<第174通常国会 2010年04月16日 内閣委員会 7号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 一昨日の質疑に続いて、自衛隊の再就職規制の問題についてお尋ねをいたします。
 今回の自衛隊法の改定によって、これまでの事前規制が行為規制に変わります。現行の事前規制でも、若年定年隊員については防衛大臣が再就職あっせんを行っておりますが、原則天下り禁止のもとで、営利企業への再就職には事前承認が必要とされております。
 そこで、防衛省にお尋ねをいたしますが、この営利企業への再就職に当たっての事前承認の基準はどのようなものとなっているのか、この点についてお答えください。
    〔委員長退席、小宮山(洋)委員長代理着席〕

○長島大臣政務官 塩川委員にお答え申し上げます。
 大きく分けて三つございます。
 一つは、本人が職務を通じての企業への影響力を不正に行使して再就職することを防止する観点から、本人がかかわった契約額が当該企業の年間総売上額に占める割合または契約額そのものが一定の水準以下であること、これが第一点。
 二番目は、本人以外の者が有する企業への影響力、つまり、組織全体が影響力を不正に利用した再就職を防止する観点から、本人が所属している機関と企業との間の年間契約総額が企業の年間総売上額に占める割合、つまり企業の在職機関への依存度、これが一定の水準以下であること、これが二番目。
 三点目は、離職前の人的なつながりなどを利用して再就職後に防衛省に対し影響力を行使することを防止する観点から、再就職先での地位が防衛省との契約の折衝等を行う地位でないことなどを承認の基準とし、これらを満たし、かつ公務の公正性の確保に支障が生じない場合において承認することとされております。

○塩川委員 今述べていただきましたように、いわば一定の基準に基づいての利害関係先を除いて事前承認を行うということでありますけれども、この事前承認の基準というのは、今回の法改正でどうなるんでしょうか。

○長島大臣政務官 これは、事前規制から事後規制ということになります。

○塩川委員 事後規制になるということで、なくなるということでよろしいですか。その点、確認してください。

○長島大臣政務官 そのとおりであります。

○塩川委員 ですから、もともと、若年定年隊員の場合には、防衛省による天下りのあっせんが行われてきたわけですが、原則天下り禁止のもとで事前承認の基準が設けられておりました。しかしながら、直接利害関係先の基準は極めて狭い範囲であったわけであります。でも、今回の改正によって、その事前承認の基準さえ取り払われてしまうことになります。
 こういうことで、利害関係先への再就職、いわゆる天下りの押しつけというのを本当に排除できるのか、重大な懸念を覚えますが、いかがですか。

○長島大臣政務官 塩川議員にお答え申し上げます。
 天下りという言葉をお使いになられましたけれども、これは、一般の公務員にこれまで見られたようないわゆる天下りとは全く趣旨を異にしておりまして、自衛隊という組織の性格上、精強性というものを維持しなければならない、そういうことで六十歳の定年制を、あえて若年の定年制をしいて、将官あるいは内局の事務官以外の、二十五万になんなんとする、ほとんどすべての自衛隊員の皆さんは、これを若年、五十六歳とか五十五歳とか五十四歳とか、強制的に定年として、離職しなければならない。
 したがいまして、防衛省としては、雇用者としての責任を果たすという意味合いから再就職の援助を行っているということでありまして、天下りのあっせん、そういう認識はぜひ改めていただきたい、これが一点です。
 それから、お尋ねの件ですけれども、その点につきましては、新たに審議会というものを防衛大臣のもとにつくらせていただきます。この審議会は防衛大臣から調査権限の委任を受けており、その調査のための権限は、罰則を伴う再就職監視・適正化委員会による調査と同等のものとなっております。
 また、審議会の委員は、隊員としての経歴のない者から任命することになっており、お尋ねのような調査の中立性、公正性というものは問題ないというふうに認識しております。

○塩川委員 予算と権限を背景とした再就職あっせんは天下りのあっせん、押しつけにつながるのではないのか、この点が問われているわけで、これは一昨日も議論しましたように、空自の官製談合の問題、公正取引委員会からも、こういったやり方について、過去の取引実績とか航空自衛隊の退職者の在籍状況等を考慮して調達要求目標を定める、こういう疑念があったわけですから、この点についてきちっと、起こらないというような対応ができているのかということが問われているわけであります。
 その点で、審議会のお話をされましたけれども、仙谷大臣にこの点を伺いたいわけですが、行為規制の違反行為に対する監視機能の強化を主張されておられるわけですけれども、若年定年隊員による行為規制の違反行為については防衛省に置かれる審議会により監視を行うという今の答弁にも明らかなように、そうはいっても防衛省の内部の機関でございます。身内に甘い防衛省・自衛隊、この点は北澤大臣自身もおっしゃっておられるわけですから、まともな監視が行われるかどうか、極めて疑わしい。
 その点で、一般職公務員などについては、再就職等監視・適正化委員会が監視機能を担います。適正化委員会の委員は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命をする。これが本当に機能するかどうかはともかく、独立機関の体裁があります。
 一方で、防衛人事審議会、先ほどおっしゃった審議会が想定しているのは防衛人事審議会ですけれども、この委員は防衛大臣が任命をする、防衛省内の組織ということで。この点では、一般職公務員に対応する再就職等監視・適正化委員会と、この防衛省若年定年隊員に対しての防衛人事審議会の権能と、大きな違いがあると思うんですけれども、大臣はどのようにお考えですか。
    〔小宮山(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

○仙谷国務大臣 長島政務官の答弁もお聞きいただいたと思いますが、そもそも、一般的に、再就職のあっせんというふうなことが根本から禁止といいましょうか、してはならないこととされている一般の公務員の世界の話と、職務の特殊性から、あるいは特異性と言った方がいいんでしょうか、若年退職者についてはむしろあっせんをしてお世話する、再就職をお世話するということなくしては、自衛隊という、公務員ではありますけれども、この部隊を精強に、本来の目的に従った集団として維持することが困難だという場合は、相当違うと思います。
 ただ、問題は、この間、防衛省で種々問題になっておりますような癒着の関係といいましょうか、ちょっと、ちょっとだけではなくて、大いに嫌らしい関係が発生したり増殖したりしてはいけませんので、これはやはり独自に、そういう観点からは厳しく監視をしてもらわなければならない、こういうふうに思います。
 したがって、私は、今、防衛省の審議会がそれにふさわしい独自の調査権能を持って、自律的にその任務に従った監視機能が果たせるように万般の準備をしてもらいたいというか、万般の制度設計をしてもらいたい、こういうふうに考えております。

○塩川委員 この間、予算と権限を背景とした天下りの押しつけがあってはならない、この若年自衛隊員の問題であれ、この点でのけじめをきちっとつけられないようでは、信頼を得られないのは当然であります。そういう点でも、行為規制に切りかえる以上は、やはりしっかりとした監視機能が働かなくちゃいかぬ。
 そういう点だからこそ、独立した中立公正の第三者機関をということをおっしゃってこられたわけで、この防衛人事審議会、ここで規定されている審議会というのは、防衛省から独立した中立公正の第三者機関だと大臣はお考えなんですか。

○仙谷国務大臣 私自身は、さっき申し上げておりますような、自衛隊、特に、若年退職という制度があるそういう特異な組織の再就職あっせん、むしろ再就職あっせんをすることが認められている組織の再就職あっせんの癒着と、もう少し進めば腐敗ということになるんでしょうけれども、そのことについて厳しく目を光らせていただく、そういう審議会になっているかどうか、それは今までのこともありますので、実績を見てみなければわからないのかなというふうに考えております。

○塩川委員 結局、独立した第三者機関とは認めることができないということを裏でおっしゃっておられるわけで、そういう点でも、現行におきまして一般職では禁止されている天下りあっせんは、防衛省においては、若年定年制を理由に合法化をされて、利害関係先への天下りの規制基準はなくなる、その上、行為規制の監視機関は、第三者機関どころか、わざわざ身内の組織となっております。
 航空自衛隊の官製談合事件を初めとして、利害関係先の企業との間で数々の不祥事を起こしている防衛省・自衛隊なのに、今回の法改正では、かえって防衛省・自衛隊にとって焼け太りだと言われても仕方がない。こんな防衛省に都合のいい法改正をそのまま受け入れた政治家の責任も問われているわけで、これは、防衛省・自衛隊の注文にこたえた官僚主導じゃないかと言われても仕方がないというものであります。
 こういった防衛省・自衛隊の天下り推進法案と言わざるを得ないということを述べ、官房長官もおいでいただいていますので、今回の法案について、適格性審査への政治家の関与の問題に関連して質問いたします。
 今回の法改正によって、内閣官房長官が幹部職に係る標準職務遂行能力の有無を適格性審査において判定し、審査の合格者について幹部候補者名簿を作成し、その名簿に記載されている者の中から幹部職への任用を行うこととなります。適格性審査を行うのは、総理大臣から委任を受けた官房長官だと承知をしております。
 そこで、先日の質疑の中での大島副大臣の御答弁との関係でお尋ねしたいんですが、大島副大臣は、適格性審査において政治家の関与は排除をしていると述べておられます。これは当然の見識だと思うわけですが、その理由は何なのか、お答えいただけますか。

○大島副大臣 塩川委員にお答えをさせていただきます。
 一般論として政治家の関与は排除させていただくということで、制度設計等は政治の側がするとして、適格性審査に関しての一般論としての政治家の関与というのは私のこれまでの経験から排除をした方がいいという趣旨での答弁でございまして、適格性審査は、幹部職に係る標準職務遂行能力の有無を判断するための審査でありまして、客観的かつ公正に行われることがまず必要だと私は考えております。
 それで、先ほどの私の答弁は、適格性審査は客観的かつ公正に行われるべきものであり、審査が恣意的に行われるようなことがあってはならないという趣旨で申し上げたものでございまして、いずれにしても、適格性審査は内閣官房長官が行うとの法案の規定どおり、内閣官房長官が最終的な判断を行うことになると考えております。
 以上です。

○塩川委員 内閣官房長官が最終的には判断を行うけれども、審査そのものは客観かつ公正に行われなきゃいけない、審査が恣意的に行われてはいけないということでありますが、そこをどういうふうに担保するのかということであります。その点の制度設計、仕組みというのはどのようにお考えなのか。
 では、大島副大臣にお答えいただいて、その後、官房長官にぜひお聞きしたいと思います。

○大島副大臣 ありがとうございます。
 適格性審査は、幹部職に係る標準職務遂行能力の有無を判定するための審査でございまして、客観的かつ公正に行われることが必要と考えており、適格性審査の進め方についても、必要に応じて民間有識者等の意見を聞いてまいりたいと考えております。
 具体的には、例えば人事評価、職務履歴等に関する書類や面接の結果をもとに、必要に応じて民間有識者等からも意見を伺いながら審査を行うことを想定しております。

○塩川委員 その辺について、官房長官にお尋ねしたいんですけれども、公務の中立性、公正性の確保のためには政治家の恣意性を排除しなければいけない、しかし、最後の審査は当然のことながら官房長官が行うということになって、その辺のけじめといいますか仕組みの問題で、適格性審査の進め方について、恣意性を排除するという制度設計について、具体的なイメージの話をぜひもう少ししっかりお示ししていただきたいと思っているんですが。御説明と同時に、何らかのものをお示ししていただきたいということをお願いいたします。

○平野国務大臣 今大島副大臣が答弁をいたしましたけれども、特に人事というのは恣意性というものが入るとよろしくないという、これは民間、国を含めて、すべてやはり人事というのはそういうものだと私は思います。
 しかし、だれかが決めていくわけでありますから、当然、決めるということは一つの判断をするわけですから、プログラムでこれを入れて、これに合格したからこの人事はいいとか云々ではありません。人が決めていくわけですから、それをもって恣意性というのかどうかということは、また議論はあるわけであります。
 しかしながら、今先生御指摘のように、この審査というのは、やはり客観的に、公正にやらなきゃいけない。そのセクションの責任者は官房長官がやるということでありますが、特にポイントは、適格性審査をしていく過程において政治家の関与、これは多分大島さんがおっしゃったんですが、私の認識では、やはり政治性を排除する、政治性を排除して客観的に公正な審査を行う、こういうことが私の認識をしているところでございます。

○塩川委員 適格性審査そのものが、その際の基準となるのが標準職務遂行能力ですけれども、これ自身が非常に抽象的な中身だというのはこの委員会でもずっと議論してきて、そういう点でも恣意性が入るんじゃないのかということになってきているわけです。その点での政治家の関与があってはならない、排除しなければいけない。
 その際に、政治性を排除するということを官房長官はおっしゃったわけですが、それをどうやって行うのかという仕組み、制度設計をお出しいただきたいということなんですけれども、いかがですか。

○平野国務大臣 何回も申し上げますが、やはりそれは、固定した人の考え方ではなくて、その時々に応じて客観的に第三者、民間のそういう方々の御意見も伺う、こういうことがより客観的、より公正なステージになるのではないかと私は思います。

○塩川委員 どういう制度設計にするのか、政治家の恣意性を排除するという目的が達成できるのかという検証も必要ですから、関連するそういう制度設計の中身について、具体的な案をお示ししていただきたい、この委員会にお出しいただきたい。この点について、委員長としてお取り計らいをいただきたい。

○田中委員長 後刻理事会で検討させてもらいます。