<第174通常国会 2010年04月22日 内閣委員会 9号>


○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 四人の参考人の皆さんには、貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。
 最初に、四人の参考人の方全員にお尋ねをしたいんですが、今回の法改正の中で、自衛隊に係る再就職規制についての改正が行われます。これは、三年前の国公法の改正の際の、これまでの事前規制から行為規制に切りかえるということを、今回自衛隊に対しても適用するという中身でございます。
 そこで、私もこの委員会で議論しているんですけれども、自衛隊の場合には若年定年制と言われる、六十歳の前で退職されるから、そういう点で従来からも防衛省のもとにおいて再就職あっせんというのが認められてまいりました。原則禁止ではあっても、そういう特殊な事情でということであったわけですけれども、しかし、今回行為規制に切りかわることによって、いわばほかの役所では認められない役所による再就職あっせんが、防衛省においては若年定年制において認められるということになります。
 そういうときに、この間、防衛省・自衛隊にかかわって一連の不祥事が相次いでまいりました。調本事件以来この十数年間で幾つもの談合事件なども起こってまいりました。近年では防衛事務次官が関与するような事件もございましたし、つい最近でも空自のかかわる官製談合事件がある。そういう意味では、かつての業者の談合事件だけではなくて、自衛隊側がかかわる、防衛省側がかかわる事件というのがこの間指摘されているという点でも重要であります。
 こういう時期に事前規制から行為規制に変えていくというその妥当性が問われているんじゃないのか、その点についての四人の皆さんのお考えをお聞きしたいということが一点。
 あわせて、行為規制となったこの法改正でも、事後チェックをちゃんとやりますということが前提となっているわけですけれども、しかしながら、全体の制度設計は、再就職等監視・適正化委員会が独立した中立公正な第三者機関として働くと。これが本当に働くかどうかという妥当性も問われなければならないと思いますけれども、しかし、防衛省のこの再就職規制に係る監視機関は、答弁でも言われているように、防衛省の内部の組織であるという点で、この行為規制に係る監視機関としての機能が果たされるのか、こういう懸念を強く思っているわけですけれども、この点。
 以上二点について、皆さんから御意見を賜りたいと思っております。

○飯尾参考人 やや勉強不足でございまして、今委員から御指摘があるまで、ぼやっと大体認識しておりましたけれども、この問題についてそれほど詳しくないことを前提にお答えいたします。
 自衛隊は、職務の特質上、若年定年制をしかざるを得ないということでありますけれども、そのときにあっせんをしなかったらどうだろうと考えますと、やはりあっせんをしない方が不公正、不透明なことが起こる確率は高いのではないか。自分はやめざるを得ない、世話もしてもらえない、こうなると、さまざまな不透明なことが起こる可能性はむしろ高まる。それを防ぐためには一定の世話をするということはやはり必要ではないかなというふうに思っております。
 ただ、その後、事後規制というのもやはり必要だというのは御指摘のとおりだというふうに思います。ただしかし、これは組織の置き方でどのように、数が多い人たちを全省庁一律に見るのか、それに特化したそれぞれの組織を置くのかということはやはり選択の問題で、具体的な組織の置き方よりも、その中の組み方を、どのようにして運営していくのかという問題ではないかなというふうに私は理解しております。

○長谷川参考人 私も余り、勉強不足でありますけれども、しかし、自衛隊の問題が特殊だといった理由は、今御指摘の点にかてて加えて、やはり安全保障上の問題というのも考慮の中にあったのかなというふうに思います。つまり、野放しにしてしまって、日本の防衛機密のようなものが仮に漏れる、民間あるいは外国に漏れるというようなことがあったら困るということであって、だからこそちょっと扱いが特殊なんだという議論があったように記憶しております。
 その限りにおいては、やはりそれなりの事前チェックというものは必要かなというのが私のとりあえずの印象でございます。
 不十分で申しわけございません。

○田中参考人 自衛官という特殊な存在、国家にとって非常に重要な職務を遂行しているわけでありますが、これが若年で退職せざるを得ないといのは客観的な事実としてあり得ると思います。国を守れない、自衛できない人たちに六十歳までいていただいても仕方がないわけでありますから、そのために一定の就職のあっせんをしていく。この公正な、透明なシステムをつくっていくということは非常に重要だと思います。
 そのことと、先ほど委員がおっしゃった、事務次官が汚職したとか、いろいろな談合をしたとか、その話とは全く別の話であって、それはどこの省でもあり得る話だと私は思いますが、あり得るんですよ、あると言っているんじゃなくて。そういう問題については厳格なチェックといいますか、これはもう、入札とか業界とのつき合いだとか、それは公務員倫理法もあるわけであり、一種の犯罪でもありますから、この際一緒にして議論すべき話ではないというふうに私は理解しております。
 つまり、国家を守るための自衛官についての問題と、それから事務官僚あるいは将官等についてのその問題とは分けて考える必要があるのではないかと思っております。

○晴山参考人 先ほどから天下り規制についての議論がいろいろ出ておりますけれども、私は、天下りを規制するというのは何のためかといいますと、官民の癒着を防止するということに原点があると思っております。
 これは、平成十九年改正前の国公法の規定が、離職する前五年間在職していた国の機関と密接な関係のある営利企業の地位に離職後二年間ついてはならない、こういう規定になっていたわけです。この五年というのはおかしい、もっと長くすべきだ、それから、二年間で切るのはおかしい、二年待てば自由になる、その間特殊法人に天下って民間営利企業に行く、しり抜けだというふうな批判があったわけですが、それはそれで問題なんですけれども、やはり原点は、役所と営利企業が不当に癒着をして行政をゆがめることを防止することがまさに天下り禁止だ、そこに原点があるんだというふうに、その前の国公法の規定も踏まえて思っております。
 したがって、公務員をやめて民間に行くことすべてを天下りというふうに定義をしてしまうとそれはちょっと広過ぎて、では、そこも含めて禁止するのかというふうな話になってくるわけですが、例えば田中先生のように官庁にいて私立大学の先生になったとか、あるいは、今、国立も公務員ではありませんので、国立大学の教授になったら天下りか、そんな議論になるわけですが、それはそうではない。やはり、原点は、行政をゆがめるおそれのある官民癒着を防止するために天下りが規制されるんだというところに原点があるんだ。そこはやはり原則禁止で、厳格に、これは事前規制で禁止すべきだというふうに思っております。
 以前は、先ほど言いました五年間、二年間という中でも、省庁から申請があったものについては人事院が個別審査して、これは癒着のおそれはないだろうというのは承認をして、毎年百名とか数十名とかというふうなあれを出していたわけなんですが、そういう観点からすると、やはり、厳格に規制した上で、例外的にもしチェックするのであれば、私は、人事院の厳格な審査ということに戻すべきだというふうに思います。
 自衛隊についても原則そうだというふうに思いますので、自衛隊だけ特別職だからそこは外すというのはやはりおかしいというふうに思います。
 若年定年制という特殊な問題があるというのは、私は、これはもうちょっと勉強してみたいと思いますけれども、でも、そうであるならばやはり、そういう不当な癒着に結びつかないような形で早期に退職をして再就職というのはあり得るというふうに思いますが、その場合でも、塩川議員が言われたように、政府のセンター、監視委員会というところのチェックではなくて内部のチェックということになると、これは非常に不透明になりますので、それはやめて、最低限、今のセンター、監視委員会というところのチェックは厳格に受けるということが必要になってくるんだろうというふうに思います。

○塩川委員 予算と権限を背景にした押しつけ的な天下りということに対しての国民的な批判があるわけで、二兆円に上る契約を行うのが毎年の防衛省でございますので、その際に、お金、仕事とセットで天下りを強要するような場面というのが問題になる、それはこの間の官製談合でも公正取引委員会から指摘をされた。こういうことについて、特殊な事情を踏まえながらも、どうあるべきなのかということにもう一歩踏み込んで対応を考えるべき点があるということについても、また改めてでも知見をいただければと思っております。
 二つ目にお尋ねしたいのが、幹部職の任用のあり方の問題でございます。
 この点について意見陳述をいただきました飯尾参考人、田中参考人、晴山参考人にお尋ねをいたします。
 それぞれ意見陳述でもお述べいただきましたように、一つ、幹部職員人事の適格性審査の場面と、あと、幹部職になってからの任用のあり方の問題と、いわば二段階で情実人事や党派的な人事が行われないようにするという点で、今回の閣法がどうなっているのか。
 私などは、この委員会の審議の中でも、適格性審査についても、では具体的にどうなのかといった場合に、標準職務遂行能力といっても抽象的ですねということもありますし、人事評価のあり方についても、能力評価は難しいと総務省も答弁されるぐらいですから、そういう中で、政治家の関与の排除、情実人事、党派的な人事が本当に起こらないのか、非常にそういう懸念を覚えるわけですけれども、その点について、閣法についての評価をお聞かせください。

○飯尾参考人 この問題は、先ほどからお話をしていますように、人事でございますから、具体的にどうかというのは大変難しいことだと思っておりますけれども、私自身からすると、実は、戦後長らく続いた日本の仕組みと現在は少し変わりつつあるのではないか。
 つまり、幹部は実は、政治家である大臣、政務三役等と密接に関係しているところであって、ただ、逆に言うと、長期政権の続いている中においては、非常にその中に癒着は起こりやすい。これまでそれがなかったのかといえばどうだろうという疑問の念もないわけではありません。その点でいうと、政権交代が常態化するという時代が見えている中でいうと、この法は、長期的に見ると適正化の方向に動いているということをやはり大前提で考えないといけないというふうに考えます。その点でいうと、事態は改善するのではないかというふうに思っております。
 今回の、例えば閣法、内閣提出法案の方を見ますと、適格性審査という一段階が入っているわけでありまして、何となく年次で上がっていくというよりは、一段階そこできちんと評価をせざるを得ないことになっておりますものですから、そういう点でいうと、そこに一つ審査というやや客観的なものが入ってくるために、そこで、私の予想では、恐らくこれまでよりは幹部にはなりにくくなってくるということではあろうというふうに思うわけです。そこで一つ、国全体を見ているかどうかみたいなことがやはりチェックされるんだろうなというふうに考えております。
 それから、任用についても、では現行法制度が非常に手当てがあったのかというと、やはり、幹部の職員と末端の職員を全く同じ仕組みでやるという現行法制の方にむしろちょっと見落としがある可能性があって、逆に言うと、幹部だけ協議という手順を設けていることによって、それについての一定の手当てができるということ。
 ただし、この問題は、どちらになるかは、先ほど来何回も申し上げているとおり、実は実際の運用次第であって、これを法律で書き切ることはできないだろうと私は思っているものですから、そういう点でいうと、それについて幅広い監視が必要であって、また、実績を積み重ねる中で慣行が生まれてくるということを期待したいというふうに考えております。

○田中参考人 適格性審査という制度を設けること自体、一つの進歩だと思っております。
 従来の各省の人事がいいかげんであったということは、私は、例外は私の経験からいいましても全くないということはないと思います。私が勤めた役所というのは、入ったときは行政管理庁でありましたから、各省の幹部と接触する機会が非常に多うございましたし、臨時行政調査会以来、土光臨調以来、民間の人たち、あるいは政府のトップの人たち、政治家と接触する機会が非常に多うございました。したがって、なぜこういう人が局長になられたのかなというふうな人が全くなかったということは、私は、正直申し上げてなかったとは言えないと経験上申し上げておきます。
 だから、今までのシステムは、年次で順番に上がっていくということでしたが、霞が関で、例外的に言うと、農林水産省は、年次によると、同年次で二人次官が出たりスキップされたり、かなり入ったときから能力が、毎年、仕事のしぶりでわかりますよ、それはわかるんです。ところが、わかるんだけれども、それでも間違いが、間違いといいますか、ないことはない。私も農水省へ行っておりましたから、後輩たちの声を聞くことがあります。
 ですから、人事というのは絶対これでいくということはあり得ないので、そのときそのときの省内の構成だとか、政治との、内閣との関係だとか、あるいは与党、野党との仕事のしぶりも非常に役所の中ではよくわかりますので、その人の能力というのは大抵わかるんです。ただ、問題は、なかなか年次というのが、省によっては確かに違いがありますけれども、立派な省に限って変えられない、順番どおりいくというところに問題があったように思います。
 それを、今度は内閣が適格性審査をやるというのは一つの大きな進歩だと思いますが、それも、飯尾参考人がおっしゃったように、一挙に、初めから数式のように決めてやるわけにはいかないので、やはり経験を積みながらやっていかなければいけませんが、最小限、どんなシステムで、プロセスで、どのように進めていくのかということを、仕組みはオープンにしつつ、毎年の人事があるわけでありまして、それで試行錯誤をしていって、経験を積み重ねていく。それで、そのシステム自体についてはオープンにしていく。どういう人が審査をするか、どういうプロセスで審査をするかということを公開していく。国会議員の先生方、もちろん国民の批判を得るような、そういう仕掛けが必要であると思っております。
    〔委員長退席、小宮山(洋)委員長代理着席〕

○晴山参考人 先ほど私が言いましたように、やはり、適格性審査の客観的な基準とプロセス、これがより抽象的になる可能性が非常に強いということです。そこに、抽象化されればされるほど、これは人の評価の問題ですので、政治的な要素が入ったり、あるいは政治家との個人的なコネクションとかが入る余地が拡大をしてくるということを私は恐れています。
 その点では、これまでの人事のあり方がよかったとか、妥当な人事がすべてされてきたということは、もちろん私の立場で言えることではありませんけれども、従来以上にそこが広がってきて政との距離が近づきますので、そこにやはり政の関与、人事に対する関与というのが強まってくるというふうになるということで、事務次官も含めて、成績主義に基づく、国公法の体系のもとにあるということからすると、やはり前進ではなくて私は後退だというふうに、今のお二人とは違って思っております。
 ただ、幹部というのはやはり違うんだ、一般のあれとは違うんだ、先ほど飯尾先生しきりと言われているのは私は一面あるというふうに思っています。
 もしそうであれば、政治主導というところから民主党の今回の法案は出てきていると思いますけれども、本当にそれをきっちりやるということであれば、一定部分についてはやはり政治任用というのが筋であって、私は、日本の公務員制度の歴史からいえば政治任用をふやすことには消極的ではあるんですけれども、もしやるのであれば、一定、限定をして政治任用にしてすっきりとさせるべきではないか。
 そこで、一般の公務員とは切り離して、一般職についてはちゃんと現行の基本原則の枠内に置いて、恣意的な人事が起こらないようにするということをするべきであって、一般職に残したまま局長以上を切り離してというふうなことをすると、今の公務員法の体系が本当に上から崩れてくる。今回の法案が通って、幹部人事についてそういうことがもし許されるということになると、それは課長以下にもつながってくるおそれがあるというふうに私は思っています。
 そういう観点からすると、戦後の、国家公務員法という、憲法に基づいていろいろな原則のもとで比較的がっちりした体系でつくられてきたわけなんですが、それがやはり非常に脅かされてくることになるのではないかということを危惧しております。

○塩川委員 時間が参りました。ありがとうございました。