<第174通常国会 2010年03月25日 総務委員会 10号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 NHKの予算案について質問をいたします。
 NHKには、放送法に基づいて、テレビ放送があまねく全国において受信できるよう措置をしなければならないというユニバーサルサービスの義務がかかっております。そこで、NHKの地デジの受信対策について伺います。
 資料をお配りさせていただきましたが、NHKのつくりました資料で、「地上デジタル放送の受信世帯分布」とありますけれども、ここでありますように、二〇一一年の七月までに、現在アナログ放送を受信している世帯に対して九九・五%をカバーするとなっております。残り〇・五%についての対応ですけれども、おととしのNHKの予算審議の際に、NHKからは、この〇・五%について、二〇一一年七月のアナログ停波までの期間にこの〇・五%の数字を縮めていきたいという答弁がございました。
 そこで質問しますけれども、この〇・五%を縮めていくためにどのような取り組みを行ってきたのか、あるいは行うのか、その点をお聞かせください。

○福地参考人 御指摘の〇・五%、大体二十万世帯になるわけでございますけれども、この地上デジタル放送の難視聴地域にお住まいの方々は、ことし三月から始まります地デジ難視対策衛星放送、いわゆる衛星セーフティーネットの対象となっております。国の計画で平成二十二年から五年間の暫定措置とされておるわけですが、この間に、NHKは放送事業者として、難視聴を解消するためさまざまな手段を活用して地上系の放送基盤の拡充に努めていくこととしております。
 今後とも、技術の進展でありますとか、あるいは状況の変化を勘案しつつ、関係機関と協力しながら具体的な検討を進めてまいります。
 以上です。
    〔委員長退席、黄川田委員長代理着席〕

○塩川委員 二〇一一年七月に地デジ受信できない世帯というのが約二十万世帯という話でございました。この資料にもありますように、一番右側に「アナログ放送でも難視」と、現時点、そもそも地上波でアナログ放送が見えないよという世帯というのが約四万世帯ですから、二十四、五万。三十万近い世帯というのが二〇一一年七月のアナログ停波の時点で地デジが見られない世帯として残されるわけであります。アナログ放送でも政令市の規模に匹敵するような世帯数、この視聴者の方がテレビを見ることができないということになります。ですから、私は、この〇・五%の方について、二〇一一年七月に向けて最大限の努力を行うということも必要だと思っておりますし、視聴者の努力では解決できない受信環境の整備に万全を期すことこそNHKの最優先の仕事だと考えます。
 その上で、具体的な支援策に関してお尋ねします。
 この間、NHKとしてもさまざまな支援策を追加、拡充してまいりました。資料の二枚目、これはNHKがつくった資料でございますけれども、一連の支援策についての図になっております。
 もともと、この地デジの受信環境の整備ということでも、追加の経費について予定どおり執行されていないというのは現場でのおくれがあるわけです。自主共聴などの対応についてもおくれているというので、NHKが当初予定した地デジ対応の追加経費も執行できていないというのが現状でありますから、そういうおくれがある中で、私は、そういう事態を踏まえて、さらにその支援策を拡充すべきだと考えています。
 一つは、新たな難視地区に対する対策であります。対策手法として、これは国や民放とも一緒に協力してやっているわけですけれども、中継局の設置や自主共聴施設の新設、ケーブルテレビへの加入ですとか、高性能アンテナ対策などが挙げられております。
 そこで、ぜひNHKに具体化をお願いしたいのが、NHKのアナログ放送は映るのに地デジは映らなくなるという新たな難視地区については、共聴施設への支援を行うというのは自主共聴施設への支援に限られているわけですが、私は、そもそもNHKの放送が映らない地域なんですから、NHK共聴で対応することも行うべきではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

○福地参考人 NHKといたしましては、新たな難視聴地域の視聴者の負担を抑制するために、共同受信施設の設置でありますとか、ケーブルテレビへの加入とか、あるいは高性能アンテナの設置、そういった受信側の対策が実施された場合にその経費の一部を助成していきたい、そういうふうな新たな予算措置をいたしました。
 以上でございます。

○塩川委員 それはここにも書いてある話でございまして、自主共聴への支援にとどまらず、そもそもNHKのアナログ放送が映っていたのに地デジで映らなくなる地域ですから、そこにNHK共聴を行うべきではないのかという点はいかがですか。

○永井参考人 御指摘の点でございますけれども、新たな難視地域については、ただいま国が中心になって補助金の制度とかそういうのを組み合わせながら民放、地元の自治体と連携しながら協議をしているところであります。
 大きくまとまったところは中継局を設置しようということで、これはNHKと民放が一緒に中継局を設置していく。少し少ない世帯数のところについては、ケーブルテレビがあればそこに加入していただくとか、自主的に共聴を引くよというところがあればそれでやっていくということで、そういうところには先ほど言ったように助成金を出すということで進めているところであります。
 これからまだ数が出てまいりますので、その検討の中で何ができるかというのは今後検討していくことになろうかというふうに考えます。
    〔黄川田委員長代理退席、委員長着席〕

○塩川委員 何ができるか検討するという中には、NHK共聴は排除されていないということでよろしいですか。

○永井参考人 現在のところは入っておりません。

○塩川委員 それは、NHK共聴も含めて支援対象を具体化すべきだと思います。
 もう一点、この資料の二枚目の左側に半円がありますけれども、その内側に、「デジタル電波のカバーエリア」というふうになっているところの左側にビル陰などの受信障害対策共聴の絵もあって、括弧して「助成対象外」となっております。
 私は、こういったビル陰などの都市受信障害対策共聴においても、NHKが映らないという場所でありますから、NHKとして何らかの支援策を行うべきではないのか、助成対象に加えるべきではないかと思いますが、会長、いかがですか。

○永井参考人 お答えいたします。
 もともとビル陰の地域は、アナログ時代からNHKの電波が届いているところに後でビルが建って、その陰で見えなくなってきた、それがデジタルの電波にかわったということで、国としても、そこへいろいろな検討を加えながら、補助金を加えながら対策をやっているというところであります。
 この実効がどういうふうに上がるのかということは見なきゃいけませんし、NHKとしては、もともと電波が届いているところですので、そういうところに受信料を直接使うのはいかがなものかと考えております。
 それで、逆にNHKとしては、例えば技術的にどうやったらいいのかとか、支援センターに対して要員も出しておりますので、その支援も含めて今後のところでお助けをしていけないかということをやっております。また、一方で、こういうビル陰の共聴のところで、五万施設というものがあるんですが、それの一つ一つが本当に今デジタル化になっていないか、なっているかというのがまだよく調査が行き届いていないところがありますので、そのような調査もNHKとしてはみずからのところでやろうということにしております。

○塩川委員 大いに調査や技術支援でNHKの持てるものを発揮していただきたいと思うんですが、現状はビル陰共聴をこのまま放置したら間に合わなくなるということになっているわけですから、放送事業者、国が、実際に本当にこの現状を打開するというのであればしっかりとした対応が必要なわけで、調査や技術支援に限らずに、具体的に、おくれているのをおくれを取り戻すような作業をやらなくちゃいかぬ。
 もともと民民の関係で、この資料にもあるように、当事者間の協議による対処が原則となっていたわけですけれども、国も、それまでは民民なのでお金を出すという話もなかったのに、この間お金を出すようになったわけですよ。助成もして、その権利関係について協議が調ったところで支援を行っていくといった取り組みを行っているわけですから、現にNHKが映らない地域について、実際の受信障害の原因者がなかなか特定できないような現状ということであれば、そういうことを踏まえてNHKが映る環境をつくるんだというところで一歩踏み込んだ助成策を考えるべきじゃないのか。会長としてぜひお考えいただけませんか。

○永井参考人 今後、受信障害共聴についてどのように進展するのかということもありますが、我々は、受信料をいただいて、それをどのように使うかというのは制約があります。その業務範囲の中で何ができるかというのを検討していきたいと思います。

○塩川委員 NHKが映らないんですよ、原因者もなかなか特定しにくいような環境で。だからこそ、国としても電波利用料を含めた支援策を行うということになっているわけですから、国費を投入するという点でも、こういった原因者の特定できないようなビル陰共聴の対策をしっかり行うという点でも、NHKの受信料を使うというのは説得的な理由が当然あると私は思っております。その点を含めて具体化をお願いしたい。
 会長として一言、いかがですか。

○福地参考人 ビル陰共聴を含めまして、難視聴地域がふえてきておるわけですが、これによってNHKも、いろいろな費用の増額だけでなくて、人間の、技術的な人材の異動を伴う問題です、そういったことで不定期の異動を行いました。そういった地域に、今、不定期の人事、技術陣を送り込んで対策を講じている、そういった工夫もいたしております。経費的にはNHKの予算がこのために赤字になるぐらい、このフルデジタル化については私どもの重要な仕事として取り組んでおります。
 以上です。

○塩川委員 やるべき仕事ですから、当然、果たしていくという点では必要な経費は投入するものだと私は思っております。
 こういう取り組みをやっても、実際には、現状のまま二〇一一年七月にいく場合でも、努力があったとしても、地デジの難視世帯が残されます。暫定措置として地上波を衛星放送で放映することになるわけですけれども、同僚委員からも質問がありましたが、東京のキー局を放映するのでは、災害情報、防災情報というのはまさにその地域とかみ合わないものになるということであります。そういう点でも、地域情報をしっかり提供しよう、地域放送を充実しようというのがNHKとしてやってきた今の方向ですから、それに逆行するようなことが起こってしまう。こういう衛星による暫定措置というのは、私は、視聴者の納得が得られないんじゃないのかと思いますが、会長はどのようにお考えですか。

○福地参考人 御指摘のとおりでございますけれども、セーフティーネットの受信する地域におきましては、セーフティーネットが終了する五カ年間のなるべく早い段階でデジタル中継局の地上系のインフラの整備をする、そういうことで地上デジタル放送の番組をごらんいただけるように民間放送とも提携をしながら最大限スピードアップして取り組んでまいりたいと思っております。

○塩川委員 今の地デジの計画で、二〇一一年七月のアナログ停波には現実には視聴者は対応できない、チューナーを含めた受信機の普及の問題もありますし、ビル陰共聴の問題もあります。既に放送局が責任を負うべき地デジ環境の整備においても、NHKでさえ〇・五%、それこそ先ほど言ったように、政令指定都市の世帯に匹敵するような世帯が地デジが見られないという形で残されるわけですから、私は、そういう点でも二〇一一年の七月のアナログ停波は延期をすべきだと訴えてまいりました。
 そこで大臣に伺います。
 前回、この点で質問をした際にも、大臣の方は、地デジの完全実施に向けて全力を挙げるという答弁でございました。私は、現状では地デジ放送が届かない世帯を残す中でのアナログ停波は延期すべきだと思いますけれども、大臣として、延期できない理由は何なのか、それはどういう理由なんでしょうか、お答えいただけますか。

○原口国務大臣 私たちは、二〇一一年七月の完全移行まであと四百八十六日でございまして、関係者と連携し、デジタル化推進の運動の輪を広げて、テレビが見られなくなる方が生じないように国として万全を期しておるわけでございます。
 アナログ停波の延期ができない理由、それは幾つかございます。サイマル放送による放送事業者の負担増、アナログ放送用機材の維持、運用が困難であること、国民生活に必要な新サービスの早期開始、節減した電波の利用、あるいは期限を決めて関係者が連携して取り組むことが重要、このように考えています。
 野党時代に、残り五パーもあるのであれば、それは延期をしなきゃいけないんじゃないかという試算を私たちの部門会議で出したこともあります。しかし、今、委員が出していただいたこの資料にもございますように、新たな難視聴地区をケーブルに移行してみたり、自主共聴のデジタル化改修をやってみたり、高性能アンテナをやっていますし、それから、集合住宅では、これはあくまで自己確認ですけれども、地上デジタル放送が受信できますということも申し上げて、こういうステッカーも配布をさせていただいております。
 いずれにせよ、完全移行まで国としてしっかりと関係者と協力し、国策として取り組んでおるところでございますので、御理解をいただければと思います。

○塩川委員 住民、視聴者にとって新サービスの提供といっても、テレビが見られなきゃ意味がないわけですよ。そういう点でも事業者側の負担の問題が出てくるわけですけれども、NHKとして、アナログ停波を延期した場合にどのぐらいの費用がかかると試算されておられるんですか。

○福地参考人 御質問のことですが、NHKといたしましても、フルデジタル化は最優先の仕事として取り組んでおりますので、当然延期は考えておりませんけれども、アナログの送信設備というものをつくりまして既に二十年以上経過しております。延期をした場合に、故障等の事故が発生する懸念も出てまいります。それから、設備の補修とか更新、回線の借用、電力料、こういったものに多額の経費がかかってまいります。こういったことから、年間で、地上アナログで四十億円、衛星アナログで大体二十億円、合わせて六十億円ぐらいが余分にかかってくるというふうに試算いたしております。
 以上です。

○塩川委員 年間七千億円近いNHKの予算を考えれば、一%ですよ。この間の努力の中で一〇%還元の話なんかも出るわけですから。一〇%還元はもちろん視聴者への還元としては重要だと思いますけれども、それよりもまずはこういうところにこそお金をかけて、視聴者に迷惑はかけないということこそ行うべき仕事じゃないでしょうか。私は、そういう点でも、このままアナログ停波に突き進めば大量の地デジ難民を生み出す、政府としてアナログ停波の延期も視野に入れて事業者と協議をすべきだということを申し上げたい。
 その上で、今回の予算を見ても、受信料の収入の目標についても、実際には今年度も目標に達しない、来年度も経営計画との関係では大きく乖離が拡大をするという状況になっている。私は、そういった背景となっている経営計画における一〇%還元についても、もう一度議論すべきだと率直に思います。
 最後に一言申し上げて終わりますが、経営計画では過大な受信料収入目標を掲げるだけではなくて、国内放送費や人件費のキャップシーリングや契約収納費の削減を行う構造改革を進めるものとなっております。結果として、良質な番組提供に悪影響が出たり、収入確保のための督促強化や民事手続の拡大など、視聴者との信頼関係を損なうことになりはしないか懸念をしています。必要な見直しを行うことを検討すべきだと思いますが、会長に一言、無理な受信料収入目標を掲げることが、結果として視聴者にツケを回すことにならないのか、NHKの信頼を損なうことになりはしないのか、この点について一点お聞きして、終えます。

○近藤委員長 質問時間が終了しておりますので、簡潔にお願いします。

○福地参考人 お答え申し上げます。
 現在掲げております受信料の支払い率目標というのは、過去に達成したことがある水準でございます。それ以上になりますとおっしゃるとおりのことがあるかもわかりませんが、努力目標の範囲であるというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 終わります。