<第174通常国会 2010年04月28日 内閣委員会公聴会 1号>



○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、貴重な意見陳述を賜り、本当にありがとうございます。
 最初に、進藤公述人に何点かお尋ねをいたします。
 陳述の中でも、国民から見た国家公務員制度の批判ということで二点お話しされました。幹部公務員層の特権性の問題についてはよく巷間上るところでありますが、もう一つ、国民生活の向上や福祉増進という観点からの専門性の低さを指摘しておられます。
 その点でお尋ねをしたいのが、この専門性の低さというのが問題となる、そういう具体的な事例でもしお話しいただければと思っております。
 先ほども、薬害のお話ですとか貧困の問題とか地域経済の衰退の問題がありましたけれども、専門性の低さによって生まれる弊害、そういう点についてのお考えをお聞かせいただきたいということと、あわせて、専門性の高い国家公務員幹部人事のあるべき姿ということでイギリスの事例が紹介をされました。参考となることだと思っておりますが、補足としてお話しいただけることがありましたら、その点についてもお願いしたい。
 以上二点について、まずお聞かせください。

○進藤公述人 お答えいたします。
 まず、専門性の低さという点でございますけれども、例えば、以前問題になりました薬害エイズのことを考えますと、あの場合は、当時の厚生省の薬剤行政の担当であった課長クラス、係長や課長補佐も含めたクラスが、どの血液製剤にどういう有害性があるかということを判断する能力が低かったということもありまして、まさに医薬品メーカーの主張をほぼうのみにするという形で、重要な場面で重要な決断ができなかった、血液製剤の回収をすることができなかったという点が非常に大きな問題であったと思います。
 あるいは、労働行政に関していいますと、今これだけ失業ですとかワーキングプアということが問題になっている中で、いろいろな議論として、職業安定所、ハローワークの機能の拡大が必要だということが言われております。その場合に、例えば職業紹介、職業案内、それから職業訓練に関する専門的な能力を持った職員というのを今後大幅にふやしていって、失業、貧困問題に対応していく必要があるわけですが、現在の労働行政の中では、専門的な職員の数の少なさということと、今回の年末から年始にかけて東京都が行った公設派遣村を見ましても、職業訓練機能という点で弱点というのが露呈されたわけです。
 そういう点で、国民生活にかかわる点での専門性の低さということが国民の批判を浴びる点になっているのではないかというふうに考えております。
 それでは、専門性をどう高めていったらいいかということでございますが、例えば、今お話に出ていた中で、幹部職員の適格性審査について第三者機関をかませるという稲継公述人の御指摘がありました。私もその点、大賛成でありますけれども、その場合にあっても、最も中立な第三者機関として人事院が既にありますので、これの機能強化をむしろした方がいいと私は考えておりますが、人事院が適格性の審査をするとしましても、例えば、事務次官というのはどういう仕事をするポストなのか、あるいは何々省の局長、何々省の部長というのはどういう専門能力が必要なのかということについて基準を持っていなければ審査ができないわけです。
 では、その基準というのはどう確立したらいいかといいますと、これは具体的に各ポストの職務分析というのをする必要があるわけです。これはイギリスでもアメリカでも、日本がモデルとする先進国どこにおいても、きちんと中央人事機関が職務分析を行いまして、このポストに必要な技能あるいは職務といったものを長年かけていろいろ蓄積をつくって、先ほど例に示しましたように、ある省の会計課長であればこういう技能、こういう資格、こういう職務をするんだということが明確になってくる。そこで、ではこれに合う人を採用しようというふうになってくるわけです。ですので、人事院など中央人事機関において職務分析をきちんとやるということが、専門性を高めていく上で非常に重要だと思います。
 実際、日本でも、今から六十年前、職階法がつくられた当時は、人事院の中に職務分析を担当する職員が二百人以上いまして、懸命になっていろいろな職務の分析をやっていたところです。それがどんどん職員が削減されてしまいまして、現在はもうゼロになっております。したがって、どのポストに必要な専門的能力が何なのかということが余りよくわからないという状況が日本の公務員制度の中にできてしまっている、そこに問題があるというふうに考えております。
 ですので、職務分析ということをきちんと行っていき、どのポストにはどの技能が必要なのかということを明確にする、そういう作業が必要だということは申し上げておきたいと思います。

○塩川委員 ありがとうございます。
 もう一点、進藤公述人にお尋ねしたいのが、陳述の最後でお述べいただきました国家公務員総人件費削減のマイナスの影響の問題についての話でございます。
 もともと、よく知られておりますように、日本は諸外国に比べても国家公務員数が少ないということであります。総人件費削減先にありきというあり方でいいのか、現場の公共サービス、例えば国民の生存権を保障するような役割などについても支障を生み出しかねないような事態が広がっているのではないかという懸念を覚えるわけですが、この点について、進藤公述人のお考えをお聞かせいただければと思っております。

○進藤公述人 お答えいたします。
 まず、先ほど稲継公述人からも、早期退職の慣行をやめて雇用と年金を接続する、年金の支給年齢の引き上げに見合った形で定年の延長もというお話がありました。その点も私は賛成でございます。
 まず、現在いるスタッフの中で早期退職の仕組みをやめる、天下りというものを減らしていく、定年まで勤める仕組みをつくるということ、これだけでも相当の人件費が膨らむわけです。この点については試算も出されているようですけれども、その点が一つあります。
 天下り問題ということを考えても、定年まで勤めるという仕組みをつくることは必要でありまして、これは日本がモデルとしている諸外国の例においても、定年まで勤める公務員制度というのが当たり前の制度になっておりまして、それ以前に早くやめる人が大量に出るという仕組みはほぼ日本だけであろうかと思います。
 そして、定年で退職した後も、天下りをせずに年金生活でそれなりに暮らしていくことができるというためにも、年金制度の充実も必要であります。その点でも人件費がふえるということは避けられないかと思います。
 そればかりではありませんで、国民生活に必要な分野において、いろいろな職種がありますけれども、きちんと国家公務員を手当てしていくということが必要でございます。
 例えば、最近は大型台風などで気候変動等が出ていて、気象観測というのが非常に重要になっておりますけれども、ここでも職員の削減が起こっていて、そうすると、具体的に、どこでどのような天候の変動が起こっているのかということがにわかにはわからないというようなことで、これがかえって災害を拡大するというようなことも起こっております。
 ですから、先ほど指摘しました労働行政につきましても、今後、終身雇用というのが崩れてきますと、公的な職業訓練機能ですとか職業紹介機能は抜本的に拡充していかなければいけません。その分野で国家公務員をふやすということは、むしろ必要になってくるというふうに考えます。そういうふうに考えていきますと、ある部分ではふやしていかざるを得ないというのが出てくるということです。
 この点、前田公述人が言われましたように、行政改革というのは不断に行うべきものでありまして、必要がなくなった職は減らすけれども、国民生活の状況から見て必要な職はむしろふやしていくという形で、前向きの行政改革をどんどんやっていくということが必要であろうかと思います。
 その際に、人件費削減という枠で考えるのではなくて、国民生活という点から見て必要な手当てはしていく、そういう発想こそが必要ではないかというふうに考えております。
 以上でございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、天下りの問題につきまして、中野公述人にお伺いしたいと思っております。
 中野公述人の本で、新書で「「天下り」とは何か」とかございまして、私も拝見して、特に各省の天下りの特徴について書いてあるところがなかなかおもしろかったわけですが、お聞きしたいのは防衛省・自衛隊の天下りのところなんです。
 財務省については天下りのチャンピオンとか、経済産業省は仁義なきプラグマチストとか、表題がなかなか振るっているなと思って拝見したわけです。ほかの役所に口を出す経産省はインベーダーだとかというふうに書いてあって、最近は地域主権を看板に総務省がそうなんじゃないかというふうにも言われておりますけれども。
 防衛省・自衛隊の天下りの特徴ということで、中野公述人がお感じになっていることがございましたら、お聞かせいただけないでしょうか。

○中野公述人 防衛省に限定してでございますか。(塩川委員「はい」と呼ぶ)
 防衛省の天下りの特徴は、非常にマニアックな分析になりますと、事務次官は各省からいろいろ出向していますので、意外と特定の産業とか特定の非営利法人との結びつきは少ない。むしろ、財務出身の事務次官であれば財務省関連の非営利法人に天下る、あるいは警察出身であれば警察庁の非営利法人に天下る、こういうのが一般的でございます。下部になりますと、やはり防衛産業との関連が非常に深いというのが主な特徴だと思います。
 それに対して、一般的に見てみますと、国土交通省とか厚生労働省とかほかの役所に比べますと、非営利法人の植民地的支配はそれほどひどいものではないのではないかというふうに考えております。
 以上でございます。

○塩川委員 防衛省・自衛隊、特に制服組の自衛官におきましては、契約を背景とした天下りの押しつけがあるんじゃないのかというのが、過去の一連の事件でも問題となっております。
 そこで、この点について皆さんに短くでもコメントいただければと思うんですけれども、防衛省・自衛隊で、この間十数年、不祥事が相次ぎました。調達実施本部、調本の事件ですとか、あるいは四年ほど前の防衛施設庁の談合事件もそうですし、ことしにおきましては航空自衛隊の官製談合事件もございました。いずれも、契約を背景とした天下りを担保する。例えば、一人の自衛官の天下りがあるときには年間六億円の仕事がついてくる、こういうことなども防衛省の報告書でも明らかにされているところであります。
 その点で、今回、事前規制から行為規制へと切りかえる。一般職で行われた天下り、再就職規制への転換を自衛隊にも適用するわけですけれども、その際に、私は、本来、事前規制をしっかりやって行為規制も強めればと考えておりますが、少なくとも、行為規制に切りかえるのであれば、監視機関がしっかりしなければならぬ。
 そのときに、現行のスキームでいえば、一般職、防衛省の方の六十歳以上定年の人は対象になるわけですけれども、監視機関とすれば、再就職等監視・適正化委員会がその監視機能を担う。これは独立した中立公正な第三者機関というのをうたっているわけです。事務局体制が本当にそれに伴うものなのかという懸念は覚えるわけですけれども、一応形として独立した第三者機関なんですが、特に若年定年隊員の場合については、幹部クラス、一佐クラスであっても、実際には防衛省内の審議会が監視機能を果たすという形になっているわけですね。つまり、身内の機関ということは防衛省自身も認めているところなわけです。これはいかがかと率直に思っているわけです。
 行為規制という形をとるのであれば、しっかりとした事後チェックの監視機関が必要だ。それが、自衛隊にかかわって言えば、若年定年制隊員ということを理由に身内の監視機関となっている。これは、この間の一連の不祥事を考えても、妥当ではないのではないかということを申し上げているわけですが、その点について、公述人の皆さんから一言ずつお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○前田公述人 ただいまの御質問ですけれども、私、防衛省のいろいろな問題の実態をよく存じ上げておりませんので、大変恐縮ですが、コメントを申し上げる能力がございません。

○屋山公述人 日本の場合は武器禁輸三原則というのがありまして、要するに、武器のコストがえらく高くついている、そこが問題なんだろうと思うんですね。それをもとに、高くついている分を元を取ろうと思ったら、やはり防衛省から注文を受ける、それしかない。
 私、昔、スイスの国会で、ビアフラのゲリラと政府軍と両方にスイスの武器を売っているというのが追及されたときに、国防大臣が、武器を輸出しないと、べらぼうに高い武器について、我が武装中立は守れないんだというようなことを言ったのを聞きまして、日本みたいに武器禁輸三原則というようなことをやっている場合は、武器の値段はべらぼうに高くつくんだろうなと。
 ですから、メーカーの方も、防衛省にうんと買ってもらうためには、そういう人間を引き取って相対で買ってもらうというふうないびつな形が進行するんじゃないか、これは私の想像でありますけれども、それしかないんだろうというふうに思います。

○稲継公述人 御質問の件でございますけれども、背広組並びに陸将、陸将補といった将官クラスの一般定年隊員については、今度新しくできる再就職等監視・適正化委員会で府省横断的になされるということで、それで適正化を図っていただきたいと思うのですけれども、いわゆる若年定年等隊員、一等陸佐以下の若年定年等隊員について、今までと同じような勧奨、しかもあっせんを伴うということを防衛省の中だけで身内で監視するということについては、私は若干の危惧を持っております。
 と申しますのは、二十年度の数字を見ますと、若年定年退職で退職者数が四千七百人、うち援護希望者が三千五百人、そのうち九七%が就職はうまくはまっているんですね。しかも、いわゆる二十歳代の若い人が任期つきで採用されてやめるときに、大型トラックの免許を取ってそういうところに就職するということだけではなくて、いわゆる軍需産業にあっせんされていることも多くあるわけです。ですから、若年隊員だからといって、あっせんを省の中だけで見るということにすると、非常に甘い見方になってしまうのではないかと思います。
 そこで、この若年定年等隊員についても、やはり第三者機関、防衛省から独立した第三者機関がこれをしっかり監視するような、そういう仕組みをつくられてはいかがかなというふうに思います。

○中野公述人 事後規制それから行為規制については、安倍内閣以降で初めての取り組みですので、今後どうなるのか、その運用はやはり注目されるところでございまして、御指摘のように厳格な運用にしなければいけない、これはそうだと思います。
 自衛官の若年者に関しましては、一般の職業紹介とは別に再就職支援を行ってきたという経緯もありますし、そういった意味では、再就職の特殊性というのもあると思います。ただ、アメリカでも、やはり産官複合体みたいなものが、ペンタゴンと軍需産業との関連性とかこういうのがずっと言われていますので、御指摘のように、第三者的な目も入れて行為規制もしていかなきゃいけない、そう思っております。
 以上でございます。

○進藤公述人 私も今、稲継公述人、中野公述人と同じように、行為規制であるとしても、防衛省の若年定年退職についても、防衛省内ではなくて、防衛省外の中立の機関による審査が必要であるというふうに考えております。
 さかのぼって考えますと、やはりこの問題は、官と民の癒着をなくすということこそが非常に重要でありますので、原則としては、事前規制という制度に戻して、人事院などの承認制にするということが大事かと思います。
 この問題は、例えば、防衛省・自衛隊の中で調達とか契約の専門家がいたとしたときに、その人たちは、契約や調達の専門性というのを生かした形で、なおかつ、いわゆる軍需産業ではないところに就職できる道を開くということが考えられるわけですので、軍需産業との官民癒着を防止しながら契約等々の専門性を生かした形での再就職を探る、その点でも職務の明確化をきちんとしていくということが、結果的には再就職を円滑にすることができるのではないかというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。