共工事報酬確保法案の準備を行ってきた、国の公共工事で労働者に支払われる報酬に最低基準を設ける公共工事報酬確保法案の提出を準備してきたわけですけれども、先ほども言いましたように、大臣に改めて伺いますが、国として、公共工事に限定せず、特にごらんいただきましたようにビルメンの業務のような役務で大幅な労働条件の悪化につながるような事態が生まれている、だからこそ役務などを含めた公契約法を制定する時期にあるのではないのか、その点についての大臣の御決意をお聞かせください。

○原口国務大臣 現状認識については塩川委員と同じ認識を持っております。
 仙谷大臣がお話をしましたように、これは政府全体として検討を重ねてまいりたい、そのように考えています。

○塩川委員 この間、行革推進法などによって自治体の業務などがアウトソーシングされるという事態が行われてきました。その結果として、労働者の労働条件の悪化につながっている。こういう意味でも、公契約条例の動きを大きく進めると同時に、公契約法をしっかりと制定するときである、このことを強く求めて、質問を終わります。